燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第236話

ルエノルーヴ号、船内。

 

「はい、あーん!!」

 

「あーん。」

 

シャンクスの顔は暗かった。原因は今目の前で行われていることである。ベッドに座るバンドラへ、ニコニコのウタが剥かれたリンゴを食べさせているからである。

 

「おいしい?」

 

「あぁ。」

 

「…バンドラ、良い加減にしてやってくれ。お頭が吹っ切れそうだ。」

 

バンドラはベックマンの声に目を向ける。そこには暗い顔のシャンクスとむすっとしているヤマトとハンコックの姿があった。

 

「悪い悪い。本題に入ろう。」

 

バンドラは目を細めて笑う。シャンクスは何か言いたげな表情だったが、ベックマンがそれを止めた。バンドラとの久々の触れ合いを邪魔されたウタは少し不機嫌だった。

 

「身体の具合はどうだ。バンドラ。」

 

「…まぁ、暫くは安静だな。」

 

「…そうか。…その目はどうした。」

 

ベックマンのその言葉にヤマトとハンコック、シャンクスもこくりと頷く。バンドラは自身の右手で自身の右目を触る。

 

「…死にかける度に、このワザワザの実(じゃじゃ馬)の本質がわかってくる。これは…代償だ。」

 

「代償…だと?」

 

…ようやっと、シャンクスが口を開いた。

バンドラはコックリと頷く。ヤマトとウタにはそれが何の代償だったのかよくわかっていなかった。

 

「ワザワザの実は言わば、災害そのもの。海軍の倉庫に大事そうにあったのを腹が減った俺が喰らった。後で聞けば、この力の暴走は…それこそ、古代兵器にも匹敵するらしい。」

 

「それって…トットムジカと…同じ…。」

 

びっくりしたようなウタの声にバンドラは頷く。しかし、そんなものが何故、人一人の体に収まっているのか…。ハンコックがそう聞いた。

 

「これは知人の仮説だが、シナジーがあった…ということらしい。俺もわからねえが、悪魔の実が食べる人間を選んでいるとすれば…。まぁ、今はこの力をどう使うか…の問題だがな。」

 

「で、その目は大事ないのか?」

 

「…右目の視力は大事ない。…今までに比べたら右目くらい安いもんだよ。」

 

…そう言ってバンドラははにかみながら、右手で右の目の付近を触った。瞳の奥は少し濁っており、白というよりかはグレーと言ったほうが良かった。

 

「幸い、見聞色で視力は補える。…それに義眼くらいなら頼めば作って貰えるだろう。記憶やそれこそ…暫く、意識があるのに身体は動かなかった時だってあった。…今は親父の死を悔やむべきだ。」

 

「…そうか。」

 

暗くなるバンドラの顔にシャンクス達も顔が暗くなる。

 

「…白ひげは丁重に弔った。今、眠っているエース以外はその墓標に手を合わせたところだ。」

 

「ふむ。…助かるよ。ありがとう。」

 

「…その…大丈夫?バンドラ。」

 

シャンクスに礼を言ったバンドラへ、ウタが暗い顔で聞いた。ウタにとって、シャンクス達と離れ、バンドラが来なかったあの数日間は地獄以外の何物でもなかった。どうして…という不安と嫌われたという絶望感で胸がいっぱいいっぱいだった。しかし、もう一度こうして、大好きだったシャンクス達にも会えた。

 

一方、バンドラは…もう会うことはできない。ウタにとってシャンクス達と会えなくなるのは…何よりも辛いことだ。

 

「…そうだな。…俺よりも辛そうな奴がいるもんだが。」

 

バンドラはウタの頭を優しく撫でるとふっと微笑んだ。

 

「…悔やんでも親父は帰って来ねえ。親父はそんなこと望まねえはずだ。…だから、悔やむのが一歩遅れた俺は…今は前を向いて歩くだけだ。それが親父の望みだからな。」

 

「…そうか。」

 

その時だった。

バンドラの部屋の電伝虫がプルルル…と声を上げた。

 

「なんだ?…マルコ。」

 

『すまねえな。エースの奴が目覚めたから一つ、伝えておきたかったんだよい。』

 

「ほう。そりゃわざわざ。…そうさな。エース(あいつ)にも会っておかないといけねえな。親父の墓前に手を合わせるついでに。」

 

バンドラはそう言うと電伝虫の受話器を収めるとシャンクス達にふっと笑う。

 

「というわけだ。…長らく迷惑をかけたな。シャンクス。」

 

「友達と…娘の危機だ。当たり前だ。」

 

そう言って微笑むシャンクス。その手をバンドラはギュッと握り、ニヤッと笑った。

 

「…それはそれとして、ウタに手を出したら殺すぞ。」

 

「へ?」

 

…シャンクスの突拍子のないその言葉に笑って見ていたウタの顔がぽっと赤くなる。顔は笑っているが、額に青筋を浮かべているシャンクス。バンドラはまるで遊び道具を見つけたかのようにニンマリと笑う。

 

「ははんっ!!この前、ウタは俺のこと愛してるって言ってたぜ?なぁ?」

 

「うえっ!?」

 

「んだと…!?ウタ、こいつだけはやめとけッ!?」

 

段々とウタの顔が真っ赤に染まっていく。

シャンクスの顔も違う意味で真っ赤に染まっていた。

 

「ウタ、まだルフィならわかるっ!!だが、こいつは女をとっかえひっかえするただのクズだぞッ!?」

 

「…自分を棚に上げて無茶苦茶言うな…。」

 

叫ぶシャンクスをジト目で見るバンドラ。

 

「そもそも、まだお前には早…「…えっと…す、好きなのは…ほんと…っていうか…嘘じゃない…っていうか…。」バ〜ン〜ド〜ラ〜ッ!!」

 

顔を真っ赤にして両手の人差し指の先をくっつけて、くいくいっと動かすウタ。モジモジとしているその様子とその顔からシャンクスの怒髪天を衝くのも当然だった。

 

「痛え痛えッ!!俺怪我人だっつーのッ!!ベックさん、助けてッ!!」

 

「五月蝿えッ!!ベックッ!!手ェ出すな!!コイツはウタに手をッ!!」

 

良い加減にしてッ!!

 

…声を荒げたのはウタだった。

ギロリと睨むその視線にシャンクスの顔もバンドラの顔も青ざめた。

 

「…バンドラはちゃんと私のことを大事にしてくれてるよ。なんで決めつけるの。シャンクス。」

 

「ぐえっ…。それは…その…お前のことを大切にだなぁ…。」

 

「だからって、バンドラに当たることないじゃない。傷だらけなんだし。」

 

腰に手を当ててぷくっと頬を膨らませるウタ。シャンクスは虚をつかれたかのように言葉を失う。そして、根をあげたかのようにベックマンの方を向いた。ベックマンは額に手をやると呆れたようにため息を吐く。

 

「…ウタ、その辺にしてやれ。お頭もウタと久しぶりに会えて嬉しいんだ。親心ってやつだ。わかってやれ。」

 

「ふんだっ。そもそも、私をあそこに置いて行った方がわる………ごめん。止む無くだもんね…。無神経だった…。」

 

辺りには居た堪れない空気が充満する。

ベックマンやシャンクスは勿論、話に聞いただけのヤマトやハンコックですら、複雑な表情を浮かべる。

 

「…くくっ。」

 

「ふぇっ?シャンクス?」

 

「ダーハッハッ!!ガキが、大人の顔見て取り繕うんじゃねえよっ!!」

 

腹を抱えて大笑いするシャンクスとそれに遅れる形で笑うバンドラとベックマン。ウタは何が何だかわかっていなかった。シャンクスはウタの頭をぽんぽんっと優しく叩いた。

 

「…悪かった。幼いお前には酷なことをしたな。…それをコイツが助けてくれた。初めて会った時、酒屋で喧嘩ふっかけてきたこの馬鹿がだぞ?」

 

「…バカは余計じゃ。バカは。」

 

「…許されるとは思っちゃいない。…せめて、お前の幸せだけには口出ししたいと思っていたが…余計なお世話だったようだ。…おい、バンドラッ!!」

 

ニヤリと笑い叫ぶシャンクスにバンドラはニヤリと歯を見せて笑った。咥えているタバコからは窓へと立ち上る煙。

 

「んだよ。」

 

「…ウタを泣かせやがったら、その首掻き切ってやるからな。…覚悟しろよ。」

 

「ヒヤハハ。当たり前だ。…もし、んなことがあれば…この首、いつでも切ってみろ。ま、んなことはねえと思うがな。」

 

そう言うバンドラへシャンクスはそうか…と返した。

 

…そうして、ルエノルーヴ号とレッドフォース号は島を出るのだった。




これからウタ?誰それ?って人が出てくるんだなと思うと…怖いね。まぁ、地上波あるからないか。

2、3話違うの挟んでからイチャイチャラッシュかなぁ。その前に船上で挟むかなと言った塩梅。それでは。

スッ…

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