燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第242話

「…今日はお休みでいいのに。」

 

「修行は1日にしてならず。休みぐせがついちまったらダメだしな。」

 

…エレジアの大広場。

破壊してもいい何も無い空間。そこにビビ、エース、レベッカの三人とバンドラが立っていた。

 

「…てか、レベッカ。」

 

「なんですか?師匠。」

 

「…そんな露出度の高い服、どこで見つけた…?」

 

レベッカの顔が真っ赤に染まる。

当たり前だ。レベッカの服は金の装飾を用いたビキニアーマーを着ていたからだ。

 

「し、城の地下室で…。気合い入るかな…と。」

 

「まぁ、エースも半裸だし、出来るだけ身軽にするに越したことはないだろう。戦場じゃあ女も男もねえわな。」

 

首をこきりと鳴らし、息を吐くとバンドラは真剣な眼差しで前を向く。その目を見れば、雰囲気が変わったことは一目瞭然であった。

 

「…王女だろうが、有名海賊の一座だろうが…国を守るというのは敵を廃すよりも難しい。ビビとレベッカは懸賞金こそ付いていない。当たり前だ。ついたらそれはそれで問題になる。…つまり、その過剰戦力が国外には出ていない。派手に問題を起こせば…国に帰れなくなってしまう。」

 

「…わかってるわ。」

 

「だからこそ、人を殺す為ではなく、民を守るための力を手に入れるんだ。…殺すために斬るのと助けるために斬るのは意味合いが全然違う。海賊らしくはねえが。」

 

そう言うとバンドラは両腕に武装色を纏う。

 

「…見えない鎧を着る、纏うイメージ。これが武装色の覇気。これが無いと実力者からすれば、剣を持っていようが銃を持っていようが実を食っていようが…関係ない。親父は病気で弱ってたから全盛期よりは劣ってたが、それを極限まで高めたから…あの歳でも最強を名乗れた。」

 

「…親父は最強だった。誰がどうみても。」

 

「…エース。お前はアレになれる素質がある。」

 

バンドラがそう言うとエースは小首を傾げた。

エースのとって白ひげは越えられないほどの壁。それになれるなど言語道断だった。

 

「…勿論、親父を追えというわけではない。だが、お前にもルフィにも覇王の素質がある。…纏うまで能力を鍛えるよりもより効率的に強くなれる。能力にある差異、相性なんてもんが覇気にはないからな。その力の名は…覇王色の覇気。」

 

そう言ってバンドラは右腕に覇王色の覇気を纏った。バチバチとその右手には赤雷が走っていた。エースにも、ビビにも、レベッカにも何がとは言えぬ威圧感が走り、冷や汗をかく。

 

「エース。お前にはこれをやってもらう。能力も、戦闘能力も恵まれたお前だが、結局はティーチと同じだ。自身のスペックによる過信、軽率な行動…!!…もうお前を守れる人間はこの世にはいない。次は一人で海軍大将ぐらい相手にできるようになれ。」

 

「…わかった。」

 

「ビビとレベッカは剣術中心に。お前達はあくまで何かあった時の護身術だ。極めるに越したことはないが…まぁ、やれる範囲でやってみろ。」

 

そう言ってバンドラは首を鳴らし、エースの前に出た。

 

エースもその行動の意味がわかっているのか、前に少し出るとニヤリと笑う。

 

名も言えぬ緊張感がエースの身体に走っていた。

 

「…こい。」

 

バンドラがそう言った次の瞬間。

炎が二人の間で爆発した。爆風により、レベッカとビビの髪や服、そして、地面の砂塵諸々が吹き上がる。

 

「ッ!!」

 

規模、火力共々、差異はない。

しかし、エースの右手は着実にじわじわとだが、焼けていっていた。

 

「アチィだろ?この温度はまだ序の口だ。お前は俺よりも火力を出せる。なんせ、ワザワザの実はッ!!」

 

「ッ!?」

 

直後、炎の繋がりは上空へと消える。

そして、バンドラとエースとの距離はゼロになり、エースは地面に投げ飛ばされていた。

 

「この世にある悪魔の実全てに対する有効打を持っている。」

 

「…いてて。何言ってやがるんだ。」

 

「…と仮説を立ててみるが、正直コイツのことは俺でも理解できねえ。ただ一つ言えるのは…コイツの力はまるで蓄積だ。元は相手の能力をコピーする力として知られていたらしいんだが、いつしかコピーとは言えないほどの力を手に入れ始め、今では一つの能力として数えられている。世界政府が血眼になって探す能力のうちの一つだ。まぁ、生きてりゃコイツの意味がわかるだろうが。」

 

そう言ってニヤリと笑うバンドラの目の前にエースは躍り出る。

 

バンドラに足払いをかけようと足を動かすが、それをバンドラが跳んで回避。地面に向かって木刀による打ち下ろしを打ち込みが、その威力は木刀のそれではない。まるでそう…金棒だった。

 

「『神火不知火』ッ!!」

 

「『龍刀火門(りゅうとうかもん)』」

 

二本の飛んでくる炎の槍をバンドラは剣先で円を描くように塞ぐ。その炎はまるで龍の尻尾のように揺らめき、そのまま一刀足でエースとの間合いを詰めた。

 

「ッ!?」

 

「焦るなッ!!防いでみろッ!!」

 

その言葉にエースは咄嗟に手をクロスしてガードした。

 

しかし、その横薙ぎの一撃はエースの腕に痛みを走らせた。じんわりと広がっていく熱さにエースは顔を顰める。

 

「お前はもう既に2回死んでいる。なんなら、手首とお別れしてるしな。…自身の能力にあぐらをかいているわけじゃなさそうだが、鍛錬してきたわけでもねえ。どっちつかずって感じだ。」

 

「…よそ見してると火傷するぜ。『火拳』ッ!!」

 

「恐ろしいかな。炎の制圧力。それに覇王色が乗ればッ!!」

 

バンドラの目の前を煌々と埋め尽くす火の拳。

炎上網はバンドラの行手を阻むも、その拳が当たらないようにバンドラは後ろに跳んでやり過ごす。

 

「…有象無象艦隊なら軽くのせる。『紅焔発勁(こうえんはっけい)』ッ!!」

 

目の前を覆う炎。

それすらもバンドラの発勁は押し流す。とてつもない暴風にエースの身体に小石が飛んでいく。

 

「一打は自衛、二打で仕留める。」

 

「ゴフッ…!!」

 

直後、バンドラは踊るかの如く、ステップを踏み、エースの懐まで入ると炎を纏った左掌をその腹部に打ち込んだ。エースの口から唾液混じりの空気が吐き出される。

 

「ぐっ…!!」

 

エースがそのまま拳を構え、バンドラのこめかみに殴りかかる。

 

しかし、バンドラはそれを右の掌底で弾いた。

 

「精神力だけは一丁前か。」

 

そう言い、バンドラは腰に手を持っていく。そこには先ほどまで使っていた木刀が帯刀されていた。直感的にやばいと感じたエースは地面を蹴り、間合いを取ろうと跳ぶ。

 

…が、しかし。

 

「『仙骨・万華(せんこつ・ばんか)』ッ!!」

 

エースの身体を下から上へと裂く木刀。閃光のようなその居合抜き。

 

エースはモロにくらい、そのまま吹き飛んでいった。地面に墜落するエースを見て、バンドラはタバコを蒸す。

 

「ぐっ…くそっ…。」

 

「頭に血を上らせるな。拳を振るうことなんざガキでもできる。…喧嘩と俺たちの戦いは訳が違う。拳、足刀、合気…体術全てをその身に刻め。かつ、覇気の鍛錬も怠るな。…じゃなきゃ、せっかく拾った命…ドブに捨てることになる。」

 

ギロリと睨むその目にエースも睨みで返した。

 

…曰く、エースは自身の生きる意味を考えていた。海賊王の息子、鬼の血…それが果たしてこの世に留まっていいものなのか。

 

「へっ…やってやらぁ…。俺はあの世の親父とサボに恥じねえ男になるッ!!いつ、どこでルフィが助けを求めても助けられるようにッ!!強くなってみせるッ!!覚悟しやがれ、バンドラッ!!」

 

「…はんっ。()()()()()が。」

 

口ではそう言うものの両者共に笑っていた。

エースが拳を構え、バンドラが木刀を構える。

 

「よし、もう一本。」

 

「おうっ!!」

 

…その刹那。

エースとバンドラを止めるようにウタの声が響いた。

 

「バンドラッ!!大変だよッ!!なんか、おっきい船が…!?」

 

バンドラはその言葉に眉を顰めた。

最初によぎったのが海賊、次に海軍だった。しかし、世界政府が皇帝とまでなった自身を単発で狩りにくるとは考えられなかった。バンドラは近くに置いてあった狂骨を握るとウタの案内で沿岸に出る。

 

「…お前が天帝バンドラだな。」

 

「…だったら?」

 

「少し話をさせてもらおうか。」

 

…その顔を見て思わずエースの口から声が漏れた。

その顔は死んだはずの義兄弟だったからである。

 

「…お前…サボか…。いや、そんなはずねえ…だって、サボは…!!」

 

「…エース。」

 

「…サボ。」

 

呆然と立ち尽くすエースにサボはニヤリと笑った。親父を失い、ぽっかりと空いたエースの胸がいっぱいになり、目に涙を浮かべていた。感動の再会。しかし、バンドラの目は別のところへと向いていた。

 

「…なるほど。お姫様の護衛か。」

 

「あら。姫って歳じゃないわよ。」

 

その目の先にはロビンがいた。

バンドラはゆっくりと彼女に近づくとその手を優しく握る。微笑みあう両者にビビの頬がぷくりと膨らんでいた。




お久しゅうござる。
忙しかったのですよ。と、言い訳してみたり。

時折、ぱったりと姿を消しますがご容赦のほど。

では。

スッ…

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