燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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↑アンケートについての説明です。
これの意図は?と思っている方もいらっしゃると思うので読んでいただけると幸いです。


第25話

…新世界、ワノ国。

主人、カイドウはいつものように暗い室内で瓢箪の中にある酒をごくごくと飲んでいた。キングはその横に控えている。

 

「…随分と静かになったな。カイドウさん。」

 

「ウォロロロロ…!!なんだ。キング。寂しいのか?」

 

「…別に。俺はアイツとそこまで話したことはないからな。寂しいのはカイドウさんだろう?」

 

ギロリと睨むキングにカイドウが返したのは大笑い。そして、口元から流れる酒も関係なく、ごくごくと飲んでいく。

 

「…あのガキな。侍どもと俺の元に来た時、なんて言ったと思う?」

 

昔語りをあまりしないカイドウが懐かしそうな顔でそう言った。キングは内心、驚きつつも静かに聞いていた。

 

「『ヤマトをあそこから出せ』ってな。聞けばアイツ、それだけの為に向かってきたと言っていた。」

 

「…馬鹿なのか。勝てるわけないだろう。アンタに。」

 

「ウォロロロロ!!…それがどうだ。アイツ、急に途中から強くなりやがってなぁ…。この俺がひさびさにあれだけ血を流した。」

 

大口を開けて笑うカイドウ。

 

「…カイドウさんが…?」

 

「15のガキに危うく、やられかけるなんてな。まぁ、その時は俺も酒も飲んでなかったし、本気じゃあなかったが…バンドラのガチはマジでやべえぞ。」

 

…キングは俄かには信じられなかった。

あのカイドウが誰かをヤバいと言うだなんて。

 

「…鬼姫に惚れてたんでは?」

 

「ウォロロロロッ!!アイツならあり得る。」

 

カイドウは瓢箪を天へと掲げた。

そして一気に飲み干すとニィッと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

万国近海。まだジュースの海へ入っているところ。

バンドラ達の船は朝早く出て、そこを進んでいた。バンドラはスムージーが用意していたボトル詰めのスムージーを簡易冷蔵庫に詰めて、笑っていた。

 

『…また来い。ママの意向も関係あるが、私も会いたい。』

 

『わぁったよ。』

 

…ホールケーキアイランドから旅立つ時。

スムージーが送り出してくれたことを思い出した。バンドラは甲板で陽の光を浴びながら寝っ転がっていた。木の硬い感触が背中に伝わる。

 

バンドラの頭の中には次はどこへ行こうかという思案に暮れていた。なんだかんだ言って、スピードは出ない。出せば、普通の船は倒壊してしまうからだ。

 

「…一度、ドレスローザでも寄ってみるか。いや…しかしな…。」

 

…正直、気分が乗らない。

というのも、バンドラの海軍時代。正義を重んじる海軍において、センゴクとガープの他に気を遣ってくれた人がいた。名前はドンキホーテ・ロシナンテ。凶悪として有名なドフラミンゴファミリーに潜入して、討ち死にした…という話だ。

 

最期まで気にかけた奴がいることも知っている。

トラファルガー・D・ワーテル・ロー。一度、聞かされたことがあった。彼は酒で饒舌になる口だ。海軍を止めてもバンドラはちょくちょく会っていた。彼の口癖は『もし、俺が死んだら…ローを頼む』だった。当時は縁起でもないことを言うなとバンドラは笑って叱ったもんだが…。

 

「…ふぅ…。」

 

癖のある色の海が混じった青い海域へと変わる。出る前にはウタがもう少しいたいと駄々をこねていたなと思い出す。

 

昨日の電話。センゴクはロシナンテの良き父であった。バンドラはそれを親友の姿に重ねる。もし…ウタが死んでしまったら…。そう思うと一概にセンゴクが悪いとも言えないのだ。そして、薄情かもしれないがバンドラは別に殺した張本人を恨んじゃいない。理由は明白。

 

…海賊だからである。

 

自分の手の届く範囲での悪行は大抵は解決するが、知らないところでの悪行は不可侵なのだ。悪い意味で言うと見逃している。と言っても、もうバンドラは海軍ではない。だから、海賊を拿捕する必要もないのだ。割り切っている…と言って良い。海軍にも海賊にも大恩があるとこういうところで大変である。

 

「…ぐえぇっ!?」

 

考え事をしていた瞬間。

腹に何かが乗ってきた感覚を覚えた。バンドラはゆっくりと顔を覆っている新聞を退かした。そこには満面の笑みで自分の腹に跨るヤマトの姿があった。

 

「ど、どうした?」

 

「えへへ。次、どこに行くのかと思って。」

 

…嘘である。

ヤマトとしてはバンドラと触れ合う口実が欲しかった。ワノ国にいるときは懐かしいから、懐いているからという理由で触れ合えたがこう毎日顔を合わしているとそんなことも不可能なのだ。しかし、周りから見ると完全にアウトな体勢であった。

 

「…取り敢えず降りなさい。」

 

「ヤダっ。ボクは光月おでんだ。男同士が触れ合って何が悪いっ!!」

 

「こういう時だけ男、名乗んじゃねえっ!!」

 

口元を膨らませて抗議するヤマト。

ポカポカとバンドラの胸板を叩いた。蚊を殺せるぐらいの力は出ているが。

 

「…聞き分け悪い鬼姫様だよ。全く…。」

 

「なんだよぉ。…もしかして、ボク…重い?」

 

「いや、全く。」

 

不貞腐れたように言うヤマトにバンドラは表情を変えずそう答えた。

 

どんな理由であろうと女の子に重いは禁句である。(愛に重いは別)というのがバンドラのポリシーであった。ヤマトはなら良いやとバンドラの首元に腕を回して、そのまま倒れる。バンドラの上にヤマトが抱きついている状態であった。

 

「…ウタに見られたらどうするつもりだ。」

 

バンドラはジトーとした目でヤマトを見る。

ヤマトは酔っているのかと言わんばかりにニコニコでバンドラの頬に頬ずりしていた。まさに犬のようだった。

 

「何が?」

 

「これが。」

 

「別に良いじゃんっ。」

 

ヤマトからすれば、これは所謂、挨拶程度のスキンシップであった。バンドラに懐いているからすること…程度に思っていたが、時刻は朝。それに室内ではなく甲板である。

 

バンドラは何食わぬ顔でそう言うヤマトにため息をつき、わかったわかったと半ば諦めながらヤマトの頭を撫でた。

 

「で?次はどこ行くの?」

 

抱きしめるのは止めたが全く退く気のないヤマト。首を傾げて次の目的地を聞く。その様子にバンドラはふっと笑った。

 

「…どこに行こうか、考えてたとこさ。偉大なる航路前半に行けば、雪の降る島とか恐竜のいる島とかな。」

 

「雪?雪がいいっ!!」

 

「…お前、その格好で行く気か?」

 

バンドラはジトーとした目でヤマトを見た。

ヤマトの格好は脇が露出していて、いかにも寒そうだった。しかも、ウタだって防寒が出来てるわけじゃない。防寒具も用意していない。

 

「てか、雪ならワノ国にもあるだろ?」

 

「だって、鬼ヶ島から出たことないもん。」

 

「あ…あぁ…。」

 

そうだったとバンドラは頭を抱えた。ヤマトには知識はあるが、中身は少し幼い。その原因はカイドウの幽閉にある。おでんの日誌がなければ、文字すら読めていないのではないだろうか。

 

「というか、退いてくれませんかね?」

 

「えーっ?なんで!?」

 

「動きづらいからだよッ!!」

 

ブツブツと文句を言いながら、ヤマトはバンドラの上から降りた。硬い甲板で寝ていたせいか、バンドラの腰に鈍痛が走る。

 

「…んぁ?なんだこれ。」

 

バンドラは先程顔を隠していた新聞に目を通す。すると、そこには二つの記事があった。一つは世界政府が喉から手が出るほど欲しがっている女の子の名前と懸賞金。そして、もう一つは…。

 

「ボク達だっ!!」

 

横からバンドラへ抱きつくヤマト。

新聞記事にはヤマトとウタ、そして、バンドラの姿があった。

 

『背に龍を持つ男』

『バンドラ』

『懸賞金:5億2000万ベリー』

 

『鬼姫』

『ヤマト』

『懸賞金:4500万ベリー』

 

『天使の歌声』

『ウタ』

『懸賞金:1500万ベリー』

 

…恐らく、東の海のあの一件だろうかとバンドラは思った。当時、アーロンには懸賞金は掛けられていなかった。それは海峡のジンベエの七武海入りのおかげであった。そのおかげで牢獄を出られたのだが、アーロンは海軍と懇意な関係になり、ココヤシ村へとやってきた。恐らく、その海軍の人間がココヤシ村の件はバンドラたちがやった…などと上層部に言ったのだろう…とバンドラは考えていた。

 

「なるほどね。」

 

「ねーねー!!ウタにも見せてあげようよ。」

 

「ちょっ…まっ!!」

 

バンドラはことの次第をわかっていないヤマトに腕を引かれる感じで船内へと連れて行かれてしまった。




トットムジカの件がわかっていないのでウタとバンドラはこの程度です。ヤマトも血筋がわかっていないのでこの程度。アーロンを倒しただけだからね。さてと、次はどうしようかなぁ…。

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