燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第255話

「はい、あーんっ。」

 

「…別に食わせてもらわなくても食えるって。」

 

明るい笑みをしながら、ナミは卵焼きをバンドラに箸で割り、与える。バンドラは困ったように笑い、言うがナミの甘えたような視線がバンドラに突き刺さる。

 

仕方なく、バンドラは口を小さく開けて卵焼きを食べた。ナミはにっこりと笑うと頬に手をやる。

 

「どう?美味しい?」

 

「うん。美味い。」

 

「やったっ。」

 

小さくガッツポーズをするナミ。

室内には2人しかいない。というのも、朝方と夜はバンドラとナミの2人っきりの時間と決めてある。勿論、ビビやモネの時間も作りながらである。

 

「…捗ってるか?ウェザリアの勉強は。」

 

「うん。ここってすごいの。悪魔の実無しで天候を操れて…特にウェザーボールっていう掛け合わせ次第で氷とか雷とか起こせてっ!!他にも風とか…って、聞いてる?」

 

「聞いてる聞いてる。」

 

胸を張ってドヤ顔するナミの頭を撫でるバンドラ。バンドラにとって、ナミやウタ、ビビやシュガーあたりはまるで娘のようなそんな感覚で、彼女らが子どもらしい表情などを浮かべると少しほんわかとしていた。

 

ただそれはウタのようなわりと鈍感な子やシュガーのようなバンドラに親愛や友愛を覚えている子ならの話。

 

「…むぅっ。」

 

ナミは不貞腐れたように口元を膨らます。

そのなあなあな態度がナミは気に食わなかったのだろう。ぽんぽんと叩く頭をギュッと掴み、指と指の間に指を通す。

 

「…ナミさん?」

 

「いつまでも子ども扱いしてんじゃないわよ。」

 

ジトーとした目がバンドラに突き刺さる。

ぶかぶかなワイシャツから打って変わり、黒いビキニと腰に履かれた短パンデニムが何処となく大人っぽさを感じさせる。

 

その身長差すらも感じさせないほど、ナミの方から強引にバンドラの唇を奪う。ベルメールやノジコが見ていれば囃し立てていることだろう。ふんわりと香る蜜柑の香りや先程口にした朝餉の味など思い出せないほど、2人の口づけは長かった。

 

唇を割り、舌を入れるのはナミ。

ベルメール仕込みのキス術。しかし、ナミ自身の経験の無さも相まって舌を入れたは良いもののそこからはどうしたら良いかわからなかった。

 

ロビンやサンジのようなナミにとって障害になるような存在は今はいない。思ったよりも長く、じっくりとした時間が流れる。

 

「…。」

 

バンドラはそれを見抜いたのか、ナミの舌を自身の舌で絡め取る。取られていないもう片方の手をナミの後頭部に添えて。目を潤ませて時折、びくびくと身体を震わせるナミを見ながら、微笑む。子ども扱いするなと言っておきながら、少し怯えているようにもバンドラには見えた。

 

唇を剥がし、舌を引っ込める。

ナミに至っては舌を出しながら止まっていた。頬に手を当てれば、再び静止した体が動き出す。

 

「…子ども…なんだって?」

 

「あ、んっ…え…。」

 

歯切れ悪くそう言うナミ。かーっと真っ赤に染まる顔にバンドラは頬杖を突き、ふっと笑った。

 

「…なによぉ。」

 

「…物好きな奴だ。ウェザリア(ここ)に来てから、髭も不揃い。髪も長いし、目も片方見えにくい。下手の付けようなら腐るほどあるもんだが。」

 

「…それ、思ってないでしょ。」

 

ニヤリと笑うナミ。バンドラもそれに合わせて、ふっと笑った。

 

「…当然。俺もお前も似た者同士だと思うが?」

 

そう言ってバンドラは手を前に出す。ナミもその意図を理解したのか、その手に重ねるように手を前に出した。掌の大きさも指の細さもバンドラからして見れば2倍ほどの差はあるだろう。

 

再び優しく紡がれる手。

ナミの顎に手を触れ、撫でれば喉を鳴らし喜ぶ。尻尾があれば愉快に揺れていただろう。しかし、それに心地よさを覚える自分が恥ずかしかったのか、再びナミの顔はリンゴのように赤く色づく。

 

「お前達は俺を買い被っている。俺は手を出しておきながら、取捨選択の出来ない愚か者。」

 

「ふわっ!?」

 

ガシッとナミの腕を掴み、胸元まで引き寄せるバンドラ。ふんわりと香るシトラス系の匂いがナミの鼻を刺激する。

 

「子ども扱いするな…か。俺の前でそう言った奴がどういう末路を辿ったか。わかるか?」

 

「…え…えっと…あのっ…。」

 

「別に怖いなら手は出さない。まだお前は子どもだからな。朝だし。…泣かせるわけにはいかない。だが、あんまり大人を…それも男を揶揄うんじゃない。俺は長らく飢えた男、お前の目の前にいるのはそれだ。わかるか?」

 

穏やかなそう言い放つバンドラ。その穏やかさがナミに多少の恐怖を感じさせた。生唾をごくりと飲み、首をこくっとゆっくり動かす。

 

「最悪は…体だけの関係になってしまうかもしれない。お前はまだ若い。お前の仲間には良い男の1人や2人、居るだろう。こんなクズの相手をするくらいなら、多少は自分の幸せ考えて…。」

 

「…嘘つき。」

 

きっと睨まれる目は純粋な彼女の優しさを表していた。

 

「前にも言ったけど、貴方がいなきゃベルメールさんは死んでたし、私はどうなってたかわからない。」

 

ギュッとバンドラの身体を抱きしめてそう言うナミ。バンドラは口を小さく開け、唖然とする。まだ小さいからか、目に少し涙を浮かべている。

 

「…あの日、言ったわよね。バンドラさん、私の作った世界地図を見るって。」

 

バッとバンドラから離れ、ばしっとバンドラへ指を指すナミ。プクッと膨らまされた口元や怪訝そうな目、その不機嫌そうな顔から少し怒っているのが垣間見えた。

 

「私の近くに居なきゃ、達成できないでしょ。約束なんだからッ!!もし、完成するまでに私の前から居なくなったら、絶対に許さないッ!!」

 

「……。」

 

「…それに…。」

 

先程のきっと睨み、威勢の良い態度とは打って変わって、後ろで手を組み、顔を少し赤らめモジモジし出すナミ。随分としおらしく、可愛らしいが、バンドラが笑うわけにはいかない。

 

「…都合いいと思われるかもしれないし、軽いと思われるかもしれないけど…しょうがないじゃないっ!!…す、好きになっちゃったんだから。どれだけクズでも好きなんだからっ!!」

 

「…おいおい。俺が言うならまだしも、お前がクズって…。」

 

「…良いでしょ。可愛い私に好きって言ってもらえるんだからっ。」

 

プイッと横を向き、そう言うナミ。

バンドラはジトーとした目を向けていたが、ため息をついてふっと笑った。

 

「ふっ。そうだな。“可愛い”ナミに好きって言われたら嬉しいな。」

 

「…っ。か、揶揄わないでよ…。」

 

「ハッハッハッ。こうも真っ直ぐ来られると良いもんだね。まぁ、俺もナミには命を救われてる。俺が出来ることなら大体してあげるよ。」

 

「……後でやっぱなしとか無しだからね。」

 

ジトーとした目でそう言うナミ。

バンドラは目を細めて、歯を見せて笑った。

 

「色男に二言はない。」

 

「じゃあ、怖がらせたんだから身体で払ってもらうからっ。」

 

そう言ってナミはバンドラの膝の上に自身の体を預ける。バンドラは手に持ったコップを落とさないように、ナミを落とさないように左腕で支えた。ぷいっと不貞腐れた顔で横を向くナミを見てクスリと笑うバンドラ。

 

「…なんなりと。」

 

そう言ってバンドラはナミの頭を優しく撫でる。柔らかなオレンジ色の髪がバンドラの手に馴染む。目を細めて満足げな声を上げるナミ。

 

「じゃあ、今日一日、私と一緒にいることっ!!…良いわね。」

 

「…了解。」

 

ギュッとバンドラの手を掴むナミ。

バンドラはふっと笑うと彼女の指と指の間に重ねるが如く、手をギュッと握った。




…もしかして、ナミとの濃厚なそれも近いのか…?

まだ今回はフレンチ気味。
暫くはナミビビ、一歩後ろでモネさんがあーだこーだ。が続く感じですかね。+他の子達やらカイドウさんやらなにやらのお話も書きつつ。では。
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