燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第258話

「俺はな。海軍で数々の武具を扱わされた。槍、薙刀、銃や弓…そして、刀剣などなど。特に刀剣はそのあと…ワノ国(ある場所)で磨き上げられた。」

 

「何言ってやがる…?」

 

「…ハハッ。…これから血を流す同士だ。修行とはいえ…な。五体四肢が海賊を捕らえ、殺す為に育て上げられた。まぁ、自ら望んだ道だが。」

 

その時だった。

 

ゾロの頬を薄く何かが切る。ゾロもそれの正体がわかっていなかった。

 

「…チッ。あれかッ!!」

 

「俺の刀は生きている。」

 

バンドラは一切動いていない。

ゾロは刀を咥え、ニヤリと笑い、走り出す。不規則な動きに対し、伸び縮みを繰り返す狂骨。

 

「おいおい…能力は使わねえんじゃあねえのかよッ!!」

 

「俺は使ってねえよ。それに狂骨は変幻自在だ。コイツが望めば、何処までも伸びる。つまり、狂骨は狂骨自身の意思で能力を使ってんだよ。」

 

「チッ!!」

 

目の前から飛んでくる刃。

 

ゾロはそれを真っ向から、罰字に構え、刃を滑らし進む。火花が散るが、それでも二人の距離は着々と狭まっていった。

 

「…へぇ。伸び縮みに関してはプロってことかな?」

 

「二刀流ッ!!『弍斬り(にぎり) 登楼(とうろう)』ッ!!」

 

逆手持ちの刃がバンドラに向かって飛ぶ。

 

狂骨はまだ縮んでいる最中だ。

 

しかし、ゾロが感じたのは肉を切る感覚ではなかった。

 

「言ったろ?変幻自在…だって。」

 

「…ッ!!」

 

ゾロの刃が、伸び湾曲した狂骨の峰に受け止められたのである。

 

「なんだよッ!?あれッ!!」

 

「…ふむ。ロロノアに天帝の刀が巻き付いている。これはまた…奇妙な…。」

 

ペローナは目を点にし、ミホークは冷静に分析していた。

 

「ぐっ!?」

 

「…そして、こんなことだってできる。近く寄りすぎたり、己の力を過信している奴には効く。」

 

狂骨に身体を巻き上げられ、そのまま上空へと投げ捨てられるゾロ。

 

空中では足の踏み場が無く、ゾロは狂骨の刃が元に戻ったのを確認するのみ。即座にバンドラが浮かび上がったのを見て、いやに冷静な脳で追撃に対応する。

 

上空から打ち下ろされる狂骨の刀身をゾロは二刀で受け止めた。そのまま二人は地面に落ちる。

 

ゾロもバンドラも砂塵の中から後ろへ跳び、回避。

 

「…例え、これが訓練でも…俺はお前に負けるわけにはいかねえんだよ。勝つ気で行くぜ…!!」

 

「…無謀か、野望か、執念か。」

 

「…いや、約束だッ!!三刀流ッ!!」

 

地面を蹴り、バンドラの前へと跳ぶ。

 

それは先程とは比べ物にもならない速度。ゾロの腕の筋肉が隆起し、血管が浮き出る。

 

「『虎狩り(とらがり)』ッ!!」

 

「『灼骨・赫月(あかつき)』」

 

ゾロは二刀の刀を背後へと回し、反動を使い大きくバンドラへと振り下ろす。

 

それに対し、狂骨の刀身が赤く燃え、その二刀の刃を熱気の刀身が受け止めた。かち合い、爆発する刀と刀。

 

ゾロもバンドラも受け身を取り、爆炎から現れる。

 

「ヒヤハハハッ!!あったまってきたろ?」

 

「…チッ。手加減しやがって。」

 

ゾロは口からぷっと血混じりの唾液を吐く。所々に煤がつき、切り傷や打撲傷のあるゾロに対し、バンドラは五体満足。誰が見てもどちらが劣勢か、わかっていた。

 

「俺が本気を出せば、テメェは五体満足じゃなくなる。そうなれば、ナミやロビンだって泣いちまうだろ。片腕の友人はいるが、何も俺が奪わないでもいい。」

 

「ケッ…。テメェの女の為か。」

 

「何が悪い。俺にはそれしかねえんだよ。…俺にとって仲間は宝だ。女は宝だ。アイツらだって俺を信じて愛してくれる。だったら、相応に愛してやるのが筋ってもんだろ?」

 

そう言って二人はニヤリと笑い合った。

 

ゾロだって仲間のために強くなりたい。それがナミやロビンだけでは無く、ルフィやサンジを含めたみんなのために。亡き友人との約束のために。そして、約束や野望のために。日々、刀を振るっているのだ。

 

「…恨んでるか?うちの船長を。テメェの女、取っちまって。」

 

「なぁに。着いていったのは向こうだ。アイツのどうしようもないカリスマに魅入られたんだよ。王の格…海賊王の格がある。俺はアイツを最後まで応援するぜ?…もちろん、立ち会わなきゃいけねえ時は遠慮なく拳を振るうが…なッ!!」

 

直後、横薙ぎの一撃がゾロに向かって飛ぶ。

 

それをゾロは刃を縦にして、受け止めた。カンッ…という金属音と共に火花が散る。

 

鍔迫り合いへと発展し、ゾロの額から汗玉が垂れる。

 

「へぇ…。うちの船長を評価してくれてんだな…!!」

 

「あぁ。…ガキくせえが…なッ!!」

 

「ッ!?」

 

その時だった。

押さえていたゾロの身体が大きく後ろへ吹き飛んだ。ゾロは驚いていた。ゾロとバンドラでは身体のシルエットの大きさが違う。なんなら、ゾロの方が筋骨隆々でパワーがありそうであった。

 

ゾロは咄嗟に受け身を取り、地面に立つ。前を見れば、一気に間合いを詰めるバンドラ。

 

ゾロの胸部を狂骨の鋒が削いだ。

 

「ぐっ!!離れ…ろッ!!」

 

「おっと。」

 

ゾロは手に持った二刀を振るい、バンドラとの距離を開ける。バンドラは後ろに跳んで回避すると共に、前へと苦無を飛ばした。それをゾロは叩き落とし、バンドラの方へと地面を蹴って攻める。

 

「一刀流居 『獅子歌歌(ししそんそん)』ッ!!」

 

「速くなったなぁッ!!だが、読めるッ!!」

 

強烈なゾロの居合抜刀剣、それをバンドラが前へと狂骨を振るい、かちあった。そのままバンドラが蹴りをゾロの腹部に当てようとする。

 

「二度も同じ手が通じるかよッ!!」

 

「…だろうなぁ。」

 

ゾロは自らバンドラとの距離を離し、また三刀流へと戻るが、直後首の皮一枚を狂骨が伸び、切り裂いた。

 

「…テメェ、まだ何か隠してやがるな…。能力だけじゃなく…。」

 

「一芸だけで生きられるほどこの先の海は甘くない。まぁ、お前みたいな奴は変な教養を入れるよりも刀一本で生きた方がそれっぽいと思うがな。」

 

そう言ってバンドラは刃の長さが戻った狂骨をニヤリと笑いながら構えていた。

 

「おいおい。ロロノアのやつ、ボロボロじゃねえか。」

 

「ふむ。天帝のやつは相手の土壌で戦うが、あの身体の中に何を隠してるか分からない。無論、赤髪や百獣など実力者には効かないだろうが、それを効かないで済まさないのが天帝だ。今のロロノアでは避けることすら難しいだろう。」

 

次の刹那、ゾロの胸を縦薙に切り裂く狂骨の刃。修行ということとバンドラが手加減していなければ、何度もゾロは死んでいただろう。

 

今のゾロとバンドラにはそれほどの差があった。

 

決して、ゾロが弱いわけではない。ゾロはなおも執念でバンドラの太刀筋を交わす。

 

「…うぉぉぉぉッ!!」

 

雄叫びを上げ、前へと突進するゾロ。その構えはかつてミホークに一撃ののちに鎮められた奥義『三千世界』だった。

 

その気迫にバンドラの顔から初めて笑みが消えた。

 

「気合い十分。最大応麟『刃骨・二式蒼月』ッ!!」

 

紫の電撃を纏った刀身がゾロを射抜く。

 

それは瞬きをするたった一瞬で勝負は決した。狂骨をしまうバンドラの背後でゾロはばたりと倒れた。

 

「…これでよかったのか。ミホーク。」

 

「…ふむ。手加減しすぎだぞ。天帝。もう少し現実を教えてもよかった。」

 

「ヒヤハハハ。…お前の楽しみを奪うわけにはいかない。それに本気を出すのはもう少し後だ。」

 

バンドラはそう言うと倒れるゾロの身体を担いでシッケアール城跡へと入っていった。

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