燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第261話

「…おいおい。どんぱちやる気はねえよ。」

 

青キジ…もとい、クザンは息を吐いて、その場に座った。バンドラとモネはその言葉に刀を納める。信じたわけではない。ただここでやるにはお互いにリスキーなのである。

 

「…その足、年甲斐もなくヤンチャでもしたか?」

 

…あの戦争以来、バンドラが久々に見たクザンの姿は痛々しいものだった。左脚の膝から下が無かったのだ。

 

「んあ?あぁ。これか。…まぁ、色々あってな。そこは聞かないでくれ。」

 

「…そうか。…いつから着けてた。」

 

「着けてねえ…って言ったら嘘になるな。この島に立ち寄る前に…だ。自転車漕いでる時によ。見たことある犬頭の船があると思ったら、テメェだった。」

 

…まるでタバコの煙のように、冷気を口から吐き出すクザン。バンドラとモネは警戒こそしていたものの、少しだけ殺気を殺した。

 

「…しかし、テメェも凄えことしちゃって。アラバスタの王女様誘拐。海軍も…なんなら、サイファーポールも躍起になってるよ。アラバスタ側はアンタを隠すもんだから、捜査が難航してる。…しかも、サカズキはエレジアに総攻撃を決めたそうだ。」

 

淡々と紡がれるその言葉にモネは驚きの表情を浮かべた。バンドラに至ってはギロリと前を睨み、ただ一言…『知ってる』と返す。

 

「…世経か。」

 

「いくらか積めば調べてくれる。サイファーポールがビビに勘付いたのも、それのせいだろ。…全く、モルガンズの野郎は…。めんどくせえ。」

 

…バンドラと世経の繋がりはビッグマムに起因するものである。年に一度のお茶会。それにバンドラが出席した際、モルガンズに質問攻めにあった。そこからの繋がりで時には情報を操作してもらったり、調べてもらったり。モルガンズには度々、多額の金や情報が舞い込んでくる。そうして、世経とは懇ろではあるものの、完全に信用していない…利用し利用されるようなそんな関係が続いていた。

 

「で、俺に近づいたのはなんなんだ?…青キジさんよ。」

 

…グダグダと言っても何も変わらない。そう考えたバンドラはモネの手をぎゅっと握りながら、クザンに静かに視線を向ける。

 

「そうさなぁ…。お前、俺のこと…匿っちゃくれねえか?」

 

「え?」「はぁ?」

 

バンドラとモネの開いた口が塞がらなかった。耳を疑った。…この男は何を言っているのだと。クザンは地面に手を組み枕にして、寝転んだ。

 

「…お前、頂上戦争の時にぶつかったのを覚えてねえのか。」

 

「覚えてねえわけねえだろ。…あー、そうか。いるんだったな。火拳のエースが。」

 

…クザンはそう言うとサングラスを上に上げ、バンドラの方へ目を向けた。エースが生きていることを知らないのは、気絶しビブルカードを無くしたルフィのみ。バンドラとしてもエースのことは計らないといけない。…それと…。

 

「お前にとってはニコ・ロビンのことも…か?バンドラ。」

 

「…。」

 

「自分で捨てたのに…か?」

 

その言葉にバンドラの肩がぴくりと動く。

ギロリと向けられた視線にクザンは少し笑みを浮かべた。

 

「…良い女になっていた。昔、お前らに会った時はやけにお前に懐いていたと思っていたが…。」

 

「…アイツはアイツの夢を叶えることを優先した…。それだけだ。」

 

「それだけか。男女の仲に口出すわけじゃねえが…お前も彼女のことは好きだったろう。好きな女の夢も叶えられねえ程の…そんな野郎だっただけじゃねえのか。」

 

クザンは低くそう言い放つ。

モネは心配そうにバンドラを見ていた。バンドラの顔色は変わらなかったが、モネの手を握っていた手の力が少し強くなった。

 

「お前がいくら興味が無くても、お前ほどの戦力があればエニエスロビーにニコ・ロビンが輸送されるなんて事態は起こらなかった。お前ならサイファーポールを返り討ちにできただろう。…ニコ・ロビンとしてもお前の近くにいた方が良かった。クロコダイルなんかにお前が売ったんじゃないのか?」

 

「…。」

 

クザンは悉くバンドラの痛いところを突いていた。

正しくは売ったわけではない。バンドラはロビンの夢を叶える選択肢を与え、ロビンがクロコダイルについて行く道を選んだ。…それだけだ。どちらも悪いわけではない。

 

「…ロビンは良い仲間を手に入れた。俺はロビンにとって彼女が良い判断をしたと思っている。」

 

「だから、ニコ・ロビンは捨てちゃいない…と?」

 

「…交流は続いている。カイドウやリンリン、ティーチのように俺はアイツらを壊滅させ、殺す気はさらさらない。勿論、今のうちは…だがな。ロビンが助けを求めた時にゃ、俺だって立場かなぐり捨てて助けてやるつもりだ。」

 

バンドラの目の中が小さくなったようにクザンには見えた。

 

「テメェに心配される筋合いは何もねえ。手ェ出した女にゃ俺は責任を取る。ロビンとはちゃんとした関係を続けられなかった。だから、例えどこにいようとアイツは俺の守るべき存在だ。…この話は終わらそう。」

 

「…やけに饒舌じゃねえの。何人も身体の関係持ってんだろ?ニコ・ロビンは知ってんのかい。」

 

「…知ってるよ。だが、優劣なんざつけねえ。俺にとっては…みんな大事だ。どこに居ようと誰であろうと…!!」

 

「…答えになってねえなぁ。まぁ、あんだけ良い嬢ちゃんが周りにいやぁ手ェ出したくなるのは仕方ねえ。…まぁ、この話はこれで終わりだ。」

 

そう言い終わるとクザンがバンドラへ冷たい視線を向けた。

 

「んで、俺の提案は飲めねえってか。」

 

やる気はないというクザンの言葉はまるで嘘のようにバンドラには感じた。夜闇の空間に白い冷気が漂う。

 

「…お前は今や、海賊、海軍、世界政府と誰からも命を狙われる身。戦力を拡大しておくのは得策だと思うがね。」

 

「…だからと言って一度はぶつかったお前を仲間に加えるわけにはいかねえよ。エースも俺も親父をあの戦争で失っている。エレジアが戦場になり、内輪揉めが起こっちまえば人死が出る。そうなればいち早く死ぬのは…お前だぞ。」

 

バンドラの目線もキツくなる。

クザンの背筋に冷たいものが触れた感覚がした。じんわりとクザンの頬を伝い、汗玉が流れる。

 

「…まぁ、それができちまうんだからな。大将3人がまともに戦っても苦戦する相手。めんどくせえなぁ。」

 

「…流石に一緒には連れて行けねえ。」

 

「ふん。そうか。なら、一応こいつを渡しておこうか。」

 

クザンがバンドラに渡したのは命の紙(ビブルカード)だった。もはや、バンドラと手を組む気満々らしい。バンドラも一応はとそれを受け取る。

 

「…俺はお前を仲間に加える気はねえ。」

 

「…ふっ。そうかい。」

 

それだけ言うとクザンは夜の海へと自転車を漕いでいった。二人の殺気にバンドラの背へ身を隠していたモネがひょっこりと姿を表す。バンドラは命の紙(ビブルカード)を懐へ入れるとモネに向かって微笑んだ。

 

「帰ろうか。ナミとビビに怒られる。」

 

「え、ええ。そうね。」

 

そう言って二人は再び闇の少し深くなった街の中へと入って行った。




次回はナミさんか、ビビで一話書きます。まぁ、どっちかとはこの期間にって感じかな。他の話は考えます。ヤマトサイド、カイドウサイドも何処かで書きます。近々、テゾーロの話は書きます。後、ハンコックとかかな。

では。
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