燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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※短めです。


第272話

「…。」

 

…オハラへ行ったのはバンドラの昔馴染みの女に呼ばれたからだった。ルエノルーヴ号を穏やかな風で動かしながら、いつものように狂骨をメンテナンスしていた。

 

「…サイファーポール、海軍、海賊…厄介なことになったか。…四皇になったせいで狙われる大義名分を与えてしまった…気がする。」

 

ポンポンと狂骨の刃を叩きながら、1人苦笑いをするバンドラ。太陽光に映った狂骨は以前にも増して白銀の光を放っていた。

 

「…そろそろルフィのところに顔を出してやるか…。殺す気はねえが、手合わせくらいはしてやっても良いだろう。」

 

ふぅ…と息を吐きながら、バンドラは狂骨を鞘に収めた。

 

…今回のことはナミ達には関係ないと誰も連れてきてはいない。ただどうも…心配なのだ。

 

「…ん?」

 

その予感が的中したのか、ルエノルーヴ号の周りにたくさんの船が集まってきた。…その船は明らかに商船なんてもんじゃない。

 

「ヒャッハーッ!!天帝の野郎が1人でいるぜ!!殺しのできねえ海賊!!最弱の皇帝だぁ!!俺たちでもやれるッ!!」

 

「…数だけ集めりゃ殺せると知ったバカか。」

 

その数は確かに多い。

あの首領・クリークの艦隊と同じ規模と言って良い。バンドラは確かに手応えがなかったと思い、ニヤリと笑う。手入れを終えた狂骨を握り、ゆっくりと立ち上がる。

 

ルエノルーヴ号を取り囲む50余の艦隊を見やり、笑うバンドラ。

 

「…最弱…ねぇ。そりゃあ、かちあってみてから…試してみな。」

 

楽しむ為に敢えて覇王色の覇気を出さない。艦隊の中で最も大きな船へそう言うバンドラ。そのバンドラに対して、ニヤニヤと笑うガタイの良い男がいた。

 

「ヒャッハーッ!!俺は首切りジョーッ!!懸賞金は10億だァァッ!!お前を殺して、俺がテメェの女で楽しんでやるよぉッ!!」

 

「…ほぉ。」

 

バンドラは狂骨を鞘から引き抜く。

ジョーは歯を見せてニタニタと笑いながら三日月型に反るサーベルを引き抜いた。

 

「いくらテメェでもこの数だァ…!!テメェにゃ勝てねえよぉ!!」

 

「…口ではなんとでも言える。さぁ…かかって…ん?」

 

その時だった。

ギザギザとした歯を見せるジョーを他所にバンドラは船内へと戻っていく。部屋へと入ったバンドラの耳に聞こえたのは…電伝虫の鳴る音。バンドラはその受話器を取り、耳に当てる。

 

「…どうし…『バンドラさんッ!!大変ッ!!ビビが…倒れたッ!!』…なに?」

 

慌てるナミの声。

あの数の船団に囲まれても冷静だったバンドラの顔に焦りが見えはじめた。受話器を握る手に力が入る。…外では無数に撃たれる砲弾に海が荒れていた。

 

『ビビが急に倒れて…熱もあるわッ!!でも…薬なんて…!!』

 

「わかった…。船内に薬ならある。…少し待っててくれ。急いで行く。」

 

バンドラはそう言うと一気に室内から飛び出す。バンドラのその姿を見るとジョーの口が三日月型に歪み、醜悪な笑みを浮かべていた。

 

「ヒャッハーッ!!やっと出てきたなぁ!?ビビって出て来ないかと思ったぜ?」

 

「…すまねえが、遊んでる暇はねえ…。本気で行く…!!」

 

バンドラはそう言うと狂骨の鞘を甲板に捨て、狂骨を握る。直後、狂骨の刀身に赤黒い稲妻がまとわりつき、ルエノルーヴ号を中心に円形に波が広がった。

 

10万を超える船員の9割ほどが気絶した。

 

「そこを退け。『神討(しんうち)』…!!」

 

そう言って横一閃に狂骨を振るうバンドラ。

 

…直後…しんと静まる大海。…何も起こらなかったのだ。

 

それを見て、冷や汗をかいていたジョーがニヤリと笑う。

 

「はっ…ヒャッハーッ!!何をしたかったんだ?えぇ?俺の首切り海賊団は最強だッ!!あのカイドウも、ビッグマムも赤髪でさえも俺たちで倒してやるッ!!俺たちは最強なんだッ!!」

 

大きく声を上げ笑うジョー。その隣にいた2人もくすくすと笑っていた。立っているのはジョー含めて3人。かなりの達人であると思われる。バンドラは静かに刀を鞘に収めるとギロリと前を睨む。

 

「…警告は…したからな。」

 

「はぁ!?何を言って………ッ!?」

 

…そこでジョーは気づいた。

50もあった自身の戦艦が見当たらないと言うことに。

 

先に言うが、一個一個がルエノルーヴ号とほぼ同じ大きさである。バスターコールの際の海軍軍艦とも殆ど遜色ない大きさである。それが島一つない大海で急に消えたのだ。

 

瓦礫とかして、海に浮かんでいるわけでもない。

 

ジョーの顔から笑みが消え、恐怖からか顔が青ざめていく。

 

その視線は…自身の立っている一隻の船へ。

 

「な…なななっ!?」

 

…そこには自身以外誰もおらず、立っていた場所に戦艦など無かった。ただの木片だったのだ。いや、筏や柱なんて大きさじゃない。本当に木片なのである。小さな木片に知らず知らずのうちに乗っているだけだった。バンドラはそれを他所にルエノルーヴ号を動かす。

 

「…お…俺の…船団が…。」

 

完全に心が折られていた。

50余ある船団は先ほどの一撃で木片一つ残らないほどに吹き飛ばされ、自身が立っていた船は自身がいるところ以外を器用に抉り取り、消しとばしていたのである。

 

「…がっ…。」

 

直後、ジョーの胸が袈裟に裂け、血が噴水の如く吹き出した。

 

…一体、何が起こったのかわからない。気がつけば、自身の体は動かず、息も絶え絶えだった。

 

途絶える意識の最中、ジョーの頭にある一言がよぎる。

 

…何が最弱の皇帝かと。

振るった斬撃の規模も、いつ軍艦が消えていったのかも、斬撃が飛んできたのかすらもわからなかった。

 

…斬られたことすらわからなかった。功名心に目が眩んだのだろう。絶対に勝てない戦いにジョーは口から血を吐きながら、力無いように笑った。そのままジョーは海の中へと消えていった。

 

ルエノルーヴ号は先ほどよりも早くウェザリアへと向かう。

 

「…待ってろ。ビビ。」

 

そのバンドラの顔には汗玉がたらりと伝っていた。

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