燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第289話

「王子様に助けを求めるかァ?血塗られたその手でよぅ!!」

 

笑いながら、ムーランの切先がカリファの喉元へと伸びる。

 

しかし、カリファはそれを銃の先で受け止めた。と同時にムーランの首根っこを掴み、後ろへと投げる。

 

ムーランは地面に手をつき、ぐるんと回転し、勢いを殺しながら立ち上がると自身の隣にいたレベッカへ腰から取り出した手榴弾を投げた。

 

「ッ!?」

 

「さぁ!!綺麗な花火の時間だぜッ!!」

 

レベッカの顔が青ざめる。…その時、レベッカの頭に浮かんだのはドレスローザで待つ母親の顔。

 

レベッカは決意を決め、その手榴弾を剣で弾き返した。

 

しかし、それはムーランも想定済み。長い足で蹴り上げると、家の天井を破壊し、爆発した。上から瓦礫の雨が三人を襲う。

 

3人はその場から後ろへと跳び、回避。カリファとレベッカは少し汚れていた。

 

「へぇ。わりかしやるじゃねえの。」

 

ムーランは立ち上がる二人に向かって、壊れた円卓の板をぶん投げる。

 

それはレベッカによって真っ二つに切り裂かれた。その板を足場にして次はカリファが距離を詰める。

 

「『荊棘鞭(イバラムチ)』ッ!!」

 

「『剃』」

 

しなり、前へと飛ぶ棘だらけの鞭は誰もいない地面を弾くのみ。とてつもない勢いでカリファの右方向へとムーランは迫り来る。その手には銀色に輝く刃幅の広いナイフが持たれていた。

 

「念には念を…だなぁッ!!」

 

「ぐっ!!」

 

カリファは咄嗟に左へと跳び回避する。しかし…銀線はカリファの額を僅かに抉り、右目は血によって染まってしまった。右の視界が一瞬、切れる。

 

カリファはまだ大丈夫だと思っていた。このぐらいなら見聞色で補えると。しかし…。

 

「…居ないッ!?」

 

横へと回避した時点でムーランの姿はカリファには見えなかった。直後、カリファの周りを白煙が包む。…煙筒だった。

 

「ぐっ!?」

 

咄嗟の判断で目を隠すカリファ。

直後、バンッという音と共に右足に痛みが走った。顔を顰め、物陰に隠れるカリファ。レベッカはと周りを見渡す。

 

「…んだ?次はアンタか?」

 

白煙が無くなれば、剣を両手で構えるレベッカが片手にサバイバルナイフ、もう片手に銃を持つムーランと対峙していた。

 

「私だって…戦えるッ!!」

 

「…可哀想に。誰かに希望を持たされたか。残忍な奴がいるもんだッ…ねェェェッ!!」

 

面と向かって銃を放つムーラン。

それはレベッカの頬を掠めるが、レベッカは怯えずに前へと走り込む。

 

「おいおいッ!!娘さんよぉッ!!それじゃあ死ににきてんのと一緒だぜッ!!」

 

頬、腕、太ももを銃弾が掠める。しかし、バンドラとの修行の成果か、芯はずっと外していた。

 

ムーランとの距離を詰めるレベッカ。

 

「私が負ければ…お母さんは死ぬッ!!」

 

振り下ろす切先を横に跳んで避けるムーラン。しかし、まるで遊んでいるかのようだった。そのままレベッカの顔へ銃を投げるムーラン。

 

レベッカがそれを剣で弾く。

 

「その前にテメェが死ぬんだろうがよッ!!」

 

…その一瞬をムーランは見逃さない。

長い足で斬刃を飛ばす…嵐脚を放った。レベッカの髪先がそれによって散る。レベッカの肩から血が吹き出した。

 

「レベッカッ!!」

 

「鬱陶しいッ!!死ねッ!!」

 

ムーランは懐から手榴弾を取り出す。次は爆破寸前だった。レベッカの眼前でそれは宙を舞う。

 

「ハァァァッ!!」

 

レベッカはそれすらも剣の腹で弾き、ムーランへと返す。それはムーランの前で爆発し、黒煙を撒き散らかした。

 

「チッ!!悪あがきかッ!?クソッタレッ!!」

 

「いいえッ!!」

 

…黒煙が目眩しになり、ムーランへと伸びる黒鞭は気づかれなかった。

 

「チッ!!」

 

ムーランの右手を鞭が引っ叩く。それによってレベッカの進行を止める武器は無くなった。

 

好機…。レベッカはそのまま地面を足で蹴り、前へと進む。

 

上から振り下ろされた切先がムーランを捉える。

 

「チッ!!ガキがァッ!!」

 

ムーランはそれを後ろに跳んで回避。懐から出した折りたたみ式のナイフをレベッカへとぶん投げる。

 

レベッカはそれを横にズレて回避。直後、レベッカの剣が燕返しの勢いで上へと切り返してくる。

 

ムーランはそれに合わせてもう一本の折りたたみ式ナイフで受け止めた。刃と刃の触れ合うことによって火花が散る。

 

「貴方の負けよッ!!ムーランッ!!」

 

レベッカの肩越しから凶弾がムーランに向かって飛ぶ。その黒鉄の弾丸はムーランの折りたたみ式ナイフの方の肩に向かって飛んでいた。

 

ムーランはそれを武装色でガード。多少、血は流れるものの、ムーランの肩を貫通するほどの威力ではない。

 

「悪あがきしやがってッ!!カリファァァッ!!」

 

「ッ!?」

 

次の瞬間、レベッカの剣がいなされた。力に逆らわないようにナイフに滑らせ、その方向にあったムーランは横に避けることで剣をいなしたのである。

 

直後、もう一方の手に何本目かのナイフを手に取ったムーランはレベッカに横薙ぎの斬撃をかました。

 

「ぐっ!?」

 

「レベッカッ!!」

 

その一撃は浅くもレベッカの腹部を喰む結果となった。

 

痛みに体制が崩れたレベッカの腕を蹴るムーラン。

 

それによってレベッカの剣は宙を舞い、地面へとカランという虚しい音を奏で落ちた。

 

「面倒かけやがって…。こんなガキにやられたら、ルッチの野郎にまた上司ヅラされるじゃねえか。」

 

完全に攻撃のできないレベッカを追い詰めるムーラン。弛緩剤の塗られた折りたたみ式ナイフを逆手持ちにし、レベッカの頸動脈を狙う。

 

「死ね。」

 

しかし、レベッカもただではやられない。

 

「…ッ!!」

 

「何ッ!?」

 

レベッカは身体を屈め、ムーランへと体当たりをかました。普通ならそんな攻撃は喰らわないムーランだったが、予想外の一撃に攻撃の手が緩む。さらにレベッカの拳がムーランの鳩尾を捉えていた。

 

「ゴフッ!?」

 

一撃はとても軽い。しかし、レベッカはやってのけた。拳に覇気を乗せ、それを拳から射出したのである。発勁の勢いで。

 

ムーランは予想外の痛みに後ろへと吹き飛んだ。

 

レベッカも無茶苦茶な力の使い方をしたせいで右腕にダメージが入り、右腕から血が滴り落ちていた。

 

カリファが即座にレベッカへと駆け寄る。

 

「大丈夫!?レベッカッ!!」

 

カリファにレベッカは右腕を押さえて微笑んだ。謂わば、彼女の右手は強固な岩壁を殴りつけたに等しいほどのダメージを受けていた。

 

「カリファさん、大丈夫っ。…まだ戦える。」

 

「もう貴女は天帝を呼んできなさいッ!!…ここは私一人で抑え付けるわッ!!」

 

誰を抑え付ける…って?

 

…その瞬間、辺りを殺気が包み込んだ。慌てた様子のカリファだったが、前を睨みながら、鞭をしならせる。

 

「貴女は早く天帝を呼んできなさいッ!!」

 

「で、でも…!!」

 

「早くッ!!」

 

異様なまでの焦りようのカリファにレベッカは即座に立ち上がり、走り出した。しかし、その彼女の目の前を遮るように…三つの斬撃が飛んだのである。

 

「…本当ならよォ…使う気にならなかったぜ…。テメェらが可哀想だからなぁ…?でもよ。仕方ねえよなぁ?」

 

…そう。ムーランの姿が変化していたのである。

白い体毛に銀とも水色とも取れる爪、筋骨隆々の身体に剥き出しの牙。手足には枷と引きちぎられた鎖があった。

 

「さぁ、セカンドステージだァ…!!逃げれると思うなよ?この力は絶対だ。ルッチの野郎にも吠え面をかかせてやるよ…!!テメェら二人とも八つ裂きにした後でなァァッ!!」

 

けたたましい咆哮に地面が揺れる。

 

カリファは即座に周りに泡を展開。その泡が姿の変わったムーランの足を拘束する。…否、わざと拘束されたのだ。

 

カリファは即座に近づき、踵落としをムーランへとかます。

 

しかし、ムーランの硬い皮膚を穿つことなく、ヒールは首筋で止まった。

 

「ッ!?」

 

「『狼拳』」

 

ムーランの腕がカリファの腹へとめり込む。

カリファは口から血の混じった空気を出すと後ろの氷塊へと吹き飛び、当たった。

 

「カリファさんッ!?」

 

「ハッハッハッ!!これなら、ルッチの野郎も殺せるッ!!これがイヌイヌの実モデルフェンリルの力だァァッ!!」

 

そう叫び、地面を蹴るムーラン。その前方には…レベッカが居た。




いつも以上に無茶苦茶だったかも。
ムーランは、小物です。ルッチという男を下すことしか考えてません。しかし、悪魔の実は強いです。頭もキレはします。カリファほどではありませんが。では次回。

スッ…

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