燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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※今回バンドラ出てきません。


第295話

…ドレスローザ、玉座の前。

玉座に腰をかけるのは、ピンクの羽根のコートを羽織る男…ドンキホーテ・ドフラミンゴだった。その前…ハートの席に座り、ニタニタと笑っているのは『人形使い』ハロウズ・マグロディズマ。

 

ドフラミンゴはマグロディズマを見て、額に青筋を立てていた。

 

「…勝手な行動はするな…と言ったはずだぞ。」

 

「ハッハッハッ。…これは失礼。ただ…この女は僕の所有物でしょう?Mr.ドフラミンゴ。」

 

そう言い、足元をぐりぐりと見せつけるように動かすマグロディズマ。そこには四つん這いになった…侍女ヴィオラの姿があった。ヴィオラの顔は涙の跡があり、髪の毛は乱れ、身体はボロボロだった。

 

「ショーの邪魔をする無粋な客には哀れな末路を。僕は…全てを手に入れたいのです。天竜人の席っ!!最強の悪魔の実っ!!…そして、海賊王の宝。…この世の全ては僕達で手に入れましょう。」

 

狡猾そうにそう言うマグロディズマ。

ドフラミンゴはマグロディズマのその笑みが心底気に食わなかった。

 

ドフラミンゴと手を組んだあの日。

マグロディズマが協定として持ってきたのは天帝への復讐の権利だった。順風満帆だとも言えた海賊人生はまさに嵐のような男に消された。その日は手を出さず、ただ手を組む相手として招待しただけだった。

 

「…俺はまだ許しちゃいねえ。テメェがしでかしたことを。」

 

「…それでも組んでくれてありがとう。Mr.ドフラミンゴ。」

 

その瞬間、マグロディズマの声が低くなった。

ドフラミンゴはなおも気押されることなどなく、ただマグロディズマの目を見る。詐欺師のような…その深淵は見る人によっては信仰を、見る人によっては恐怖を与えるものだろう。

 

「そういえば、ソルトの奴が遊びに行くと魚人島へ。」

 

「…ソルト?…あぁ。ホビホビの実のガキか。」

 

「ふふっ。ガキねえ。…あれでも僕よりも年上のジジイですけれど。残忍かつ狡猾。まるでこの世の害悪を形作った完全悪。末恐ろしいですね。」

 

マグロディズマはそう言い、キセルを蒸す。

その手には書類が持たれており、ぺらぺらとめくりながら何かを考えていた。そこには天帝海賊団の基本情報が載っていた。

 

「バンドラ、35歳。天帝海賊団の船長にして40億の大頭。赤髪、百獣のカイドウ、ビッグマム、今は亡き白ひげと…更には…白ひげの船に乗っていた数ヶ月間に海賊王ゴール・D・ロジャー、ワノ国の侍光月おでんとも出会っている。…海賊というよりも自警団に近い異色の海賊。」

 

「…そろそろヴァイオレットを離してやったらどうだ。」

 

「ファミリーには優しいんですねぇ。…家族殺しの元天竜人のくせに。」

 

「…ここで死ぬか?人形使い。」

 

ピキピキと青筋を立ててマグロディズマを睨むドフラミンゴ。マグロディズマはそれに合わせ、ニヤリと笑い、足を退かし、ヴィオラを蹴る。ヴィオラはそのまま床に伏して、倒れた。

 

「君も思ったでしょう?…神に人の法律はない。女を陵辱し、人をゴミのように捨てたとして、裁く法はこの世にない。自由とはまさにそのことではないかと。だから、この世の責苦に耐えられず、父親を殺した。」

 

「責苦に耐えられなかった…?少し違うな。俺は俺を見捨てた全てを見返すのさ。上でふんぞり返ってる愚図どもも、俺たちに石を投げつけた腰抜けどもも。」

 

ドフラミンゴはそう言い、フッフッフッと笑っていた。

 

「いずれ世界はひっくり返る。重要なのはその時に誰が笑っていられるかだ。」

 

「…流石はジョーカー。…これで僕も確信がつきましたよ。この世に王は…一人でいい。」

 

マグロディズマはそう言うとキセルを上へとぶん投げる。すると、キセルはまるで誰かに切り裂かれたかのようにボロボロに切り裂かれ、空中で風に飛ばされた。

 

「僕は探究者。悪の道も正義の道も見てみたい。期待してますよ。Mr.ドフラミンゴ。」

 

そう言ってマグロディズマはニヤリと笑い、王宮を後にし、外へと出る。陽光に照らされる赤色の髪は静かに揺れ、ドレスローザという温暖な気候であるのにも関わらず、暑さなど関係ないと青色のジャケットを着ていた。

 

そのポケットから一枚の写真を取り出す。

そこには…一人の少女と若き日のマグロディズマの姿があった。

 

「…ミルフィー。必ず…兄さんはやり遂げるからな。」

 

飄々とした態度が一変。

声はわずかにトーンが落ち、低くなっていた。真剣そのもののその顔で写真を見るマグロディズマは何処か、儚げに見えた。

 

「…さて、スカーレットさん。」

 

マグロディズマはドレスローザ王宮の地下へと向かい、地下牢へ入った。そこには手足を壁と錠に繋がれたらスカーレットの姿があった。スカーレットは見るもボロボロで、額からは血を流していた。

 

憎悪のこもった目でマグロディズマを睨むスカーレットにマグロディズマが返すは嘲笑だ。

 

「CP0は貴方の娘殺しに失敗したそうですよ。」

 

「…。」

 

「そろそろ自覚したらどうです?…リク王の政権はもうこの国にはない。今は王…ドフラミンゴにより統治されている。希望も救いもないことを。」

 

「…それを自覚してどうするの。」

 

その言葉にマグロディズマは怪しげに笑う。

三つ編みに束ねられた赤いさげはゆらゆらと揺れ、黄金の瞳はただスカーレットを映すのみだった。

 

「僕が嫌いだからですよ。希望、救いなんて。だから、ムカつくんですよ。…自身のしがらみすら知らずに、のうのうと幸せに生きる貴女たちや、あの男の存在を。」

 

その声は湿った地下牢に低く響いた。

先程までの飄々とした人を食う態度とは違い、嫌悪感たっぷりのその眼差しにスカーレットは心臓を掴まれたような感覚に陥った。

 

「…君もドフラミンゴもわかっちゃいない。王とは全てを維持する為に存在しているのではない。神とは崇拝されるためだけに存在するのではない。…何かを変える為に存在するのです。自身の勝手に踊らされていた人形共に勝手など許さず、その四肢を糸で絡め、そして…劇場で踊らせる。王は人形使いなのです。だからこそ、王は人の死に無関心でなければならない。」

 

淡々と紡がれるマグロディズマの言葉。

スカーレットには響かなかった。まるでマグロディズマが自身に言い聞かせているようにも見えたからである。直後、マグロディズマの身体から無数の糸が支えを失ったかのように不規則に周りに展開される。

 

そして、糸はスカーレットの服を貫通し、スカーレットの身体を硬い牢の鉄柱へと手繰り寄せた。衝撃にスカーレットの額が少し割れ、血が流れる。

 

「リク王はそれがわからなかった。何が戦わぬ王。…戦わなければ人は何も得られない。争わなければ、人は平和を語れない。…()()()()()()()()()()()()。そうでしょう?」

 

「…ッ…!?」

 

スカーレットの首にピアノ線ほどの細さの糸が絡みつく。ギュッと強めに縛られる首。空気を遮断され、圧迫に朦朧とする視界でマグロディズマを捉えるスカーレット。マグロディズマの顔はまるで能面のように冷ややかで、どこか儚げにも見えた。

 

「ならば、戦況をひっくり返すワザワザを手にするのは理想。…平和ボケしている天帝なんぞには不必要な存在だ。奴はただ、会った女を手篭めにするだけの雑物にすぎない。…貴女に一躍を買ってもらいましょう。…何も食べていない貴女を僕が使い、この世界から…平和ボケを消し、本物の平和を手にするのです。」

 

「がっ…ひゅっ…!?」

 

「…あぁ。苦しいですね。喋れないでしょう。だが、それで良い。首を絞められた人間が空気を求めるのは普通。力のない人間が力を求めるのは…普通なのです。」

 

そう言ってマグロディズマは高らかに笑った。




純粋悪でも良かったが…。
マグロディズマにも何かあるってことですわ。ね。

次回は魚人島。早々に事件です。では。

スッ…

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