ワノ国近海。
進み進んで、滝登り。小船が行くは荒れる海。見る先は鬼ヶ島。四皇になる若き百獣の王のいるところ。
「よぉッ!!カイドウッ!!来たぜェッ!!」
空へと轟く大声。
天にも登る青龍が、ギロリとバンドラを見つめる。
バンドラは歯を見せ、ニヤリと笑いながら、小船を止めて鬼ヶ島へ登る。すると青龍が姿を変え、曇った空からドンっと鬼のような男が落ちてきた。
「ウォロロロッ!!来たかッ!!バンドラッ!!」
ニィッと笑う鬼のような男。名をカイドウ。
金棒を振り上げ、地面へ落とす。豪雷のような激しい音と砂埃が辺りに立ち上る。
「俺がワノ国を治めてからは初か。こうして、戦うのは。」
「御託は良い。さっさとやるか。」
狂骨を鞘から抜き、一瞬にして距離を詰めるバンドラ。
刀を縦に振るうも、カイドウの金棒『八斎戒』の一撃に弾かれる。
「ウォロロロロッ!!鈍ってねえだろうなぁッ!!」
「鈍るかッ!!『
左手を天空にかざすバンドラ。
黒い竜巻が天へと登る。それをカイドウに向かい、投げる。
「ふんッ!!」
カイドウは金棒を思いっきり、回すことで砂塵と共に風を消した。途端、カイドウの金棒に電撃が纏う。大地を穿つ電流に、バンドラとカイドウはニヤリと笑った。
「『雷鳴八卦』ッ!!」
「『雷鳴』ッ!!」
雷を纏う刀身と雷を纏う金棒がぶつかり合う。
両者、一歩も引かず。大地に電流が走り、割れ、砂埃を上げる。
二人とも後ろへ飛び、間合いを上げる。するとカイドウの姿が一気に変わる。
「相変わらず、化け物じみてるなぁ。ウオウオの実幻獣種。」
「ウォロロロロッ!!テメェもだろうッ!!自然種の頂点のような実を食しやがって。」
「『武雷光』ッ!!」
飛ぶ斬撃に雷を乗せ、飛ばす。
巨龍の腹へぶち当たり、血を流させるも巨龍怯まず、口に極熱と極光の塊を溜める。
「『
「『
巨龍の放つ火炎。
竜巻はそれを巻き上げ、共に破壊する。カイドウは嬉しそうにニヤリと笑う。バンドラも同じく。二人ともこの戦いを楽しみに待っていたのだ。
「タフな野郎だな…ッ!!」
「ウォロロロロッ!!お互い様だッ!!『壊風』ッ!!」
カイドウはかまいたちのような風の衝撃波を放つ。
バンドラはそれを見聞色で見て、足で避ける。
「ヒヤハハッ!!『晴天・昇竜』ッ!!」
下から上へ。刀を振るうバンドラ。
飛ぶ斬撃は竜の姿を模し、青龍へ噛み付くようにぶつかる。青龍から鮮血が空へ飛ぶ。
しかし、青龍は効いてないと言わんばかりにニヤリと笑い、人の姿へと戻り、金棒を振り上げる。
「『雷鳴八卦』ッ!!」
「『雷鳴・神速』ッ!!」
更に速く、雷のように間合いに入るバンドラ。金棒を振るい、刀と干渉する。火花と電撃が散り、極光が二人を包んだ。
「ウォロロロロッ!!」
「ヒヤハハハッ!!」
鬼ヶ島屋敷内。戦いを終えた二人は、お互い五体満足で酒盛りをする。バンドラがカイドウに注ぎ、カイドウはバンドラに注ぐというカイドウという男を知る人物からすると異様な様子だった。
「カイドウさん。…その男は?」
「おぉー。キング。コイツはな。俺の喧嘩相手だ。」
火災のキングは外での出来事を全て見ていた。その上で聞いたのだ。カイドウに比べりゃまるで普通の男が、カイドウと戦って無傷だったのだ。全くと言って信用できない。
「そういや、ヤマトはどこだ?」
「ん?あぁ。自由にさせてやってる。…ただなぁ、奴は自分のことをおでんだの何だの言いやがって。聞き分けのないガキだ。」
「自分のガキだろう?」
「テメェのガキ好きには困ったもんだ。…ほら、やってきた。」
カイドウがそう言うとバンドラの目が何かに覆われた。バンドラの背中に柔らかな感触が伝わる。
「だ〜れだ♪」
「ヤマト。だいぶ成長したじゃねえか。」
「ハハッ。バンドラっ!!」
白髪の少女、ヤマトはバンドラの首に思いっきり抱きつく。バンドラの顔が徐々に真っ青にそまっていく。カイドウに近い怪力で首を絞められているのだ。苦しいに決まっている。
「おい、ヤマト。バンドラの野郎、死ぬぞ。」
「あっ、ごめんっ!!」
「ぼへっ…!!ハァ…ハァ…!!」
ヤマトは手を離し、びっくりしたように軽く口を開けた。バンドラは胸いっぱいに息を吸い、吐きを繰り返す。終始見ていたカイドウとキングは冷たい目で二人を見ていた。
「死ぬかと思った。」
「ごめんねっ!!」
慌てるヤマトにバンドラはニヤリと笑う。そんな
「ヤマト、父ちゃんの言うこと聞いてやれよ。」
「ボク、お父さんよりバンドラの方が好きだもん。優しいし。」
「それを父親の前で言うかね…。」
バンドラが頭を抱えてチラリと見ると、カイドウは…。
「ウォロロロォ…!!」
泣いていた。
カイドウはその時々で上戸が変わる。
「ウォロロロ〜ン。そんな言わなくても良いじゃねえかよぉ、ヤマトぉ…!!」
「ふんっ。おでんを殺したお父さんは許さないもん。」
「仕方なかったんだよぉ〜…!!ワノ国をオロチが統治するにゃ、あいつが邪魔だって言うからよぉ〜…!!」
ぷいっとそっぽを向くヤマト。
いくら最強生物と呼ばれた父、カイドウでも死人を生き返らせることは不可能。それは対等にやり合っているバンドラも同じだった。
「ねぇねぇ!!旅の話、聞かせてよっ!!ボクが海に出るときのお手本にしたいんだっ!!」
「…あれ、置いといて良いのか。」
「ウォロロロ〜ン…!!父ちゃんはヤマトのこと大好きだぞぉ〜…!!」
大きく頷くヤマト。
憧れの人を目の前で殺された傷はかなり深いらしい。バンドラはふぅっとため息を吐き、カイドウを無視することに決めた。
「ねぇねぇ、早く聞かせてよっ!!なんなら、ボクを海へ連れてってよっ!!」
「それはもうちょっと大きくなってからな。良い女になったら、迎えに来てやる。」
「むっ!!ボクはおでんになるんだッ!!女じゃないっ!!男だっ!!」
「だったらダメだな。男なら、自分で仲間を引き寄せて、一人でも大海原を進むべきだ。」
ニィッと笑ってそう言うバンドラ。ヤマトはそんなバンドラをムッと睨みつける。
「俺と一緒に来るのなら、おでんになるのは諦めろ。」
「ヤダッ!!」
「そうかい。」
酒を注ぎ、ゆっくりと煽るバンドラ。カイドウの方を見ると、もう泣き上戸は鎮まったのだろう。静かに盃を傾けていた。
「おい、バンドラ。次はどこに行く。…お前なら百獣海賊団の幹部に入れてやっても良いが。」
「断る。世界中の女が俺を呼んでいる。」
歯を見せて、ニィッと笑うバンドラ。残念だと盃ではなく、瓢箪に入った酒をごくごくと飲み干すと、ドンっと床に瓢箪を置いた。
「しかし、次か。そろそろ、東の海に帰っても良いかもな。」
「リンリンのとこにゃ行かねえのか。」
「ん?あぁ。めんどくせえんだよ。あのババア…俺を死んでも家族にしたがっているからな。」
そう言って狂骨を握り、立ち上がるバンドラ。
「バンドラ、送ってくよっ!!」
「おお。…カイドウ、次は勝つぜ。」
「馬鹿が、次こそ俺が勝つ。」
ニヤッと笑う二人。ヤマトはバンドラの横に立ち、一緒に屋敷から出て行った。
「本当に東の海へ行くの?」
「あぁ…ここから一年ぐらいか。そっからは覇気でも鍛えるかね。」
そう言って小舟に乗り込むバンドラ。ヤマトも名残惜しそうに乗ろうとするも、バンドラはきっと睨む。
「約束は約束だぞ。ヤマト。守れねえ奴を俺は乗せねえ。」
「うぅ…」
「俺が人を乗せても良いくらい、強くなったら迎えに来てやる。約束だ。」
そう言って笑うバンドラに沈んでいた表情のヤマトはニコッと微笑みを返す。バンドラはふぅっと息を吐くとヤマトに向かって、親指を立てた。
「約束だよ〜ッ!!絶対ッ!!」
そう言って叫ぶヤマトに、左腕を上げて答えるバンドラ。滝を逆流し、新世界の海へと行く。
「さて、行くかね。」
そう言ってまた海の中で風を巻き起こし、進んでいくバンドラ。
「シャンクスたちはまだ居るかな?ウタもルフィも喜ぶぞ。」
そう言ってにやけ顔が治らず、少し気持ち悪いことになっているバンドラであったが…新聞に書かれていた内容に気がついていなかった。そもそも新聞を見ていないので仕方のないことではあったが。
『音楽の国 エレジア襲撃 首謀者は赤髪海賊団』
さぁ、次は修羅場だぞ。
そもそも、ウタを救うために書き始めたやつだしね。原作死亡キャラどうしようね?モネとウタはやっちゃった感あるけど、もういいや。
では次回。ではでは。