燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第299話

「…どういうことだ。なんで、ジンベエ(アンタ)バンドラ(こいつ)が戦ってやがる。」

 

雷撃を切った侍はそう言った。

手に持った刀はブンッと音を置き去りにしたかのように振るわれ、その刀身を撫ぜるように光が上から下へと滑り落ちる。

 

「ルフィの仲間…。」

 

ウタは静かにそう言う。もっとも、船長たる幼馴染の姿をその目で捉えているのだから当然である。

 

「…。」

 

静かにヤマトの後ろに隠れるビビ。

ここで見られれば、一巻の終わり。もっと強くなって麦わらの一味との会合を果たしたいのだ。

 

「…何しに来やがった?ガキども。」

 

「お前こそ何しに来やがった。」

 

バンドラの問いに黒足のコックは応える。

その目には疑念のほか、憎悪、嫉妬が渦巻いていた。彼の地獄を思えば当然か。

 

「船長が偉く世話になったみてえだな。だが、なんでだ。ルフィを救ったアンタらがなぜこんな辺境で戦ってやがる。」

 

「…お前たちには関係のないことだろ?」

 

「いいや、コイツは船長の恩人だ。…だから、守る。テメェを倒してでも。」

 

ニヤリと笑い、飄々とするバンドラにゾロが剣先を向ける。その剣先を見た瞬間、バンドラの目がキッと見開かれた。

 

「…もし、これが俺に仇なすものの所業なら…。」

 

「あ?」

 

次の瞬間だった。

バンドラの周りがキラキラと輝き出す。風が地面から吹き付けるように、バンドラやウタたちの髪がゆらゆらと動き出す。

 

「…彼女を守らなければ…世界が終わる。」

 

「何を言ってるッ!?」

 

「…ここは俺に任せろ。」

 

そう言ってバンドラは前を向く。

何もわからないエースやヤマトはルフィの仲間と戦うと決めたバンドラを諌める。キラキラと輝く冷風がバンドラの狂骨を飲み込むように、渦巻く。

 

「どうせ、なにも変わらないんだ。これほどまでの人道。…ただの魚人のカリスマでは、何も変わらない。もし、この海中に深く沈む兵器を…誰かが望むならば。…と、俺は踏んでいるのだが…通しちゃくれねえか?」

 

「…だから、何を言ってるッ!!」

 

「…じゃあ、始めるか。」

 

吠えるサンジに失望したかのようにバンドラはそう言った。直後、バンドラの周りの冷風が白く…白く色をつける。

 

狂骨の先が大きく伸び、その刀身は二倍以上となる。まるで槍。リーチの差はゾロでは埋められない。

 

「チッ!!…絶対にルフィの元へは行かせないッ!!お前が何を考えているか、吐かせてみせるッ!!」

 

「…もし、最悪があれば…この魚人島を無くさなければならない。…お前たちにそれが止められるかな?……『死傷刃(ししょうじん) 神吹雪(かみふぶき)』…!!」

 

「「ッ!?」」

 

直後、ニヤリと笑うバンドラの前から狂骨の刀身だけが吹雪のように小さな粒子となり、消える。後に、ゾロとサンジを迎え撃つように吹き荒ぶ。

 

それは真っ白な吹雪。2人の視界を覆う。吹雪が吹きつけた瞬間、なんの比喩でもなく、2人の頬が裂けた。血が風に揺蕩い、吹き上がる。

 

ゾロはその瞬間、何が目の前から吹きつけているかわかった。小さな小さな刃だと言うことが。ゾロはそれを刀を振るい、切り落とす。小さな刃が当たっているからか、火花が散っていた。

 

ジンベエは梅花皮でそれをガード。サンジのみが空中へと逃走。バンドラの上空を取る。バンドラはニヤリと歯を見せて笑う。

 

「…なるほど。月歩か。いや、似て非なるなにか。人の真似が好きだね。お前たちは。」

 

サンジはそのまま上空を蹴り、斜めに地面へと飛び出す。まるでミサイルのように。地面に着地した瞬間、砂埃が舞う。

 

バンドラは笑みを崩さず、そのサンジを見ていた。

 

「ナミさんが…ロビンちゃんが…テメェの姿を見ると悲しむぞ。」

 

「…理解している。」

 

「ッ!!…らァァッ!!」

 

サンジは右足を軸に、回転しながら左足をバンドラの首筋目掛けて振るう。しかし、その首筋はサンジの蹴りであってもびくともしなかった。

 

「ぐっ!?」

 

確実に入った。

しかし、昏倒も吹き飛びもしない。まるで岩壁…いや、もっともっと強固なものに感じた。バンドラはそれを見て、ニヤリと笑う。直後はバンドラの狂骨が元の刃に戻る。吹き荒れる吹雪が消えてなくなったのだ。

 

「コックッ!!逃げろッ!!」

 

その異変にいち早く気づいたのはゾロだった。

その言葉と共に、サンジは足を引き、後ろへと退くが、それを追ってバンドラは地面を蹴り、狂骨を振るう。

 

「ぐっ!?」

 

サンジの胸が避け、鮮血が舞った。横一閃に服が裂け、それにサンジは青ざめた顔をする。バンドラはふっと笑う。

 

「…我が剣は疾風なり。海軍にいた時に教え込まれた。…今はもう殺人剣だな。」

 

「…チッ!!」

 

一瞬の隙を狙い、バンドラは上から下へと狂骨を大きく振り下ろす。落雷のような速度のその一撃がサンジに触れる前に何かが受け止める。…三刀流の牙であった。

 

「…ぐっ!?」

 

「…悪いな。だが、俺とてこの海を愛している。」

 

吹雪が過ぎ去った時、ビビの目がそれを捕らえた。

バンドラがゾロとサンジを敵視している。…しかし、船長の命令を聞かなければならない。ビビは葛藤していた。エースやヤマトやウタが動き出したとしても、動き出せなかった。

 

「『空殺雷鼓』」

 

「「ッ!?」」

 

バンドラはサンジとゾロの身体に触れると、すぐさま電撃を身体へと流した。意識を刈り取る電撃にゾロとサンジは地面に胸をつけて倒れた。…いつ触れられたか、わからぬまま。

 

「…殺しはしない。俺も俺の仲間もそんなことは考えていない。だが、体を焼き尽くす電撃は容易くお前たちを立ち上がらせてはくれない。…今は去れ。魚人島に五皇が来た。五皇の領地に。…普通なら良かった。だが、ここは今、戦地だ。

 

暴動はババアの耳へと入る。その時、ババアはどうするか。俺がやったと決めつけ、殺すのみ。そうなったら、雑魚は逃げるしかないんだよ。」

 

「……雑魚だと?」

 

涼しい顔をして言い放つバンドラに立ち上がる2人。焼けこげた身体で、バンドラを睨む。頭から血を流し、バンドラを見る2人。刀を決して落とさず、その闘志はメラメラと燃え続けていた。

 

「あぁ。…俺に勝てねえようじゃ、ジジイやババアにゃ勝てねえが…。」

 

「あ?…勝つさ。テメェにもこの先にいる奴らにもッ!!ルフィは絶対に負けねえんだよッ!!」

 

そう言った刹那、ゾロが地面を蹴り、バンドラへと飛ぶ。バンドラは静かな顔で狂骨の刃を向ける。

 

「二刀流ッ!!『虎狩り』ッ!!」

 

2本の刀を上から振り下ろすゾロ。牙を剥き、その姿はまさに虎。バンドラはそれを刃を上向きにし、振り下ろされる凶刃を受け止めた。

 

「…船長のためなら、力を発揮するタイプか。」

 

「この刀は…船長と親友の約束だッ!!…テメェなんぞに…止められるかよッ!!」

 

「…ヌンッ!!」

 

…しかし、バンドラの筋肉の方が上だった。

ゾロの切先は上へと振り上げられる狂骨の刃を止められず、少し浮く。その隙を狙って、バンドラはゾロの鳩尾に左手を押し付ける。

 

「…ハッ!!」

 

「ゴファッ!?」

 

…脳まで震えるほどの衝撃。発勁がゾロの身体を駆け巡り、筋繊維を切った。

 

「内臓は残しておいてやる。…破壊しては殺すも同義だ。言っておくが、これは本気ならどっかの戦闘バカの内臓も破壊する。立てたらすごいな。」

 

「くっ…。」

 

ゾロはそのまま胸を地面につけ、倒れ伏した。バンドラの発勁はゾロの筋繊維を破壊し、立つことを不可能としていた。

 

「殺したら約束が違うもんな。」

 

そう言って、バンドラはビビを優しい笑みで見た。

ビビは少し震えていた。本当に…怖かったのだ。一緒に足掻いた2人が…他でもない好きな人(バンドラ)に殺されるのではないかと。

 

「…教えろ。お前は…何を怯えている。」

 

サンジは睨みながらバンドラに問う。

サンジは電気でやられた時点で動けなかった。過去に雷の能力者に身体を焼かれたことがあったが、威力は負けるものの体の痺れの持続力が違う。ゾロは痛みに強かったから動けただけであって、サンジは不可能だったのだ。

 

「…ルフィなら知るかと宣い、突っ切るだろうが、汚ねえ大人になった俺にゃ無理なんだよ。一縷の疑いも切っておかないといけない。」

 

「…まさか。」

 

顔を青ざめたのはジンベエだった。

バンドラは地面に尻をつき、胡座をかくと…ふぅ…と息を吐く。

 

「…誰かがこの戦いを指揮しているのなら、何か狙いがあるはずだ。こんな海中にあるもので狙う価値があるものなんてそれほどねえだろう。…アレしかな。」

 

「…アレってなんだよ。」

 

「…古代兵器ポセイドン。」

 

そう言うとバンドラはタバコに火をつけた。

ゾロとサンジ、ジンベエの顔に汗が流れる。バンドラははなしをせんとゆっくりと口を開いた。

スッ…

  • ヤマト
  • ウタ
  • ハンコック
  • ビビ
  • レイジュ
  • モネ
  • スムージー
  • ロビン
  • ナミ
  • カリファ
  • シュガー
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