「ほう?ライブをしたいと?」
明朝、リクドルド3世の元へと急ぐバンドラ達。
リクドルド3世と次女のヴィオラは見合って首を傾げる。
「それは構わないが…。何方がやるのだ?」
「うちの歌姫です。この子ですよ。」
そう言ってバンドラはウタの肩を掴む。
緊張しているのか、ウタの肩が角ばっている。
「…もうちょっとリラックスして良いのよ?」
ヴィオラが優しげにウタに言う。
ヴィオラの手がウタの肩に触れ、ウタは心配そうにヴィオラを見た。
「ありがとう、ヴィオラさん。」
バンドラが歯を見せ笑ってそう言う。ヴィオラも口元に手を持って行ってくすくすと笑った。
「身内贔屓するわけではないが、ウタの能力は素晴らしいです。今回のライブは彼女が望んでしたいと。今はありませんがエレジアの元国王、ゴードン陛下からも高い評価を頂いております。」
「赤髪海賊団が破壊したあのエレジアか。」
その言葉を聞いてウタの顔が暗くなる。
バンドラはそんなウタの肩を抱き、ふっと微笑んだ。
「かの音楽の国の王が絶賛する歌声を彼女は持っている。どうでしょう。手配してはくださいませんか?」
「お父様。私は聞いてみたいです。それほどの歌声を。」
ヴィオラがリクドルド3世に向かって微笑みながら言う。リクドルド3世は少し考えたのち…。
「わかった。では、この場で歌ってはくれないか?」
「えっ…。あっ…。」
ウタは戸惑いながらバンドラとヤマトを見る。
ウタにとっては自分の知らない人のために歌うのはあの日以来。少し怖いのだ。
そんなウタにバンドラとヤマトは目を細めて優しく笑った。ウタはそれを見て、決心を固めたのだろう。タッタッタッと部屋の中心に歩いていく。
胸に手を当て、ウタは思う。
此処は音楽ライブ。自分は大トリで観客は歓声を上げる。そしてそこには…親として自分を育ててくれた赤髪海賊団の面々と東の海に置いてきた友、そして、自分の夢を支えてくれた兄貴分の姿。
少女の声は王宮中へと響き渡る。曲は少女の夢見る新時代。今回の為に書き下ろした歌だった。その声にリクドルド3世とヴィオラは感嘆の声を上げる。ヤマトは笑顔で手を叩き、バンドラは涙ぐんだ目で笑っていた。
…3分、4分ほどで曲は終わる。ウタが目を開けると、そこには少ないながらも拍手の音が聞こえていた。ウタは目を輝かせて笑う。
「素晴らしい…!!これほどまでとは…これは国民に聞いてもらいたいっ。」
リクドルド3世は笑顔でそう言う。
バンドラは目頭に手を当てて、泣いていた。その背中をヤマトが笑いながら擦る。
「もーっ。バンドラ、大袈裟だよぉっ。」
「ハハっ。いつになっても、慣れねえなぁ。お前の歌は。」
侍女がバンドラへハンカチを渡す。
バンドラはそれで涙を拭くと、まだ目元の腫れる顔でリクドルド3世の元へといく。
「諸々のお時間としては2日後ほどでしょうか。彼女の独占ライブ、許可して貰えましょうか。」
…ただ一つ。バンドラが心配しているのは、少ないながらもウタが懸賞金首であること。それがバンドラの表情を固くする。リクドルド3世はそんなことは考えておらず、二つ返事で了承した。彼によれば、「賞金首であろうとこの国の英雄の一人には変わらない」とのことであった。
「ほら!!こっちこっちっ!!」
会場を決めるにあたり、偵察が必要になる。
バンドラはある程度の土地勘は海軍の時に来てあるが、他の二人は違うし、バンドラも全部がわかるわけではない。そこで、リクドルド3世はヴィオラと侍女の一人を遣わした。
「…まさか、君が此処にいるとは。」
「ふふっ。奇妙な縁ね。英雄さん。」
それはかつてまだバンドラが一人の時。
海賊から救った緑髪の女性…モネであった。モネによれば、その後、ドンキホーテファミリーに拾われたが、ドンキホーテ・ドフラミンゴの渡すホビホビの実を妹…シュガーが食べなかったことにより、二人で逃亡。偶然、この国にやってきたとのことであった。
「なんで、食わなかったんだ?」
「まぁ、食べる義理は無かったんじゃないかしら。ほら、貴方には救ってもらったけど…若様、ドフラミンゴにはそんな義理なかったし。」
モネが首を傾げてそう言う。つまり、シュガーにしかわからないという話だった。バンドラはまぁ…気まぐれだろと思いながら、歩いていく。
「バンドラっ。なにあれっ!!」
ヤマトがキラキラとした目で指を指す。
そこには…辺り一面に咲き誇る向日葵の畑が広がっていた。
「向日葵か。ドレスローザにゃお似合いだな。」
「綺麗でしょ?向日葵畑。」
眼鏡を上げて、モネが言う。
ああと笑うバンドラ。その様子を見て、ヤマトは何故か胸の奥でつんっと軽い痛みを感じた。
「ウタ。いくぞ。」
「うんっ。」
テクテクとバンドラ達の後を追っていく。
「シュガーのやつは元気か?」
「元気よ。ずっとグレープばっか食べてるわ。」
「そうかい。」
にっと笑うバンドラにモネはふふっと口元を押さえて笑う。ヤマトはずっとその様子を見ては、複雑に笑っていた。…なんでだろうと思いながら。
「ん?」
バンドラが背後を向くと、下を向いていたヤマトがコツンとバンドラの背に当たる。バンドラはその様子を見て、ふっと笑った。
「どうした?ヤマト。見て回りてえんじゃなかったのか?」
「…。そうだけど…。」
クンクンと鼻が感じとる不信感。
バンドラから自分の知らない女の香りが濃くする不安感。前なら、そこまで意識することはなかっただろう。…全部、ブラックマリアのせいだと他人に押し付ける。
「…あぁ…。」
バンドラはそう言うと全員に聞こえる声で言った。
「すまねえ。先行っててくれ。」
「え?」
その場にいた全員の声が重なる。
バンドラはニヤリと笑い、ヤマトの方へと歩いて行った。
「約束を果たさないとな。」
肩に手を置き、ニヤリと笑うバンドラ。ヤマトの顔が明るくなる。
「俺ァ、こいつと回る約束、昨日してたんだ。悪いが、モネ…それと可愛いお姉さん。ウタ、頼めるか。」
不敵に笑うバンドラに二人は勿論と答える。
小さくなる3人の姿を見て、ヤマトがバンドラの後ろから飛び抱きつく。ヤマトの腕に手を当てて、ふっと笑うバンドラ。
「バンドラっ!!」
「ハハッ。して欲しいことは言わなきゃダメだろう?」
「だってぇ…。楽しそうだったし。」
首元に顔を埋め、寂しそうに言うヤマト。
バンドラはそうかと言い、後ろのヤマトの頭を撫でた。
「光月おでんだったら、弱気なこと言わずに頼ると思うけどな?」
「むー。おでんだって、ちゃんと周り見るもんっ。ちゃんとおでんのこと勉強した?」
肩に顎を乗っけて、ぷくーっと頬を膨らますヤマト。バンドラはやや呆れながら、したしたと軽く流す。なら良いよと笑顔に戻るヤマト。
「あははっ。ボク、バンドラのこと好きだっ。」
「……そうかい。」
タバコを咥えそう言うバンドラにヤマトはニカッとした笑みで返した。ヤマトの清々しい笑みに、バンドラはそういう意味で言っているのではないと気づいたのか、歯を見せ目を細めて笑った。
ヤマトの笑みは全世界を救うと思うんだ。わい。
さてさて、こんな感じのイチャコラでええですかね。戦闘とかも勿論書くけど。メインヒロインが決まってきそうな感じ…。