燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第33話

…ドレスローザ、2日目夜。

ライブを明日に控え、ウタは眠る。バンドラは酒を飲みながら、はしゃぎすぎて眠るヤマトとウタの横で座っていた。

 

親心…というわけではないが、ウタのライブは成功させねばという意思がある。とはいえ、電伝虫も万能ではなく、映像電伝虫も受け取り役がいないと使えない為、今回のライブはほぼドレスローザの人のみの観客になる。

 

『ウタのライブか、そりゃいいな。』

 

「…撮っといてやろうか?シャンクス。」

 

特にウタの父親…シャンクスは特定の場所を持たず、ドレスローザに来ることも叶わない。それはシャンクスがウタが世界一の歌姫になったら迎えにいくという約束をしたからである。本当は会いたいのに会いには行かないというある種不器用な父性愛にバンドラは苦笑いする。

 

『しかし、お前も大変だなぁ。俺の娘と百獣のカイドウの娘と一緒に船旅とは。』

 

「五月蝿え。…俺が好きでやってんだ。心配すんな。」

 

『ウタに手ェ出してねえだろな?』

 

陽気だったシャンクスの声が若干低くなる。

バンドラは酒をちびちび飲みながら、電伝虫の受話器を持って笑った。

 

「出すわけねえだろ?…まだガキだ。」

 

『なにっ!?成長したら手ェ出すってかッ!?』

 

「出さねえっつのッ!!…それにウタにゃ…。」

 

そこまで言って言葉が詰まるバンドラ。

…それを言ってもいいのか。シャンクスの手前、名前を出したら…拗ねると。しかし、バンドラはふっと…笑った。

 

「それにウタにゃ想い人がいるらしいぜ?」

 

『なんだとッ!?まだあの子には早いだろッ!?』

 

「…お前の知らねえうちに大人になったっつうことさ。まぁ、ウタは自覚してねえからわからねえが。あと、お前のことも好きだっつってたよ。」

 

電伝虫からは鼻を啜る音が聞こえる。

仕方ないとはいえ、ウタには会いたかったろう父の葛藤。バンドラは酒を持ちながら笑っていた。

 

『しかし、誰だ。ウタの心を奪ったそんな羨ま……けしからんやつはッ!!』

 

「親バカすぎだろう。だから、まだガキだからわかっちゃねえって。」

 

『バンドラッ!!お前は知ってるのか!?』

 

当たり前だろとバンドラが笑う。

シャンクスがいつものように誰なんだと怒りではない、焦りであったようにも思えたが、語気を強めて言った。

 

「…フーシャ村の坊主だよ。」

 

『…そうか。ルフィか。』

 

…バンドラの思っていた反応とは違った。

シャンクスは穏やかな声で笑っていたように聞こえたのだ。

 

「あら意外。憤慨すると思ってたのだが?」

 

『俺をどれだけ器の狭い男だと思ってるんだッ!!…それにルフィには色々と託しちまったからな…そうかそうか。』

 

「…何があった。」

 

バンドラにはそのシャンクスの言動が不可解に聞こえた。託したとは一体なんなのか。この男とあの坊主の中に何があったのか。

 

「まさか…船に乗せたのかッ!?」

 

『馬鹿言え。あんなカナヅチのガキ乗せるかってんだ。…俺は新時代にかけてきたんだ。ヘマしちまって、左腕を魚にくれてやったがな。』

 

「馬鹿はどっちだ。お前があんな海で腕を落とすわけが……え?マジ?」

 

…電伝虫の先の声がなくなる。まさに沈黙が答えと言わんばかりに電伝虫が黙った。

 

『あの男は俺の船長と同じ言葉を言っていた。アイツが海に出ればこの混沌の大海賊時代の一つの転機になるんじゃないかと考えている。俺はアイツにかけてきたんだ。新時代を。』

 

「…あの坊主がね。テメェの左腕はテメェのもんだ。文句は言わねえさ。」

 

『…あの子がもし、ルフィを気に入ったなら、俺は喜んでやろうと思う。だが、俺を超えられなければ、この話は無しだ。』

 

大人げないと苦笑いしながらもバンドラは電伝虫の受話器を耳に押し付ける。

 

「…娘を持つと大変だねぇ。俺ァ知らねえが。」

 

『馬鹿野郎、それが楽しいんだろうが。』

 

電伝虫越しから聞こえる声は…いつもの騒がしい赤髪海賊団だった。それを聞いてバンドラはガチャリと電伝虫を切る。

 

「…盗み聞きとは頂けないね。可愛いお嬢さん。」

 

扉越しに聞こえるようにそう言うバンドラ。

ガチャリと開けられた扉の先には侍女…モネが立っていた。モネは怪しくも美しく微笑む。

 

「うふふ。こんにちは。バンドラさん。」

 

「…うちの船員が眠っている。静かに…な?」

 

そう言ってバンドラもニヤリと笑って、指を口元にやる。

 

「うふふ。…何する気なの?」

 

「さぁ。…海賊の世界に歳なんざ関係ねえが、呑める口かい?」

 

「ふふっ。あら、お酒のお誘い?…構わないわ。貴方なら。」

 

そう言って微笑むモネ。バンドラは踊り出すような心を抑えながら、日本酒をゆっくりと猪口へと注ぐ。モネとバンドラはそれをコツンとぶつける。

 

「「乾杯。」」

 

静かに中を飲み干す二人。

モネはゆっくりとバンドラの胸に頭を寄せる。

 

「飲み辛えな。」

 

「あら、お嫌い?…少し酔ってしまって…。」

 

不敵に笑うモネにバンドラはふっと笑う。

 

「そんなに強えもんじゃねえけどな。…だったら、寄るかい?」

 

「ひゃっ…!!」

 

モネの頭を猪口の持っていない左手でくっと寄せるバンドラ。モネの耳にはバンドラの心音と徐々に速くなる自分の心音が伝わる。ふぅ…と一息つくと酔っているからか、ほのかに紅く色づく頬ではあるが、冷静にいつもの笑みに戻る。

 

「あら、積極的な人。別にいいわよ?此処はドレスローザ。愛と情熱の国。貴方になら…抱かれてもいい。」

 

「…馬鹿。そういうのはもっとお互いのこと知ってからだ。俺たちは1日限り、奇縁のせいで再び会っただけのこと。そこにそれ以上の関係はないよ。」

 

「むっ。…失敬ね。私に魅力がないとでも言うのかしら。」

 

一瞬、むすっとしたように見えたが、また怪しげな笑みを取り戻すモネ。バンドラはそんなことはないと微笑む。

 

「俺が出会った中でも選りすぐりの女だ。美人だし、魅力は十分ある。」

 

「…え、えぇ…。」

 

手で顔を隠し、そう答えるモネ。

褒められ慣れてないのか、顔を赤くして照れていた。バンドラはわかっているのかわからずか、更に口を動かす。

 

「俺は可愛いお前が好きだが、此処に何度来れるかわからねえ。船に乗せるのは賛成だが、シュガーはどうなる?まだ幼いだろう。」

 

「…そうね。ごめんなさいね。」

 

「まぁ、それ以外のことならしてやらぁ。」

 

「あっ…。」

 

猪口を置き、キュッと抱きしめるバンドラ。

モネはあっと軽く口を開けて言った。

 

「もうっ…乱暴な人ね。」

 

「クールな奴。だが、良い女だ。」

 

「…あら、キス…してみる?」

 

そう言ってモネは瞳を閉じる。

バンドラはふっと笑った。女好きなバンドラだが、大体頬か、手にキスをする為、口には初めてに近い。それでも緊張をすることはない。

 

ゆっくりとバンドラの唇が近づく。

 

「何やってるんだぁ〜ッ!!」

 

「うぉっ!?」「あらっ。」

 

隣で寝ていたヤマトが目を見開き、怒号を上げながら起きてきた。モネは柔らかに笑いながら、バンドラは驚きながらその場所から遠のくように退く。

 

「お、起きてたのか…!!」

 

「ウタちゃんもいるのに…なんてことしてんだッ!!それに…!!」

 

即座にバンドラに抱きつき、グルルと喉を鳴らしながらモネを見るヤマト。モネはその様子を見て、不敵にニヤリと笑った。

 

「あらあら。可愛い番犬ね。でもいいの?海賊は…女でも取っ替え引っ替えするものよ?」

 

「バンドラは船乗りだッ!!海賊じゃない!!」

 

「…なんの話してんだよ…。」

 

二人の会話にバンドラは頭を抱えた。

方や少々怒りながら、もう方や不敵に笑い、余裕綽々と言わんばかりに。バンドラは何が何やらわかっていなかった。

 

「ふふ。今日は良いわ。また、明日。会いましょう?おやすみなさい。」

 

そう言ってモネは部屋から出て行った。

 

「…なんだってんだ。一体。」

 

「バンドラ、寝るよ。」

 

「へ?」

 

「い・い・か・らッ!!…寝るよ。」

 

そう言うヤマトはバンドラをきっと睨む。その声からほのかに怒気をはらんでいることがわかった。バンドラは頭を掻きながら、呆れたように笑い、ベッドに入った。ヤマトは誰にも渡さないと言わんばかりに、バンドラへとギュッと抱きつく。

 

「…痛いよ。」

 

そうも言いつつ、バンドラは穏やかな笑みを浮かべていた。




なんか色々混ぜすぎたかな。キスはメインヒロインに。皆さんの間では誰に見えてます?ヤマト?ウタ?それとも他の誰か?…まぁ、十中八九…。

次でドレスローザは終わると思います。モネを船員に入れるかどうかは謎…。気分やね。ただ生かしたケジメを取りたい。そういう意味ではあの人もだけど。

恋愛タグ付けますかね?
結構主流になってきたから迷ってます。

シャンクス「今疼くのはこの腕だ」

では次回!!
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