燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第35話

「…王下七武海の勧誘が来てるって言ったら?」

 

バンドラはその言葉に眉を動かす。

…王下七武海。政府から略奪を許可されたたった7人の海賊。懸賞金は剥奪され、そのかわり、政府のために力を貸すという確約をするというものだ。

 

「馬鹿な。俺はNOだよ。」

 

「…本当にいいのか?」

 

その瞬間、ふざけた感じだった青キジの声が低くなる。微かな冷気に大きく袖のない服を着たヤマトは微妙に涼しくなったのを感じた。

 

「何が言いたい。」

 

「…(あん)ちゃんやそこのボインな嬢ちゃんは良いけどよ。問題は歌姫だ。あれだけ民衆の心を掴んでも懸賞金のある海賊ってのは変えられない。ドレスローザの一件でお前達の懸賞金も上がっている。海軍からも世界政府からも狙われる可能性が高くなるってことだ。」

 

…そう言って青キジは新聞記事を放り投げた。

そこには顔写真と共に懸賞金の上がった3人の姿が写っていた。

 

『天帝』バンドラ

『懸賞金 10億2500万ベリー』

 

『新時代の歌姫』ウタ

『懸賞金 2億ベリー』

 

『鬼姫』ヤマト

『懸賞金 3億5000万ベリー』

 

「なんでッ!?ドフラミンゴを倒しただけなのに…!!」

 

そう言ってヤマトが声を上げる。

青キジはポリポリと髪を掻くと気怠そうに言った。

 

「その“倒しただけ”が問題なんだよ。懸賞金は単純な強さじゃない。政府への危険度だ。ドフラミンゴファミリーは長年、海軍が追ってきた組織。それを1日にしてぶっ倒しちまうんだから、政府は大慌てなんだよ。」

 

「こういうのは普通、サイファーポールの役割じゃねえのか。」

 

「昔のよしみってやつだ。センゴクさんが請け負って俺が来た。」

 

バンドラはそんな青キジを睨む。

昔から悪いやつではないが、得体の知れないやつではある。バンドラがいた時は中将であったが、それでも自然種ヒエヒエの実の力を持った化け物に数えられる部類の人間ではあった。

 

「舐めるな、ウタは強いぞ。そこらの一般海兵とは天と地ほどの差がある。」

 

「あー…そういう意味じゃねえんだわ。」

 

…青キジは気怠そうにポリポリと頭を掻く。

 

「政府としてもお前の力は喉から手が出るほど欲しがってる。百獣のカイドウとタメを張ると言われたその力に、海軍初の悪魔の実泥棒だ。得体の知れないほど万能な実の為、お前の罪は軽く済んだが、天竜人を叩き、来た海軍大将と中将を撃退。それと、その後のバスターコールを退いたことでお前の懸賞金は大きく跳ね上がると思われた。」

 

「…しかし、政府はそれを隠し通した。幸い、天竜人は奴隷に殺され、奴隷は海軍に殺され…証拠は無くなったからな。」

 

バンドラも後頭部を掻いた。

…バンドラは19ぐらいだったろうか。カイドウにより、ホールケーキアイランドへ送られたバンドラはなおも強くなる為、名も無き島で修行していた。武装色の覇気を体得した頃、旅行か何かで来ていた天竜人がバンドラを撃とうとした。理由は簡単。…修行しているバンドラが目障りだったからである。

 

バンドラは自己防衛の為にその銃弾を武装硬化でガード。それが天竜人に当たり、結果的に激昂した天竜人が護衛を前にバンドラを殺そうとする。バンドラはそれが罪と知りながら、生き残る為に護衛と天竜人を殴った。その時の奴隷は今、家族と一緒に暮らしているだろうが、殴られた天竜人はさらに激怒し、海軍本部から一部大将と中将を要請。

 

当時の大将ほどの人でも、バンドラの相手にならなかった。海軍本部へ、その大将はバスターコールを要請。知恵の国オハラを破壊した軍艦の大量出撃をバンドラは海を割ることで大方沈め、大将との戦いも覇気と半暴走状態になることで圧倒。それは海軍史上最大の汚点とされ、闇に葬られることとなった。

 

「あれだけ散々やっといて10億は安いだろうな。だが、お前は略奪をしているわけでも、政府の過去に突っ込む気もねえんで、今まで見逃してたわけだ。力をつけねえと、こっちは全軍出撃になっちまう。」

 

「…買い被りすぎだ。現に俺はカイドウを一度も本気にさせたことはねえ。」

 

そうかと笑う青キジ。

ヤマトもそのことは知っていた。本気の父とバンドラが戦えば、ワノ国は無事では済まない。それどころか、世界に何が起こっても不思議ではないのだ。

 

「それでも海の皇帝とタメ張る(あん)ちゃんを政府は欲しいのさ。海軍本部、皇帝達、それと七武海は均衡で無けりゃいけねえ。天夜叉の野郎を討ち取ったお前は格好の的ってわけだ。」

 

「…俺は政府の言いなりにはならねえぞ。」

 

バンドラはそう言い、再び睨む。青キジはめんどくさそうにため息を吐く。

 

「だーから、お前の為じゃなく嬢ちゃんらの為なんだって。…今回みたいなことやるには色んな目を集める。賞金首が目立つってことは、誰に狙われても良いってことだ。七武海になれば知名度とその強さも盾になる。手を出す奴も居ねえだろ。どうだ?あ?」

 

…青キジの言っていることはウタの為に王下七武海になれとのこと。ウタが歌唱活動を続けるためには賞金首であることはデメリットでしかない。更に難しいのはウタがトットムジカを動かした、赤髪のシャンクスの娘であるということがバレた時である。そうなれば、世界政府が黙っていない。

 

「なかなか頭がキレるな。俺の弱点を知って言うか。」

 

「何のことだ?…俺はただ、お前さんに一番最適なことを教えているだけだ。受けるも断るもお前さんの勝手。…ただ、それが良いことなのかどうかは別だがな。」

 

…痛いところをつかれたバンドラ。

しかし、口元にタバコを持って行き、蒸していく。

 

「…それでも受けねえってか?」

 

青キジの声がだんだんと低く威圧的になってくる。青キジとしてもそれを受けてもらわないと上からどやされる。それを気にする青キジではないが、ある種青キジからの優しさだった。

 

「政府は俺の力を利用しようとしているだけだ。興味ねえ。」

 

「…そうかい。海の皇帝にでも…なろうとしてんのか?」

 

「…いいや。そこに居られるのは大海賊時代の前を生きた化け物だけさ。俺はただこの海を楽しみたい。この時代を楽しみたいのよ。」

 

それだけ言うとバンドラとヤマトはその場から立ち去った。大将青キジはふぅ…と息を吐き、その場に座る。

 

「…良いねえ。海賊ってのは自由で。いや、アイツは…船乗りか。」

 

そう言って愛用のチャリで帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか。もう帰るのか。」

 

リクドルド3世がバンドラと握手を交わす。

 

バンドラはこれからエレジアを経由して、次の島を目指す予定だった。

 

「なら、砂の王国アラバスタなんてどうだ?」

 

「まぁ、その近くか。ウタのライブをしながら、回って行く予定さ。」

 

そう言ってバンドラはモネとヴィオラのところへと歩いて行く。ウタとヤマトはその様子を後ろから見ていた。

 

「バンドラさん。お元気で。」

 

「あぁ。次会ったら、お姉さんもしっかり相手してくれよ。」

 

そう言ってバンドラはヴィオラの手を優しく掴み、手の甲に唇を落とした。

 

「あらっ。」

 

ヴィオラは慣れているのか、クスリと笑う。バンドラはふっと微笑むと次はモネの元へと行った。

 

「…シュガーが成長したら、乗せてね?貴方の船へ。」

 

「了解。」

 

「…良き船旅のおまじない。」

 

そう言ってモネはバンドラの頬へと唇を落とす。バンドラはあっと口を開けていて、それを見ていたヤマトは顔を真っ赤にして見ていた。ウタは顔を隠していたが、顔を真っ赤にして指の隙間からその様子を見ていた。

 

「ふふっ。またね。バンドラさん。」

 

「あぁ。」

 

…そして、船は港から走って行った。




次はどこへ行こうか。
実は今回の小説で接吻シーンを邪魔されない形で書いたのは今回が初ってマジ?ヤマトとウタの刺激になります。

王下七武海はなる道も残しつつ。
二つ名は変えてあります。

背に龍を持つ男→天帝ですね。天夜叉から一字いただきました。ドフラミンゴはヴェルゴが海軍にいるからね。

では次回。
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