燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第38話

「…ん…ここは…。」

 

…ようやくと言っていい。

悪魔の子ニコ・ロビンは覚醒する。ゆっくりと横を見るとそこには3人の影があった。

 

「…おや。目が覚めたか。」

 

低い声が耳に通る。

…そこには膝に寝る少女と肩に寄りそう女性を支え座る男が一人いた。誰あろうバンドラである。ロビンはゆっくりと身体を起こす。

 

「…ありがとう。助けてくれて。でも、ここはお暇するわ。」

 

「ん?もうちょっと居てもいいよっ!?あ、ボクはヤマト。よろしくねっ!!」

 

ロビンの肩を持ち、立ちあがろうとする彼女をベッドへと座らせるヤマト。ロビンは少し迷惑そうな顔をしていた。

 

「…なんでそこまで。」

 

ロビンが言うとバンドラが彼の膝を枕にして眠るウタの頭を優しく撫でて、微笑んだ。

 

「ヤマトの言ってることも一理あるだろ。やり方はやり方だが。」

 

「…私と居れば貴方たちがどうなっても良いのね。」

 

「オハラの生き残り、悪魔の子ニコ・ロビン。」

 

淡々と低い声で言われるその言葉にロビンの肩が一瞬震える。ロビンは切羽詰まった顔になるとバンドラの方をキッと睨む。

 

「…そう。貴方達も懸賞金が狙いなのね。」

 

「なんの話だ。懸賞金なら俺たちもそうだぞ。」

 

「…確かに。新聞で見た顔だわ。…そんな幼い子まで。」

 

ロビンは3人の顔を見てそう言った。

…ロビンの故郷『オハラ』はバスターコールによって消された。島一つ…その全て。ロビンを愛してくれた人もロビンを逃がそうとして暴れた海兵も皆、その場で死んだと。ロビンはそう思っている。

 

「それに俺は懸賞金よりも…お姉さんの美貌の方が気になるがな。」

 

「…え?」

 

「バカ。」

 

ロビンの手を掴み、そう言うバンドラ。その頭をヤマトがボコっとこづく。バンドラが頭を押さえてヤマトを見るとヤマトはぷくっと頬を膨らませて、睨んでいた。わかりやすく咳払いをして、話を変えるバンドラ。

 

「…まぁ、この場にボロボロのアンタをここから出てけ…なんて言う馬鹿は居ねえってこった。今すぐ信じろってのは無理だろうが、取り敢えずここにいな。」

 

「…そう。」

 

そう言って横を流し目で見るロビン。

既に暗くなっている大海原を船は行く。

 

「…そういえば、ベッド独占してたわね。」

 

ロビンはクールにウタを見てそう言った。

…確かにとバンドラは考える。ココヤシ村からもらったお礼だったが、この船は3人(+1人)には少々狭すぎる。

 

「…悪かったわね。その子、寝かせてあげて。」

 

「お前、まだ体調回復してないだろう。お前の方が寝てろ。…じゃなきゃ、キレるぞ。」

 

「そうなの?」

 

なんで…と不思議そうに見るロビン。

なおも、スヤスヤとバンドラの膝の上で眠るウタ。バンドラはウタを見て微笑む。

 

「…コイツはな。今の今まで休憩なしでアンタを看病してたんだ。少なくとも、オハラの生き残りだとか賞金首だとか…コイツにゃ関係ねえんだろうさ。勿論、俺たちも。」

 

「…。」

 

ロビンはそう言って微笑むバンドラを見て、目を逸らした。そう言って色んな人たちに騙されてきたニコ・ロビン。そう簡単に信じられるわけではなかった。

 

ロビンとばかり喋っているバンドラ。

ヤマトはその様子を羨ましいと思ったのか、バンドラの服を指でぎゅっと掴む。

 

「なんだよ?」

 

「…なんでも。」

 

「…仲が良いのね。」

 

そう言ってふっと笑うロビン。

初めて笑みを見せたその顔にバンドラもニヤリと笑う。バンドラの左手はヤマトの手にキュッと握られていた。

 

その様子にロビンも毒気を抜かれたようにクスクスと笑った。

 

「なにやら知っているようだけれど、自己紹介がまだだったわね。ニコ・ロビン。よろしく。」

 

「ボクはヤマトっ!!又の名を光月おでんだっ!!よろしくッ!!」

 

「…か、変わってるわね。この子。」

 

ヤマトのその言葉にロビンは冷ややかな笑みを浮かべる。胸を張って知らない男の名前を自分の名前のように語る女の子。その様子がロビンにすら飲み込むことができなかった。

 

「まぁ、憧れの侍と自分を重ねてるんだよ。(子どもっぽくて)なかなか可愛いとこあるだろう?」

 

「うえっ!?」

 

「…貴方、わかってて言ってるの?」

 

歯を見せて笑いながらそう言うバンドラにロビンが無表情で見る。バンドラの横で顔を茹蛸のように真っ赤にしながら、顔をおさえているヤマト、それを不憫なような目でロビンは見ていた。

 

…い、今…可愛いって…なんで…?ボク…どうしちゃったの…?顔…熱いよぉ…

 

男として生きてきたヤマトには言われ慣れてないセリフだった。その為、クリティカルヒットであったのだ。

 

バンドラは首を傾げて何がだ?と答えるとロビンはもっと不憫そうな目で見ていた。

 

「で、今寝ているのが…未来の歌姫ウタだ。」

 

「…歌姫…ね。確かに私が寝ている間、何か口ずさんでいたようだけれど。それほど上手なのかしら。」

 

「ふふ。聞いたらぶっ飛ぶぜ?」

 

そう言って笑うバンドラ。

ウタの頭を優しく撫で続ける。ロビンはくすくすと笑い、楽しみと一言付け足した。

 

「…しかし、政府に追いかけられてる女を匿った…か。良いように言うねえ。アイツらも。」

 

「…あら、お知り合いなの?世界政府と。」

 

懐かしげに言うバンドラにロビンが少し警戒しながらもそう言う。バンドラはこの話はまだあれだったかと後頭部を掻き、苦笑いをした。

 

「俺に王下七武海の誘いが来てる。断っているが、ライブ活動が困難になればいつでも受ける道を考えている。」

 

「…ライブ?」

 

「歌姫のライブだ。世界各地をゲリラ的にウタのライブをする。…まぁ、勿論、その上の人には了承を得ているが…。」

 

…そう。今回の旅もアラバスタでウタのライブをする手筈である。今回に関してはリクドルド3世の意向もあり、アラバスタ国王コブラには話がつけてある。だが、世界会議(レヴェリー)もあり、この3年後の年になったとか。

 

「始まりはウタの父親の意向を勝手のことだが、色々あってとある島から出てなくてな。それでウタの感性と積極性…後は教養がわりになればと思って。」

 

「…色々考えてるのね。」

 

「まぁ、本人がやりたいって言ってるのが一番だが。」

 

ロビンはふっと微笑む。

バンドラはそんなロビンを見てニヤリと笑うと、机の上に置いてあったお猪口を持って酒を飲み干した。

 

「…では、あの子は?」

 

「世界を見たいから、着いてきたんだよ。なぁ、ヤマト。…ん?ヤマト?」

 

「ふぇ…な、ななななっ…なにっ!?」

 

バンドラに呼ばれたことによほど驚いたのか、顔を真っ赤にして動揺するヤマト。バンドラは何があったと言う風にジトーとした目で見ていた。ゆっくりとバンドラの横へとヤマトは来る。何故か、緊張しているヤマトと平然としているバンドラを見て、ロビンはため息にも近い息を吐いた。

 

「…光月おでんのようにこの海を見たい。それがコイツの夢だ。俺はそれに付き合っている。それだけさ。」

 

「…そう。」

 

ニヤリと微笑むバンドラにロビンは余裕のある微笑みを返した。ヤマトはその言葉に顔の赤さが徐々に引き、ふっと笑う。

 

「そうさ。ボクはやるよ。光月おでんのようにこの海を見るんだっ。全てを。」

 

「…良いねえ。俺はお前のそういうとこ、好きだね。」

 

「…あ…ぁ…ありがと…

 

顔から湯気が出るほど、ヤマトの顔が真っ赤になる。ロビンは自分よりヤマトの方が寝た方がいいのではと思いつつ、何もわかっていないバンドラの方をジトーと見た。




ヤマトかわいいよヤマト。

バンドラのイメージは成長したサンジ。
サンジは確かに女好きだけど、ホールケーキのとき自分の恋愛より仲間を優先する感じがすごい好きだったです。ていうか、本人は演技だと思ってたしね。レイリーさんとかベックマンとかもバンドラに近いんじゃないかなぁ。わからないけど。…そういう描写が本編にないから。

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