…ウタの体調が回復し、バンドラ達は病院を後にした。じわじわと照りつく日とは違い、朝方の天候はまだポカポカと暖かく感じた。バンドラ達はアルバーナ宮殿へと入り、コブラに謁見することとした。
「おお。大丈夫だったか、歌姫。」
コブラが心底嬉しそうに目を細めて笑った。少し高齢である為か、目元や顔の皺がキュッと締まっていた。ウタは「はい」と頷いた。
「コブラ王。このような形になってしまい、誠に申し訳ない。それと共に病室の提供、誠に感謝します。」
「いやいや、あのような素晴らしい歌を聞かせてもらったんだ。そのぐらいは容易いよ。」
そう言って笑うコブラ。
バンドラはその器の広さに微笑んだ。
「人の親として…感謝するよ。ビビも終わりこそ泣いてはいたが、楽しんでいたようだ。」
「…それは申し訳ないことを…。」
「良いのさ。あの子は何れ私の代わりに国を背負って立つだろう。君たちはそんなあの子に感性の広がりの場をくれた。私はそれがとても嬉しい。ありがとう。」
そう言って右手を出すコブラ。バンドラは再びその手をぎゅっと握った。
「こちらこそ。」
握手を交わし、手を離す二人。
バンドラは会釈をすると左手に狂骨をキュッと握った。
「して、次はどこへ行くのだね?」
「まだ決まっていません。」
「そうか。…私も何処へとは言わないが、君たちの旅路に幸あらんことを心より祈っておこう。」
そう言って、コブラは四人を見送った。
バンドラ達はアルバーナ宮殿を後にして、港へと足をすすめる。外へ出ると室内でも若干感じたあの茹だるような暑さをモロに受けた。
「暑いぃ〜っ!!」
「暑い暑い言ってるから暑いんだろ?」
バンドラは昨日の一件以降、自分以外に冷気を纏わせていない。意地悪をしているわけじゃない。ただ、また倒れられたら困るからである。ウタもそれに倣うようにヤマトも水をゆっくりではあるが、定期的に取るようになった。
「…ん?」
アルバーナ宮殿から少し行ったところ。まだアルバーナを抜けていないところに見た影があった。一人は護衛隊副長ペル。もう一人はコブラ王の娘ネフェルタリ・ビビであった。
「歌姫様っ!!」
無邪気に笑い、ビビはウタにぎゅっと抱きつく。
ウタもびっくりしたような表情を示していたものの、すぐにぱっと明るい笑顔になった。
「お歌、凄かったですっ。私、歌姫様のお歌、大好きです。」
「ほんと!?ありがとっ!!」
そう言ってビビの頭を撫でるウタ。
ペルの目が厳しいものの、バンドラはまぁまぁとペルを宥めていた。
「あのっ。いつか…もう一回、歌姫様のお歌、聞かせてくれませんかっ!?」
ビビは不安そうな顔でそう言った。
それに対してウタはとびっきりの笑顔で勿論と返す。するとビビの顔は光が差したかのようにぱぁっと笑顔になっていった。
「またね。ビビちゃん。」
「はいっ!!」
そう言って、少女二人は別れた。
バンドラはその様子を見て、ふっと微笑むと口元に咥えていたタバコに火をつけた。
ペルが会釈をするとバンドラもそれに返す。それ以降、ペルは何も言わなかったものの、4人の後ろ姿をずっと見ていた。
「…珍客だ。」
港に着くといきなりバンドラがそのようなことを言い出した。3人…ロビンですらその言葉に首を傾けた。
「あららぁ…バレてたか。」
港にどかっと座る一人の影。昨日の弱小海賊を捕まえにきたのだろう。海軍大将青キジが座っていた。
「あんな海賊を捕まえに大将が出張るたぁ、どういう了見だ?」
バンドラの目がキッと強くなる。
青キジは面倒臭そうに頭を掻くと、怯えるように震えるロビンを指差した。
「ちょっと忠告しにきてやったんだよ。…お前ほどの男がその女のことを知らねえはずもねえ。」
「買い被りすぎだ。コイツぁ俺の同行者。他人の空似じゃねえの?」
…バンドラは気づいていた。
オハラといえば学者の国。小さい時に一度、海軍の船に乗り見たことがある。バスターコールと共に、そのオハラは完全に消え去ったのを。
「アンタも見てんでしょうが。ニコ・ロビンがどういう星の元に産まれた人間か。必ず、お前はその女を持て余す。」
「…へぇ。お前はニコ・ロビンに何を見ている?」
「
青キジがゆっくりと立ち上がり、バンドラを睨む。
「オハラの生き残りは殲滅しなくちゃならない。それが世界政府の意向なんだよ。」
「お前、そういうの興味ないだろ。」
「ん?あぁ〜…まぁな。だが、俺も海軍大将だ。ちょっとはお仕事しなきゃなんないでしょうに。」
「…言っとくが、俺ァ良い女は離せねえ主義だぞ。」
そう言って、バンドラがニヤリと笑う。
震えるロビンの前にはヤマトとウタが青キジを睨みつけて立っていた。青キジはため息をつく。
「七武海は嫌だ、ニコ・ロビンは渡さねえ…って子どもみたいに我儘ばかり…。ったく、アンタ、一体何してえんだよ?」
「さぁ?ウタの新時代も、ヤマトの漫遊も全部俺は見守るだけさ。」
アラバスタの大地を風が吹く。
青キジはそうかいと自転車を漕いで帰っていった。
「もう良いのかい?」
「…今日は挨拶だ。それと、コイツら連れてかなきゃなんねえ。んじゃあな。」
そう言って青キジは軍艦を追いかけるように自転車を漕いでいった。
「…やっぱり、私は貴方達と居ては行けないと思う。」
船に乗り、ロビンがそう言った。
ヤマトとウタがまたかと言うような顔をする。ロビンの顔はひどく暗かった。バンドラはしれっと引っ付いているヤマトをじとーと見ながらも、ロビンの方を見ていた。
「私が居れば貴方達にも迷惑がかかる。」
「だから降りると?」
ロビンはこくりと頷く。
バンドラはため息をつきながらもゆったりと風を送って船をすすめる。
「…文句は言わない。だが、此処にアンタが要らないと思ってる人間なんて一人もいないんだぜ?」
「…確かに、貴方達とはもっと一緒にいたいわ。貴方達を見てると飽きないもの。」
頬杖をついて、バンドラとヤマトを見ながら微笑むロビン。バンドラとヤマトはおんなじ向きに首を傾げる。ウタはそれよと言わんばかりに冷めた目で見ている。
「でも、私にも夢があるの。この世界の全てを知りたいの。…例え、それが罪だとしても。」
「…そうかい。」
そう言って笑うバンドラにロビンはゆっくりと近づき、ピタッとくっつく。
「ん?」
「…助けてくれたお礼、まだだったでしょ?」
そう言ってロビンはバンドラの顔に手をかける。バンドラはふっと微笑んでいたが、ヤマトの目がギロッとその様子を見て離さない。
「…ありがとう。」
ふっと微笑み、バンドラの首に腕をかけるロビン。それ以上のことはしない。バンドラのことはロビンは信用してはいるが、ヤマトのことも立てて、或いはまだそういう関係でもない為、それくらいに留めているのだ。バンドラはふっと微笑む。
「…まだ護衛は必要だろ?」
「…もうすぐ降りるわ。貴方達を巻き込むわけにはいかないから。」
その目は決意に満ちていた。
それ以上、バンドラは口を挟まなかった。…しかし、一人。そうはいかない人物がいた。
「む…むむむっ…!!」
「や、ヤマトさん…?」
「ボクを無視するなぁッ!!」
「ぐぇぇッ!?」
ヤマトが上からバンドラに抱きつく。
頭がバンドラの鳩尾にモロに入り、バンドラは悶絶していた。そんなことは知らずとヤマトはバンドラの胸元にすりすりと頭を擦り付ける。既に離れていたロビンはくすくすと手で口元を隠して笑っていた。
お前はいつか…ニコ・ロビンを持て余す…。持て余したのは僕でした。この先考えてねえなぁ…。いつもネタ切れです。
ウタちゃんに大人の世界に踏み込んでもらうか…或いはヤマトをどっぷりと浸けるか、はたまた、他ヒロインの話を脈絡無しに書くか…。どっちにしろ、次はそういうの書くつもりです。ワノ国帰還である程度してから、原作時空前の話書いて60?ぐらいで原作時空やな。
では!!