「…おや。」
ぷるぷると電伝虫が着信を伝える。バンドラは受話器を取り、耳につけた。
「もしもし?」
『ウォロロロロッ!!…どうだ、バンドラ。近頃、顔を見せねえが、息災か?』
電話の主は誰あろう。この男を置いて世界最強生物を語れるか、百獣のカイドウであった。バンドラは口角をニィッと上げて、笑う。
「お前が人の心配するなんてな。明日は隕石でも降りそうだ。」
『ア?そりゃあ、どういう冗談だ?』
「いや?なんでもない。」
バンドラが笑ってそう返す。
カイドウも酔っているのだろう、大きく低い笑い声が電伝虫ごしに聞こえてきた。
「心配しなくても、ヤマトのやつは元気だよ。」
『なんでそこでヤマトが出てくる。』
「溺愛しているお父上がヤマトのことを心配して掛けて来たんじゃと思ってな。」
にししと歯を見せて笑うバンドラ。
カイドウはため息を吐く。
『…まぁ、あいつのことだ。大丈夫だろう。俺からは別件だ。』
「ん?なんだよ。」
『ブラックマリアの奴がキレてる。』
その言葉を聞いてバンドラは頭を抱えた。
「あ…あ…あぁ…」などと歯切れの悪い声を出している。それもそのはず。バンドラはブラックマリアが苦手なのである。
「…お前が相手してやれば良いじゃないか。」
『アイツにもポリシーがあるんだろ?最近、相手にしてやらねえからブチギレてやがるぞ。』
「……はぁ。」
半ば折れる形でわかったと返すバンドラ。
バンドラはガチャリと電伝虫を切ると頭を抱えながら、甲板へと出た。
甲板には歌の練習をするウタとそれを見るヤマトとロビンの姿があった。ヤマトはバンドラを見つけるなり、バンドラの元へと駆け出す。
「バンドラっ!!」
「おうっ。」
バンドラもそれを理解している為、両手をガバッと上げる。ヤマトがぴょんっと飛びつくとバンドラはそれをしっかりと抱えた。
「ハハッ。」
「……あれで付き合ってないってほんと?」
「ほんとほんと。」
ウタはこくこくと頷いた。ヤマトは一度離れると再び笑顔でバンドラの右腕をギュッと抱きしめる。
「で?次はどこへ行くの?」
ロビンが微笑を浮かべて言う。
バンドラはそれにニヤリと笑った。
「…新世界、ワノ国。」
「「「えっ!?」」」
3人の声が重なる。
一番、驚いているのは勿論、ヤマトである。ヤマトにとっては故郷に帰るということ。少々、ヤマトの中で不安が勝っていた。自分は…もう次で帰らなければならないのか…。
それを予期してか、その表情を見てか、バンドラはヤマトの頭を優しく撫でる。
「んっ…。」
「別に無理に帰れ、なんて言いやしないさ。もう一度寄るだけだ。それに…ワノ国独自の文化もウタにとっての刺激になるかもしれない。」
そう言ってウタを見るバンドラ。
ウタは口角を上げて微笑んだ。ヤマトはそれが嬉しかったのか、にぱーっと笑顔を現す。
「……本当に付き合ってないのよね?」
「…私が見る限りでは、うん。」
最早、ウタのそれは諦めていた。
新世界にあるワノ国は世界政府非加盟国。海軍も海賊もワノ国特有の戦士、『サムライ』により手を出せない状態にあった。
カイドウはそのワノ国を黒炭オロチという男と共に統治。それにより、向かってきた男たち、赤鞘九人男とその大将『光月おでん』と戦い、カイドウ陣営の黒炭ひぐらしがマネマネの実の力を使い、卑怯な手とはいえ、カイドウの勝利となる。
「うわぁ…!?」
ワノ国への入国方法は特異を含まず二種類存在する。
一つ目は一か八かの鯉の滝登り。もう一つはカイドウ、オロチの荷物運びのゴンドラによる入国であった。しかし、オロチはバンドラを嫌っている。何故か。
カイドウはバンドラとの約束により、カイドウが己に勝つまで人死にを出さないと決めたからである。オロチとカイドウの利用し利用されの協力関係はこれによりほぼ破滅。悲しいかな、カイドウはそのまま拠点として居座り、オロチはカイドウとバンドラを疎ましく思っていた。
…しかし、バンドラは何方の方法も使わない。
「船が…飛んだッ!?」
ウタの声に一同(バンドラを除く)は驚きの表情を示した。
「『天つ風・
船は風の道を通り、鬼ヶ島近くの海へ着地する。
一見…いや、誰が見ても危険な所業ではあるが、バンドラの緻密な風の操作により可能にした技である。
…さて。船は鬼ヶ島に到着。
バンドラ達はその船から降りると、そこにはキングが立っていた。
「…よく来たな。バンドラ。またあの無茶苦茶な入国したのか。」
「この規模の船は初めてだったが。なんとかなった。」
「なんとかなった…じゃないよ…。」
バンドラはニヤッと笑うが、ウタはそうではない。後ろから恨めしく見る目は人でも殺しそうだった。キングはそれをギロリと確認すると、鬼ヶ島へと入っていく。
すると、その中にはまるで山のような男が立っていた。即座にウタはバンドラの足元へと体を隠す。
「ウォロロロロッ!!何年振りだ?バンドラ。」
「お前がヤマトを寄越しやがったもんで、行く機会が無かったんだよ。」
カイドウは酒をごくごくと飲むとバンドラの顔をジロリと見た。
「おい…ヤマト。そいつァ、俺のもんだぞ?」
「…は?」
「バンドラはボク達のものだ。お父さんには渡さない。」
ヤマトはバンドラの腕をガシッと握ったまま首をブンブンと横に振った。カイドウはヤマトをギロリと睨んだ。
「アァ?なんで俺がそいつに刺青を彫ったと思ってる。俺のもんだって言う証明だろうがッ!!」
「そんなもの知るかッ!!バンドラはボクのものだッ!!誰がなんと言おうとッ!!」
「…違うんですけど。」
指の痕がつくほどバンドラの腕をきつく掴むヤマト。彼女の豊満な胸の感触がバンドラに伝わるものの、バンドラの腕は悲鳴を上げておりそんなことはどうでもよかった。
「…ヤマト、腕…折れる。」
「あっ…ご、ごめん。」
しょんぼりとして、腕を離すヤマトを他所にバンドラは腕がちゃんと動くか確認。その後、上目遣いで心配そうにバンドラを見るヤマトの頭を優しく撫でた。
「でだ、カイドウ。本題に行こう。…アレは何処にいる?」
「アァン?心底嫌そうじゃねえか。」
「…苦手なんだよ。襲われてから。」
その言葉を聞いて、周りにいた全員が戦慄する。バンドラを襲うような化け物がいるのかと。カイドウとキングに関しては意味合いがわかっている為、表情には出さないものの気の毒そうに見ていた。
「遊郭エリアだろう。…気を引き締めていけ。」
「……おう。」
まるで戦場にでもいくように強ばった顔で歩くバンドラ。遊郭と聞いて、ロビンも…そういうことかとため息を吐く。わかっていないのはヤマトとウタだけであった。
…鬼ヶ島の中を歩いていく。鬼ヶ島…ドクロドーム左脳にある遊郭はブラックマリアの居城と言っても間違いない。ヤマトは嬉々として、廊下を走っていく。
「あんまり急ぐな。」
「えーっと…こっちだっ!!」
そう言って向かっていった襖には…ヤマトより大きな影があった。
「…この匂い。やっと来たね。バンちゃん。」
「うおっ!?」
襖がガラリと開くと、中から手が伸びてくる。その手はバンドラをがしりと掴むとそのまま襖の奥へと持っていってしまった。
「バンドラァァッ!!」
ヤマトが青ざめた顔で中へと入る。それを追いかけるようにウタとロビンが入ると、そこには…。バンドラを掴み、ぺろりと舌舐めずりをする着物姿の大女が居たのである。
「バンちゃん。寂しいじゃないか。なんで来てくれないんだい?」
「お前がまた俺んこと、襲うからだろうがッ!?マリアッ!!」
「良い男ってのは放っておかない趣味でねぇ。それに…バンちゃんも私のこと、好きに出来て嬉しいだろう?」
そう言って耳元で囁く大女ことブラックマリア。
「おや、鬼姫様じゃないか。」
「ブラックマリアさん…ボクのこと知ってて…!!」
ヤマトはバンドラを奪われたことでプクッと頬を膨らまして、ブラックマリアを睨んでいた。ブラックマリアはふふっと笑うと、バンドラを地面へゆっくりと下ろした。
「その様子だと相当進展したのかな?」
即座にバンドラへと抱きつき、ブラックマリアを睨むヤマト。ブラックマリアはニヤッと笑い、そう返した。
バンドラの名前の呼び方。
ヤマト→ヤマト
ウタ→ウタ
ロビン→ロビン
モネ→モネ
カイドウ→カイドウ
ビッグマム→リンリン
ナミ→ナミ、嬢ちゃん
ノジコ→ノジコ
ベルメール→ベルメールさん
シャンクス→シャンクス
ベックマン→ベックさん
ルフィ→坊主、ガキ、小僧
シャーロット・スムージー→スムージー
シャーロット・カタクリ→カタクリ
シャーロット・ペロスペロー→ぺろりん
キング→キング
ページワン→ぺーたん
うるティ→うるティ、うるちゃん
ブラックマリア→マリア
主要人物だとこのくらい。まだ出てないやつはこの先出るかも。てことで、ワノ国ですな。ペーたんとかブラマリさんとか書きたかったんや。許してくれ。
ブラックマリアとバンドラの関係は……w