…とある海。
『レッドフォース号』は海原を越え、いつものようにザワザワと騒いでいた。…一人の男を抜いて。
「お頭、ウタの写真を部屋に貼るのはやめてくれ。」
副船長ベン・ベックマンは冷や汗をかきながら、酒をジョッキで飲む船長へ言った。船長…赤髪のシャンクスは今や四皇。その近くには電伝虫。
「…おい、バンドラ。」
『…な、なんでしょうか。』
「…ウタに手ェ出しやがって…くそったれ。」
シャンクスは青筋を立てて、猪口を持っていた。ことの発端は勿論、バンドラ。また、口を滑らしたのだ。シャンクスの放つ覇王色にベックマンを含めた全員が汗をかいている。
「確かにテメェにウタを託した。他でもねえ女好きのテメェでも…ッ!!ウタに手ェ出すとは思わなかったァッ!!」
『…いや、向こうも向こうだったから…頬ぐらいなら…良いかと…。』
「頬ぐらいだとッ!?ふざけんな…!!」
…シャンクスは歯を剥き出しにして叫んだ。父心もある…だが半分以上は嫉妬であった。
「俺はウタに頬キスされたの…いつだったと思って…ッ!!」
「…嫉妬かよ、お頭このヤロー。」
冷や汗をかきながら、そう言うのはラッキー・ルゥ。シャンクスは涙を流しながら、ラッキー・ルゥを睨む。
「…お前…まさか…く、口にまでしてねえだろうなァッ!?」
『す、するわけねえだろッ!?あっちに…させられかけた…というか…』
「させられかけただとォッ!?なんでウタがお前にキスするんだッ!?」
「…落ち着け。お頭。」
酒が入り、頭に血が昇っているシャンクスをベックマンが肩に手を置いて止める。シャンクスは受話器を持てないため、ベックマンが代わりに受話器を持ち、自分の口元へ持ってきた。
「どうせ、ウタにはそんな感情ねえんだろ?この前、ルフィのことが好きだって言ってたろ?」
『…数多くの女を相手にしてきたものの、全部、花魁やらそういうのだ。純粋無垢な少女の考えることなんざ、穢れた大人にゃわからねえよ。』
「…女心と山の天気は変わりやすい…ってか?」
受話器の向こうはさぁなと答える。
シャンクスは猪口を甲板に置くと、ベックマンから電伝虫の受話器を引ったくるように奪う。
「いいかッ!!ウタはなぁ…俺の娘だッ!!いくらお前が迎えに行ってくれて、お前に恩があろうとッ!!娘に手ェ出すやつは誰であろうと許さんッ!!」
『…五月蝿え…。』
「おい野郎どもッ!!今すぐワノ国に乗り込むぞッ!!」
シャンクスの声にルゥを含めた船員たちは嫌そうな顔でえぇ…と返した。シャンクスは激昂。
「ウタのことは大切じゃないのかッ!!大好きじゃねえのかッ!?」
「…そりゃそうだけどよ。お頭。バンドラの奴にゃ罪はねえだろ。」
「あぁッ!?」
酒が入っているシャンクス。ベックマンの落ち着いた声にシャンクスは声を荒げた。ベックマンはタバコを蒸しながら、シャンクスを見た。
「ウタは俺たちに捨てられたと思ってんだ。そこに一人、迎えにきてくれた。懐くのも当たり前だと思うぜ?」
「…けどよぉ…。ウタにゃ…まだ早いぜ?」
「お前が心配するのもわからんでもない。…でも、決めるのはウタだ。ルフィを選ぶか、バンドラを選ぶか、アンタはただ祝福したら良いんじゃねえか?」
優しい声色にシャンクスはぐぬぬ…と言葉を失った。
「おいッ!!バンドラッ!!」
『…なんでしょ。』
「ウタを泣かせたら、いくらお前でも許さねえぞッ!!男なら…約束守りやがれッ!!」
シャンクスは声を荒げてそう言った。
バンドラは受話器越しでニヤリと笑う。
『…言われなくても。当たり前だろ。俺が約束を破ったことが一度でもあるか?』
「…チッ。ねえよ。」
そうシャンクスが言うと受話器越しにバンドラの爽やかな笑い声が聞こえた。ベックマンもニヤリと笑う。シャンクスはその受話器を電伝虫へと収めた。
「…納得いったか?」
「いくわけねえだろ。アイツ、どうせ、ウタと他に誰かたぶらかしてる。」
足を組み、胡座をかくと右手で頬杖をついてぶうたれるシャンクス。その子どものような姿を見て、ベックマンは優しい顔をして、シャンクスの隣へと座った。
「…俺たちが願うのはウタの幸せだけだ。アイツが笑って過ごせる新時代を俺たちが見に行く。」
シャンクスがそう言うとベックマンはそうだなと笑った。
「なぁ…ベック。」
「…ん?」
「…ウタはまだ俺のことをお父さんだと思ってくれているかな?」
ベックマンの方を見ずそう言うシャンクスにベックマンを含めた船員たちはキョトンとするも、数秒経つと船内はドッと沸きたった。
「なんだよッ!?」
「ワッハッハッ!!お頭らしくねえッ!!」
「確かにそうだッ!!バンドラの奴の馬鹿がうつったんだなッ!?」
「お〜ま〜え〜ら〜ッ!!」
……本日も赤髪海賊団は平和だった。
「…そうか。もう出るか。」
新世界ワノ国。
バンドラたちは船の近くまでやってきていた。見送り人はキングとブラックマリア…それとうるぺーの二人。ブラックマリアはバンドラの手を優しく握る。
「バンちゃん。いつでも帰ってきて良いからね?」
「やーだよ。お前、俺のこと襲うだろ?」
「やだよぉ。襲うわけないじゃないか。…私が鬼に怒られちゃうよ。」
首を傾げて疑問に思うバンドラ。
ブラックマリアはバンドラの隣でぷくーっと頬を膨らませながら睨むヤマトを見て、舌を出しながら笑っていた。
ブラックマリアが手を外すと次に近寄ってきたのはページワンだった。
「バンドラさん。」
「どした?ペーたん。」
「俺も…連れてってくれッ!!」
ページワンが目を輝かせながらそう言った。ページワンの言葉に一番驚いたのはうるティである。バンドラはふっと笑う。
「どうした?急に。」
「俺だって…アンタやカイドウさんみたいに強くなりてえッ!!アンタに着いていきゃ俺は強くなれるかもしれねえッ!!」
「ペーたんっ!?オイコラッ!!バンドラッ!!」
ページワンの嘆願を微笑んで聞くバンドラ。そのバンドラにうるティは胸ぐらを掴む。
「どうした?うるちゃーん。」
「うるちゃん言うんじゃねぇッ!!お前がペーたんになんか吹き込んだんだろッ!?」
流石はバンドラと言って良い。
うるティの頭を撫でながら笑顔でそれを受け止める。うるティはぎちぎちに胸ぐらを掴み、青筋を立てていた。
「やめろよ…姉貴…。俺は自分で考えてついて行こうと…。」
「あ゛?お前、私に口答えすんのか?ゴルァッ!!ペーたんが着いていくなら、私だって行くかんなッ!!」
「…えぇ…。」
うるティの声にページワンは冷や汗をかいて、嫌そうに言う。それが気に障ったのか、バンドラの胸ぐらから手を外し、ページワンの胸ぐらを掴み上げた。
ページワンは苦しそうに唸る。
「…ガキのお守りはこれ以上無理だぞ?」
「わかってる。俺たちとしても戦力が減るのは防ぎたい。」
キングがクールにそう言うとページワンはええ…と少し嫌そうにまた言った。バンドラはにぃっと微笑む。
「次会ったときにゃ、もっと強くなっとけ。そしたら連れてってやる。」
「ホントかッ!?」
「あぁ。うるちゃんもそれで良いだろ?」
うるちゃん言うなとまたバンドラへと噛み付くうるティ。バンドラは逆にうるティをひょいっと抱き上げる。流石にまた胸ぐらを掴まれると服がよれてしまうからだ。
「はーなーせッ!!はーなーせーよッ!!」
暴れるうるティをページワンへと預けるバンドラ。うるティはページワンにおぶさりながらガルルとバンドラを威嚇した。
「ふぅ。それじゃあ、行くわ。カイドウによろしく。」
「…わかった。」
キングがそう言うと4人は船へと乗り込む。
ブラックマリアは最後まで名残惜しそうに小さくなる船の姿を見ていた。
昔うるティを入れるかどうか迷ってます。
彼女ってすごく難しいんですよね…。語尾が変わるから。ペーたんはバンドラさん大好きです。理由はかっこいいかららしいです。技が。
ロビンはそろそろかなぁ…。
では次回。ではでは。