燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第50話

「ん〜?ん〜。」

 

…バンドラは悩んでいた。

何をかと言うと船である。今の船はココヤシ村からの頂き物であり、すぐに乗り換える必要も無く、3年と半年旅をしてきたものの。正直言うとかなりガタがきていたのだ。

 

「…どうしたの?」

 

首を傾げて唸るだけのバンドラにウタがジトーとした目で聞く。ロビンもヤマトも首を傾げてその様子を見ていた。

 

「…いやぁ、そろそろ船の替え時かと思って。」

 

「これ、ココヤシ村のみんなから貰ったものだよ?そう簡単に手放しちゃ…。」

 

「とはいえ、人も増えてきている。ロビンがいつか降りると言ってる以上、あれだが、乗せると決まったわけじゃないがうるちゃんペーたんにモネとその妹などなど。これから増えない確証はないからな。」

 

…船は人を運ぶもう一人の仲間。

故にその不始末で仲間を運べないとなると…船が浮かばれない。

 

「だったら、ウォーターセブンなんてどう?」

 

湯気の立ち上るコーヒーカップに口をつけつつ、ロビンがそう言った。

…水の都ウォーターセブン。新聞では、そこで海賊王の船を作った男が司法の塔エニエス・ロビーに運ばれて処刑されたとか。バンドラはそうだなとニヤリと笑った。

 

「「ウォーターセブン?」」

 

「水の都ウォーターセブン。世界有数の船大工の街よ。そこにいる船大工は高いけれど絶対手を抜かないほどの実力者揃いでとても強い。」

 

博識なロビンが首を傾げるヤマトとウタにそう言った。

 

「幸い、金なら3億ある。中々良い船が買えるだろうな。」

 

「今思ったけれど、それほどのお金…どこから来るの?」

 

ロビンが首を傾げる。

…バンドラは海賊ではない為、略奪行為はしない。海軍時代のあれで正義感だけはあるのだ。しかし、何故か、財源だけはそこいらの海賊よりある。

 

「あぁ。そりゃ、ウタのライブのおかげとリンリンの回し金だな。」

 

「さっすが、私。…でも、そんなに取ってないでしょ?」

 

ウタの目にバンドラは歯を見せて笑いながら勿論と言った。ウタのライブは収益のためのものではない。金儲けの為に歌うことをウタは嫌うのだ。あくまでウタにとってはビジネスでは無く、自分の歌を披露する場。

 

しかし、それでは聞く側が嫌がる。

これほどまで素晴らしい歌を聞くのに聞きっぱなしではどうなのかと。なので、その国を統治する王族と相談し、毎回のように少しだけお金を頂いている。それが貯まり貯まったものと、なんとしてでもバンドラを手に入れたい『ビッグマム』シャーロット・リンリンからの金で大体3億ほど。

 

「本当は使うべきじゃあねえんだが…背に腹は変えられないしな。」

 

「…すごく嫌そうなのだけど?」

 

苦虫を噛み潰したような顔をするバンドラにロビンが無表情で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…船は海を越えて、造船の街ウォーターセブンへと辿り着く。大海に立つその街並みはまさに美しいと言って良い。

 

「うわぁ…!!噴水だっ!!」

 

ウタが目を輝かせながら、周りを見る。ウタにとってはまるで夢のような世界だった。

 

「船を仕立ててほしいってか。」

 

「そうです。今の船でも走れはしますが、狭くてですね。」

 

バンドラは金の入った大袋を持って、ガレーラカンパニーの船大工の元へ話をつけに行った。話を聞いてくれているのは、ウォーターセブンの市長候補、アイスバーグであった。

 

「なるほどな。マー、良い判断ちゃ良い判断か。」

 

「ええ。頂き物ですが、もう随分とガタがきてるでしょう?」

 

「そうだな。あと走れて一年か…それ以下か。」

 

船大工のアイスバーグがこう言うならそうだと納得するバンドラ。ヤマトに関しては船に向かって話しかけていた。ヤマトもウタも…勿論、バンドラもこの船には愛着がある。だが、やはり壊れてからでは遅いのだから、仕方がない。

 

「わかった。仕立てておこう。お前らっ!!仕事だっ!!」

 

その声に船大工たちが一番ドックに現れる。

その中には鼻が四角く伸びている船大工や肩に鳩を乗せている船大工など、個性的というには個性的すぎる面々が立っていた。

 

「安心しろ。みんな、腕は確かだ。」

 

「ええ。我々はこの街を見て回ります。金は先に。」

 

「了解した。」

 

そう言ってアイスバーグは3億を受け取る。バンドラたちは船に最後の別れを言うとウォーターセブン内へと入っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あのさ。」

 

「なーにー?」

 

ウォーターセブンは水上都市。

陸地もあるものの、移動の多くはヤガラブルと呼ばれる小船型の海の馬車のようなものに乗り行う。引くのはヤガラと呼ばれる馬のような魚。

 

中型のヤガラを借り、ウォーターセブンを見て決めたバンドラだが…。

 

「…周りの目が痛い。」

 

…今回はウタがバンドラの腕に抱きついているのだ。バンドラはいつもと違って狭いヤガラブルの上。逃げるにも逃げられない。

 

「別にいいじゃない。いつもヤマトとやってるんだし。」

 

「…はぁ。」

 

今朝もシャンクスに怒られたばかりのバンドラ。ウタは何もわかっていないようにキョトンとする。

 

「むぅ…。」

 

それを気に入らないと言わんばかりに後ろのヤガラブルから見ているのはヤマトだった。ウタとバンドラが仲良くしているのはヤマトとしては好きだ。だが…何故だか、バンドラとウタが必要以上にくっついているのが気に食わない。

 

「なんか、ウタちゃん。バンドラと近すぎない?」

 

「…貴女がそれを言うのかしら?」

 

ジトーとした目でヤマトを見るロビン。ヤマトは手を組んでむすっとしていた。ロビンはその様子にため息をついた。

 

「良いじゃない。仲がいいことは悪いことじゃないわ。」

 

「良すぎるよッ!?…あんなに近くで…。ち、チューしちゃいそうなくらい近いじゃんっ!!」

 

「…貴女がそれ、言うのかしら。」

 

またもやジト目でヤマトを見るロビン。

…直後にロビンは微笑を浮かべる。

 

「…確かにいい人よね。」

 

「えっ?」

 

ゆっくりと進むヤガラブルの小舟の上で頬杖をつき、そう言うロビン。目の前にはバンドラの頬を突っつき、歯を見せて笑うウタの姿があった。

 

「ウタから色々聞いたわ。あの人、あの子の為にも貴女の為にも奔走してたんでしょ?見ず知らずの女の子の為に。」

 

「うん。バンドラが居なきゃ…ボクは死んでた。」

 

「…そう。私もあの人のお節介に助けられてるのよねぇ…。」

 

そう言ったところでロビンがチラリとヤマトを見ると…何故かヤマトは照れていた。ロビンがため息をついて、ふっと笑いながら何故照れているのかと聞く。

 

「ハハッ。バンドラが褒められてるの、何故か知らないけど嬉しいんだっ。」

 

「ふふ。わかってるの?バンドラさんを褒めてる女の人がいるってことは貴女の敵が増えたってことよ?」

 

「うえっ!?そ、それはダメだっ!!」

 

取り乱すヤマトにロビンはくすくすと笑う。

 

「ふふ。大丈夫よ。貴女たちほどじゃないから。」

 

「む…そ、それなら良いけど。」

 

「でも、彼、鈍感だからね。すぐ他の女の子に手を出して取られちゃうわよ?」

 

その言葉にヤマトの肩がピクリと動く。ロビンは清々しい笑顔で目の前を見る。目の前のヤガラブルではウタがヤマトに倣うようにバンドラの肩へと頭を寄せていた。

 

「あらあら…積極的になっちゃって。」

 

「ねぇ、ロビン。」

 

なぁにとロビンが横を見る。

するとヤマトが指をツンツンと突っつかせて、顔を赤らめていた。

 

「…ボクはバンドラのこと…好きなのかな?」

 

「…さぁね。貴女しかわからないわ。」

 

そう言ってロビンはふっと微笑んだ。




ウォーターセブンはなかなか難しいよね。
とりあえす、ウタ、ヤマトとイチャイチャさせときゃいいか…的な。ロビンさんの扱いを困る今日この頃。

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