燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第51話

ヤガラブルを降り、街の敷地へと行くバンドラ達。飛び降りた途端にヤマトがバンドラのウタとは違う方の腕に抱きついた。

 

「だぁーっ!!なんなんだっ!!一体ッ!!」

 

「良いじゃんかッ!!ウタちゃんとくっついてたのにボクは嫌なのかッ!!」

 

「嫌じゃねえが、動きづらいんだよッ!!」

 

ヤマトは自分の胸にバンドラの腕を寄せて、プクッと頬を膨らませながら怒っていた。周りから見れば、バンドラたちは仲睦まじい親子のように見えるだろう。

 

「…はぁ…。」

 

最早、諦めるしかあるまい…とため息を吐くバンドラ。後ろからロビンがご愁傷様と言わんばかりに見ていた。

 

「綺麗ね。」

 

ウタが手を繋ぎ、横を見た。そうだなとバンドラが笑った。ヤマトも目を輝かせて周りを見ている。

 

ウタが手を離して前へと飛び出す。

そこにはウォーターセブンを代表する大噴水があった。

 

「すごいな。流石、水の都。」

 

そう言って笑うバンドラの横でヤマトもそうだねと笑った。

 

ふぅっと近くのベンチに座るバンドラ。ロビンは目を輝かせながら噴水を見るウタを笑顔で眺めていた。久々に何もない場所、羽をしっかり伸ばせるのだろう。ヤマトもバンドラに頭を預け、引っ付きながらその様子を見ていた。

 

「おい…人目を気にし…。」

 

何度も言っているが聞かねえなと頭を押さえてため息をつくバンドラ。ヤマトも目を細めてにししと笑っていた。…バンドラの右肩にヤマトの髪がかかる。

 

「…ここ、おでんの航海日誌にあったよ。」

 

「あぁ。海賊王ゴールド・ロジャーの船はここで出来たんだからな。」

 

…今、あのこの世の海を一周し、最後の島ラフテルへと辿り着いた船の居場所は一部の人間しか知らない。もしかするとそれはもうこの世に居ないのかもしれない。

 

「…なんだよ。」

 

「えへへっ。」

 

ヤマトがバンドラの頬に右手の指を沈める。バンドラはふっと笑うとヤマトの頬を両掌で優しく挟んだ。

 

「わっ、冷たい。」

 

「るっせえ。」

 

ヤマトは驚いたように口を開けると、バンドラの手を自分の頬から剥がし、自分の手で挟み込んだ。

 

「ボクの手の方があったかいでしょ?」

 

「…いや、どっこいどっこいだな。」

 

「ええー?うっそだー。」

 

歯を見せて笑うヤマト。

バンドラは優しく微笑むとそんなヤマトの頭を優しく撫でた。もはや、周りの目など気にしていない。

 

「チューしよっ!!チュー。」

 

「がっつくな。…ったく。」

 

ヤマトはバンドラの首に手を回すとそのまま唇をバンドラと重ねる。バンドラも目を閉じてそれを受け入れた。

 

「…ぷはっ。えへへ。」

 

照れたように笑うヤマトにバンドラはふっと微笑む。

 

…ただその裏で事件が起こっていることを知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処がウォーターセブンかえ〜?」

 

「はいっ。チャルロス聖ッ!!」

 

…世界には絶対に手を出してはいけない有権者がいる。それが天竜人であった。天竜人は人ではない、神なのである。その天竜人を守るのが政府直属の組織サイファーポールの仕事。今回はCP9の長官であるスパンダムがウォーターセブンの地理を知っているということで抜擢された。

 

「一度来てみたかったんだえ〜。綺麗だえ〜。」

 

「さ、左様でございますか。」

 

スパンダムは手揉みをしながら、チャルロス聖に着いていく。チャルロス聖が通る道には人々が頭を下げていた。人間店(ヒューマンショップ)もない、こんな辺境の地に来た理由は一つ。綺麗だと聞いたからである。…それだけなら良かった。

 

「ホントにバンドラさん達に言わなくて大丈夫?」

 

「だって、バンドラとヤマト、イチャイチャしてるんだもん。私にアレを止める勇気はないわ。」

 

その近くにロビンとウタが居たのだ。

ロビンは口元に手をやりクスリと笑う。ウタは新曲になるだろう、『私は最強』という歌を口ずさみながら歩いていた。

 

「ッ!?」

 

ロビンは即座にウタを抱いて、隠す。ウタはどうしたのと上目遣いで聞くも、ロビンの尋常じゃないほど焦った顔が物語っていた。そこには悠々自適に歩くチャルロス聖とその取り巻き、そして、CPが居たのだ。

 

「さっきこっちからとても良い歌が聞こえたえ〜。わちしの奴隷にしたいえ〜。CP、探すんだえ〜。」

 

「は、ハッ!!」

 

スパンダムは周りを探し出す。

象剣ファンクフリードを握りながら、ロビンとウタの入った路地裏へ入っていく。

 

「ハァ…ハァ…ッ!!」

 

ロビンとウタは息を切らしながら走る。スパンダムは見つけることができず、その路地裏へ入り、電伝虫を取り出した。

 

「…おい、天竜人が歌の上手い娘を御所望だ。探し出せ。…あ?それだけだと探せねえだと!?…それなら簡単だ。ニコ・ロビンを見たんだろ?多分、その近くにいた女が歌姫だ。多分、そいつだろ。良いからッ!!早く探し出せッ!!」

 

ガチャリと切られる電伝虫。

話の相手は…鳥を肩に乗せた男だった。鳥を肩に乗せた男は鼻の長い男を連れて、闇へと隠れていく。

 

一方、ロビンたちは兎に角、足を進めて逃げていく。そろそろ話をして欲しいとウタが言うもロビンは無我夢中で走っていく。切羽詰まっていたその顔にウタは何も言えなかった。…あのクールなロビンが取り乱している。その事実がウタを不安にさせた。

 

「…ッ!?」

 

「きゃっ!?」

 

足がもつれてロビンがこける。

手を引かれていたウタもドミノ倒しのようにこけてしまった。

 

「…見つけたぞ。ニコ・ロビン。」

 

「その子が天竜人の御所望じゃろう。その子も連れて行こう。」

 

空間が大きく丸く開き、そこから先ほどの鳩を肩に乗せた男と鼻の長く四角い男が立っていた。その向こうから大柄な男も現れる。

 

「まさか、これほど早く見つけることができるとはな。オハラの生き残り、ニコ・ロビン。」

 

「…この子だけは生かしてあげて。」

 

「ダメだ。歌姫は天竜人が所望。お前ならこの言葉の意味がわかるはずた。」

 

鳩を肩に乗せた男『ロブ・ルッチ』がニヤリと笑う。ロビンはウタを守るように抱くもそんなことはどうでも良いと3人はジリジリと寄ってきた。

 

「…ウタ、貴女だけでも…走って逃げて。」

 

「えっ。ロビンは…!?」

 

「…大丈夫。私は大丈夫よ。…ほら…早くッ!!」

 

ウタは頷くとロビンの言う通りに走って逃げていく。しかし、そっちは先程の路地裏。そこからはゆっくりとスパンダムが来ていた。

 

「ファンクフリードッ!!」

 

「キャッ!!」

 

象剣ファンクフリードはゾウゾウの実を食べていた。獣型に変化したファンクフリードがウタの頬を切り、進む。ウタはその衝撃に尻餅をつき、倒れた。頬からは血が流れ出る。

 

「はっ。このクソガキ。俺の手を煩わせやがって。」

 

スパンダムは獣型になったファンクフリードの身体をポンポンと優しく叩く。するとルッチが即座にウタとロビンに海楼石の錠をつけた。

 

「…天竜人への貢物では?」

 

「あっ!?しまったッ!?…まぁいい、こけたことにしよう。それにそうすりゃあ商品価値が無くなったと思われて殺されるのはこっちの女だからな。」

 

ニィッと下卑た笑みを浮かべてウタの錠を掴み、ウタを立たせる。

 

「俺はこの女を天竜人に届けて、ニコ・ロビンを回収する。お前らは潜入捜査を続けとけ。」

 

そう言ってスパンダムは二人を立たせ、連れて行った。

 

「…なぜ、ニコ・ロビンまで。」

 

「手柄を独り占めしたいんじゃろう。ワシらは捜査を続けるぞ。」

 

そう言って3人はまたあの穴に入り帰って行った。




落差よw

スパンダムは好きじゃないけどファンクフリードは好き。カワイイ。

まぁ、この後は皆さんのご想像通りかと思います。過去一でバンドラとヤマトの逆鱗に触れます。お楽しみに。

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