燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第52話

「ウタちゃん達、遅いねー。」

 

「そうだなー。」

 

ウタとロビンが攫われる少し前。

バンドラとヤマトはお互いに寄り添いながら、ボケーとしていた。

 

「なんか、みんな騒いでるね〜。」

 

「そうだなー。」

 

噴水近くの広場もどうやら何かがあったようで人々がごった返してる。バンドラは見聞色を町全体に敢えて張り巡らして見る。

 

「…どお?」

 

ヤマトもそれがわかっているのか、バンドラに首を傾げて聞く。バンドラは首をボキボキボキッと鳴らして、少しムッとした顔になった。

 

天竜人(クソ)共が来てるらしい。もうちょっと待ってろ。流石に此処は人が…お…お…すぎ…て……ッ!?」

 

「うわっ!?ば、バンドラッ!?」

 

バンドラが急に立ち上がる。

バンドラに引っ付いていたヤマトはバンドラが立ち上がったことで支えを失い、そのままベンチにゴツンと頭をぶつけていた。

 

バンドラの顔が切羽詰まったようになる。

バンドラは近くに居る男の人の肩を掴んだ。

 

「な、なんだぁッ!?」

 

おい…。天竜人の話を聞かせろ…。今…何してる?

 

「ひ…ひぃぃぃッ…!!」

 

バンドラの漏れ出しの覇気と殺気に男性は怯える。その顔は青筋が立っており、手には力がこもっていた。声はドスが効き、低くなっている。

 

「あ、あ…赤と白の髪の女の子と…黒髪の女の人をつつつ…連れてぇッ!?む、向こうで…。」

 

「………そうか。ありがとよ。」

 

バンドラは男の人の肩から手を離すと男の人は一気に走り、逃げ出した。バンドラはベンチにかけていた狂骨を握る。その手は固く固く閉ざされていた。ヤマトは冷や汗をかきながら、バンドラの元へといく。

 

「ど、どうしたんだ!?ウタちゃん達に…何か…。」

 

「……ウタとロビンが攫われた。自分のことを神だと思ってるクソ以下の獣にな。俺は…二人を助けにいく。お前は?」

 

ヤマトもそれを聞き、身体から覇王色が漏れ出し、金棒『建』を地面へと振り下ろした。地面は大きく亀裂が入り、大きく地面が隆起した。

 

「…なんて奴らだ。ウタちゃん達を…ッ!!」

 

「…行くぞ。」

 

バンドラとヤマトは急いでウタ達の居る方向へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チャルロス聖ッ!!歌姫を連れて参りましたッ!!」

 

チャルロス聖は人間奴隷の上に乗り、スパンダムを待っていた。遅いと怒り心頭のチャルロス聖に丁重に持ってきたウタを渡すスパンダム。

 

「おーおーっ!!これだえ〜ッ!!良いえ〜っ!!わちしの嫁にしても良いえ〜!!」

 

チャルロス聖はウタの肩に触れて、笑っていた。ウタはその手に不快感を露わにした顔を示した。チャルロス聖の汗で湿った手が触れる。

 

「ん゛〜ッ!!んんぅ゛ッ!!」

 

口に枷をつけられて、言葉が話せない状態のウタ。ロビンも同じ状況だった。手を後ろで止められ、口に枷をつけられている状態だった。

 

「ん〜う〜。良いえ〜っ!!おいっ。歌姫の枷を外すえ。」

 

「は、はいぃぃッ!?」

 

スパンダムはなんで俺が…と思いつつも、ウタの口の枷を外した。ウタは無言で涙目になって、チャルロス聖を睨む。

 

「歌姫、お前の名前はなんだえ〜?わちしのお嫁さんにするえ〜。」

 

「……やだ。」

 

その声に周りは戦慄する。

天竜人の護衛兵達はウタにランスを向けて、不敬だと怒った。チャルロス聖はあっけに取られたように放心するも、びっくりしながら聞く。

 

「お、お前に拒否権はないえ〜っ!!わちしはお前を連れて行くと決めたえ〜っ!!連れて行くえ〜ッ!!」

 

「やーだッ!!アンタ、友達居ないでしょッ!!」

 

「なっ!?」

 

ウタは敵意剥き出しにしながら、チャルロス聖を睨む。ウタも天竜人については知っている。絶対に相手にしてはいけない、手を出してはいけない存在だと。しかし、それを聞いたのはバンドラからであった為、ウタとしても(一般的に言うと)間違った知識を得てしまっていたのだ。

 

「ぐ…ぐぬぬぬ…ッ!!」

 

「アンタなんか大っ嫌いッ!!」

 

「はぁッ!?……もう良い。お前は殺すえ〜。」

 

跪くウタの頭に天竜人の金色の銃の銃口が光る。チャルロス聖の頭は完全に血が昇っていた。

 

「ん゛ん゛〜ッ!?」

 

「五月蝿えんだよッ!!馬鹿女ッ!!」

 

その状況に声を上げようとするロビン。

そんなロビンの頭をスパンダムは五月蝿いと蹴る。そして、そこから抵抗できないように何度も何度も蹴り続けた。

 

「ロビンッ!?」

 

ウタが後ろを向いてロビンの名前を叫ぶ。

そのせいか、おかげか、チャルロス聖の放った弾丸はウタの頬を掠めるのみだった。

 

「チィッ…!!おい、お前たち…ソイツ、殺すえ〜ッ!!」

 

「「…ハッ!!」」

 

天竜人の側近のような黒ずくめの男達が銃を抜く。…流石、赤髪の娘というべきか、銃には臆さず、ただロビンの心配をするのみ。

 

「…やるえ。」

 

その言葉を皮切りに銃声は…聞こえることはなかった。

 

「はっ?」「ハァァァァッ!?」

 

チャルロス聖とスパンダムが声を上げる。目の前の光景が信じられなかったのだ。殺せと命令したウタは全くもって無傷。逆に黒ずくめの男達が額に穴を開けられて倒れていた。

 

「な…何が…起こった…え〜…?お、おい、CP9ッ!!」

 

「…は、はいッ!!」

 

「何が起こったか…状況を…ひ、ひぃ…ッ!?」

 

チャルロス聖は目の前を見て、悲鳴をあげる。スパンダムはその方向をなぞるように見る。そして、腰を抜かしてビビっていた。

 

「あ…あぁ…ぁぁあ…!!」

 

……そこには比喩でもなんでもなく二人の鬼がいた。片方は白い般若の青い長髪の面をつけ、もう一つは黒い般若の真っ赤な長髪の面をつけていた。二人の殺気に地面を揺らす。そこには多少なりとも覇王色の覇気があったろう。

 

「な、何者だッ!?天竜人に逆らうのかッ!?」

 

甲冑を着た兵士達が天竜人を守るように前に出る。数としては4、5人は居るだろう。赤い長髪、黒い般若の面の男…バンドラは目の前に突かれたランスを掴む。

 

邪魔だ…。

 

鋼鉄のランスを軽く掴み、上へと曲げ上げる。

 

「退いてッ!!」

 

青い長髪、白い般若の面を被った…ヤマトは残りの兵隊を金棒で殴り倒した。

 

「うぁ…えっ…お…お前ら…。し、CP9ッ!!わちしを守るだええッ!!」

 

「は、はいぃぃぃ…ッ!!行け、ファンクフリードッ!!」

 

スパンダムは天竜人により半ば無理やり、動かされる。先程の象剣ファンクフリードを獣型にし、前へと突進させる…が…。

 

……あ゛?

 

バンドラは面を外し、ファンクフリードを睨む。ファンクフリードは怯え、泣きながらスパンダムの後ろへと隠れた。

 

「お、おい…ファンクフリードッ!?」

 

「…ヤマト。ロビンとウタを…頼む。」

 

「わかった。」

 

ヤマトも面を外し、ロビンとウタの錠を外す。ヤマトも海楼石の為、力が抜けるものの勢いで外して行く。

 

「…ひっぐ…。」

 

ウタは海楼石の錠が解かれた瞬間、ヤマトに抱きつき、泣き出した。よほど、チャルロス聖に触られたのが嫌だっただろう。再び、ヤマトとバンドラの額に青筋ができる。ヤマトはそれを押さえて、優しく優しくウタの頭を撫でた。

 

…おい。

 

「…は、ははは…はい…ッ!?」

 

スパンダムは尻餅をつき、後ろへとゆっくり下がる。バンドラはそんなスパンダムの首元を掴み、上げた。

 

テメェら、下衆が。なんで息してんだ?

 

「ボゲァッ!?」

 

バンドラはそのままスパンダムを地面にめり込ませた。スパンダムは頭から血を流しながら、気絶した。ファンクフリードもそれを見てか、威圧感からか気絶させた。

 

そして…一人逃げようとする天竜人へバンドラはギラリと睨む。

 

「ひ…ひぇ…わ、わちしは天竜人だぞぉ〜ッ!?」

 

「うん。それが?

 

敢えてバンドラは語気を強めてそう言った。チャルロス聖は頭から汗を出して、震える声で悲鳴を上げていた。ヤマトもウタをロビンに預け、金棒を引き摺りながらチャルロス聖の前へと出る。

 

「ボクもね。びっくりするぐらい気分が悪いんだ。…君を一発殴らないと気が済まない。」

 

「ひっ!?」

 

「お前さ…天竜人ってさ、もはや神なんだろ?だったら殺しにはなんねえよなぁ…?」

 

ボキボキと首を鳴らすバンドラ。ヤマトも何故か準備体操を始めた。

 

…天竜人にとっての誤算は三つ。一つはバンドラが天竜人に対して恐怖心を持っていないということを知らないこと、一つはヤマトが天竜人を知らなかったこと、そして、最後の一つはバンドラ達にとってウタがどれほど地雷だったから…知らなかったこと。

 

「…さてと、やるか。」

 

「そうだね。」

 

「…ひ、ひぃぃぃッ!?」

 

「「せぇーのっ!!」」

 

ヤマトとバンドラがどうタイミングで踏み込む。

そして、動けなくなっている天竜人の顔に拳を叩き入れた。

 

「ガボァアッ!!」

 

「オラよッ!!」

 

「ウゲァッ!?」

 

「そら、もういっちょっ!!」

 

チャルロス聖をバンドラが4回ほど殴りつける。せめてもの優しさで能力も覇気も使わず、素の力で殴りつけた。チャルロス聖は顔の原型を止めないほどボコボコにされた。チャルロス聖はピクピクと動きながら、嗚咽のような声を漏らす。

 

「…もう俺らの前に現れるな。」

 

「は…はぃ…。ず、ずびばぜんでじだ…ッ…。」

 

そう言って倒れた。

 

「バンドラ…。」

 

バンドラは目を晴らしながら向かってくるウタを抱きしめる。

 

「…ごめんな。俺がもっと注意してれば。」

 

「ううん。ありがとう。助けてくれて。」

 

バンドラはウタを強く強く抱きしめてそう言った。ウタもバンドラの胸に頭を擦り付けて、泣いていた。ヤマトとロビンはその様子を優しく眺めていた。

 




ルフィ以上に容赦ないからね。この二人は。
では次回。ではでは。

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