「う、海の上に…お城ッ!?」
ヤマトの声が響く。
…バンドラ達の目の前に現れたのは、大きな電伝虫が運ぶ要塞。バンドラはニヤリと笑う。
「…これが、ジェルマ王国…。」
ロビンも言葉を失っていた。
「…天帝、バンドラか。」
城門が開き、中から髪の赤い男が1人出てくる。ジェルマ王国の王子ヴィンスモーク家の長男、ヴィンスモーク・イチジだった。その顔に感情はない。
「父上がお呼びだ。中へ入れ。」
「昔よりは待遇いいねぇ。ウチの船員もいいかい?」
「…良いから入れ。」
そう言ってイチジは中へと入って行った。船を近くに寄せて、バンドラたちは中へと入っていく。ヤマトとウタは初めて見たその空間に、ロビンは歴史的な意味で周りを見渡していた。
「ジャッジのクソジジイは健在かい?」
「…貴様にやられてから、丸くなった。もう少し早ければ、サンジの奴も逃げなくて済んだのにな。」
…ジェルマ王国とバンドラの因縁はとても深い。とある事情でウタと会う前はMADSによく顔を出していたバンドラ。そこでジャッジの悪行を知ると、すぐさま船を出し、ジェルマ王国へ。
ジェルマ王国によじ登り、入ったバンドラ。
その昔のよしみにジャッジが吐いた言葉は…出て行けの一言だった。
しかし、バンドラの敵ではない。
ジャッジは狂骨の初斬りの相手にされ、最終的にバンドラと話をつけ、生き残る。執念が彼を生かした。
「…父上、バンドラが来ました。」
赤い大きな扉の前にイチジは送る。
かつての栄華を思い出させるような重厚な作りのそれの先から、低く唸るような声で返事が聞こえる。ギィィィ…と重々しい音と共に扉が開くと…。
「「えっ!?」」
「…っ!?」
中から現れた人物にバンドラの唇が奪われた。ピンクの髪、イチジにそっくりな眉の美人だった。流れるような仕草でバンドラの唇を奪うその姿はまさに蝶のように舞い、蜂のように刺すと言ったところ。
ロビンは口元に手を当てて、ヤマトとウタは口をぽかんと開けて驚く。
「……ぷはっ…。」
ピンク髪の少女が口元を離す。
バンドラが唖然としていると少女は指を口元に当てて、クスリと笑った。
「……ゴチ♡」
笑いながら舌なめずりをする彼女の名はヴィンスモーク・レイジュ。ヴィンスモーク家の長女だった。バンドラは久しぶりだなと声をかける。
「いきなりはねぇだろ。レイジュ。」
「もう。今日のはとびっきりの毒なのに。なんで、生きてるのよ。」
プクーッと頬を膨らませて、そう言うレイジュ。バンドラの身体からシューシューと湯気が上がる。先程のキスの中に毒を忍ばせていたのだ。
「…コラコラ。俺じゃなかったら死んでるぞ。」
「…誰?この人?」
ヤマトが唖然としてそう聞く。
バンドラがヤマトの方を向くと、容赦なくバンドラの胸元に耳を付けて、ピッタリとひっついていた。
「…また…女?」
ウタはジトーとバンドラを見る。
レイジュはうっとりとしたような目でバンドラの胸に指を這わせていた。
「…レイジュ、そろそろやめなさい。」
そんな様子の5人に低く唸るような声が話しかける。バンドラはその方向を見るとまるで山のような姿の冠を被った男が玉座に座っていた。まるで軽蔑するような冷たい視線がバンドラに突き刺さる。
「…よく来たな。バンドラ。」
「探すのに骨が折れたよ。」
やれやれと首を振り、中へと入っていくバンドラ。ロビン達はその様子を飲み込みつつも、バンドラと同じく入っていく。そこには緑と青の髪のイチジとレイジュにそっくりな男たちが座っていた。
「…お前の顔など見たくなかった。」
「まぁ、そう言うなよ。良いもんだろ?我が子を愛するってな。」
バンドラがニヤリと笑いながら、席に着く。兜をつけた男は苦々しく、吐き捨てるように睨んだ。兜の男にとっては唾棄すべきほどバンドラのことが嫌いなのである。
「何のようだ。私は忙しいのだ。」
「んあ?…アンタなら、ただの義手が作れるかと思ってな。」
声を低くしてそう言うバンドラ。先程とは違い、誰もが真面目だと感じる。レイジュもバンドラの近くにはいるものの、ふざけて抱きついたりなどしていないのだ。…これはまるで脅しのようだった。
「…話は聞こう。」
「あぁ。…東の海のとある村が魚人達に襲われた。その時助けた母親の腕が魚人に滅茶苦茶にされてな。ベガに頼むと武器化されそうもんだから、頼みやすいアンタに頼んだ。」
「何の価値もない。…ただの偽善だ。貴様のそんなものの為に私が時間を割けというのか。」
その目は突き刺すようで、兜の男…基、現ジェルマ王国の国王ヴィンスモーク・ジャッジはバンドラを睨みつけた。バンドラもいつもの笑みとは違い、能面のような無表情だった。
「…ベガパンクの奴は、おまえが呼べば飛んでくるのだから良いじゃないか。アイツに頼め。」
「…話が一向に進まねえ。俺の身体を改造したがってるやつに、知人の件まで持っていけるか。何、要求してくるかわからん。」
「貴様の身体にはGPSが仕込まれている。奴がいつでも貴様の動向を探れるように。それほど奴にとっては貴様という存在が稀有なのだろう。」
…Dr.ベガパンク。
男の姿も女の姿も確認されている性別不詳の存在。一部では『クローン技術を確立させ、自身を複製しているのではないか』とも言われているが、バンドラの目の前に出るときは何故か、目を片方隠した女なのだ。
…そして、彼…基、彼女はバンドラにとっての命の恩人である。かつて、ワザワザの実を盗み、食べたバンドラを海軍は許さず…逃げる選択肢をしたバンドラは当時の中将であるサカズキ(のちの赤犬)に攻撃をされ、深傷を負ってしまった、
バンドラは執念で生き残るも、船に乗った時に意識を失い、気がつくとDr.ベガパンクのところへとやってきていた。彼女はバンドラに次第に興味を持ち始める。人体を研究したい欲がだんだんと出てきて、終いには逃げないように…逃げてもわかるようにとバンドラの心臓の一部にGPSをつけたのだ。
「…なんとも重いものだな。」
「良い奥さんに恵まれたアンタには言われたくない。」
「…。」
ジャッジは懐かしむように自身の妻…ヴィンスモーク・ソラの写真を見る。本人としてはただ自分の国を守りたかっただけだった。ソラが反対しなければ…と。
「…すまない。ソラ。私は…償いきれないほどの罪を犯した。」
「だいぶと丸くなったもんだ。」
「私は人の死というものを軽く見ていたのかもしれない。この子達の感情を消し去り、ただの兵器とした。貴様に完膚なきまでにやられてから考えたのだ。…私は彼女に償えるのかと。せめて、この子達を殺さぬようにと考えた末、彼らが言ったのだ。戦わせてくれと。」
一瞬、ジャッジの目がふと柔らかくなった気がした。確かに彼のしたことは到底許されることはない。だが、バンドラはそうかと優しく笑った。
「貴様のことは好かんが、これを教えてくれた恩義もある。歓迎しよう。今日は…泊まっていくといい。」
「わかった。船を何処かにつけといてくれ。」
「…了解した。」
そう言ってバンドラは立ち上がる。
待ってましたと言わんばかりに引っ付いてくるレイジュと複雑そうな顔の他の面々と共に、バンドラはその部屋から出て行った。
はい。ごちゃごちゃしました。
実はジャッジ、愛妻家だったら良いなぁ…って捏造。それとベガパンクはヤンデレ研究ウーマンにしようかなぁ…とか。
ジェルマもイチャイチャ+バンドラ過去編やるかなぁ。どうかなぁ。過去でも…なんかしてるこの男。あ、レイジュの濃厚キッスのシーンが書きたかったのですが、書いたら怒られそうなのでポイズンキッスにしときましたよ。変にビビってる…。
では。