燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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………やるか。


第60話

…停滞した海遊国家。ウタは初めて見た海遊国家というものの城内を見て回る為、ロビンはその付き添いで部屋を出て行った。バンドラは珈琲とクッキーで少しの間、休息をする。

 

「バンドラっ!!」

 

「…ヤマト。」

 

ムズムズとしていたヤマトの頭を優しく撫でる。ヤマトはピタッといつものようにバンドラの肩に頭を乗せた。お風呂上がりの彼女はポカポカと湯気が身体から出ていた。

 

「何飲んでるの?」

 

小首を傾げて、そう言うヤマト。

バンドラはマグカップを傾けて、ふっと笑う。

 

「…ただの珈琲。」

 

「ボクも飲みたいっ!!」

 

「あっ、こら。」

 

ヤマトは半ば無理やり、バンドラからマグカップを取り上げるとそれをゴクリと飲み込む。…言わば、間接キスという奴である。しかし、バンドラはブラックコーヒーを飲んでいた。ヤマトは苦いと言いながら、舌を出して半泣きになる。

 

「…だから言ったのに。」

 

「何も言ってないじゃんッ!!」

 

「言う前に飲んだんでしょうがっ。」

 

「…あっ。」

 

バンドラは乾いた喉に少し冷めた珈琲を流し込む。今更、ヤマトが少し顔をほのかに色づかせ、バンドラが飲む姿をマジマジと見ていた。バンドラはジトーとした目でなんだよ?と返す。

 

「……バンドラが飲んでると美味しそうに見えるんだけどなぁ。」

 

「まぁ、大人だからな。」

 

「それって、光月おでんも飲んだかなっ!?」

 

「……それは知らん。」

 

目をキラキラと輝かせるヤマト。まだあどけなさが残るその顔にバンドラはため息をついて、ヤマトを見て、その頬を掌で触れた。ヤマトは若干くすぐったい顔をする。

 

「なぁに?」

 

「…いや、初めて会った時より女の子らしくなったなと。」

 

小首を傾げるヤマトにバンドラはそう言った。

…あの岩屋であった少女がこれほど立派に育つとは誰が思うだろうか。特に彼女の髪色と同じく、白と水色の二つの色のパジャマを大きく盛り上がるたわわに実った二つのそれ。段々とシルエットも女性らしくなっていく。

 

「ボクは光月おでんだ。男だぞ。」

 

「…そうかい。」

 

バンドラがヤマトの口にクッキーを近づける。するとヤマトは嬉々としてそれにカプッと噛み付いた。…餌付けと言われてもおかしくない。バンドラはふっと笑うとヤマトの手に上から手を重ねる。

 

「ありがとな。俺を信じてくれて。」

 

クッキーを咥え、小首を傾げるヤマト。

バンドラは優しく微笑みながら、優しい声色で言う。

 

「…お前がいなきゃ、俺はあの時死んでたよ。俺は…お前に感謝してる。」

 

「ほんと?ボク、おでんみたい?」

 

「あぁ。」

 

クッキーを食べ終わったヤマトの額にバンドラが額をくっつける。おでんみたいだと言われたことが嬉しいのか、顔を少し赤く染めてえへへと笑うヤマト。バンドラも同じようにくくくっと笑っていた。

 

「…んっ。」

 

何の躊躇もなく、唇を重ねる2人。

バンドラはヤマトの頭の後ろに手を持っていき、支える形で。ヤマトもゆっくりとバンドラの首へ手を回す。

 

…これがあのカイドウの娘だとは誰も思うまい。

 

「…アハハ。」

 

ヤマトは唇を外すと、柔らかく口を開けて笑う。バンドラもにししと歯を見せて笑っていた。

 

「…ねぇ、バンドラ。」

 

「はい?」

 

…何故か顔を赤くしてモジモジとするヤマト。バンドラは優しく笑いながら小首を軽く傾ける。

 

「…単刀直入に言うよ?…ボクの…そのっ…天月トキになってくれないかっ!?」

 

唐突に顔を真っ赤にしてそう言うヤマト。上目遣いの目が少し潤んでいる。流石に額から外したバンドラがどういう意味だと小首を傾げる。わかってないことを知り、ヤマトは肩を落とした。

 

「天月トキは…光月おでんの奥さんだろ?…だから、その…ボクの…そのっ…。

 

指をくいくいと合わせ、突っつくヤマト。

バンドラはやはりわかってないように小首を傾げた。流石に諦めたのか、ヤマトがぷくーっと頬を膨らませて、バンドラに背を向けた。

 

「なんだよ。」

 

「…にぶちん。」

 

「誰が?」

 

そう言ってバンドラがヤマトの後ろから抱きつく。ヤマトは少し微笑むも、すぐにむすっとした顔に戻った。

 

「…何さ。にぶちんのバカバンドラ。」

 

「今はこういう気分なんだよ。」

 

いつもとは逆にヤマトの肩にバンドラはポスっと顎を置く。むすっと機嫌の悪い顔のヤマトの頬をバンドラが優しく突っついた。

 

ヤマトの髪から花のような香りが香る。場所が違うのだから、当たり前である。バンドラはその髪をくるっと巻き取るように遊ぶ。

 

「…何してんだよ。」

 

「綺麗な髪だなぁって。まるで…雪だ。」

 

あった時は汚れてたのになぁと笑いながら余計な一言を付け足すバンドラ。ヤマトが少し顔を赤らめて、手で口元を隠す。

 

「…バカ。」

 

「あん?」

 

次の瞬間、ヤマトが背中をゆっくり倒す。

バンドラと共に高そうな絨毯の履かれた床に寝転がる。

 

「…なんだよ。」

 

「別に…?ただ、ボクがこうしてたいだけ。」

 

ヤマトは上体を立てると、バンドラの両手首を上に上げさせ、ガシッと掴む。バンドラはその様子をジトーと見ていた。

 

「……ボクだって男なんだ。」

 

「は?」

 

「光月おでんなんだ。…だから、良いよね?」

 

少ししっとりと低くなるヤマトの声。

ヤマトはゴクリと生唾を飲むと、バンドラの唇を奪う。さっきやったじゃないか…と思いつつも、バンドラは優しく受け入れる。ヤマトはガッチリとバンドラの身体に抱きつく。

 

「…なんだ、今日はやけに甘えるじゃないか。」

 

…酒でも飲んだのかと思いつつ、バンドラは歯を見せてニヤリと笑う。ヤマトはそれを見てふっと笑うとバンドラの胸に頭を乗せる。バンドラの腹にヤマトの胸が当たり、ひしゃげるまではいかないものの軽く潰れる。バンドラはハァ…とため息をつくと、そんなヤマトを右手で守るように自身の首元にあるヤマトの頭を抱く。

 

「…今日はこういう気分なのっ。」

 

「はいはい。」

 

少し呆れたように言うバンドラ。

…我儘な娘を、妹を持ったような気分になる。

 

「…バンドラ。…もし君に何かあったら、ボクが命をかけて守るよ。」

 

「は?…何言ってんだい。鬼姫様よ。」

 

目を閉じてそう言うヤマトにバンドラははにかむように微笑んで言った。ヤマトの頭を優しく撫でる。

 

「…俺はもう、お前に何度救われてるか。…ん?」

 

「…すぅ…。」

 

「……寝てんのかい。」

 

ため息をつきながら、呆れたようにそう言うバンドラ。寝息を立てて、満足そうに眠る寝つきの良すぎるヤマトに…バンドラは微笑みながら、優しく頭を撫で、その頭に唇を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……数時間後。

 

「人ん家でなにやってんのよ…。」

 

部屋にやってきたウタがジトーとした目でそれを見る。ウタから見れば、人の家で知り合いが抱きつきながら、寝ているのだ。ロビンも少しむすっとしながらも…ええと消え入るような声で答えた。

 

「…私たちはベッドで寝ましょうか。」

 

「そうね。…この2人なら風邪引かないだろうし。」

 

ロビンとウタは隣のベッドルームへと歩いていく。すぅ…すぅ…と寝息を立てる2人を室内に置いて、にっこりと2人に向けて笑いながら、ロビン達はお休みと一言かけ、電灯を消した。




ええ…短く、やりすぎてしまったことをお詫び申し上げます。砂糖マシマシになってたら嬉しいなぁ…。デレデレヤマトは可愛いのよ?殆どの人が朝に見るので朝から襲撃です。はい。

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