燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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閑話休題ってことで。


第62話

「…バンドラ。」

 

戦争国家とはいえ、食卓は平和である。静かな食卓の静寂を、ジャッジの重々しい口が開き、制した。ジェルマの戦士4人とバンドラ達…計8人がジャッジの方を向く。

 

「…今、あの日の質問をもう一度しよう。お前は『救世主』にでもなろうとしているのか?」

 

「…。」

 

バンドラはその問いに、ニヤリと返した。

 

「あのときとおんなじさ。…俺は救世主になる気はない。そんな烏滸がましいものになる気はねえよ。…ただ、俺の知ってる人間は俺は絶対見放さねえ…ってだけだよ。」

 

…ジャッジはその言葉を聞いて安心したように…そうか…と目を閉じ、感慨深そうに言った。バンドラは目を閉じて穏やかそうな顔をする。

 

「…貴様は初めて会った時もそう言ったな。」

 

歯を見せ、にししと笑うバンドラ。ジャッジは久方ぶりにか…穏やかな笑みで笑い出した。

 

「…義手の件、やはりなんとかしておこう。」

 

「ほんとかっ!?」

 

「あぁ…。ベガパンクには会いたくないのだろう?」

 

バンドラは苦々しい顔をして、あぁ…と答える。バンドラは()()()嫌な予感がよぎって仕方ないのだ。ことの次第を知ってるジャッジはこくりと頷く。

 

「しかし、時間を要する。クローン技術とはまた違うのだからな。また一から出直しだ。それでも良いな?」

 

「…おう。」

 

そう言って昼食会は終わりを告げた。

バンドラ達はそのまま、帆船『ルエノルーヴ号』へ乗り込もうとする。

 

「…待って。」

 

出て行こうとするバンドラの腕をレイジュが握る。バンドラが後ろを向くと…レイジュがそのままそっと唇を重ねる。

 

「…また、会いに来てね?」

 

「…わかったよ。」

 

2人とも穏やかに笑うと、バンドラは出て行った。それを後ろから見ていたレイジュがぐるりと後ろに振り返り、満面の笑みでジャッジへと近寄る。

 

「…お・と・う・さ・ま?」

 

「…しかしなぁ…。レイジュ。」

 

「義手ができて取りに来るまで…ね?良いでしょ?」

 

歯を食いしばり、目を逸らすジャッジの横にレイジュがピタッと引っ付く。その笑みは満面の笑みすぎて…逆に恐ろしかった。

 

「…わかった。だが、必ず帰って来い。」

 

「ふふっ。ありがと。」

 

そう言ってレイジュが城から出て行った。

 

「良いのか?親父。」

 

イチジに似た青髪の男がニヤリと笑いながら言う。何がだ…と返すジャッジにその男は言った。

 

「姉貴が居なくなったら、ジェルマの戦士は4人になる。出来損ないの、サンジはどうでも良いけどよ。姉貴は違うだろ?」

 

「…ふん。なら、お前ならあの暴走機関車を止められるのか?…ニジ。」

 

「あ?…モチのロンで…無理。」

 

そう言うと青髪の男…ニジはその場から去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、着いてきたわ。」

 

「なーにーが、というわけだッ!!さっきのは完全にさよなら、また会おうねのパターンだろうがッ!!」

 

バンドラが…ったくと言いながら、頭の後ろを掻く。荷物を甲板に乗せて、ふふと笑うレイジュに怒る気も失った。レイジュは自分のものだと言わんばかりに笑顔でバンドラの腕をギュッと持つ。それにいち早く反応したのは…ヤマトだった。

 

ヤマトはレイジュと逆の腕に引っ付く。

顔をプクッと膨らませて、だ。

 

「ふふ。あら、ウチでいちゃついてた女の子じゃない。…なに?彼は私のものよ?」

 

「違うもんッ!!バンドラは…そのっ…みんなのものだもんッ!!」

 

「…あの…千切れますから、離してください…。」

 

2人はバンドラを綱引きのように引きながら睨み合う。方や、最強生物の娘、方や改造された戦争国家の王女。ただの人間の身体など真っ二つに裂けてしまう。

 

「離さないと飯抜きだ。」

 

「「えーっ!!」」

 

その言葉にヤマトとレイジュは同タイミングで離した。2人ともむすっとした顔でバンドラを見る。その様子をロビンは憐れみの目で、ウタはジトーとした目で見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…スムージー。」

 

…新世界、ホールケーキアイランド。

その海を見るのはスイート四将星の1人…シャーロット・スムージー。それにいち早く気づいたのは…シャーロット家次男であり、同じくスイート四将星のシャーロット・カタクリであった。

 

「何をしている。珍しい。」

 

「…兄さん。…あのバカはまだ生きているだろうか。」

 

スムージーの手には一枚の手配書が握られている。そこには…バンドラの姿が写っていた。カタクリはカタクリでどうだろうなと返す。

 

「…俺はあのバカは簡単に死なないと思うがな。」

 

「そうだな。」

 

スムージーは優しい声色で手配書をながめた。

 

…バンドラがシャーロット家と会ったのは19歳ごろ。その時はスムージーも足長族の血が通っているとはいえ、普通の人間より少し背が高いほどのサイズであった。

 

バンドラはボロボロの髪で、少し汚い風貌だった。スムージーに会った時、バンドラが言った一言は…「綺麗だ」だった。

 

最初はスムージーもバンドラに敵意を向けてはいたものの、その馬鹿さに呆気を取られ、いつしかこの男は大丈夫だと確信に入った。しかし、ホールケーキアイランドは絶対王政。ビッグマムの元へバンドラを連れて行こうとして、見失う。バンドラは家屋を食い散らかし、そして、笑ったのだ。

 

重罪であるその行為にマムは激しく激昂。

ホーミーズとの連戦で疲れ果てたところを魂を抜くという算段だった。…しかし、そこでマムの食いわずらいが始まる。暴れ狂うマムをバンドラはたった1人で止めた。当時は遠征でスムージーとカタクリ…それとごく少数のシャーロット家の人間しか居なく、誰もマムを止めることが出来なかったのである。

 

その底の見えない力をマムは気に入り、ビッグマム海賊団に欲しいと考えた。スムージーには数日かけてバンドラを説得するように…と。

 

しかし、それにカタクリは反対。兄心からか、バンドラとの決闘を申し込む。バンドラは勿論と答え、斬りかかり殴りかかりの喧嘩へと発展した。その後、バンドラの攻撃により、カタクリのマフラーが飛ぶ。カタクリの弱点と言っても良い、裂けた口が露わになった。

 

スムージーも初めてその様子を見たのだが、バンドラはニヤリと笑いながら…。

 

「やろうぜ?」

 

と挑発をする。カタクリもスムージーもわかったのだ。この男はカタクリのこんな姿に動揺するほどでも、軽蔑するような男でもないと。

 

「…私はカタクリ兄さんを軽蔑しなかったアイツに感謝している。オーブン兄さんから聞いた。…ブリュレ姉さんのことだろう?」

 

「…ブリュレは俺のせいで虐められた。もう弱さを見せないとも思っていたが…まさかあんなふざけた奴にさえ、勝てないとは。」

 

「ふふ。負けてもないじゃないか。」

 

静かにスムージーを見るカタクリ。

スムージーは口元にくすくすと手を持っていきながら、笑っていた。

 

「…お前はいつか、あの男の元へ行くのか?」

 

「…さぁ。…だが、もし、あの作戦が成功していたなら…。」

 

「…俺に勝てないような男はダメだ。」

 

カタクリの顔が険しくなる。

スムージーは優しげな笑顔で…嘘だ…と言った。しかし、海を見るその顔は優しく、そして、悲しげだった。

 

「…もう昔のようには遊べぬ。楽しかった。我が唯一の友よ。…もし、あの鈍感男が此処に迎えに来るならば…私は揺らいでしまうかもな。」

 

「…スムージー。」

 

「まぁ、今は私は私の仕事を全うしよう。カタクリ兄さん。」

 

そう言ってバンドラの手配書を懐へと隠すと、カタクリを置いて湾岸から歩いて行った。カタクリは何も言わずに…その後を追っていくのだ。




流石に5人は多いかなぁ…?
ってことで、現在のバンドラの印象。

ルフィ→シャンクスの友達のいい兄ちゃん。
ウタ→助けてくれた人、シャンクスと同じ…好き?
ナミ→約束覚えててね?
ベガパンク→うふふふふふ……
ヤマト→好き好き
ロビン→……好き
レイジュ→ずっと隣にいようね(ニチャァ…

スムージー→……。

って感じかな。この前のやつと合わせて楽しんでみてください。
あと、船の名前は『御門翡翠』様の『ルエノルーヴ号』を採用させていただきました。御門翡翠様、並びに船の名前を考えて下さった皆様、ありがとうございました。

あ、次回は…大人の…ね?

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