燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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…大人の…ね?


第63話

ルエノルーヴ号、船内。

 

「風呂貰うぞ。」

 

バンドラは室内で何か話し合いをするヤマト達に聞こえるようにそう言う。それを聞いていたのは、ウタしか居なかったが。

 

「…どう思う?あのにぶちん。」

 

「どう思うって?…まぁ、察しのいい方じゃないわね。」

 

話しているのは犬猿の仲かとも思われたヤマトとレイジュ。ヤマトは変わらず、レイジュは濃いピンク色のTシャツとショートパンツを履いていた。ロビンはそれをBGMに本を読んでいる。

 

「ヤマトから言い出すなんて珍しいね?」

 

「…いや、なんか…。」

 

ヤマトとしては複雑だった。

甘えてた相手に沢山の女性の知り合いが居たのだ。そりゃ、無意識のうちに自分のものにしたくなる。独占欲と呼ばれるその名前をヤマトは知らなかった。ウタはほのかに顔を赤らめるヤマトの顔を見てキョトンとしている。

 

「まぁ、彼が節操なしだってのはわかってたけど。まさか、幼女にまで手を出すとは…。」

 

「幼女…って私のこと!?」

 

「それ以外何があるのよ。」

 

ぴこんっと髪が立つウタ。レイジュは歳の離れた妹を持ったようなのが嬉しく、ふふっと柔らかに笑っていた。

 

「ボクはみんなで仲良くしてたらいいと思うけど。」

 

「それじゃあダメよ。1番になりたくなぁい?」

 

「「なりたい。」」

 

ウタとヤマトが当たり前でしょみたいな感じで無表情で答える。最も、ウタに関しては1番という言葉に惹かれただけだが。レイジュはそれを見てくすくすと笑う。

 

「でもまぁ、アイツのことだから、みんな大事とか言いそうだけどね。」

 

「海賊だったら女の子、いっぱいいても良いと思うけど…。」

 

ウタがそう言う。

現に情操教育的には良くないものの、シャンクスとベックマンの2人に関しては何故か、モテていた。拠点にした島で女の子に囲まれるシャンクスにまだ小さかったウタは「シャンクスは私のっ!!」と張り合っていたのを思い出す。

 

「お風呂貰うわね。」

 

そこで唐突にロビンが本を閉じて、風呂場へと歩いていく。作戦会議に白熱していた3人はそれを聞き流しながら、話を続けた。

 

「やっぱり、私が居なきゃダメっていう風にするのが一番ね…。」

 

「どうするの?」

 

「え?やっぱり、先ずは神経毒で鈍らせてから徐々に徐々に毒で苦しめていって…最後に瀕死になったところで私が吸ってあげる。これを定期的に続ければ、合法的に私のものよ?」

 

ウタとヤマトは無表情でそれを言うレイジュに少し恐怖を覚えた。

 

「…ウタちゃん…あぁなっちゃダメだよ…?」

 

「…うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ルエノルーヴ号、船内風呂。

一個しかない湯船と脱衣所は男女兼用で、いつもは好きなやつが入って出たら次という風な感じになっていた。

 

ロビンは上着を脱ぎ、ベルトを外し、ジーパンを脱ぐ。風呂に入るのだ。服は必要ない。バスタオルを巻き、湯気立つバスルームの扉を開ける。

 

「んあ?」

 

「…え?」

 

…そのとき、先に入っていたバンドラとロビンの目があった。バンドラは何も身につけておらず、湯船に桶とそれに乗った熱燗を浮かせていた。湯気のせいか、ロビンは自分の顔が赤く染まるのを感じる。

 

「…なんで…?」

 

「なんでって、入るつったろ?聞いてなかったのか?」

 

小首を傾げるバンドラにロビンは消え入るような声で…聞いてなかった…と答えた。バンドラは酒を飲みながら、そうかと答える。

 

「出ようか?嫁入り前の娘が俺と一緒に入るの、嫌だろう?」

 

「…いや、良いわ。誰が見ても私が悪いもの。」

 

「そうか?…だが…。」

 

はっきりと言う。

ロビンのプロポーションは出るところは出て、引っ込むところは引っ込むというメリハリのついた…所謂、完璧なものであった。男なら見ない方がおかしい程には。ロビンは手で身体を隠す仕草をする。赤く染まった顔はバンドラを睨みつけるように見ていた。

 

「だからと言って見ていいものでもないわ。ジロジロ見られると恥ずかしいもの。」

 

「す、すまん…。あんまし、綺麗だったもんで。」

 

「……ほんと、ズルい人。」

 

歯を見せて少年のように笑うバンドラにロビンは手で口元を隠して、照れるような仕草を見せる。背中を向き、身体を洗う為にバスタオルを外す。バンドラは見ないように背後を向いて、酒を飲んでいた。

 

「…バンドラさん?」

 

「なんでしょう…。」

 

「お背中、流してくださる?私じゃ届かなくって。」

 

バンドラははぁ…とため息をつきながら、湯気のせいで真白に見える湯船からゆっくりと出る。前は見ず、バンドラは背中だけを見る。邪魔になると束ねていた黒髪は艶やかに光り、少し赤く染まった白い頸がより色っぽく見せる。

 

バンドラはタオルを取ると泡立て、ロビンの背に優しく撫でるように触れる。

 

「…んっ。」

 

ロビンの口から声が漏れる。

バンドラはゆっくりとその背を洗っていく。

 

「強くないか?痛くないか?」

 

「…大丈夫。」

 

そう言って見返り、微笑むロビン。バンドラは着物でも着ても似合いそうだな…と思いつつ、桶に目一杯入れたお湯で優しく流した。

 

「ありがとう。」

 

そう言ってニコッと微笑むロビンは、バンドラが目を背けたうちにバスタオルをお湯へと浸かる。バンドラもそれに遅れる形で、またお風呂へと入った。

 

「…タオル、巻けよ。」

 

「濡らすのはマナー違反よ?…大丈夫。貴方に見られても嫌な気はしないわ?ただ…ジロジロはやめて欲しいのだけれど。」

 

くすくすと笑うロビン。

時折、バンドラを揶揄うように見せるその仕草はまるで子どもっぽく、大人の女性の美しさよりも可愛らしさが湧き立つ。ロビンはゆっくりとバンドラへ近づく。それによってできた波に、桶が少し流される。

 

一糸纏わぬ彼女の身体がバンドラにピタッとくっつく。

 

「…当たってるぞ。」

 

「なにが?」

 

「…だから…。」

 

「当ててるのよ。」

 

そう言って笑うロビン。

歳はバンドラが上だが、いくらかロビンの方が成熟しているふうにも見えた。濡れて、艶やかに光る唇。バンドラはそれにゆっくりと自身の唇を重ねた。

 

「…あら。意外と乗り気ね。」

 

「そんな姿見せられちゃ、手を出すなと言われる方が難しい。」

 

バンドラにとっては、ロビンのその仕草は隙になる。ロビンはわかってか、わからずか、ふっと笑った。…次はロビンから。バンドラの頬に手を当て、唇をそっと重ねる。シャンプーの甘い香りがふわりと香り、ロビンは唇を剥がし、ニコッと微笑んだ。

 

「…意外と傷だらけね?」

 

優しくゆっくりとバンドラの胸板や肩、腕などをペタペタと触れるロビン。着物姿ではわからないほど、生傷と程よい筋肉を指先で感じる。

 

「まぁ、危うく死にかけたこともあったからな。」

 

「…たった1人で?」

 

「あぁ。…どうやら、俺は他人の為なら命を捨てられる…そんな大馬鹿者らしい。」

 

可愛い姉ちゃん限定でな?と付け加えるバンドラ。ロビンはその様子にクスリと笑い、そうね…と付け加える。

 

「じゃあ、そんな人を取りあってる私たちも馬鹿ね。…私は貴方のそういうところが…大好きよ?」

 

「…そうかい。」

 

そう言って笑い合う2人。

その瞬間、バッと風呂場の扉が開かれる。そこには青ざめた顔のヤマトとレイジュ。それと顔を赤くして、隠しているウタの姿があった。

 

「な…ななな…何してるんだッ!?君たちッ!!」

 

「あらっ。バレちゃった。」

 

「…お前ら。」

 

バンドラは驚いたように目を見開き、ロビンは笑顔でそう言う。ヤマトが顔を徐々に赤らめて声を荒げていた。

 

「バカバンドラッ!!」

 

「女狐め…。」

 

「スケコマシ…。」

 

ヤマトはぐるると喉を鳴らして、ウタはバンドラを睨んで、レイジュはロビンを見てそう言った。とうの2人は声を上げて笑っていたのだった。

 




まさかのダークホース、ロビンちゃん。

というか、バンドラくんが皆んなに心配されすぎて笑ったw

ヤバい女が1人入ってきたしね。うん。

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