…マリージョア、五老星の間。
実質的な最高権力者イムに仕える5人の男。彼らの決定は世界政府の決定である。
「…王下七武海に天帝を入れよ。どんな手段を使ってもだ。」
メガネの男が言う。
男達の目線にいるのは、海軍元帥センゴク。
「し…しかし、本人は…。」
「我々にはあやつを監視する義務がある。わかるな。センゴク。」
海軍元帥とはいえ、世界政府に逆らうことは不可能。センゴクは唇から血が出るほど噛んでいた。五老星の1人が笑いながら言う。
「そう言えば、あの者には仲間がいたな。赤と白の髪の娘。…エレジアで合流したとか。可笑しいとは思わないか?」
「…何がでしょう。」
「何故、天帝はそんなうら若き少女のところへ行ったのか。実子ならわけないが、似ても似つかぬ。破壊されたエレジアに行ったのだ。少女が目的なのは確かだ。」
…海軍上層部でもその話は上がっていた。エレジアの崩壊、ウォーターセブンでの天竜人襲撃にも少女が絡んでいる。バンドラにとっての地雷であることは確かだ。
「運が良いものだ。エレジアに居て、無傷とは。」
「赤髪海賊団の襲撃。国王はわかる。…何故、あの少女を生かした?何故、その他を殺した?」
…何故、赤髪海賊団はその少女だけを国民で生かしたのか。ある人は言う。…『もしかするとその少女は国民ではないのか』と。
「…なにせ、あそこにはトットムジカがある。センゴク、お前もウタウタの実とトットムジカの関連性はわかってるはずだ。その少女が…もし、ウタウタの実を食していれば…。」
「可能性の話ですッ!!その少女が…歌姫がウタウタの実を食している可能性がどこにッ!!」
「…センゴク。私的理由を仕事に持ってくるな。…我々にはその少女とバンドラという男を管理する必要がある、わかるな。」
…了承を得ているが、その目は命令だった。生唾を飲み、センゴクはその間から出る。…マリージョアからマリンフォードへと変える。元帥室にはいつものようにガープがパリパリと煎餅を食べ、ズズズ…っと緑茶を啜っていた。
「…どうしたんじゃ。センゴク。今にも死にそうな顔しよって。」
「…五老星から、バンドラを七武海にしろと催促が来た。しかし、五老星の狙いは別だ。バンドラの仲間にウタという少女がいたろう。…あの子でバンドラを脅せと言っている。」
「何ッ!?」
パリンと指先で煎餅が砕ける。
ガープは青筋を立てて、センゴクの首根っこを掴んだ。
「何故、アイツにそこまで固執するんじゃッ!!アイツは一度断っておるッ!!」
「…ガープ。私だって反対した。…だが、無駄だった。私とお前、そして…ゼファーと共にバンドラがいる場所は行くぞ。…我々が行くのはせめて、アイツへの礼儀だ。」
…ルエノルーヴ号はとある島へと到着する。
その場所は何もないところであったが、ルエノルーヴ号からバンドラがそこへと降りる。その後ろをウタ達がゆっくりと着いてきていた。
「バンドラ…どうしたの?」
「…昔、お世話になった人に呼ばれたみたいよ。」
ヤマトの問いにロビンが答える。
砂漠のように荒れ、乾いた大地に風が吹く。バンドラは切り倒された少し痩せた切り株の上に座った。
…そこへ海軍の船がやってくる。ヤマト達は少しざわめいた。バンドラは刀をぎゅっと握り、優しく笑う。その顔は何処か…寂しげだった。
「…大丈夫だ。心配なら俺の後ろに隠れてろ。」
目を閉じて足を組んで座るバンドラ。
…そこへ3人の屈強な男がやってくる。3人ともそこそこの高齢で、一番背の高い男に関しては片腕であった。
3人はバンドラの近くへ行って立ち止まる。
「…ガープさんにセンゴクさん、それに…ゼファー先生。お久しぶりです。」
「…すまぬな。呼び出して。」
センゴクが重々しい口を開く。
バンドラは晴れやかな笑みで3人を見た。
「もし暴れても良いように、民間の町が巻き込まれない孤島に俺を呼び出した。要件はなんですか?」
その口調は穏やかだが、久々と周りに覇気が漏れ出ていた。そこで、センゴクが口を開ける。
「…王下七武海、最後の席。…バンドラよ。どうか収まってはくれないか。」
「…は?」
バンドラはその嘆願に空いた口が塞がらなかった。前々から自分は自由にするために、再三断ってきたはずである。
「…センゴクさん、流石に何度も断ってるじゃないですか。俺はやりませんよ。あんな奴らの下でなんて。」
「同感じゃ。…じゃが、アイツらはお前にこだわっている。なんでか、わかるか?」
「…なんでですか?俺は別にただの一船の組員ですよ。」
バンドラは微笑みながらそう言った。
「……センゴク、ガープ。やはりここは…。」
ゼファーと呼ばれた男が能面のような無表情で口を開ける。その言葉にガープとセンゴクは顔を顰める。センゴクは小首を傾げるバンドラに対してため息をついた。
「…バンドラ、エレジアに何をしに行った?」
「…ッ…その話ですか…。」
「私はな。お前のような勤勉で何事にも打ち込み…それでいて正義を持って海軍を抜けたお前をもう一度縛り付けたくない。」
バンドラの海軍時代、訓練を責任もって行ったのはガープ、センゴク、ゼファーだった。ガープとゼファーは実践を、センゴクは知識をバンドラへと与えた。幼きバンドラにとって、初めてできた…温かい感触。白ひげ海賊団以来の家族のような存在だった。仏とまで言われた慈悲深いセンゴクは討ち死にした…自分の息子にバンドラを重ねていた。
「…五老星はその少女と…エレジアに封印されているトットムジカが関係していると踏んでいる。」
「「ッ!?」」
その言葉にバンドラとウタが目を見開いて驚く。ウタに至ってはトラウマだろうか…胸を押さえて、ぜーっ…はーっ…と過呼吸を起こしている。そんなウタを守るようにヤマトが抱きしめていた。ロビンとレイジュは何が起こったか、わからない。
「…なるほどな…。だが、トットムジカがウタと関係してるなんて…空想上の話でしょう…?」
「…あの人たちは空想上の話でも、街一つを消してしまう人たちだ。世界政府とはそんな人たちの溜まり場なのだ。」
「…クズどもが。」
バンドラは眉間に皺を寄せて吐き捨てる。
センゴクは慌てていたものの、ガープとゼファーも同じく怒り心頭の顔をしていた。
「もう世界政府は、後先考えていられないのだ。王下七武海はロジャーの死を持って始まった荒れ狂う大海賊時代の抑止力になる存在。何処の海賊団にも所属しておらず、元海軍であり、百獣のカイドウとタメを張るお前がうってつけなのだ。」
「…センゴクさん…。だからと言って…推測だけで15の少女の心を抉りますか…?」
声が震えている。
誰が見てもバンドラはキレていた。自分を嫌々誘うことじゃない。ウタを自分を誘う材料に使ったからだ。…そして、知らぬとはいえ、五老星はウタにとって乗り越えたはずのトラウマをもう一度掘り起こした。それがバンドラの地雷を踏み締めていた。
「…バンドラ、俺はお前さんの気持ちがわからんでもない。」
「…先生。」
「俺だって、海賊に襲撃されて残った教え子2人だけは守ってやりたい。お前に仲間を大切にしろと教えたのは…俺だ。」
「…先生は何も悪くない。…悪いのは上で仰け反って考えているふりをしている無能な5人のジジイどもだ…。」
バンドラの低く唸るような声。
バンドラの周りから、黒い雷のようなものが発生する。
「…良いですよ…。やってやります。七武海に…名前だけでも貸してあげます。…でもね。」
轟音と共に暴風が吹き、雷が島に落ちた。
天気が急に荒れだす。ガープ達は驚きもせず、ただ立っていた。バンドラの目が青く輝く。
「…俺の大事なもん、傷つけたら…殺しますよ?
そう言ってバンドラはウタの元へ行く。少し泣き腫らし、震えるウタをバンドラは優しく抱きしめた。
「…エラいもん、入れちまったな。センゴク。」
「…そうだな。平気で神へと喧嘩を売る。…アイツこそ厄災だ。」
そう言って3人は船へと戻った。
当分は本編進めながらイチャイチャ書きたい。次回は鰐かなぁ。そろそろ時代進めて…。
バンドラくんはただの女好きじゃないです。信念は突き通します。たとえ相手が神でもね。
ではでは。