「…ふぅ。」
エレジアに来て、3日目。
たどり着いた1日を抜いて、修行を欠かさないバンドラ。狂骨を握る腕はいつにも増して、血管は浮き出、筋肉はコブを使っていた。
しかし、1人でできることも限界がある。エレジアからワノ国までもそこそこ距離があり、日帰りとなれば満足いかないほどしか鍛えられない。
生える木々に向かって、流桜を纏い、破壊するも完全には消えきらない。刀に纏い、素振りをすれば飛ぶ斬撃とは化すものの、一閃で鉄が真っ二つになる程度である。名のある剣豪なら当たり前な話なのだ。
特に見聞色の鍛錬が難航している。
見聞色は対敵必須。相手の覇気を読み取ったり、過去現在未来を掌握することができるのだが、生物も居なければ、バンドラと対敵するような相手もいない。…ということで。
「誰か、エレジアまで寄越しちゃくれねえか.」
電伝虫の小型版スマートタニシを使って、ワノ国に通話を繋げる。相手は勿論、百獣のカイドウである。
『ウォロロロロっ!!どうした、急に。それほどまで力に固執するタイプじゃなかったろう、お前は。』
「急遽、強くならなくちゃいけない案件ができてな。…出来りゃ、ヤマト以外で。」
『当たり前だ。』
聞こえた声に苦笑するバンドラ。
『…しかし、エレジアか。あれだろう?ロジャーの船に乗ってた赤髪小僧がぶっ壊したとか言う。』
「あぁ。まぁ…そこだな。」
『何か意味ありげだな。まぁいい、俺が行ってやろうか?』
「アホか。エレジアが沈むわ。一応、拠点なんだから加減してくれ。」
カイドウの強さは折り紙付き。かのロックス海賊団で見習いをして、生き残っている。そんなものがエレジアまで来たら、エレジアが無くなる可能性も低くはないのだ。
『つまりは、鍛えてえんだろ?だったら、キングあたりを寄越そうか?』
「アイツも大変な野郎だ。まぁ、律儀な奴だ。安心はしてる。」
『ヤマトが聞いたら憤慨しそうだな。まるでアイツは安心してないみたいに。』
「当たり前だろ。お前の娘だ。」
『アァン?…ヒック…そいつはどういうことだ?』
当然と言ってはあれだが、カイドウは今日も酒を飲んでいる。少しバンドラはジトーとした目でスマシを見るが、勿論、相手に伝わるわけがない。
「はぁ…。で?いつ頃来るんだ。」
『時間はわかるか。こっちは誰か寄越すだけだ。今日中には間に合わせる。』
「頼んだぞ?」
そう言ってスマシを切るバンドラ。
来客については取り敢えず、ゴードンに伝える必要がある。とのことで、ゴードンに話をつけに居住している城へと入っていった。
「…ゴードン。」
「ん?どうした?バンドラくん。…お腹でも空いたのか?昼には少し早いぞ?」
ゴードンは少し狭めの一室でカタカタとミシンを動かしていた。しかし、おぼつかない、危なっかしい仕草で動かしているところを見るに、慣れていないんだろう。
「ウタは?」
「自分の部屋だ。あの日以来、音楽活動に熱心になってね。私も教え始めたんだ。シャンクスの意志を組んでね。」
「なるほどね。」
ゴードンは優しそうな顔でカタカタとミシンを動かしていく。バンドラはその様子を後ろで見ていた。
「これから来客がある。すまねえが、騒がしくするぞ。」
「それも必要なことなのだろう。…ウタの邪魔だけはしないであげてくれ、三日三晩拗ねるぞ?」
そう笑うゴードンに、バンドラも大声を上げて笑った。
「いきなりで済まなかったな。キング。」
港に一隻。百獣海賊団の旗を掲げた軍艦が到着した。そこから出てきたのは仮面を被った翼の生えた男と2人の子どもだった
「構わない。カイドウさんの命令だ。」
ギロリとバンドラを睨む目は構わないとは到底思っていないようだった。そうかとバンドラは立ち上がる。
「…で?その子らは。」
「飛び六胞候補の子どもたちだ。カイドウさんが引き取った。」
「ほぉ?…良いのかい?連れてきて。」
笑うバンドラにキングはやれやれと首を横に振る。その後ろから青髪の少女と紫髪の少年がやってきた。
「…ページワン、うるティ、挨拶しろ。」
「あぁん?なんでテメェがアタシとペーたんに命令するんだよッ!?」
「姉貴…やめてくれよ…。」
青髪の少女はキングに噛み付くように言い、紫髪の少年は少女を止めるように肩を持つ。キングは苦労しているのだろう、なんで俺が…とぼやくように言っていた。
「まぁ、良いさ。ガキは元気なのが一番だっ!!」
「…ガキは好きじゃない。」
「…さてと、やるか。」
「2人とも、見ていろ。」
狂骨を持ち、首をボキボキと鳴らしながら、歩いていくバンドラ。キングは刀を抜くと、2人…うるティとページワンはそんな2人を見ているだけだった。
「言っとくが、アイツらは死なねえように守れよっ!!」
「…善処はしよう。」
「行くぞッ!!」
バンドラは狂骨を抜くと、刀身を黒化させ、地面を蹴って突っ込む。
キングは余裕綽々でそれを刀で受け止める。
「…覇気の鍛錬だったな。」
「あぁ。俺は見聞色と武装色しか持ってねえッ!!誰が来ても失わねえ様…もうアイツを1人にさせねえ様、鍛える必要があるッ!!」
撃ち込み、そして、後ろへ飛び、また地面を蹴り、撃ち込む。
火花が散り、金属と金属のぶつかる音。
しかし、キングはそれをどれもほぼノーモーションで受け止めた。
「…何を焦っている。」
「久々に人とやれてな。」
後ろに下がり、息を整えるバンドラ。
キングはリュウリュウの実古代種 モデルプテラノドンの能力でプテラノドンになり、バンドラへと突っ込む。
バンドラは突進してくるプテラノドンを横へ跳び、避ける。
しかし、それで止まるキングではない。
「『
人獣型へと変化し、背中の炎が消え、背後から急激に加速、突進してくるキング。
「ふぅ…。『黒式雷鳴』ッ!!」
背後から近づいて来るキングをスレスレのタイミングで上へと跳び上がり、黒い雷を纏った飛ぶ斬撃を放つ。
「…ぐっ!!」
キングはそれを避けるが雷は空中で爆発。
うるティとページワンには当たらなかったが、弾け飛んだ斬撃により、一時空中でキングは静止した。
「…これ、本当に武装色だけか…?」
「よそ見してんじゃねえぞ?」
キングは人獣型から獣型へ。
トサカをつかみ上げ、後ろへと引っ張る。
「しっかり受け止めろよ。『
まるでパチンコの様に顔を思いっきり離し、その反動を利用し、レーザー砲を放つキング。
「『
空中で避けられない。前から迫り来るレーザー砲に雷を纏った突きを撃ち込む。
その突きは波動砲のように前へと飛び、空中でレーザー砲を分解させた。
ニヤリと笑い、地面へスタッと着地するバンドラ。
キングも人型に戻り、刀を仕舞うキング。
「んあ?なんだよ。どうした?」
「…お前、拠点だかなんだか言って、このエレジアを壊す気か。」
全部空中だったから良いものの…と言葉を加え、うるティとページワンの元へ行くキング。
「…どうだった。お前たち。」
「…すげぇ。」
「全然凄くねえよッ!!カイドウ様の方が強え!!」
目を輝かせて、バンドラを見るページワンに少しの間だけ見ていたものの、プイッと外を向き、悪態をつくうるティ。
キングはそのカイドウさんと戦える相手なんだが…と思っていた。そんなキングを他所にバンドラは3人の方へ行く。
「久しぶりに対人で修行したよ。サンキューな。」
「…カイドウさんに頼まれたからだ。お前のためじゃない。」
腕を組み、バンドラを睨むキング。
そんなキングを他所にバンドラはうるティとページワンの元へ行き、視線を2人に合わせる。
「うるティもぺーたんもサンキューな。」
そう言って2人の頭を優しく叩くバンドラ。ページワンは少し照れていたが、うるティはというと…。
「撫でんじゃねえよッ!!」
「痛え。」
撫でるバンドラの手を叩いた。
姉貴…とジトーとした目で見ていた。
普段、ウタとしか親しんでいないため、少しびっくりはしたもののそんなもんかと思うバンドラ。日はもう天井に位置していた。お昼時である。
「カイドウによろしく頼む。」
「…そろそろ鬼姫に構ってやってくれ。俺たちに非が来るからな。」
はいよ、と歯を見せ、ニヤリと笑うバンドラ。うるティとページワンも軍艦に乗り込み、出港する。3人に向かって、手を振るバンドラ。
ページワンはバンドラに向かって両手を大きく振る。が、うるティに上から乗られて、沈められていた。
「…さてと、そろそろ帰るか。」
軍艦が見えなくなった頃、居住区である城へと帰っていくバンドラ。先程のゴタゴタで作曲の邪魔をしたとウタに拗ねられるのだが…それはまた別の話である。
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キャラ崩壊タグに入れるかねぇ…どうかね。多分入れますわ。今回はうるぺー出したかっただけです。
で、ご相談なのですが、正史改変ってどうなのでしょうか。おでんは死んじゃったんで、他のキャラ…例えば、ベルメールさんとかエースとかかな?年代的に劇場版キャラは元々、こうなりましたみたいになりますけど。まぁ、そこら辺の漫画で見れないところを見れるのが二次創作の醍醐味ですしね…。書き切れるかはわかりませんが、アンケしたいと思います。このままだと、ウタの話と修行ばっかになりますので。そこまでキャパはないです。申し訳ないです。