…10年前、レッドフォース号、船内。
「おい、野郎どもッ!!」
大頭、赤髪のシャンクスの声が響く。タバコを蒸すベックマン、肉を食べるラッキー・ルゥなど赤髪海賊団の面々がその場で深刻そうな顔をしていた。
「…今日は何の日か知ってるか?」
シャンクスの顔が暗くなる。
冷静なベックマンでさえ…あぁ…と顔を暗くしていた。
「…全員、準備はしているだろう?」
「…無論だ。全て滞りなく。お頭は?」
「誰に言ってる。…行くぞ。今日は…。」
そう…この日は赤髪海賊団にとってかけがえのない日だった。
「
その声に船内はドッと沸き立った。シャンクスも重々しい面持ちからいつもの陽気な笑顔へと戻った。
「ルゥ、ケーキの材料はっ!?」
「任しとけ、お頭〜っ!!」
「ベック、飾り付けはッ!?」
「当たり前だ。お頭。ウタ好みの可愛い感じにしてやるぜ?なぁ?ホンゴウ。」
「おう、当たり前だッ!!」
副船長ベン・ベックマンと船医ホンゴウは笑い合ってそう言った。その証拠にレッド・フォース号の測量室には沢山の花や宝石類が置いてあった。シャンクスがよーしと言い、ニヤリと笑う。
「後はプレゼントだけだなぁ!!」
『はっ?』
一人、うんうんと頷くシャンクスに
「お…お頭…。プレゼント…用意してなかったのか…?」
「あん?誰かが用意してくれてんだろ?俺はウタがこの作戦に気づかないように遊……目を向けないように撹乱する役目だろ?」
何がおかしい?と小首を傾げるシャンクス。ベックマンはため息を吐き、頭の後ろを掻く。
「用意してねえのか…お頭…?」
「誰か用意してくれてんだろ?」
『バカヤローッ!!』
「……え?」
船員の全員が声を荒げ、合わせて言った。シャンクスはキョトンとした顔で見た。冷や汗を掻き、口をぽかんと開けている。
「アンタはウタの父親だろうがッ!!アンタが準備しなくてどうすんだよッ!!」
「…お頭…マジか…。」
「お頭この野郎ッ!!」
「うぇっ!?…お、俺は…そのぉ…全員でちゃんと考えた方がいいと思って…。」
地面にヘタレこんでしょぼんとするシャンクス。後に四皇と呼ばれる船長は今、船員たちに総攻撃に遭っていた。シャンクス一人を船員達が囲み、ブチギレている図。喧嘩するほど仲がいいを体現しているものの、怒るのも当然である。
赤髪海賊団の全員はウタのことを全員が実の娘のように愛していた。その娘のかけがえのない日に
「…どう、どうしようッ!!おい、年頃の娘って何が好きなんだッ!?わかんねえッ!!」
「狼狽えんなッ!!お頭このやろーッ!!」
「…ほんと…この人は…。」
頭を抱えながら、青ざめるシャンクス。ベックマンは片手で頭を抱えて、ため息をついていた。
「ウタのことだ。綺麗で可愛いもんのことが好きなんだろうよ。」
ベックマンのその言葉にシャンクスはハッとする。そして、シャンクスは満面の笑みでベックマンの手を握った。
「そうかっ!!ありがとうっ!!ベックっ!!よーし、今日は過去1の宴にするぞっ!!」
そう言ってシャンクスが測量室から出て行く。
「…さっきまで狼狽えてやがったのになぁ。」
「全く、お頭って奴は…。」
そう言って測量室に残った面々はニヤリと笑った。
「シャンクス?」
一人甲板で遊ぶウタをシャンクスが抱き上げる。少しスカートの長い白いワンピースを着たウタはきゃっきゃっと喜んでいた。
「ウタ。今日は何の日だと思う?」
「うーんとねぇ、えーとねぇ…。」
首を傾げながら少し考えるウタ。その後、何かに気づいたようにパーっと表情を明るくさせる。
「ウタのお誕生日っ!!」
「おおー、正解だっ!!ウタは賢いなぁっ!!」
にぱーと笑うウタにシャンクスは頭を撫でて微笑む。ウタはくすぐったそうに目を細めるもののえへへと笑っていた。シャンクスはウタを甲板へと下ろす。
「ウタ、何歳になった?」
陽気な笑顔で聞くシャンクスにウタは手をパーにして「5歳っ!!」と答えた。シャンクスはふっと笑うと…そうか、5歳か…と呟く。
…自分が5歳のとき、あの人たちはどうしただろう。そう考えて笑うシャンクス。ウタは小さな首をこくっと傾げていた。シャンクスはウタを抱き上げ、肩車のように肩にポンと乗せた。少し重くなった感覚を覚えたが、シャンクスにとってはまだまだ軽かった。
「ウタ。…プレゼントは何が欲しい?」
「うえっ?…んーとねぇ…。シャンクスっ!!」
明るい天使のような笑顔でそう言うウタ。シャンクスは目をパチクリとさせながらキョトンとしていた。
「へ?…俺?」
そう聞くシャンクスにウタは思いっきりコックリと頷く。
「あとねーあとねー…。ベックでしょ?ルゥでしょ?ホンゴウでしょー?」
「待て待て待て…!!どういう意味だっ?」
「ウタね、ウタねっ!!みんなとずっと居たいのっ!!ずっとっ!!」
シャンクスはウタを抱き上げる。ウタは目をキラキラとさせてそう言っていた。シャンクスはそんなウタに…ふっと笑いかけた。
「プレゼント…ひとつだけ?」
「……いいや。」
しょんぼりするウタにシャンクスは優しい声でそう言った。ウタはその声にパーっと顔を明るくしてくしゃっと笑う。シャンクスもそれに釣られて、歯を見せて少年のように笑った。
「コイツめっ!!そんなこと、当たり前だろう?お前は俺の娘だっ。離せって言っても離さねえからなぁっ!!ずっとずっと一緒だー!!」
ギュッと抱きしめるシャンクスにウタはきゃーっと喜びの声を上げていた。
「お頭〜!!ケーキ出来たぞ〜!!」
ルゥの声が聞こえる。
ウタはケーキ〜!!と目をキラキラと輝かせていた。ルゥとホンゴウが大きなお皿に乗った大きなショートケーキだった。ナンバープレートには『happy birth day UTA』と書かれていた。
「わぁ〜っ!!」
ウタの背丈ほどあるケーキ。
ホンゴウとルゥは喜ぶウタを見て、微笑んだ。シャンクスがウタの相手をしている間にレッドフォース号を飾り付けた他の船員達も合流する。
「おいおい、デカすぎだろう?」
「良いじゃねえか。年に一度の祭りだ。」
ベックマンが煙草を吸いながら、歯を見せてニヤリと笑う。その手には探してきたのだろう。宝石のついたティアラを持っていた。
「ほら、お頭。」
「おお?…おお。」
そう言ってシャンクスはウタの元へと行く。小首を傾げるウタにシャンクスは膝をついて視線を合わせた。
「どしたの?シャンクス?」
「…うちの大事な歌姫に誕生日プレゼントを。」
そう言ってウタの頭に優しくティアラを被せる。ベックマンが懐から手鏡を取り出し、ウタに見せた。
「わぁ〜…!!ありがとうっ!!シャンクスっ!!」
「おっ!!おうっ!!」
シャンクスに抱きつくウタ。
その満足げな笑顔にシャンクス…そして、赤髪海賊団の船員達は満面の笑みを浮かべた。
「よぉし!!野郎どもッ!!俺たちの娘…ウタの5歳の誕生日を祝って…宴だァァァッ!!」
その声に船内がドッと沸き立った。
こういうのも…良いよね?
見る人によってはダメージ多そう。
はい、次回からはちゃんと本作行きます。ではでは〜。