歌姫のワンライブです。
ルエノルーヴ号…船内。
バンドラ達はとある理由から万国へと向かうことになっていた。
「しかし、大きくなったなぁ。ウタ。」
「当たり前でしょ?」
日に日に、ルエノルーヴ号の船内のとある柱に傷がつく。ウタは16歳。あどけなさはまだまだ残るものの、背丈や少しずつ丸みを帯びていく身体つきは段々と大人の女性に近づいていた。
「しかし、ビッグマムがウタの歌に興味を持つとは。」
「えへへ。歌姫の歌は無限大なんだからっ。」
胸を張って鼻を鳴らすウタ。
出会った頃よりも確かに膨らんでいる胸がぷるんっと震える。
「…シャンクスが聞いたら喜びそうだな。」
シャンクスはウタの個性を伸ばすことに執着していた。ウタの個性を俺たちで囲ってはいけない。エレジアの惨劇でウタが狙われるわけにはいかない。…ウタには幸せに歌ってほしい。それがシャンクスの願いだった。
『世界一の歌姫になったら会いに来る』という半ば呪いのようなそれはウタを少しずつではあるが、確実に成長させていった。
「バンドラは喜んでくれないの?」
「アホか。俺が一番喜んでる。」
そう言ってウタの頭を撫でる。
子ども扱いされてるのが癪なのか、嬉しいような怒っているような…そんな表情を示した。
「っ…もう。私、もう、一端のレディなんだからねっ!!」
「なぁにがレディだ。30のおっさんから見りゃ、まだまだガキだっつうのッ!!」
「何をーっ!!」
そう言ってバンドラの胸をぽこぽこと叩くウタ。四皇の娘とはいえ、もう一人の方と比べればウタの力は適正である。バンドラは微笑みながら、そんなウタの身体を抱きしめた。
「きゃっ!!変態っ!!スケコマシッ!!」
「ハッハッハッ!!なんとでも言うがいい。ガキぃ?」
「…シャンクス呼ぶよ?」
「やめてください。死んでしまいます。」
ウタはバンドラの胸の中でくすくすと笑う。五老星の件、そして、トットムジカとの和解的な何かを経て、ウタは本当によく笑うようになった。段々と大人びていくものの、そういった幼き時の影にバンドラは微笑みながらウタの頭を撫でる。
「…バンドラ。エレジアに迎えに来てくれて…ありがとう。」
「何を今更。」
穏やかな笑みを浮かべて、笑うバンドラにウタも微笑んだ。
「…私、バンドラのこと…大好きだよ。」
「ガキが。…その好きっつうのは家族って意味の好きだろうが。歳上のおじさんを揶揄わないでくれや。」
頭の後ろを掻くバンドラ。顔には出さないが、照れているようだ。ウタは無邪気にもそんなバンドラにギュッと抱きつく。
「違うもんっ。…バンドラには感謝してるし、歳が離れてるってのもわかってる。…でも、バンドラは私にとっての救世主だから。私を孤独から救ってくれたのはバンドラだから。」
「…はぁ。そりゃ、どうも。」
そう言ってバンドラにニカッと笑うウタ。
バンドラはため息をつく。…これはシャンクスからの説教もんだなと。
「しかし、急にどうしたんだ?…いつもならお前、一歩引いてるのにな。」
「…さぁね。私だって思うところくらいあるよ。ヤマトとかレイジュとかだけじゃないんだもん。」
「へいへい。…昼飯のリクエストは?」
「パンケーキ。」
…パンケーキはご飯に入りませんとバンドラはタバコを咥えて言う。ウタはええー!!と肩を落としてがっかりしていた。ウタの髪が大きく下に下がる。バンドラはふぅ…とため息をついた。
「おやつの時ならな。」
「やった〜っ!!バンドラ、大好きっ!!」
「…現金なやつ。」
ウタはバンドラに飛びつくように抱きつく。髪は先程と違って、上下にぶんぶんと動いていた。バンドラはその姿に苦笑いする。
「私、バンドラのパンケーキ好き!!甘いし!!」
「歯はちゃんと磨きなさい。」
「磨いてるじゃん。子ども扱いしないでって。」
ぶうたれるウタ。プクーと頬を膨らまして、バンドラを睨む。
「…お前はすぐ無茶するからな。また、倒れられたりしたら俺が困る。」
「うぅ〜…。あの時はごめんって言ってんじゃん。」
「…それだけ、お前のことが大事なんだよ。お前らのことが大事なんだ。」
目線を合わせて、バンドラがしゃがむ。ウタの頬に手を当てて優しい声で言った。ウタはその言葉に顔を少し赤らめる。
「大人大人って言ってるが、今すぐ大人にならなきゃいけないわけじゃない。少しずつ成長していけばいいんだ。」
「…やだ。…だって、取られちゃう。皆んなにバンドラが。」
「バーカ。俺は海の男だぞ〜?誰か一人のもんに留まるかよ。」
不安そうに言うウタのおでこを指で優しく触れる。子どもっぽく、歯を見せて笑う笑みにウタは、シャンクスがバンドラのことを自分勝手な男だと言っていた意味がわかった。
「…バンドラは船にいるみんなの事、好き?」
「そりゃあな。可愛い女どもに囲まれてうれしくねえ馬鹿はいねえさ。」
大口を開けて笑うバンドラ。
ウタはその姿を懐かしく感じていた。ギュッとバンドラの服を掴む。まだエレジアにいるときはよく、バンドラが一緒に寝てくれていた。怖かったのだ。シャンクスに嫌われたと思って。
「…ねぇ。バンドラ。」
「あ…?」
まだ不慣れな唇がバンドラの言葉を塞ぐ。
ウタと同じ目線になったのは、バンドラにとっての愚策だった。歌姫の唇は甘く、柔らかな感触がした。
「…隙あり。」
「お前なぁ。シャンクスが…。」
“泣いて怒るぞ”。
そう言おうと思った途端、ウタがむすっとした顔で睨んでいた。
「今はシャンクスの娘じゃないよ。バンドラの仲間、ウタだよ。」
「…おいおい。」
「シャンクスもルフィも関係ないよ。…だって、海の男が自由なら、海の女も自由でしょ?」
そうやって笑うウタにバンドラはため息をついた。負けず嫌いで我儘なこういうところは変わっていない。バンドラはそんなウタのおでこに唇を落とした。
「んっ…。」
そして、ウタを抱き上げて、ベッドに座る。ウタを膝に座らせ、そんなウタの首に無骨な腕を回した。
「重いって〜。」
「…そういうこと言ってると悪い虫がついちゃうからな。」
ウタの頬をつんつんと指で突っつく。
ウタはくすぐったいのだろう、目から涙を浮かべるくらいケラケラと笑っていた。
「もーっ。私だって。」
「うおっ!?」
バンドラの腕をガバッと開ける。
そして、ウタはバンドラの方へ飛び抱きついた。16歳の少女の力で押し倒されるようなバンドラではないのだが、わざと力を抜いて倒れた。
「「ハハッ。」」
そう言って二人は笑い合う。
ウタがバンドラに抱きつくとバンドラの唇を優しく奪った。レイジュの真似事のように貪るようにゆっくり…じっくりと長めに重ねる。
「…こういうのって、大人でしょ?」
そうやってうっとりとしたように笑うウタに、バンドラはふっと微笑んだ。…また、シャンクスに謝らなきゃなと思うバンドラであった。
最近薄かったしね。
RED公式よ。なぜ、こんないい子を……。
万国…ってことは…。