燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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バンドラ君(+ヒロインズ)のイラスト募集中です。絵心のある方で暇やからやったるよーって方、よろしくお願いします。


今回は人気のあるこの方。本編ではあんまり出てないと思うんだが…。


第82話

早朝。

ヤマトと共に部屋から出るバンドラ。少し起きるのが遅かったのか、食卓にはスムージー以外の誰もいなかった。ヤマトは少し寝ぼけている。

 

「…傷の具合は?」

 

「まぁ、まずまずだな。動かないほどじゃあない。」

 

…いつものようにガッチリと着付けした着物は傷に障る。その為、バンドラは今、前の開いた羽織のようなものを着ていた。スムージーはそっけなく、そうか…と返す。

 

「…こうもボロボロにお前がなるとは…。明日は槍の雨でも降るんじゃないか?」

 

「やめてくれ。明日はうちの歌姫のワンマンライブだ。一年のうちに作りまくった新曲もいくつかある。」

 

そう笑いながら言うバンドラ。スムージーは銀にも灰にも見える長髪を靡かせ、そうかと答えた。

 

「…一つ、勝負をしようか。」

 

「勝負?」

 

スムージーがふっと微笑む。

すると、机の上に3個のグラスが置かれていた。バンドラはニヤリと笑う。

 

「…どれか一つが私、その他が他の姉妹のものだ。色ではわからないようにしてある。お前なら匂いで嗅ぎ分けられるだろう。」

 

「了解。」

 

そう言ってバンドラは一つのグラスを取った。それの匂いを嗅ぎ、香りを楽しむ。バンドラは全部、そうして嗅ぎ分ける。…実際、それはスムージーを含めた女の香り。バンドラはそれを知りつつも、一つ選んだ。

 

「…これだ。」

 

「…グイッといけ。」

 

そう言ってスムージーは飲む仕草をする。

バンドラはグラスを飲むとほのかに香るストロベリーの香りと甘さ酸っぱさが喉を潤した。スムージーが少し照れたように頬を赤らめ、笑う。

 

「正解だ。」

 

「…確かに変わっているな。」

 

昔はただ甘いだけだった。

味に深みが出た…ということだろうか。

 

「…お前は変わらぬな。」

 

「あん?」

 

そう言ってスムージーが顔を近づける。髪を掻き上げ、そのまま唇を重ねた。バンドラはびっくりしたように目を開く。

 

「…うむ。無味か。」

 

「…テメェ…。初めてだろうが。」

 

「嫌だったか?私はお前しかいないと思っていたが?」

 

…将星シャーロット・スムージーはもはや、ホールケーキアイランドでは憧れの的。近寄ろうとする男はおらず、逆に友達になろうなど畏れ多い。そう考える人が多い為、スムージーは兵士や妹弟…それと、兄姉たちとしか話ができない。…バンドラは文字通り、スムージーにとっては特別な男だった。

 

長い足を組み、頬をつき、笑うスムージー。

 

「…おかしな話だ。お前には家族が出来そうなのに、私には出来そうにもない。」

 

「は?何を言ってるんだ?」

 

「…私は知らぬ。恋も婚約も結婚も。…全てはママの手腕だ。シャーロット家として生まれた以上、仕方のないこと。私はママを王にするための駒だからな。」

 

…『役目』、『役割』。

それがスムージーを呪いのように雁字搦めにする。嫌なわけではない。それが女王(ママ)の為になるのだから。そう思い、微笑む。

 

「…めんどくせえこと考えてんのな。」

 

「…は?」

 

バンドラはその言葉を文字通り一蹴した。

頭を掻いて、ため息を吐くバンドラ。ニヤリと笑うそれはかつての若き日のよう。スムージーは口を開いて閉まらない。

 

「シャーロット家だか、なんだか知らねえが。少なくとも俺の前ではお前はシャーロット・スムージーじゃなくて、ただのスムージーだろ?だったら、お家とかんなもん考えなくても良いじゃねえか。自由に生きようぜ?」

 

「…し、しかし、どんな世界にもルールというものが…!!」

 

「ルールやら秩序やら、海賊にゃねえんじゃねえの?それを破るから海賊なんだろ?この自由な海で、なに雁字搦めになってんだよ。スムージー。」

 

「…馬鹿者が。」

 

ボソリとそう呟くスムージー。

胸の奥で何故か、ホワホワとなっている感覚を覚える。バンドラは目を細めてにししと笑っていた。

 

…もともと、ビッグマムはバンドラのワザワザの力に目をつけていた。そこで仲の良かったスムージーにバンドラを籠絡するよう話が来たのだ。スムージーは二つ返事で了承するも、期間短くしてスムージーには無理だった。ただの友達がよほど嬉しかったのだろう。

 

「すべての人間が貴様のような身勝手なら、この世界は滅んでいるぞ?」

 

「確かにな。」

 

「…ありがとう。お前に話してよかった。」

 

そう言って微笑むスムージーにバンドラは笑顔で返した。

 

「…姉たちもどんどんと夫婦となっている。私もそろそろかもしれないな。」

 

「嫌なんだろ?連れ出してやろうか?」

 

「馬鹿者。さっきの話を聞いていなかったのか。私は如何なる理由でもここを離れることはできん。四将星だぞ。幹部だ。」

 

そう言ってため息を吐くスムージー。バンドラが近くにより、その手を取る。

 

「俺には可能だ。…考えても見ろ。もうヤマトがいる時点でおかしな話だ。」

 

「…カイドウの跡取りか。随分と仲の良いことだと聞く。」

 

「まぁな。アイツとは一番長くいる。俺がいなきゃアイツはダメなんだよ。勿論、ウタやらなにやらも。」

 

…バンドラの口から違う女の名前が出るたび、スムージーは驚いていた。この男はなんと自由なことかと。七武海という立場でいながら、四皇幹部の自分を引き抜くその愚行はさることながら、その船に一体何人の女が乗っていることか…。

 

「…楽しいか?バンドラ。」

 

「あぁっ。…今がめちゃくちゃ楽しい。」

 

「貴様が嬉しいなら私も嬉しいな。死んでくれるなよ。決して。私を…一人にするな。」

 

バンドラの身体をぎゅっと抱きしめるスムージー。背丈の差がある為、膝をついて、しっとりとした声でそう言った。バンドラは彼女の肩を優しくポンっと叩く。

 

「アホか。俺が死ぬ時ゃ、やりきった時って決めてんだよ。」

 

「馬鹿者めが。人の欲とはそう簡単に埋まらない。…恋慕も物欲もな。」

 

「どうしたんだよ。スムージー。」

 

バンドラが笑いながら聞くとスムージーもふっと柔らかに笑った。桃色の彼女の唇が艶やかに光る。

 

「…私は隠し事は得意でない。…そうだろ?私にはお前が必要らしい…。」

 

…立場故か、スムージーは抱えていることを一人で昇華することしかできない。抱えることしか出来ないのだ。女王(ママ)は聞く耳を持たず、兄弟達には心配をかけたくない。その為、スムージーにとってバンドラはたった一人の…かけがえのない存在だった。

 

「だったら、乗れよ。俺の船に。」

 

「…愚か者、さっきの話を聞いていなかったのか。私は立場がある。そうホイホイと簡単に抜けられやしないのだ。」

 

「立場云々言ってたら大事なもん、見捨てることになる。…例え、どんな結論をしてもお前に悔いのないようにしろよ。スムージー。」

 

バンドラはそう言うとスムージーの頬にキスをする。スムージーはそこを押さえながら呆然と立ち尽くしていた。バンドラはそのままその部屋を後にする。

 

「…スムージー。」

 

「…馬鹿な男だな。アイツは。カタクリ兄さん。」

 

そう笑った顔はカタクリには悲しげで儚げで…嬉しそうに見えた。

 

「…そうだな。」

 

カタクリはそう言い、スムージーの側にただ立っていた。




スムージーさん…。
実は乗せるかどうか迷ってたり…。(ロビン、スムージー、モネは被るからなぁ。キャラが…少し手が出しにくいかも。)


次回はライブ&シュガーかなぁ。
妹の為にバンドラお兄ちゃん頑張っちゃうぞ!!
…ではでは。

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