今回は人気のあるこの方。本編ではあんまり出てないと思うんだが…。
早朝。
ヤマトと共に部屋から出るバンドラ。少し起きるのが遅かったのか、食卓にはスムージー以外の誰もいなかった。ヤマトは少し寝ぼけている。
「…傷の具合は?」
「まぁ、まずまずだな。動かないほどじゃあない。」
…いつものようにガッチリと着付けした着物は傷に障る。その為、バンドラは今、前の開いた羽織のようなものを着ていた。スムージーはそっけなく、そうか…と返す。
「…こうもボロボロにお前がなるとは…。明日は槍の雨でも降るんじゃないか?」
「やめてくれ。明日はうちの歌姫のワンマンライブだ。一年のうちに作りまくった新曲もいくつかある。」
そう笑いながら言うバンドラ。スムージーは銀にも灰にも見える長髪を靡かせ、そうかと答えた。
「…一つ、勝負をしようか。」
「勝負?」
スムージーがふっと微笑む。
すると、机の上に3個のグラスが置かれていた。バンドラはニヤリと笑う。
「…どれか一つが私、その他が他の姉妹のものだ。色ではわからないようにしてある。お前なら匂いで嗅ぎ分けられるだろう。」
「了解。」
そう言ってバンドラは一つのグラスを取った。それの匂いを嗅ぎ、香りを楽しむ。バンドラは全部、そうして嗅ぎ分ける。…実際、それはスムージーを含めた女の香り。バンドラはそれを知りつつも、一つ選んだ。
「…これだ。」
「…グイッといけ。」
そう言ってスムージーは飲む仕草をする。
バンドラはグラスを飲むとほのかに香るストロベリーの香りと甘さ酸っぱさが喉を潤した。スムージーが少し照れたように頬を赤らめ、笑う。
「正解だ。」
「…確かに変わっているな。」
昔はただ甘いだけだった。
味に深みが出た…ということだろうか。
「…お前は変わらぬな。」
「あん?」
そう言ってスムージーが顔を近づける。髪を掻き上げ、そのまま唇を重ねた。バンドラはびっくりしたように目を開く。
「…うむ。無味か。」
「…テメェ…。初めてだろうが。」
「嫌だったか?私はお前しかいないと思っていたが?」
…将星シャーロット・スムージーはもはや、ホールケーキアイランドでは憧れの的。近寄ろうとする男はおらず、逆に友達になろうなど畏れ多い。そう考える人が多い為、スムージーは兵士や妹弟…それと、兄姉たちとしか話ができない。…バンドラは文字通り、スムージーにとっては特別な男だった。
長い足を組み、頬をつき、笑うスムージー。
「…おかしな話だ。お前には家族が出来そうなのに、私には出来そうにもない。」
「は?何を言ってるんだ?」
「…私は知らぬ。恋も婚約も結婚も。…全てはママの手腕だ。シャーロット家として生まれた以上、仕方のないこと。私はママを王にするための駒だからな。」
…『役目』、『役割』。
それがスムージーを呪いのように雁字搦めにする。嫌なわけではない。それが
「…めんどくせえこと考えてんのな。」
「…は?」
バンドラはその言葉を文字通り一蹴した。
頭を掻いて、ため息を吐くバンドラ。ニヤリと笑うそれはかつての若き日のよう。スムージーは口を開いて閉まらない。
「シャーロット家だか、なんだか知らねえが。少なくとも俺の前ではお前はシャーロット・スムージーじゃなくて、ただのスムージーだろ?だったら、お家とかんなもん考えなくても良いじゃねえか。自由に生きようぜ?」
「…し、しかし、どんな世界にもルールというものが…!!」
「ルールやら秩序やら、海賊にゃねえんじゃねえの?それを破るから海賊なんだろ?この自由な海で、なに雁字搦めになってんだよ。スムージー。」
「…馬鹿者が。」
ボソリとそう呟くスムージー。
胸の奥で何故か、ホワホワとなっている感覚を覚える。バンドラは目を細めてにししと笑っていた。
…もともと、ビッグマムはバンドラのワザワザの力に目をつけていた。そこで仲の良かったスムージーにバンドラを籠絡するよう話が来たのだ。スムージーは二つ返事で了承するも、期間短くしてスムージーには無理だった。ただの友達がよほど嬉しかったのだろう。
「すべての人間が貴様のような身勝手なら、この世界は滅んでいるぞ?」
「確かにな。」
「…ありがとう。お前に話してよかった。」
そう言って微笑むスムージーにバンドラは笑顔で返した。
「…姉たちもどんどんと夫婦となっている。私もそろそろかもしれないな。」
「嫌なんだろ?連れ出してやろうか?」
「馬鹿者。さっきの話を聞いていなかったのか。私は如何なる理由でもここを離れることはできん。四将星だぞ。幹部だ。」
そう言ってため息を吐くスムージー。バンドラが近くにより、その手を取る。
「俺には可能だ。…考えても見ろ。もうヤマトがいる時点でおかしな話だ。」
「…カイドウの跡取りか。随分と仲の良いことだと聞く。」
「まぁな。アイツとは一番長くいる。俺がいなきゃアイツはダメなんだよ。勿論、ウタやらなにやらも。」
…バンドラの口から違う女の名前が出るたび、スムージーは驚いていた。この男はなんと自由なことかと。七武海という立場でいながら、四皇幹部の自分を引き抜くその愚行はさることながら、その船に一体何人の女が乗っていることか…。
「…楽しいか?バンドラ。」
「あぁっ。…今がめちゃくちゃ楽しい。」
「貴様が嬉しいなら私も嬉しいな。死んでくれるなよ。決して。私を…一人にするな。」
バンドラの身体をぎゅっと抱きしめるスムージー。背丈の差がある為、膝をついて、しっとりとした声でそう言った。バンドラは彼女の肩を優しくポンっと叩く。
「アホか。俺が死ぬ時ゃ、やりきった時って決めてんだよ。」
「馬鹿者めが。人の欲とはそう簡単に埋まらない。…恋慕も物欲もな。」
「どうしたんだよ。スムージー。」
バンドラが笑いながら聞くとスムージーもふっと柔らかに笑った。桃色の彼女の唇が艶やかに光る。
「…私は隠し事は得意でない。…そうだろ?私にはお前が必要らしい…。」
…立場故か、スムージーは抱えていることを一人で昇華することしかできない。抱えることしか出来ないのだ。
「だったら、乗れよ。俺の船に。」
「…愚か者、さっきの話を聞いていなかったのか。私は立場がある。そうホイホイと簡単に抜けられやしないのだ。」
「立場云々言ってたら大事なもん、見捨てることになる。…例え、どんな結論をしてもお前に悔いのないようにしろよ。スムージー。」
バンドラはそう言うとスムージーの頬にキスをする。スムージーはそこを押さえながら呆然と立ち尽くしていた。バンドラはそのままその部屋を後にする。
「…スムージー。」
「…馬鹿な男だな。アイツは。カタクリ兄さん。」
そう笑った顔はカタクリには悲しげで儚げで…嬉しそうに見えた。
「…そうだな。」
カタクリはそう言い、スムージーの側にただ立っていた。
スムージーさん…。
実は乗せるかどうか迷ってたり…。(ロビン、スムージー、モネは被るからなぁ。キャラが…少し手が出しにくいかも。)
次回はライブ&シュガーかなぁ。
妹の為にバンドラお兄ちゃん頑張っちゃうぞ!!
…ではでは。