燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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※film REDネタバレ、個人解釈あります。


第9話

同日の昼過ぎ。

バンドラはウタを連れて、エレジアの広場へと出る。ゴードンは上から心配そうにウタを見ていた。ウタは動きやすいようにとゴードンの用意した赤いジャージに着替えた。ウタは可愛くないと少し不貞腐れてはいるものの、仕方なく着ている状態である。

 

「シャンクスからお前は悪魔の実を食べていると聞いているよ。」

 

「食べてる…のかなぁ…?」

 

「…エレジアに来て、いろんな文献を見たが、トットムジカを呼び寄せることができるのはウタウタの実の能力者だけらしい。」

 

厳密に言えば、エレジアにある楽譜『TotMusica』をウタウタの実の能力者が歌うことで歌の魔王『トットムジカ』が顕現し、ウタウタの実の能力者を取り込むとのこと。

 

バンドラはウタウタの実だけでは、トットムジカの制御は不可能と考えていた。この話ではトットムジカとウタウタの実は因果関係はあれどトリガーというだけ。つまり、ウタウタの実の真骨頂はエレジアに封印されしトットムジカを呼び寄せるだけであって、トットムジカを操作することはできない、と書かれているのだ。

 

「私はウタウタの実を食べてるってこと?」

 

「そゆこと。で、悪魔の実っつうのは三つあって、多い順に『超人系(パラミシア)』『動物系(ゾオン)』『自然系(ロギア)』と区分される。俺やお前のはまぁ、超人系だろうな。」

 

動物系じゃなくて良かったよと頭の後ろを掻きながら言うバンドラ。動物系はさらに古代種と幻獣種に区分され、説明がややこしいのだ。エレジアにはニュース・クーが来ず、情報が入って来ない。その為、ウタには最初から懇切丁寧に教える必要があった。

 

「その三つって何が違うの?」

 

「先ず、一番異なるのは動物系だ。人型、動物型…双方のいいとこ取りの人獣型と変化することができる。実によってモデルがあってな。」

 

「この前の鳥の人?」

 

首を傾げ、そう言うウタにまぁ、そんなとこだと笑うバンドラ。

 

「自然系は三つの中でとても希少…と言ってももっと希少なもんもあるからな。基本的にどいつこいつも流動物だから覇気を纏ってない攻撃はすかされる。」

 

「バンドラはこれ?」

 

「んや?俺は超人系じゃないかな。俺の能力は自然災害を起こすだけであって、自然そのものになる訳じゃないから。俺自身は殴られたら痛い。」

 

「なんだ、つまんないの。最強ってすごいのに。」

 

そう言ってぶうたれるウタに、あのなぁ…とじと目で返すバンドラ。

 

「最強というだけで鍛錬を怠けたり、逆に能力に頼りすぎたりするとシャンクスみたいなやつに捲られるから気をつけないといけない。それだけ、難しいんだよ。」

 

そう言って、右掌を開けて上へ向けるバンドラ。すると、掌を中心に真っ黒な風が吹き荒れ、竜巻を形成した。

 

「…ふぅ。」

 

そして、それは霧散。

バンドラは火をつけたタバコを咥え、ニヤッと笑った。

 

「攻撃に使う奴がほとんどだが、悪魔の実の適正によっては攻撃以外のルートもあり得る。」

 

「…私はどうなんだろ。」

 

「さあな。殆どの人間は能力がわからない状態で使ってみて、理解する。わからない方が普通なんだよ。」

 

ウタがキョトンとして、バンドラの話を聞く。

…そういえばと、ウタが切り出す。

 

「私が歌ったら、みんな聞いてるはずなのにいつの間にかみんな寝てたりするの。…それかなぁ。」

 

「…よくわからんが、確かめようがないな。」

 

「………歌ってみる。」

 

…そう言って歌姫のライブが始まった。

バンドラはゴードン含め、エレジアの民が賞賛したその天使の歌声を聞き、微笑むも多少の違和感に気づく。ウタの背中から羽が生えていた。

 

「…ふぅ。」

 

「…確かに。現実世界とは似て非なる世界ってわけか。」

 

「私が寝たらこの世界は消えるんだけどね。」

 

…ふとバンドラの頭に考えがよぎる。

例えば、この世界を自分で切り替えできるようになれば…?ウタウタの実の空間に対象者だけを閉じ込めたりしたら…。

 

「外はどうなってる?」

 

「えっとねぇ…バンドラとゴードンが寝てる。あっ!!落書きしちゃおっかな〜?」

 

「やめんか。」

 

悪戯っ子のように笑うウタのおでこをデコピンするバンドラ。ウタは目に涙を浮かべ、そこを押さえながら恨めしくバンドラを睨んでいた。

 

「…これ、自分の意思で切り替えたりできないのか?」

 

「むぅ…。どうだろ。今まで出来た試しが無いし。」

 

「やってみてくれ。」

 

バンドラがそう言うと眉間に皺を寄せて、踏ん張るウタ。するとウタワールドが崩壊を始める。白く目の前が発光し始めた為、目を閉じるとそこは現実世界の空の方を向いていた。

 

「…おっ。」

 

「…出来ちゃった…。」

 

仰向けで寝るバンドラを覗き込むウタ。

 

「やっぱり、能力のオンオフは可能らしいな。」

 

「んーん?なんで、今まで出来てなかったのに…?」

 

「意識してなかったんじゃないか?技の切り替えって奴だ。」

 

微笑みながらそう言うバンドラに納得がいっていないのか、首を傾げるウタ。そんなウタを見ながら、2本目のタバコに火をつけた。

 

「良かったよ。タバコの火、消しておいて。」

 

「バンドラが全焼してたしね。」

 

「怖いこと言うなよ。」

 

…とはいえ、ウタは未熟ながらも能力の切り替えをやって退けた。バンドラは流石はシャンクスの娘だと思いながらも、タバコを蒸した。

 

「…後は色々やってみるしかないな。」

 

「色々?」

 

「ウタワールドへ誘うのが技ならば、対象者の切り替えとかも出来るはずだ。俺が寝ちまったりしたら、航海の道中、誰がお前を守れる?まぁ、究極は1人でも戦えるように…だけどな。」

 

…実際、海に出れば世界政府は彼女を狙うだろう。ウタウタの実の真骨頂が知れれば、海は荒れ、世界は恐怖することになる。…そうなれば、誰が彼女を守る…?例え、自分が死んだとして…誰が…。

 

「…?バンドラ、どうしたの?」

 

「…なんでもないさ。しっかし、シャンクスの奴も馬鹿だなぁ。…自分の娘の成長を見ることができないなんてなっ。」

 

「馬鹿とはなんだぁー!!私のお父さんだぞぉ〜ッ!!」

 

むすっとして、大声を上げてそう言うウタ。

バンドラは歯を見せ、大口を開けて笑った。ウタはバンドラの胸まで行ってポカポカと胸を叩いた。

 

「ヒヤハハハッ!!馬鹿でぇっ!!娘がどんどん良い女になるんだぜ?見たくねえ父親は居ないだろうが。」

 

「馬鹿はバンドラの方だっ!!馬鹿、変態、ど変態〜ッ!!」

 

「だーっ!!」

 

顔を真っ赤にして胸をポカポカと叩くウタ。煩わしくなったのか、腕を広げて大声を上げるバンドラ。睨むウタに歯を見せて笑った。

 

「…ふぅ…。タバコ、吸ってんのに近寄ってんじゃねえよ。綺麗な肺、汚す気か?」

 

そう言ってウタのおでこを指で押し、ゆっくりと頭を下げるバンドラ。

 

「綺麗じゃないと思うよ?ベックさんの近くにもいたし。」

 

「…だとしてもだ。歌姫になるんなら、肺と喉は大事にしな。」

 

低い声でそう言うバンドラ。タバコを消して、ポケット状のタバコ入れに捨てる。

 

「よし、休憩終了。特訓再開するぞぉ。」

 

「うえぇ…?ちょっと疲れちゃったよ…。」

 

「ん?休憩じゃなかったのか?」

 

「休憩じゃなくしたのはバンドラだよ…?」

 

そうだったかと頭の後頭部を掻くバンドラ。

ウタはちょうど良さそうな岩に座り、ふぅ…と息をついた。

 

「んじゃあ、10分休憩。」

 

そう言って、ウタに飴を渡すバンドラ。

子ども扱いされているようでウタは少し複雑だったが、ちゃっかり飴は受け取った。




ウタウタの実の解釈はこんな感じかな。完全にルームを意識してます。もうちょっとしたら、色んなキャラと交流したいな。ヤマト、ナミ、ノジコあたりか。今出来るのは…。

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