燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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バンドラ君(+ヒロインズ)のイラスト募集中です。絵心のある方で暇やからやったるよーって方、よろしくお願いします。


第97話

「…あー、俺だ。」

 

電伝虫を使って通話に出る。タバコを蒸し、早朝…晴れ晴れとしたエレジアの姿を見ていた。相手は…新世界の怪物と呼ばれた男…ギルド・テゾーロ。

 

『…ステラは見つかりましたか。バンドラさん。』

 

「…いや。」

 

テゾーロにはたった一人の想い人が居た。

名はステラ。天竜人の奴隷にされた女性であった。

 

バンドラが二度めにエレジアにてウタと出会う前。ボロボロなステラとそれを抱いたテゾーロが海を漂っているのを見つけた。バンドラはステラを小船の上で介抱。走れるようにもなり、テゾーロはバンドラへ多大なる恩義を感じていた。

 

…しかし、ある日、ステラの消息が途絶える。

バンドラとテゾーロが必死に探すものの、見つからず…テゾーロは独自で探すことにした。その為に、テゾーロが命からがら盗んできたゴルゴルの実を食し、現在、グラン・テゾーロと呼ばれる大型のエンターテイメント船を動かしている。

 

これは名前を轟かせることでステラに名前が届くようにしている為である。

 

『…俺がもっと早く自由にさせてあげれていれば…。バンドラさん、ステラは俺といるのが嫌になったのでしょうか。』

 

「…俺からは何も言えん。ステラさんが生きてる可能性も…死んでいる可能性も今はある以上、俺からは何も言えねえ。」

 

『…もしかして、また…天竜人に…。』

 

声からも怒気が伝わってくる。

テスラがテゾーロを嫌になったなどバンドラには信じることができなかった。あれほど愛し愛されていた二人はこの世に存在しないだろうと若々しいながらも思っていた。

 

「…マリージョアに攻める気か?」

 

『俺は二度と彼女を手放さないように強くなった…!!あのクソどもも殺せる筈だッ!!俺たちを笑う…あのクソどもをッ!!』

 

「…お前がしたいかと、ステラさんがして欲しいかは違うだろう?」

 

その言葉にテゾーロの言葉が詰まる。

…ステラという聖人がいなければ、テゾーロは手段を厭わない悪鬼と化していただろう。いや、既に海賊にも海軍にもテゾーロという人間はそう言うものとして認識されている。

 

「…残念だが、俺も昔ほど自由じゃない。残念だが、もう少し後じゃないとマリージョア襲撃なんぞ出来やしねえ。俺も探すようにはしておく。大丈夫だ。」

 

『…お願いします…。俺ぁ…ただ…ステラと楽しく生きたいだけ…なんですよ…!!』

 

…酒でも飲んでいるのだろうか、ポタポタと涙の流れる音が…バンドラの耳に入る。バンドラはタバコを吸って、煙を吐いた。

 

「…大丈夫だ。俺に任せとけ。絶対に探してやる。」

 

そう言ってバンドラは電伝虫を切った。

 

…いつか、覚悟しなければいけない。バンドラの理想国家には天竜人は邪魔だった。だからといって殺しを正当化するわけでもないが…もし、またウタやヤマトに危険を及ぶことがあれば…。

 

「バンドラ?」

 

「どうした。ウタ。」

 

起きたのだろう、寝ぼけ眼でボサボサの髪のウタがバンドラの部屋へと入ってくる。城ということもあって、部屋は沢山あった。シュガーとモネ以外は全員違う部屋である。…時折、バンドラの部屋にヤマトが寝ているのを見かけるが。

 

おぼつかない足でトボトボと歩いてくるウタ。バンドラは煙草の火を消し、ウタを胸で受け止めた。

 

「んぅ…。」

 

「まだ眠いなら起きてこなくてもいいのに。」

 

バンドラの服をぎゅっと握り、目を擦っていた。

…バンドラが初めて出会った頃とは、違い…背もずっと伸び、身体つきも女性らしくなってきた。バンドラはそんなウタの頭を撫でる。

 

「んぁ…?」

 

「…起きたか。」

 

バンドラがふっと笑う。

ウタはバンドラの服をバッと離し、バンドラの膝の上にちょこんと座った。

 

「…煙草臭いのにな。」

 

「…あぅ…。別に…良いじゃん。」

 

…ぎゅっとバンドラの服を持つウタ。

その目はとろんとしていた。まだ寝惚けているのだろう。バンドラの頬へウタの手が伸び、チュッとキスをした。

 

「…おいおい。小僧と会う前に俺としちゃダメだろう?」

 

「るふぃは…関係ないもん…。」

 

「小僧のことは好きじゃないのかぁ?」

 

歯を見せて笑うバンドラ。

そろそろ起きてきたのだろう、ウタがぷくっと頬を膨らませる。

 

「…そもそも、ルフィは子どもじゃん。アイツ、好きとか言ってもわかんないでしょ。」

 

「俺から見たらお前ら二人ともガキだよ。」

 

ニヤリと笑うバンドラ。

ウタはベッドの上に乗り、後ろからバンドラへと抱きついた。

 

「そうそう。そうやって、俺やらシャンクスやらの上に乗ってきやがって。」

 

バンドラは頭の上のウタの頭に手を置く。

懐かしいなぁ…と笑いながら。

 

「ルフィが私のことなんて、覚えてるわけないでしょ?」

 

「んなことねえさ。…アイツにとっちゃお前は姉ちゃんみたいなもんだろ?」

 

…そう、ウタは怖かったのだ。

ルフィという人間の一から十まで知っているつもりだった。だからこそ、その男はどれほど鈍感で人の名前や顔を覚えられないのかはよく知っているつもりだった。

 

「だって、ルフィ、3歩歩いたら飯とか肉しか言わないじゃん。海賊王なんて大層な夢、持っちゃってさ。」

 

「…ガキの夢はデカくてなんぼなの。」

 

「馬鹿で何も考えてないし、相手の力の差がわかってないから無鉄砲だし?…そのくせ、人を助ける為に戦うのは辞さないし、なんか的を得ていること言言い始めるし、子どもっぽいけどやるときは頑張るっていうか…。」

 

…などと小一時間、ルフィの話を始めるウタ。その様子をバンドラは笑顔で聞いていた。バンドラもシャンクスと同じでルフィのことを好いていた。ルフィという男は大物になる。その口の大きさにバンドラはそう踏んでいた。

 

「それにさ、私からシャンクスもバンドラも取ろうとするけど、シャンクスが私のこと取ろうとしたら嫌だっていうしさ。」

 

「はいはい。惚気はその辺で。」

 

呆れたように言うその言葉に、ウタの顔がカァァ…と真っ赤になる。もし、髪を結っていたら、ぴょこぴょこと動いていただろう。

 

「の、惚気って…!!別にルフィのことは好きだけどそういう好きじゃ…!!」

 

「へぇ?どういう好きなんだ?」

 

新しいオモチャを見つけたようにウタの顔を歯を見せて笑いながら見る。昔ならこれで殴られていただろう。…しかし、今は。

 

「…そ…そんなんじゃ…。」

 

顔を真っ赤に染めて、髪の毛をくるくると弄りながら、座っていた。その様子にバンドラがキョトンとする。

 

「…なんか、興が冷めたな。」

 

流石にバンドラの方が大人。

後頭部を手で掻き、窓の方を向く。

 

「小僧に会いたいんじゃないか?」

 

「…そりゃあね。謝らないと。」

 

そう言ってバンドラの横に来るウタ。

その顔は子どもながらに少し美しくも見えた。

 

「私もルフィも新時代を作るんだ。私は身体は幸せな新時代に要らないって言ったけどさ。ルフィは身体もいるんだって。」

 

そう言ってギュッとパジャマの裾を握るウタ。

そのパジャマには瓢箪のような…変なマークが書かれていた。

 

「なんだそりゃ?」

 

「“麦わら帽子”だって。ヘッタクソでしょ?…新時代のマークなんだ。」

 

「へぇ。」

 

そう言って笑う顔は子どもらしくない優しげな笑み。まるで弟を思い出す姉のような…そんな笑顔だった。

 

「…身体はいらないか。…青臭えな。」

 

「は?何言ってんの?」

 

そう言ってふっと笑うバンドラにウタが少しムッとした顔で言った。バンドラは子どもの夢を否定する真似は絶対にしない。したとしても、ふざけたように言うだけだ。…だが、その時のバンドラは違った。優しげな笑みが逆にウタを閉じ込めたような…そんな感覚だった。

 

「身体がなけりゃ抱きしめることもできない。身体がなけりゃ撫でることもできない。身体が無けりゃ…愛を伝えることは出来ないんだよ。お嬢ちゃん。」

 

「…そんなことわかって…。」

 

「魂の震え…なんて言うがな。身体が無けりゃ声も出せねえ、歌えねえ。そして、自由を感じることも出来ねえんだよ。」

 

そう言ってバンドラはウタの頭にポンっと手を置いた。

 

「…何言ってるかわからない。」

 

「そのうちわかるさ。身体が無けりゃ、人の成長を見ることも心の成長を目に見えて感じることも出来ねえんだからよ。」

 

そうやって笑うバンドラにウタはむすっとした顔で返した。




テゾーロ編は原作入った時に。

ウタちゃん人気ね…って思ったけどこの中だと一番今印象が強いのか。ルウタの線も残しつつ…と言う強引。

ルウタ→ハンコックがバンドラにツンデレになるか、ルフィのことを取り合う
ルハン→ウタがバンドラに甘々になるか、ルフィのことを取り合う。

という想定。想定は未定でござる。
ウタちゃんはまだどっちがどうで好きって何か…わからないのさ。ただ安心してるってだけで。

もう原作行くかもですね。
書ける話は大体書いたんで。ロビンが好きなので早くロビンちゃん書きたいけど…我慢我慢。では。

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