劇場版 ONEPIECE FILM 『MAD』 作:はむらび
あれだ、シーザーがあんなに張り合ってるからシーザーとベガパンクがタメかとばかり……
結果的には「伝説のババア」になったから劇場版ボスっぽさはあるかもしれない
ウソップ、ナミ、ブルック、ジンベエはCP0の2人に連れられ、革命軍と合流を目指して洞窟を歩いていた。
「なあ、ここは監視とかされてねえんだろうな!」
「多分な。なんせここは
「え? 此処ってアイツの能力で作った浮き島じゃねェのか!?」
「上の街はな。ここ、土台部分は『霧の海』の海流の影響で船などの漂流物が自然に集まってできた浮島だ。だから、マキナのギトギトの実の影響は及ばない。『地下にこんな洞窟ができている』ことすら気づいていない、はずだ」
「はず、って……」
ドン。
「「ん?」」
薄暗い洞窟の中故か、話をしていて余所見をしていた故か、2人の男がぶつかる。ウソップは目を凝らし、自分とぶつかった男の顔を見る。
それはロロノア・ゾロ。方向音痴が故に失踪していた彼らの仲間だ。
ゾロとチョッパー。同行者である革命軍の少女コアラと、現地の少年ボロ。
「なんだウソップか。どこ行ってたんだ」
「オメーがどっか行ったんだろうが!!」
「チョッパー! まさかゾロと一緒にいるなんて」
「みんな!」
合流を喜ぶ麦わらの一味。だが、1人だけ別の方向を向いている。
「……どうしましたジンベエさん?」
ジンベエは、目を見開いている。合流した仲間の方ではない。もう1人の少女、ゾロ達を連れてきた革命軍であるコアラの方を見つめている。
「!? お前さん、まさかコアラか!?」
「ジンベエの親分!!」
コアラは、ジンベエに抱きつく。幼少期、彼女はタイヨウの海賊団の船長、フィッシャー・タイガーによって奴隷から救われ、ジンベエ達と同じ船で過ごした身だ。
「えへへ、やっぱざらざらしてる」
「"鮫肌"じゃからのう。じゃが乙女の肌に傷をつけちゃあタイのお頭に申し訳が立たん。離れんか」
そうした輪の中に入らないものが3人。意図して輪から離れているCPを除くと1人。
「……で、そこのそいつはなんなんだ? 能力者っぽいが」
「……どうしたボロ?」
ボロは、チョッパーの後ろに隠れている。
「おれ、こんなたくさんの人と話したことなくて」
そう。この島で生まれたボロは、労働と勉強と人体実験に追いやられ、人と話す機会が少なかった。それが、屈強な海賊に囲まれているのだ。恐るのも無理はなかった。
「大丈夫だよ! みんないい奴なんだ!」
「チョッパーが言うなら……」
ボロは、チョッパーの後ろから一歩踏み出す。
だが、瞬間。暗かった世界が光に包まれる。
「ヒィッ!」
ボロは急に明るくなって怖気付いたのか、あるいは明るくなったことで恐ろしいものを見てしまったのか、もう一度チョッパーの後ろに隠れてしまう。
暗かったステージが点灯する。まるでそれはカジノのような煌びやかさ。
周辺を見渡してみれば、十人、二十人と人々の姿が見える。半分ほどは作業服に身を包んでいるが、もう半数はタキシードに身を包んだスキンヘッドの女性だったり、スチームパンク調のドレスに身を包みバニー耳をつけた髭の成人男性だったりする。彼らのような人々のことを、人は“ニューカマー”と呼ぶ。
そして照らされる中央ステージには、紫のアフロが、背を向けて立っている。アフロの人間が、というのではない。超巨大なアフロから小さな胴体と手足が生えた三頭身の体格は、もはやアフロそのものが立っているように見える。
「ヒーハァー!!!!!!!」
アフロが、振り返る。
紫色のリップに、常人の頭ほどはあるつけまつげ、ブルべで纏めた厚化粧。巨大な顔面は、一度見れば忘れないほどの強烈な圧を持っていた。
革命家、エンポリオ・イワンコフ。革命軍の創立メンバーであり、大幹部、そしてカマバッカ王国の女王、オカマ王でもある。
麦わらの一味は動じない。だが、チョッパーの後ろをついてきていたボロは、その「圧」によって尻餅をついた。衝撃でネズネズの実モデルロボロフスキーハムスターの能力が解ける。
「安心していいわよハムボーイ。ヴァタシ達は弱い者の味方。ここのニューカマー達も、元々はヴァナタと同じ"脱走者"!!」
「え……」
ボロは周囲を見渡す。変態、変態。1人飛ばして変態。それがニューカマーランド。
「一緒にされたくない……」
「ショック! ショックで心が折れ……折れ……」
膝をつく巨大なアフロ。
「折れなーい!!」
「「「折れねえのかよ! 一本取られたよ!」」」
「ヒーハァー!!!」
「あら、近くで見るとすごいアフロ」
「!! わかる!?」
「ええ。私もアフロには一過言ある身でして」
「いいわ。後でアフロに効くニューカマー美容法を教えといてあげる」
「頂上戦争ぶりじゃな。イワンコフ」
「ええ。ヴァナータが麦わらボーイの船に乗ってるのはちょっと意外だけどねジンベエ」
ジンベエはあたりを見渡す。変態といえば聞こえが悪いが、自由を求めてあるべき姿になったもの達がそこにはいた。
「此処にいるのはお前さんが集めた"ニューカマー"か」
「ええ。この島に潜伏した革命軍も使って、インペルダウンの時と同じ要領で集めた"反乱分子"よ。この島の研究のおかげで能力者も揃っているし、ある程度は戦えるハズ」
「成程な。SMILEの研究か」
「ええ。マキナが自分の首を絞めてるようだけど、人造能力者やら改造人間やらが揃ったこの島で反乱を起こせれば、非戦闘員といえどかなりの戦力にはなるはずよ」
そう。この島、繁栄国ソルベルデはマキナの人体実験場。ボロのようにまともに戦闘に役立だない実験や、そもそも実験が失敗したパターンもあるにせよ、他の島の一般市民よりははるかに強力だ。革命を起こすのにはこれ以上ないほどに。
「でもね。問題はあるわ」
革命を起こすことさえできれば。
「此処の人たちは既に『戦う気力』を失っちゃブル! 「運命に抗う気力」の無い者に逆転のチャンスは訪れナッシング!!」
それは、革命軍のポリシー。ただ助けを待つだけのものを助けるのではない。自分たちで立ち上がるものを手助けする。それが革命軍なのだ。だが。この島においては。それは無情すぎる。
「まあ、そう言い切っちゃっても良いのかもだけど。この国に限ってはそれは酷かもしれないわね。「抗う気力を徹底的、かつ意図的に削いでる」ワケだから。それを「諦めない者でいられなかった」自己責任と言っちゃうのも無情!」
ただし、その意見は、「精神を病んだ」者に対してあまりにも酷だ。支配者は立ち上がる気力を徹底的にへし折るものだからだ。一歩間違えば支配者による洗脳を肯定するだけになりかねない。だから、革命軍は立ち上がれないものが「立ち上がるため」の手助けも行う。
「でも、イワさんの"ホルホルの実"の能力があれば、気力を取り戻させるのも行けるでしょ? ほら、ブスっと!」
イワンコフの食べた悪魔の実は、ホルホルの実のホルモン自在人間。指に生えた注射針からホルモンを注射することで、性別、病気、肉体のサイズなどの肉体構造まで、全てを超越する人体のパイオニア。
「とは言ってもね……ベティなら梅雨知らず、ヴァタシの能力で一人一人気力を取り戻させていくのは、流石に無理があるわね。労働者の健康面では気遣われてるから、"エンポリオ・テンションホルモン"に耐えられナッシブルな人はいないだろうけど……」
そう。この場には、コブコブの実の能力者であるベロ・ベティがいない。彼女はレヴェリー帰りであり、この島を解放する準備を整える時間はなかったためだ。
だから、ひとりひとりにイワンコフの指先の注射針を刺して回るしか方法が……
「おれがやるよ」
「!?」
ない、はずだった。ここにトニートニー・チョッパーと言う医者が来るまでは。
「ヴァナタ、何を!?」
「だから、そのテンションホルモンって奴だよ。お前が能力で作ったホルモンを、おれが加工してこの国全体に散布できるようにする。薬の広域散布はワノ国でもやったことだ。ホルモンの性質にもよるけど、できないことはないはずだ」
ワノ国において、チョッパーは氷鬼の抗体を広域散布して多くの侍の命を救った。構造は違えど、それがテンションホルモンでも可能だとすれば。
「おれたちが戦うだけじゃダメなんだ。この国の人たちが元気を取り戻して、その後どう思うか確かめないと」
「!!」
それは、革命軍の思想にも近い、自由の思想。革命軍が自勇軍だった時から繋がる、自助の考え方だ。
「……ヴァナタ、革命軍に来ない?
「誰が
「そう」
イワンコフは残念そうに首を振った。
「兎に角、この国の気力を取り戻せるなら話が早いわ。気力を取り戻した彼等の手をヴァタシ達が取って革命を起こす。ベティのコブコブの実の力がないから戦力としては一歩劣るかもしれないけど、それでも混乱は引き起こせるわ」
「なるほど」
「おいおい待て!」
待ったをかけたのがウソップだ。彼には、この計画は穴があるようにしか見えなかったのだ。ネガティブな彼は、裏返せば慎重に計画を立てるタチだとも言える。
「それで、どうすんだよ! この国で反乱を起こす? 革命軍とCPが味方する? それで? 『殴り込む』だけか?」
そうだ。そもそもの問題はそこだ。麦わらの一味は今や四皇とはいえ、それは現地の人々の手と、時代の流れを借りてこそ。世界を敵に回す国家兵力を相手にして、単純な力押しだけで解決できる集団ではない。そもそも、主戦力である船長とコックが捕まっているのだ。
「ええ。とくにマキナさんとアダムスさん、でしたか? あの2人は相当な実力者ですよ。相手するのは骨が折れます。私の骨が折れたら大変なことになっちゃいますけど! ヨホホホホ!!」
「それだけじゃあなかろう。この国は『文明の国』。世界政府と敵対できる兵力があるなら、この国の防衛戦力も桁違いじゃろう」
「いや、問題ねェ。あの羽野郎はおれが斬る」
口を開いたのは海賊狩りのゾロだ。
「CPのテメェらの横槍が入ったが、おれとアイツの勝負はまだ着いてねェ」
アダムスとの戦いにおいて、無敵と高速化を繰り返すルナーリア族の特性を知るゾロだけが戦いの土俵に立てていた。未知の種族特性に不意を打たれ敗北したサンジとは異なり、ゾロは未だ敗北していない。
「あの女の方も……ルフィを解放しさえすれば勝てる」
「おいおい、一度負けてるのにか?」
「……ウソップ、お前、あの女を初見で強そうだと思えたか?」
「いやまあ、俺よりは強いかもと思ったけどよ……って、そういうことか!!」
「戦いの様子は見てねェが、おおかた油断したとかだろ。ルフィは海賊王になる男だ。次は油断しねェはずだ。あんな女に二度負けることはねェ」
「……って事は、本当に力押しか!?」
「そうでもないぞ長鼻」
「オメェも長鼻だろ!!!!」
口を開いたのはCPのカクだ。
「策はある。確かに最終的には力押しになるが……」
「この島の科学を少し麻痺させるだけなら、わたしのアワアワの能力があれば可能よ。今までは戦力が足りないから"それだけ"止まりだったけど……」
「なるほどね。島が混乱してる間にあたし達っていう戦力が殴り込みに行けばいい、ってことね」
そう。アワアワの能力で島の機能を停止させれば、大量の"兵力"は意味を成さぬ。そうすれば、戦力に換算できるのはマキナ、アダムス、シーザー、ワシントンの3人と1機だけだ。それでも十分な兵力ではあるが、麦わらの一味の力押しでなんとかなる範疇まで減る。
「おいナミ、あたし達、っておれもか?」
「当たり前でしょウソップ! 仲間が捕まってんのよ!!」
「あ、ああ! そうだな! ここで逃げちゃあ男がすたる!!」
「私たちCP0が島の中枢部、摩天楼地下に潜入して、アワアワの能力で島の機構を麻痺させるわ。だけど、マキナがその気になればすぐにでも復旧ができる。できてしまう」
「そうしたら一巻の終わりだね。私たち革命軍と市民達が蜂起しても、多分すぐに鎮圧されちゃう」
「じゃから、貴様ら一味が畳み掛けるんじゃ。戦闘でマキナのリソースを削ぎ、相手に復旧の隙を与えずに、捕まった貴様らの仲間を解放し、マキナを討つ」
「なるほど。わかった。じゃあ、今から出るぞ」
「待て。決行は2日後じゃ」
「2日後ぉ?? ルフィたちが捕まってんだぞ!? どんな目にあってるかも知らねえ! 早く助けに行かねえと!!」
「それに、政府としても早く討ちたいはずじゃ。世界政府に対する反乱の恐れ、なんじゃろう?」
「ああ。その話だが、少し語弊があるな。『恐れ』じゃない。ついさっき連絡があってな。現実になった。マリンフォードに攻め込んだそうじゃ」
「なら尚更」
「だからよ。マリンフォードが戦うことで、マキナの体力を削れるのが1つ」
「そして、内情は言えんが世界政府は『秘密兵器』を動かしておる」
「……まさかそれは古代兵器じゃあなかろうな」
「古代兵器の詮索は大罪……といっても貴様らには関係ないことか。そもそもわしらも知らん。まあ、戦況をひっくり返せるのは確からしい。それがこの島に到着するまで2日じゃ」
「ヴァタシ達が市民の革命を扇動するのに時間がかかる、というのも理由ね。今すぐに、というのは流石に難しいわ」
「おれからも頼む。ホルモンを散布するとしても、少し研究時間が欲しい」
「なら仕方ないわね。仮に酷い目にあってたとしても、ルフィやサンジくん、ロビンにフランキー。1日2日の拷問で根を上げる奴等じゃないわ。勝つ確率が高い方を取りましょう」
「ということで、決行は2日後! ヴァナタ達! 麦わらボーイの救出とこの国の革命のため、英気を養うように! 以上、解散!!」