劇場版 ONEPIECE FILM 『MAD』 作:はむらび
時間は少し遡る。
摩天楼、繁栄国ソルベルデ、王宮大広間。
ゴオーン、ゴオーン。
「なにこれ、爆発?」
それは、少し離れた回廊でのルフィとマキナの戦闘の余波。
食事を楽しむ麦わらの一味にとっては意味が分からないことだ。だが、シーザーたちにとっては違う。
「
「シュロロロロ。受信したか。まア、この爆発で分かる」
それは、改造人間に内蔵された、電伝虫の機能。この建物内の電波・音波はすべて彼の耳に届く。そういうように、彼とこの建物が設計されている。
「なら、さっそく
それは、2が科学者としての興味。0,5がマキナの大義。7,5がシーザーの私怨だ。
「御意」
まず、翼ある改造人間の腕が無造作にニコ・ロビンを掴もうとする。
だが。その腕が触れたのは女の柔肌ではなかった。それは男の赫足。赤熱した、サンジの蹴りだ。
「おい、クソ羽。ロビンちゃんに手ェ出してんじゃねえよ!!」
それは、レディを護ろうとする男のサガ。そして、この島の内情にチョッパー同様不信感を抱いていたが故の反応速度。
だが、その蹴りを受けてなお、翼の生えた大男は無反応だ。
「
それを見て動いたのはブルック。老獪な経験を持つ彼は判断が早い。圧倒的な強度を持つと判断し、本来は武器破壊用の連撃を叩きこむ。
「なんなんですかコレ!?!?」
だが、通じない。硬すぎる。
「知りたいか? 教えてやる!」
シーザーは自慢げに吠える。己の
「カイドウも馬鹿な野郎だった! 『悪魔の実の能力者』に拘ったせいで、面倒なSMILEなんぞを作り続けなきゃならなかった!」
それは、「能力者軍団」を造ろうとしたカイドウの思考の弱み。「動物系の能力者は強い」という、自身の経験から来る誤謬。
そんなことをするよりも効率的な方法はあるのに、クライアントに合わせないといけない雇われ研究者の悲哀。
「血統因子を操作するなら、直接弄った方が簡単だ! 「能力は1人1つ」の原則にも引っかからねェ!!」
SMILEは、複数の動物の血統因子をランダムで発現させる人造悪魔の実だ。その形質の発現率は低く、発現したとしてもその大半は戦闘に向かない。日常生活すら困難なものも多い。
ならば。ジェルマ66が息子たちにそうしたように。血統因子そのものを直接弄ってしまえば。有力な形質を、確実に! そして、悪魔の実のルールにも縛られず、複数実現できる!!
「時代は"スマイル"? 馬鹿を言え! こいつこそが兵器の新時代だ! "
それは、世界政府が実装した新兵器。完成した暁には七武海すら不要となる、新型パシフィスタ「セラフィム」のプロトタイプ。
かつてMADSが研究していた、最強種ルナーリア族をベースに、複数の血統因子を混ぜ込んだミュータント。
しかも、混ぜられた血統因子の数は正式採用型の比ではない。「実験動物」として行われた複数の強化手術により、量産性と引き換えに正式採用型を凌駕する究極のワンオフ機。
それがアダムス。『
アダムスの姿が消える。その速度を追えたのは、百戦錬磨の麦わらの一味と言えど1人だけ。ロロノア・ゾロだ。
彼はこの動きに見覚えがあった。ルナーリア族特有の加速能力だ。
だが、加速の後の動きは違う。
「
「!?」
「五千枚瓦正拳」
「刀狼流し!!」
魚人の筋力と水への親和性を活かした魚人空手。
ゾロは即座に、攻撃のための剣を持ち替え相殺する。だが、予期せぬ攻撃への咄嗟の防御故か、吹き飛ばされたのはゾロだ。
「ゾロ!」
「ああ、痛ェ、だがお陰で酔いが覚めた」
「自慢することではないが」
アダムスが口を開く。被造物故か、あるいは武人肌なのか。この男は寡黙だ。
「大凡の武術は生まれる前からインストールされている」
それは、ジェルマの人造兵士と同じ技術。最強の兵士を育てるために、戦闘技術そのものをプログラミングしておく技術。
「とはいえ、
そう。パシフィスタがそうであるように、感情が希薄なアダムスは「意志の力」である覇気との相性が悪い。
「
気合とともに、ゾロの右腕、左腕に力が集まる。
「三刀流──
それは、ゾロの持つ三刀流の中で最大の力技。
相手が
「なんだ? コイツもカイドウと同じか!?!?」
その皮膚は爬虫類の鱗のようになっていた。圧倒的な強度を誇るそれは、龍などという幻想生物のそれではない。
ルナーリア族の強度に「上乗せ」された最強の蛇の鱗は、ギャリギャリと異音を立てながらゾロの刀を弾いた。
とはいえ、完全に刀を無効化するとはいかない。いかに硬くとも、衝撃は殺せない。
アダムスはゾロの刀の勢いでのけぞる。
そして。
「
のけぞったアダムスの隙をめがけて、赤熱するサンジの脚がまるで車輪のように縦回転しながら迫る。
「
アダムスの顔面にサンジの踵が回転しながらめり込む。鼻がへし折れる。
アダムスは圧倒的な強度を持つが、サンジもまた「硬さ」では負けていない。ジェルマ66の技術力が生み出した「外骨格」は、アダムスの硬さに押し勝つ。
ガシッ
だが。アダムスは顔面が陥没したことをものともしない。痛覚を遮断している。焦げることも気にせず、サンジの赤熱した脚をそのまま大きな掌で掴む。
「おいおい、マジかよ」
しかも、陥没したアダムスの鼻がぶくぶくと泡立ち、修復されていく。なんの血統因子が齎したものだろうか。再生能力だ。
そしてそのまま、アダムスの口に光が集まり、撃ち出される。パシフィスタである以上、レーザー機構も当然搭載している。
「サンジくん!!!!」
掌ごとサンジを撃ち抜く。
「
しかし突然、アダムスの肉体から女の腕が生える。それは、麦わらの一味考古学者、ニコ・ロビンの食べたハナハナの実の能力!
「クラッチ!」
そして、そのまま背骨を極める。
かつては、本数こそあれ女の筋力では、高い防御を持つ相手には決定打とならなかった。
だが、今は違う。「魚人空手」。2年間の修行で獲得した、相手の体内の水分に直接衝撃を通す格闘技にして奥義。これにより、クラッチはルナーリア族の無敵の肉体をも極める必殺の技となる!
アダムスが、ただのルナーリア族であれば。
「
アダムスの肉体が、莫大な電気を帯びる。それは、新世界に棲むミンク族の種族特性、発電能力!!
「ああっっっっ!!」
「くっ、ロビンちゃん!!!!」
ハナハナの能力で生やした腕を介し、ロビンに電流が走る。アダムスを極めていた腕はだらりと力を失う。失ったものはそれだけではない。感電したことで本体の意識も刈り取られた。
サンジはアダムスに掴まれていたことで自身も感電しながらも、レディの身を案じる。筋金入りの紳士だ。
「イカれてんじゃねえのかあいつ」
「聞こえてんぞクソマリモ!!」
とはいえ、レーザーと電流を食らって焼け焦げたその肉体はすでに抵抗する力を失っている。
そして。脚を掴まれたサンジは地面に叩きつけられる。煙の中、意識を刈り取られた黒い影が見えた。
さらに、麦わらの一味の背後から。気絶したロビンを掴む影がある。それは鳳の影。機械仕掛けの猛禽の脚が、ロビンを掴んで飛翔する。
ワシントン。機械仕掛けの陽気な鳥も、この国の忠実なしもべ。
「フランキィー……ラディカルビィィーム!!!」
フランキーの両手から光が飛び出す。それは、アダムスたちと同様、パシフィスタ式のレーザービーム。飛ぶ鳥を撃ち落とす光。
だが。そんな普及した科学技術が、この島の兵器であるワシントンに搭載されていない理由はあるだろうか?
「
ワシントンの翼から、7本のレーザーが曲進する。1本1本はフランキーラディカルビームより細い。威力も劣るだろう。だが、奇怪な軌道を描き収束した7本のレーザーは、フランキーラディカルビームを相殺できる。
ホーミングレーザー。フランキーラディカルビームより技術的に少し進んだ兵器だ。
「これで2人」
「違うよワシントン。
そこに歩み寄る影がある。
「ルフィ!?!?」
それは、麦わらの一味の「船長」、麦わらのルフィを担ぐ影。
四皇を沈黙させるほどの戦力。女科学者マキナのものだ。
「あれ? シーザー、まだ終わってなかったのか。不意を打ってシノクニでも撃てば良かったのに」
「バカ言え! 割れた手の内を二度使う科学者がどこにいる! それに」
「それに?」
「アダムスの実戦データが欲しかった。あいつは強いが、自我が希薄だ。
「あー、まあ、そうだね。そっちの方が優先度が高いか」
アダムスは無敵の合成獣だが、それも対・非能力者に限る。覇気を使えない以上、自然系の能力者に対する有効打を持てない。
「とはいえタイムリミットだ。そろそろ私が手を下すよ」
「おれの……仲間に……手を出すな!」
「ウソだろ!? 体内を起爆して5分も経ってないぞ!? どういうタフネスしてるんだ!?」
もがき苦しむルフィ。だが、その肉体はプラスチックで固められていて動けない。ただ声を張り上げるだけ。
というか、身体をレーザーで貫かれ、肺の中の気体をまるごと起爆させられ、今でも口元の酸素量は通常の1/10に保たれているというのに数分で復帰して大声を張り上げられるのがおかしいのだ。
「でもまあ、これで終わりだ。アダムス1人に勝てないようじゃあ、私が加わった時点で勝ちの目は無くなった」
そう。パシフィスタ1人に勝てないのに、そこに「ルフィに勝てる」戦力が加わったなら。
「『
マキナの右手から、黒が噴き出す。それは、石油の濁流。広間を埋め尽くす規模の油の津波。
小手先の技能を要しない、ただの片手間の質量攻撃だ。だが、それだけで全てを押し流す「自然災害」!!
……だが。偉大なる航路において、
「
それは、魚人空手の奥義。流体を掴み、衝撃を伝える術。津波が、割れる。
「この程度の波、乗りこなせんで何が操舵手か!!」
だが、その津波は片手間の攻撃にすぎない。否。攻撃ですらない。その本質は黒で視界を奪う「壁」にして「暗幕」!!
「『
油の暗幕を隠れ蓑に、飛び出すは糸。その繊維の名を「66ナイロン」。奇しくもジェルマ66と同じ数字を冠する、「化学繊維」だ。
その狙いは「鉄人」フランキー!
見えないほどの細さでありながら、その強度は1本1本が鋼鉄のパイプを超える。直感に反するその性質はひとえに、悪魔の実の産物が故。鋼鉄仕掛けのフランキーを軽々持ち上げ、そのパワーでも振り払うことすらできない。
一瞬で油の海の中に引きずり込まれる。
「フランキー!!」
油が晴れると、糸で巻かれたフランキーが、それ以上の巨体を持つアダムスに担がれていた。
「これで4人目」
「ゼウス!」
「はぁいナミ」
「ブリーズ=テンポ!!」
ゼウスブリーズ=テンポ。ビッグ・マムの魂を宿す雷雲、ゼウスの力を帯びた雷霆。視界が開けた瞬間、それが、マキナの肉体を狙う。
今は手袋をつけていないマキナの手には黄金色のラインが入っている。指先からは端子が露出している。
サイボーグだ。サイボーグであれば、電撃は効く。ナミはそう判断したのだ。
本来であればマキナに掴まれたルフィにも当たるが、ルフィはゴムだ。絶縁体なので、ルフィに電気は通らない。
「……科学者として善意で教えておいてあげるよ」
だが。効かない。耐えているというわけでもない。それはまるで、ルフィが電流を受けた時のような……
「石油も絶縁体だ。なんなら、天然ゴムよりも電気抵抗は高いよ」
そう。「絶縁体」の性質を持つ能力者は、ゴムゴムの実のゴム人間だけではない! ギトギトの実もまた、電流に高い抗体を持つ能力のひとつ!
「嘘!」
「5人目以降は……まあ要らないや。死んでくれ」
それは死刑宣告。実験動物になるのとどちらが過酷かは諸説がある。
「『
マキナの影が広がる。その「黒」は油だ。そこから広がるは黒い九頭竜。黒い身体は油。白い牙は鋼鉄以上に硬いプラスチック。口から吐くは数千度の炎。
……否。8つは龍だが、ひとつは虎の首が混じっているが。
鎌首をもたげる龍虎が牙を剥き、残された麦わらの一味の5人に迫る!!!
「“羊雲”
「嵐脚 “
壁を蹴破って現れた増援がいる。
泡の壁は、「油汚れ」を弾く。そして、キリンの強靭な脚力から放たれる蹴りは、斬撃として九頭竜の頭を全て斬り飛ばす。
「貴方たちは……CP9!!」
「今はCP0よ」
「事情は後じゃ。今はいったん退くぞ!!」
それは、CP0。カクとカリファ。かつて麦わらの一味と敵対した、世界政府のエージェントたちだった。
〇カリファ
劇場版ゲストキャラ。REDのブルーノさんの枠。
ギトギトの実の天敵、油汚れを落とすアワアワの実の「石鹸人間」。
〇カク
劇場版ゲストキャラ。REDのブルーノさんの枠。
ウォーターセブン当時とは異なり、ジンベエがいるせいで老人口調が被る。
原作でレヴェリーに居たので、ソルベルデに来るのは時間軸が結構タイト。今後の本誌の状況によっては存在に矛盾が生じる可能性があるが、劇場版時空はそういうものだから許してほしい。
〇シーザー
「おれは劇場版の中ボスだが?」みたいな面をした劇場版ゲストキャラ。いねェよこんな枠。
FILM STRONG WORLDのDr.インディゴとはNo.2の立場も振る舞いも似てれば声優も同じ。
FILM MADのストーリーは「マキナが