主人公:プロフィール
・牧静流(まきしずる)
職業:女優
生年月日:1985年1月1日
血液型:B型
身長:153cm
好物:レアチーズケーキ、それ以外は気分次第でコロコロ変わる
好きなもの(または人):猫、おもしろい人、真面目な人
嫌いなもの(または人):牛乳、満員電車、高いところ、惰性で生きている人
好きな映画:ピアノ・レッスン
「あらまぁ、こんな日に奇遇ですね」
目と鼻の先から聞こえてきた独特な覇気に満ちた優美な声。一気に全身へと襲い掛かる緊張を意地で払い除けて視線を向けると、お供え物の花束を片手に着物を上品に着こなした壮年の女性が荘厳な笑みを浮かべていた。
夜会巻きで纏めた“母親譲り”の艶やかな黒い髪と、“薬師寺”の血を引いた人間に共通する透き通った青紫色の瞳。そして年齢の割に若々しくもなければ年齢不詳というわけでもないが、芸能界という異端な世界で40年近くの歳月を“生きる”この人にしか出せない“
この人とこうやって面と向かうのは、3年前の日本アカデミー賞で私が新人賞を獲った時に会場で初めて挨拶して以来、二度目だ。
「・・・・・・あなたがこの場所に来るのは “真波さんの命日”だけだったはずですが・・・これはいったいどういう風の吹き回しなのでしょうか?・・・・・・“真美さん”・・・・・・」
ママからの穏やかで禍々しい
「“そんなこと”をあなたに話したところで何になるのかしら・・・・・・それにせっかくこうして“偶然”とはいえ“真波”の前で久しぶりに再会したのだから、“そんな怖い顔”をするのはよしなさいな・・・“真純ちゃん”・・・」
「・・・果たして本当に“偶然”なのでしょうかね・・・?」
ちなみに真美さんは実の妹にあたるママとは二卵性の双子の間柄で、瓜二つというほど似てるわけじゃないし髪型や着ている服の種類も違うけど、並んでみると何も知らない人でも見た瞬間に姉妹だと分かるくらいには似ている。
そして何を隠そう真美さんは法律上だと他人になるが、私にとっては正真正銘の“伯母”にあたる人になる。ただし、真美さんとは3年前のアカデミー賞のときにしか会ったことがないから、
「・・・静流ちゃんも来ていたのね。先ずはお久しぶり」
ママからの“
「お久しぶりです。真美さん」
「それからご卒業おめでとう」
「ありがとうございます」
伯母にあたる人とはいえ、今のところアカデミー賞の席でたった一度だけしか会話を交わしていない私は“伯母さん”を前にすると自然と呼び名が“真美さん”になり、話す言葉も自然と敬語になる。
「こうして真美さんと直接お会いするのは3年前のアカデミー賞の授賞式以来ですね?」
「3年ですか・・・それだけの月日が経てば静流ちゃんも大人らしくなるわね」
「いえいえ、私は
そんな真美さんは私にとって“伯母さん”ではなく、“芸能界の大先輩”にして同じ女優として一番の“脅威”だ。
「・・・しかし、前に会った時は“どことなく面影がある”程度だったはずなのに、この3年で
ちなみに真美さんもママと同じく、おばあちゃんのことを決して“おかあさん”とは呼ばない。
“『・・・なるほど・・・あなたが“真波の
3年前に初めて会った時にも、真美さんの口からは“おかあさん”や“母親”という単語は一切出てくることはなく、頑なに“真波”、あるいは“彼女”と言っていた。
“『真波が私のことを娘として見ていたことは一度足りともありませんでした。もちろん私にとっても真波という存在は母ではなく女優としての師であり、ライバルでした・・・』”
落ち着いた口調はそのままに、真美さんは意気揚々と私に“真波さん”の話をしてくれた。
真波さんの恐ろしさと美しさを誰よりも知っているのは私だということ。
“『それにしても、あなたのような“温室育ち”の
ついでに私のような子役風情が、“真波の代わりとなる女優になどなれるはずがない”ということもわざわざ私に教えてくれた。
“『・・・私は“薬師寺真波”ではなく、牧静流です』”
私は
“一番上の頂き”を目指す “エゴイスト”にとって、それは“当たり前に持ち合わせている感情”。
“『今までも、そしてこれからもずっと、私は“牧静流”のまま芝居を続けて、“
だから私は私のまま“あなたたちに追いついて見せる”と、強がることも取り繕うこともせずありのままの気持ちを真美さんに伝えた。
“『・・・真純ちゃんからずっと“甘やかされて”きた割には、 “節操”に育ったものね・・・』”
それがどのような形で伝わったのかは本人にしか分からないことだけど、私のことを視る真美さんの口元は、ほんの少しだけ緩んでいた。彼女からはまだ“認められて”はいないことは別にして、何だかそれがまた一歩自分が“女優と呼べる存在”に近づけた気がして、ほんの少しだけ嬉しかった。
さり気なくママのことを侮辱したことだけは、3年経った今でも根に持っているけれど。
“『・・・こう見えて私、“嘘吐き”は世界で一番嫌いなので・・・』”
「・・・しかし、前に会った時は“どことなく面影がある”程度だったはずなのに、この3年で
あれから3年。私と“
まぁ、仮に芸能界がたった3年でこの人たちと同じ“領域”に立てるような“甘い世界”だったとしたら、退屈すぎて逆に私は耐えられない。
「真波譲りの小顔で可憐でありながらも凛とした顔立ちに少しばかり大きめな胸・・・特に宝石のように透き通ったその瞳と右目の
まるで美術館に飾られた名画をゆっくりと吟味するかのように、真美さんは視線で私の顔をなぞる。
「そうですね・・・真美さんの言う通り“顔立ち”だけは似てきたかもしれないですね」
別に嬉しいなんて全く思っていないけど、私と“若い頃のおばあちゃん”の顔立ちはお世辞抜きでよく似ている。右目の泣きぼくろに至っては薬師寺の血筋において“おばあちゃんと私”しか持ち合わせていない“唯一無二の共通点”だ。明らかに違う部分は“一ノ瀬の血筋”から受け継いだ赤い髪と、160の後半はあったとされる恵まれた体型ぐらいで、それ以外は真美さんの言う通りよく似ている。
でもそんなもの、真美さんにとっても隣で私を見守るママにとっても、何より私にとっては単なる“皮肉の題材”でしかない。
「・・・であれば尚更、女優としてより“内面”も磨いてもらわなければさぞ真波も悲しむことでしょうね」
優美な笑みを浮かべたまま
「えぇ、もちろんです・・・あくまで私は薬師寺真波の“生き写し”ではなく、ただ一人の“
真美さんが目の前にいるだけで、ほんの僅かに草木を揺らすそよ風でさえもひどく冷たく身体へと突き刺さり、鳥肌となって全身を容赦なく襲い掛かる。指先の1つでも気を緩めてしまえばこの身体ごと飲み込まれてしまいそうな緊張感と底知れぬ恐怖。
「・・・さも真波に比べて自分のほうが優れていると言いたげな“物言い”ね?静流ちゃん?」
そんな真美さんの立ち姿を見ているだけで、この人がおばあちゃんからどのような“仕打ち”を受けてきたのかは容易に想像がつく。いや、きっと私の想像なんて当てにならないくらい、真美さんにとって“真波”の存在は恐ろしいものだったのだろう。
「“物言い”なんてとんでもないですよ・・・」
はっきり言って
「3年前にも話させていただきましたけど私は“嘘吐き”が世界で一番嫌いなもので。ただそれだけのことです・・・・・・ちなみに先ほど“おばあちゃん”には無礼など関係なくはっきりと、“私の意思”を申し上げていただきました・・・」
だから私は女優として“一番の存在”になるためだったら、“毒”だろうと何だろうと
「・・・自分の中にある“
「・・・・・・ありがとうございます」
おばあちゃんの遺した“忘れ形見”からのあまりにも重い言葉を、私は真正面から受け止める。
同じ女優として今の私は、真美さんの足元にも及ばない。私が一歩を進めるたびに、彼女もまた一歩、二歩と歩を進め、
“この人たち”に追いつくためには、ただひたすらに“女優”を続けて、
“・・・自分より上に誰かがいるのは、
「・・・それにしてもまぁ、相変わらずお供え物が多いこと多いこと」
「無理はないですよ。なにせここに眠るのは“日本一の女優”、薬師寺真波なわけですから」
おばあちゃんのお墓に目をやり毎度のお供え物の多さをボヤく真美さんに、それまで隣でずっと私のことを“女優として”静かに見守っていたママが“にこやかに”言葉をかける。
「ほんと・・・これじゃあ私たちが来る意味がまるでないじゃない・・・」
「そんなことはないと思いますよ。少なくとも真波さんは“誰よりも可愛がっていた
ただお互いが女優だった頃から絶対に共演NGで、生まれたばかりの時から常に競わされて育てられてきた2人がもしも“同じ現場”で“共演”してしまったら、どうなるかは明らかだ。
「・・・そうね・・・少なくとも“勝手に芸能の道に進み勝手に芸能を捨てた真純ちゃんよりは”望んでいるのかもしれないわね」
「おやおや挑発ですか?いい歳をこいた“おばさん”の“子供じみた”挑発を目の前で見せられたら、それこそ真波さんはさぞ頭を抱えて悲しむことでしょうね?」
お互いが穏やかな笑顔を浮かべ、お互いが口角を上げ穏やかな口調で語らいながら、お互いが敵意剥き出しの見えない火花を容赦なく散らしまくる。これが“超豪華キャストによる姉妹喧嘩”だと言えば幾分か聞こえはいいかもしれないけれど、実態は昼ドラの愛憎劇ですら“プロの俳優たちのお遊戯会”に成り下がってしまうほどの“ホンモノの修羅場”だ。
「挑発だなんて滅相もないわ。私はただ静流ちゃんと同じように“変えようのない事実”を言っているだけよ?」
「うちの娘を棚に上げて物を言うのはみっともことないですよ?真美さん?」
もう分かると思うけど、私のママと真美さんは“犬猿の仲”じゃ収まらないくらい仲が悪い。小さい頃、ママが頑なに私を真美さんと会わせようしなかったことも、この2人の関係性を直接目にすれば頷ける。
「さっきから
優美に微笑みながら何の悪気もなく平然とした態度で、私の前で真美さんはママに対する“最大級の侮辱”を言い放つ。
ちなみに私は生まれた時からずっとママから“大切に育てられて”きたこともあってか、真美さんがママのことを侮辱すれば、それが正論であろうと基本的に私もママと同じようにその侮辱には怒りを覚える。
でもここで我慢出来ずに“相手の罠”に易々と乗ってしまうのは、“
「女優が女優で在り続けるための最終的な本質なんてそんなものでしょ?そういう意味では真美さんこそ、身の回りのもの全てを“敵視”する“エゴの塊”そのものじゃないですか?」
だから私は真美さんと“対峙した”私をただ黙って見守っていたママと同じく、恐らく芸能界において1位2位を争うレベルで贅沢であろう“姉妹喧嘩”を特等席で見守り続ける。
「・・・そのことを自分でも分かっていながら、真純ちゃんは最後まで自分にすら勝てなかった・・・・・・それが“全て”よ」
悪びれることも悪意を込めることもなくママに“死体蹴り”も同然の言葉を投げかけると、真美さんはそのまま墓石の前に鎮座する2段の段差を上がり、左手に仏花の花束を持ったままお墓の前に立つ。
さすがに何をどう言い返しても“言い訳になってしまう”言葉を投げられてしまったママは、無言で抵抗するのが精一杯だ。これに関しては同じ女優として真美さんの言っていることは圧倒的に正しく、正論以外の何物でもない。
自分の中にいる自分に勝てない
「・・・昨今は映画やドラマのみならず、芸能界そのものも“画一的で節操のないお利口さん”が随分と増えてしまいました・・・・・・映画こそが娯楽、映画こそが人生の全てだったあなたの生きていた時代が・・・私は本当に羨ましく恋しい限り・・・」
そんなママからの無言の憤りなどどこ吹く風と、真美さんは墓前で花束を片手に独白をするかのように目の前で眠っている“真波”へ語りかける。
「・・・私が“妹”のように可愛がっていたアリサちゃんも芸能を捨てまもなく2年、今ではすっかり“お金に目の眩んだ甘ちゃん”に“成り下がって”しまった・・・・・・こんな有り様では、先が思いやられるばかりで嫌になりますよ・・・」
“・・・アリサちゃん・・・”
「・・・まだ未練たらしく“気に掛けて”らっしゃるのですね?アリサちゃんのこと?」
“真波”へと語りかけていた真美さんに、ママが沈黙を破って言葉をかける。
「・・・未練も何も・・・“女優・星アリサ”を失った日本の映画界の損失は計り知れないほど大きい・・・・・・それは
「えぇ・・・・・・彼女の引退で、間違いなく映画はおろか芸能界の歴史そのものも大きく変わってしまいましたからね・・・」
1998年4月。老若男女を問わない国民的な人気と他の追従を許さない圧倒的な演技力を持った日本はおろか世界をも誇る1人の天才女優が、自らの足で表舞台を降りた。
「・・・・・・ようやく・・・真波に堂々と自慢できる“女優”が現れたと信じていたのに・・・・・・“馬鹿たれ”が・・・」
どんな時でも穏やかな口調だけは崩さないはずの真美さんの口から、ふと“人間臭い”感情が姿を見せた。
もちろん、ここまでアリサさんが“芸能を捨てた”ことを“悲しんでいる”理由も、“それに近い経験”をしている私には痛いほど分かっていた。
“『・・・こう見えて私、“嘘吐き”は世界で一番嫌いなので・・・』”
“『・・・・・・それはアリサちゃんの“悪知恵”かしら?』”
私の中にある“役者観”が大きく変わったきっかけを、真美さんはあっという間に言い当てた。
“『・・・どうしてわかったのですか?』”
“『・・・・・・ふふふっ』”
あまりに呆気なく当てられてしまった私が大真面目に理由を問うと、真美さんはまるでドジをした自分の娘を微笑み交じりに近くで見守る母親のような表情を浮かべ上品に笑った。
“『何が、おかしいんですか?』”
そんな真美さんの
“『私がアリサちゃんと初めて会った時、いまあなたが言ったことと全く同じことを啖呵を切るかのごとく私に言ってきたことがあって、何だかそれが懐かしくてね・・・』”
穏やかでありながらも底の知れない暗闇を孕んだ独特の覇気が、アリサさんの話をしているときだけはどこか遠くへと消え去っていた。その
“・・・噂通り“恐い人”だけど・・・・・・アリサさんほどの
私は不覚にも真美さんの“魅力”に気付き、感心してしまった。
“『いま、この芸能界において彼女を超える女優は誰一人としていないわ』”
“『・・・それは真美さんも含めてという
可愛くて仕方のない“妹”のことを誇らしげに話す真美さんに、私は正々堂々と思ったことをアリサさんと同じように伝えた。一応、無礼は承知の上だ。
“『・・・・・・全く、あなたはアリサちゃんの“悪いところ”まで影響されちゃったみたいね・・・』”
すると裏表のない微笑みに“影”が一気に落ちて、氷のように冷たい青紫の瞳が私を横目に捉えた。
“『・・・だけれどあながち間違いだとは言い切れないかもしれないわね・・・・・・所詮私はアリサちゃんや女優時代の真波とは違い、“
そして複雑な感情が入り交じった微笑みで静かに溜息を溢しながら答えたのは、自分には“あの2人”のような女優になれる
“『・・・そんな自分の才の無さを分かっていても・・・私は女優を辞めてしまおうと思ったことは1秒足りともなかった・・・・・・どうしてかあなたには分かる?』”
もちろんそれが弱音でも何でもないことは、“同じような立ち位置”にいる私にはとっくに分かっていることだった。
“『・・・・・・それが“
どれだけ自分より芝居が上手い人が居ようと、どれだけ自分より才能に満ち溢れた人が居ようと、例え自分が“ニセモノ側の
それを証明し続けなければ、生きる意味も生きる価値もない。
“
“『・・・・・・あなた自身が本当に心の底からそう思っているのであれば、それを信じてこのまま“女優”を続けてみなさい・・・・・・』”
私からの答えに真美さんは、これまでで一番冷酷な
「・・・お花、供えないのですね?」
「えぇ、これ以上お供え物が増えても真波は困ることでしょうから」
“真波”との挨拶を終えると、真美さんは花束を墓前に置くことなくそのまま段差を降り、そのまま私とママには目もくれずに立ち去ろう・・・としたところで立ち止まる。
「・・・静流ちゃん・・・・・・もしあなたに“薬師寺真波”を超えられる“自負と覚悟”があるというならば・・・私が真純ちゃんの代わりに“面倒”を見てあげても構いませんよ?」
真美さんは私たちに背中を向けたまま、3年前の私に“挑戦状”を叩きつけたときと同じような表情を浮かべ、私とママに揺さぶりをかける。
「・・・丁重にお断りします」
もちろん答えはたった1つだ。こんなあからさまな“挑発”に乗ってしまうほど、“牧静流”として生きた時間はヤワじゃない。
「・・・そう・・・ならこれからも好きになさい・・・」
丁重に断りを入れて一礼をする私に、真美さんは振り向くこともなく背中越しに色んな意味の
「・・・・・・よく耐えたわね、静流」
真美さんの姿が見えなくなって何秒かたったところで、ママは真美さんが歩いて行った方角を見つめ続ける私の背中に、優しく手を当てる。
「当然だよ。だって私は“
挑発めいた口調だったけど、真美さんが私のことを“本気で育ててやってもいい”と思っていたのは、3年前と全く同じ口調からして明らかだった。真美さん自身にその気があるのであれば、彼女の下について“女優”として更なる高みを目指す選択肢も“アリ”だ。
恐らくあのアリサさんも、“女優を続けていく”ために真美さんの後を追っていた時期があったのかもしれない。
でも私はそうしなかった。その選択だけはしたくはなかった。
“星アリサ以来の天才” “第二の星アリサ”
これが、10余年に渡って“牧静流”が
“『静流・・・役者は自分に嘘をついてしまったら、その瞬間に終わりなのよ・・・』”
裏を返せば、私は永遠に“
私は誰かの代わり?冗談じゃない。そんなもの、たとえ死んでも受け入れることなんかできない。
“・・・あなたも同じですよね・・・・・・真美さん?”
だから私は、同じ“苦しみ”を背負い続けている真美さんと同じ“
「・・・それよりママのほうこそ大丈夫?散々な言われようだったけど?」
「人の心配をする暇があるなら“内面を磨く”努力をしなさい。“あの2人”を超えるのでしょ?」
私の背中に優しく手を当てたママを気持ち程度に気遣うと、いつもの冷徹な口調が返ってきた。
「・・・うん。分かってる」
こういうところを見てしまうと、私のことを“牧静流”としてずっと育て上げてきたように、関係が途絶えていようがちゃんと“此の親にして此の子あり”を真美さんと共にママもしっかり受け継いでいるのが分かる。
「・・・分かっているのなら真美さんに見せつけてやりなさい・・・・・・
“でもやっぱり・・・ママは真美さんと違って優しすぎる”
もしもいま私の隣にいるのが真美さんだったら、最後の“余計な一言”で人の背中を押すような
「・・・・・・ありがと、ママ」
もしもママが未だ捨てきれずにいる“人のことを想う優しさ”が女優を続けていく上で必要のない“贅肉”であるならば、私はそれを躊躇なく捨て去って“鬼”なっても構わない。
その選択を選んだことによって、かけがえのない“
「・・・そろそろ私たちもここを出るわよ。これ以上ここにいると野次馬が湧いて出てくるでしょうから」
「そうだね、今日の
真波への墓参りを終えた2人は軽い昼食を済ませたのちに駅近くの和菓子屋で菓子折りを買い、
真美さんが登場するとどうあがいても修羅場になってしまう・・・・・・一応これで、修羅場は一旦終わり、になると思います。多分。
あと真波の没年については、あくまで原作で環が言っていた「40余年」という台詞を元に考察した年数となっています。