たきなの為に全力でお兄ちゃんを遂行するお兄ちゃん(ガチ)   作:ゴマだれ

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今回のお兄ちゃんは前回よりはっちゃけて無いです
因みに時系列的には
『ちたさき下着ショッピング』

『お兄ちゃん登場』

『松下護衛任務』

だと思って見ていただけると幸いです




兄はデキが悪くても進まなければならない、だから強い

 

喫茶『リコリコ』

表向きは何の変哲もない小さな和風喫茶店だが、その実情はれっきとしたDAの支部である。

普段は喫茶店としての営業のほか、馴染みの常連客たちを招いたボードゲーム大会を開催したりするなど、アットホームな雰囲気に包まれている。

そんなリコリコでは最近変化が訪れていた

 

「千束、出来たから持って行ってくれ」

 

「はいはいは〜い!」

 

黒い袴に身を包みながらも和菓子やパフェをこしらえていく男、その姿はつい2週間前まで拳で人を撲殺していたとは到底思えないほど板についている

 

「どうよ!2週間、厨房役やって見た感想は?」

 

「悪くないな。たきな、下げた皿は置いといてくれ、俺が洗っておく」

 

「…わかりました」

 

何故、彼がリコリコで働くことになったのか

それは初めてあったあの日まで遡る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、これから君はどうするつもりだ?」

 

「決まっている、たきなのお兄ちゃんを全力で遂行する。それだけだ」

 

「『お兄ちゃんを遂行する』とかどんなパワーワードよ!」

 

神一も少し冷静になり、最年長のミカとこれからの話をする。仮にも目の前の男は自身の教え子を殺そうとした人間だがミカも状況は理解している

 

「だがDAも『リリベルの怪物』をそうそう逃がしたりはしないだろうな」

 

「おい待て、何だその厨二チックな肩書きは」

 

「まぁ…肩書きってほとんど勝手につけられる物だし…」

 

『リリベルの怪物』

それが神一の肩書きでもある

その由来は当時リリベルだった神一の右に出る者はおらず、銃どころかナイフすら使わないその戦いぶりは『鬼神』や『化け物』などと揶揄されていたことに起因する。

最もリリベルを脱退した12歳の時より今まで殺し屋として活動していた期間に飛躍的に成長し、フィジカルに磨きがかかっているのは言うまでもない

 

「…ミカとか言ったな、DAの司令に連絡取れるか?」

 

「一応できるが…」

 

「俺が話をつけよう」

 

「…そんなこと出来るんですか?」

 

「問題ない、繋いでくれ」

 

そう言うとミカはDAに連絡を取るべく受話器を手に取った

 

「楠木司令と知り合いなんですか?」

 

「3年前に少しな」

 

「繋がったぞ」

 

ミカから受話器を受け取り、神一は取引を始める

 

「よお、久しぶりだな」

 

『何かの間違えかと思ったが…貴様からコンタクトを取りに来るとはな』

 

「早速だが取引をしよう。俺をリコリコの協力者として身柄をここに預けて欲しい」

 

『…何のつもりだ?』

 

「何のつもりも何もアンタの方から持ちかけてきた3年前のスカウトの件を半分受けてやろうと思ってな」

 

(…スカウト?)

 

神一の言葉に疑問を浮かべるたきな、しかし話は続いていく

 

『全面的な協力はしないということか』

 

「当たり前だ、あくまでもここに所属してる人間しか相手にする気は無い。だがそれでもアンタらからすればお釣りが来る話だろ?」

 

『…わかった、貴様の身柄はリコリコ預かりとさせてもらおう』

 

「話がわかるようで助かる、それでは」

 

そう言い電話を切る

まさかここまであっさりと話をつけるとは思ってもみなかった為、一同唖然とする

 

「というわけでこれからよろしく」

 

「あ、ああ」

 

「「ちょっと待ったぁ!」」

 

勝手に話を終わらせようとする神一に聞きたいことが山ほどあるミズキと千束が声を荒らげる

 

「取り敢えず3年前のスカウトってなに!」

 

「そのままの意味だ、どの組織にも入ってないことをいい事に俺を取り入れようとしたんだよ」

 

「じゃあ、何で楠木さんはそんなので納得したの!」

 

「俺に勝手に動き回られるよりはここに釘付けにして、居場所が分かる状態の方がいいってことだ」

 

「お前DAの弱みとか知ってるのか?」

 

「俺を敵に回したくないんだろ」

 

「えぇ…何それこっわ…」

 

神一のDAすらも手を焼く程の実力と未だに不明な行動原理を考えればあっさりと話が通ったのにも納得がいく、何より敵に回らないと言うだけでもDAに都合がいいのだ

 

「…と言っても俺は何をすればいいんだ?」

 

「一先ずここで働いてもらう、何が出来る?」

 

「こう見えても料理の腕には自信がある、任せてくれ」

 

こうして、喫茶リコリコに新たに厨房役ができたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、完成だ」

 

「オーダー入ったわよ」

 

「…」

 

そんなこんなで神一が働き始めて2週間あまりたったが以前より客足は伸びていたがたきなはそれに複雑な思いを持っていた。

理由は2つ

1つはどういう訳か無駄に料理の技術が高いことであるというのも店で働く前に一度全員にその腕前を見せたのだが店を出せば行列でも出来るのではないかという腕前であり、ミズキは「負けた…」と明らかに落ち込んでいた。

そしてもう1つは…

 

「ねえねえ、あの子カッコよくない?」

 

「アンタ知らないの?最近入った調理スタッフよ」

 

「うぅ…あたしにもあれくらいの彼氏が出来れば」

 

「「無理でしょ」」

 

神一のルックスが良いが故にそれを目当てに女性客が増えた事だ。実際、ホストクラブやヒモでも充分にやっていけるほどの顔を持っている。

 

「…」

 

そんな神一を見て何か思うところのあるたきな

彼女自身も『自分に兄がいたら』なんて考えたことすらなかった、だがどこか腑に落ちないところがあった。

何故自分を見て兄を主張するのか、なにか見落としているのではないかと思い始めていた

 

「…たきな?大丈夫か?」

 

「何でもありません」

 

「そうか、ならお兄ちゃんと呼んで「呼びません」」

 

なおこの2週間でたきなはあまりにしつこすぎるお兄ちゃん呼びにも耐性がついた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…異常なし、今のところ尾行や怪しい人間はいないな」

 

『そうか、にしてもビルの上からホントに見えんてのか』

 

「俺の身体能力は人間のそれとは違う、単純なフィジカルだけじゃない。視覚や聴覚、嗅覚も含め五感は化け物レベルだからな」

 

『…リリベルの怪物を何故今まで誰も殺せなかったのか分かる気がする』

 

現在、神一はとある高層ビルの上から索敵を行っていた。というのもたきなと千束は依頼主に護衛兼観光ガイドとして付いており、彼らの周りに刺客などがいないかを見ている

 

「…来たぞ、こんな暑い時期に厚着でバイク乗ってるいかにも怪しいアホが」

 

『ドローンで追跡する』

 

神一の目線の約数百メートル先に例の殺し屋と思われる人影を目視した

 

『素性が分かったぜ、奴の名はジン。その仕事ぶりからサイレント・ジンと呼ばれるみたいだな』

 

「俺でも知ってるベテランだな」

 

しかし、神一にはどこか違和感があった

 

(…動きが良すぎる、くるみの腕からしてハッキングの線は薄い。となると事前にこちらの動きが筒抜けという事か…まさか)

 

殺し屋稼業をしていた神一からすれば今の今までジンがたきな達と接触した場面はなかった、何かしらの特殊な追跡能力でも無い限りありえない動きをしていた

 

『どうした?今、ミズキがジンを尾行してる。早くたきな達と合流しろ』

 

「…くるみ、調べて欲しい奴がいる。おそらく当たってる」

 

『何だ?ジンのことか?』

 

「いや、―――」

 

『…一応言っとくが無駄骨でも文句言うなよ?』

 

「構わん、報酬は俺のポケットマネーだ」

 

予想が外れて欲しいと願うが反面、事実だった場合そんな事を企てた奴らをどうしてやろうかと考えながらたきな達の下に向かう

 

『…!やられた!』

 

「どうした?」

 

『ミズキと連絡が途絶えた、今たきなが迎撃に向かった』

 

「…了解、合流を急ぐ」

 

無論、たきなの実力が劣っているとは思わないが頭の中では不安が過ぎっていた

 

「千束!あの老人はどこ行った?」

 

「それが駅の中を探したけどどこにも居ないの!」

 

(となると駅内にはいない…外か)

 

「千束、外に見に行くぞ。どうせ車椅子じゃ、そう遠くには行けない!」

 

「おっけー!」

 

神一は千束と共に駅の外へ向かう、だがその内心は探りを入れていたことがバレたのかと気が気ではなかった

しかし、駅の近くの広場で松下は簡単に見つかった

 

「松下さん、どうしたんですか?行きたいところがあったんですか?」

 

「ジンが来ているんだね。あいつは、ワタシの家族を殺した。確実に私を殺しに来るはずだ」

 

「やっぱりそうか、この一連の流れはお前の差し金か」

 

松下の発言に神一の中で疑問が確信に変わった

 

「へ?神一どういうこと!?」

 

「松下、アンタは…!」

 

しかし、その時神一は卓越した感覚で殺気を読み取り上を見上げる。そこには銃を構えるジンの姿が

 

「千束、上だ!そいつ連れて逃げろ!」

 

「え!?」

 

神一は松下とジンの間に入り、撃たれた凶弾を素手で掴み取る。彼の動体視力と肉体能力なら拳銃程度なら容易い事だろう

 

「ちょっと待って、いま弾丸キャッチしたよね!?」

 

「そんなこと言ってないで早くそいつを」

 

「2人とも逃げてぇ!!」

 

神一の目に映ったのはたきながタックルをして工事現場の2階からジンと共に落下する姿。そして頭の中で浮かんだたきなの死という最悪の光景―――

 

「神一!松下さんを…ってもういないし!

 

千束は松下を連れて退避するよう神一に指示をしようとしたが既にそこに神一は居らず、たきなの下に向かっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く…」

 

落ちた場所が良かったおかげかたきなの怪我はそこまでのものではなく大した問題はなかった。しかし、落下の衝撃で銃を紛失した上にジンから狙われ続けていた

 

(2週間前のあれよりかはまだ望みはありますが…これはこれで不味い!)

 

防戦一方、現状逃げ続けるしかないが確実に退路をつぶされ追い込まれていく

 

「あっ…!」

 

太腿に弾丸を掠めて転ぶ、射線の外に出ようとコンテナに背をあずけるがこれでは逃げも出来なくなった。そして、ジンは邪魔者を排除しようと銃口を向ける

 

(あ、死――)

 

ゴォンッ!!

 

「「!!?」」

 

しかし、その時コンテナを潰して空から何かが落ちてきた。ジンも銃口をそちらに向ける、砂埃が晴れるとそこには

 

「…」

 

「神一!」

 

怒りを露わにして殺意を剥き出しにした神一がいた。しかし、纏う雰囲気は『ゴゴゴゴ!』という効果音がつきそうな程である

 

「おい、お前」

 

「…!」

 

 

 

「人の妹に手を出して、生きて帰れると思っているのか…!」

 

ビリビリ!

 

 

瞬間、その場の全員が感じたのは神一から発せられる圧倒的な

 

 

(消え―――)

 

バコン!

 

勝負は一瞬だった

神一を見ていたたきなすらも何が起こったのか理解できなかった、あまりにも速すぎる

 

(強さとかそんな次元じゃない…生物としての()が違う…!)

 

最早、神一の立つ領域は才能や素質で到達できるものではなかった。知識や経験があってもどうにもならない、それが伊藤神一でありリリベルの怪物なのだ

 

「たきなぁーーー!大丈夫か!!?」

 

ジンを倒した神一はたきなの安否を確認する為に、ものすごい速度で駆けつけた

 

「大丈夫か?!足や腕が折れたりしてない―――あぁ、太腿に傷が!」

 

「そ、そんな大袈裟な」

 

「大袈裟なわけがないだろ!例えかすり傷でも一生残る傷になるかもしれないんだぞ!」

 

まるで自分の事のように心配してくれるその存在はたきなにとっても既に欠かせないものとなっているのかもしれない

 

「これでよし…本当に折れてないんだよな?」

 

「大丈夫ですから!何で私が絡むとこうもポンコツになるんですか…」

 

「当たり前だ、唯一無二のたった1人の妹の身に何かあれば焦るのは当然だ」

 

「ああもう!」

 

何故こうも恥ずかしいことを即答で言えるのかと呆れる反面、悪い気はしなかった

 

「たきな!神一!大丈夫!?」

 

「千束!松下さんは?」

 

「ミズキに預けてきた、それよりアイツは…」

 

「これだな」

 

そう言うと猫を持つがごとく昏倒したジンを見せびらかす、その顔には思いっ切り拳の跡がついている

 

「お、おう…これ生きてるよね?」

 

「コイツには話してもらわないことがあるからな」

 

「というかこのコンテナどうするんですか?」

 

「え?これまさか…」

 

「アレも俺だな」

 

本当にどういうこと?!

 

コンテナを見ると完全に潰れており、とても人力で行われた所業とは思えないレベルだった

 

「殺すんだ。そいつは、ワタシの家族の命を奪った男だ。殺してくれ!本来ならあの時、ワタシの手で殺すべきだった。家族を殺された20年前に。君たちの手で殺してくれ!君たちはアランチルドレンのはずだ!千束、何のために命をもらったんだ。その意味を良く考えるんだ!」

 

そんな声と共に松下とミズキがやってくる、それと同時に全員の耳につけたインカムからくるみの声が聞こえる

 

『流石の勘だな神一、大当たりだ!』

 

「やはりか、それでいつまでこの()()を続ける気だ、松下を名乗る誰かさん?」

 

「「「!?」」」

 

「な、何を言っている!?」

 

神一はまるで推理ショーをする探偵の如く、答え合わせをしていく

 

「とぼけるな、お前の目的はジンを殺すことじゃない。()()()殺しをさせることだろ?」

 

『神一に言われて調べてみたんだが松下という人物は存在しなかった、多分遠隔で音声を流してるだけでその車椅子の人間は赤の他人だ』

 

「そんな…良いガイドって言ってくれたのは嘘だったの…?」

 

「待ってください!なら、誰がそんな事を…」

 

「それは俺にも分からん、だからコイツから聞く。おい、お前はどいつからの差し金だ?」

 

しかし、目の前の老人は何も語らず沈黙を貫いている

 

「黙りか…でも聞こえてるなら言わせてもらう」

 

老人に近づいて行く神一は先程の比にならない殺意を出しながら語る

 

「次、今回のような舐めた真似をしようものなら俺もそれなりの()()を受けさせる。忘れるなよ?」

 

その怒りはたきなを傷つけられたものかあるいは千束に殺しをさせようとしたものから来るのかは分からないが神一が怒り狂っているのは事実だった。そしてそれに呼応するかのように何かがシャットダウンしたような音がした

 

「…一先ずここを離れましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現場から少し離れたところで車を止め、ミカがジンに話しかける。その傍には神一もいた

 

「ミカ!そうか。お前の部下か」

 

「知り合いなのか?」

 

「昔のな…一応言うが隣の彼は違うぞ?」

 

「分かっている、リリベルの怪物が組織に付くとは思えん」

 

「思いっ切り殴って悪いとは思っているが後悔はしてない、お前の依頼主について教えろ」

 

少しでも情報が欲しい神一はジンに詰め寄る、しかし出たのは女という事と羽振りの良い事だけだった

 

「それにしても、何故松下のことが嘘だと分かった?」

 

「ジンの動きが良かったのと、元々依頼主に疑問があった。それをくるみに潰してもらったに過ぎない」

 

「そうか…」

 

「…千束に殺しをさせたがる奴に心当たりはあるか?」

 

そう言うとミカは驚いた表情をした、何かしらの当てがあるのだろう

 

「驚いたな…そこまで勘づいてるとはな」

 

「たきなには千束が…アンタらとあのリコリコという環境が必要だ、それにあの二人は俺と違ってまだ()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅くなった、今戻った」

 

「おかえり〜」

 

「誰かと話してたんですか?」

 

「ちょっとな…これはどう言う状況だ?」

 

神一の目線の先には千束の胸に耳を当てるたきなの姿があった

 

「いえ…少し温もりを「心音がしないことに…悪い、地雷だったな」…わかるんですね、そういうの」

 

少し気まずくなった空気を千束が何とかしようと神一にある質問をする

 

「そう言えば神一は何でリリベル抜けたの?」

 

「千束!」

 

「単純にクソだったからだ、あんな所にいたら命の価値が測れなくなるほどにな」

 

さらに気まずくなった

 

「…!たきな、ちょっといい?

 

「…!?ですが…

 

いいから!

 

たきなと千束が何かコソコソ話しているが神一にはほぼ丸聞こえである

 

「あの…」

 

「どうした?」

 

「今日といい2週間前と言い…助けていただきありがとうございました、お兄ちゃん

 

「―――」

 

「…これ結構恥ずかしいので何か反応を…?」

 

「―――」

 

「おーい?もしもしもしもし?」

 

あれだけ催促してきたお兄ちゃん呼びに何も反応しない神一を不審がり様子を伺う二人

 

「「…気絶してる!?」」

 

無論、リアクションが無いわけではなかった。

神一は突然のお兄ちゃん呼びに歓喜のあまりに情報量が多すぎて、どこぞの無下限呪術師の切り札のように情報が完結しなくなっていたのである

 





◾︎お兄ちゃんの一面

基本的にたきなが絡まなければマトモであり、紳士的な性格と与えられた仕事に対しては真面目にそつ無くこなす有能で料理が得意であり、分かりずらいが基本的にリコリコのメンバーには心を許している。敬語は使わないがちゃんと心の中ではミカを上司だと思っている
また、知識量と経験がとてつもなく多いためそこから来る勝負勘は目を見張るものがある

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