幻想郷に中途半端に転生したんだが   作:3流ヒーロー

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や、やっと投稿できた。

遅れて申し訳ない。週一ペースって思っていたより難しい…。ちょっとこのペースを落として10日に一回のペースでやっていきます。バタバタして申し訳ないです。

とりあえずここからは第二章といったところです。原作キャラとの出会いも一気に増えます。

またたくさんの感想ありがとうございました。




また時は過ぎて…

 

 

 

 

幻想郷。

 

忘れ去られたものたちの最後の楽園。現代では生きていけなくなった者達が暮らす隔絶された世界。

 

人、妖怪、妖精、神、幽霊。その他にも多くの種族が暮らす隠れ里。多くの種族が暮らすその世界では人間はあまりに脆く、弱い存在である。

 

そのため幻想郷には幻想郷の人間と妖怪のバランスを保つための守護者がいる。

 

博麗の巫女。

 

幻想郷を覆う博麗大結界の管理者でもあり異変を解決する役割を担うその立場は当然の如く力と責任が問われる。

 

今代の巫女、博麗霊夢は幼くして博麗の巫女としてその任に着いた。霊夢がその役割についた当初、里の人間は前任者の事もあり妖怪の恐ろしさを痛感した人々は、まだ幼い霊夢に不安を拭えなかった。

 

幸い霊夢が巫女に就任してから数年は大きな異変もなく、また霊夢も問題なく妖怪退治を行えていたため問題となることはなかったが、それでも多くの人間が安心できてはいなかった。

 

 

だが、その状況は一変する。

 

 

紅霧異変。

 

幻想郷における新たな決闘法として考案された弾幕ごっこを広く伝えたこの異変により霊夢は仲間とともに博麗の巫女として大いに活躍することになる。

 

人間が妖怪や神と対等に戦える方法を考えたこと。また、紅霧異変を始めとする幻想郷の後世に残るであろう大規模な異変を次々と解決していった霊夢はかつての前任者が犯した失態など忘れさせるほどに人里に安堵を取り戻した。

 

また、彼女の人間や妖怪を問わず惹きつける雰囲気や誰であろうとも平等に接する性格から、里の人間だけでなく多くの妖怪からも好かれる事になった。

 

博麗霊夢は名実ともに幻想郷の守護者として認められていた。

 

 

 

―――――ただし

 

博麗には博麗霊夢を指す正の面の他に、もう一つの面が存在する。歴代の博麗の中で唯一その名を残すその者について、里の人間は決して触れようとはしない。

 

名前を出すことさえも憚れるその存在は里の人間から博麗の代理と呼ばれ嫌悪されている。

 

博麗の負、ひしがきが博麗の任を退いてから7年の時が過ぎていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧の湖。妖怪の山の庵に存在する、大きな湖。昼間は霧が湖を覆うように包んでいることからそう呼ばれている。妖怪の山や魔法の森、吸血鬼が住む紅の館が近くにあることから人は滅多に訪れない場所。逆にここには多くの妖精や妖怪たちが集まって来る場所だ。

 

その一角、霧の湖が魔法の森と隣接する場所に入江がある。そこには魔法の森の陰に隠れるように一軒の小さな丸太小屋があった。ずいぶんとみすぼらしい、と言うか素人の手作り感あふれるその小屋はお世辞にも見栄えがいいとは言えない。

 

それでも一応、丈夫には作られているらしく太い丸太を隙間なく組まれておいり、その造りは里の家よりも頑丈にできている。だが丈夫さを重点に置いて作られたためか一見するとまるで倉庫か、もっと言えば牢屋のような小屋だった。

 

朝日が昇るころ、その小屋の扉が開き家の持ち主が姿を現す。まず目についたのはその着ている着物である。鮮やかな朱色に染められた衣。その上からはでも鍛え抜かれた身体と体のあちこちにある様々な傷が見て取れる。そして、肩にかかる程度まで伸ばされた髪を後ろに束ねている。

 

寝ぼけ眼で欠伸をしながらその青年は湖の端に膝を着くと顔を洗う。顔を上げ髪を後ろへと搔き上げる。そこには成長したひしがきの顔があった。

 

背はこの7年で大きく伸び身体も大きく立派に育っている。ただ、それ以上に明らかに増えた無数の傷跡が、この7年間がひしがきにとってどれだけ過酷であったかを物語っていた。

 

しかしその表情は、昔と同じようにどことなく暗い影こそ見えるものの悲壮に満ちてはいなかった。

 

ひしがきは大きく伸びをすると、小屋に戻ろうと湖に背を向ける。

 

 

 

っと、思いきやいきなり飛び上がるとそのまま湖へと落ちていく。水面ギリギリで結界を張ったひしがきは一見して水の上に立っているかのように着地する。そして、素早く水の中に両手を突き入れたかと思うと勢いよく何かを引っ張り出した。

 

「きゃあ!?」

 

ひしがきが両手で持ち上げたそれは驚いたように声を上げる。

深い青色に肩につかない程度の縦ロールの髪型をした少女がそこにいた。深緑色の和装。下部分はスカートのように布が重なっている。和服にしては肩紐とスカート裾全体に白いフリルがふんだんに盛られている。

 

だが注目するべきはそこではない。彼女の下半身、スカートからは人間の足ではなく、薄い青色をした魚の尾びれが出ていた。耳の位置には、これまた人間の耳ではなくひれのようなものがついている。

 

彼女は人間ではなく妖怪。この湖に住む淡水の人魚。その名をわかさぎ姫という。

 

「おはよう、姫」

 

「……あはは、おはようございます。驚かそうと思ったのに、見つかっちゃいましたね」

 

「バレバレだよ」

 

困ったように笑うわかさぎ姫を抱きかかえ、ひしがきは結界で岸まで足場を作り、小屋へ戻っていく。

 

「今から朝飯作るけど、食ってく?」

 

「わぁ、いいんですか」

 

両手を合わせ嬉しそうに笑顔を浮かべるわかさぎ姫に、ひしがきも笑顔を返す。

 

「ああ、実は新鮮で型のいい魚を捕まえたんでな。刺身に天ぷらと色々作れそうだ」

 

ひしがきの言葉にわかさぎ姫が笑顔のまま固まる。

 

「あ、あの、その魚ってまさか………」

 

「さて、どこから捌こうかな?……姫、お前ってどこが美味しいんだ?」

 

「や、やっぱりーーー!?ごめんなさい、刺身も天ぷらも嫌です!!煮てよし、焼いてよし、けど刺身と天ぷらはイヤーーーーー!!」

 

「そっか、じゃあ甘露煮だな」

 

「や、やっぱり煮るのも焼くのもイヤですーーーーー!!」

 

ビチビチと生きのいいわかさぎ姫を抑え込んでひしがきは小屋に入っていった。

 

 

 

 

 

 

小屋の中でひしがきは朝食の支度をしていた。

 

米を炊き、自家菜園で育てた野菜の漬物と味噌汁、それから魚の塩焼きが朝のメニューだ。一応言っておくがこの魚はわかさぎ姫ではなくただの淡水魚だ。

 

「うう、捌かれるかと思いました……」

 

「あー、よしよし大丈夫だから安心してわかさぎ姫」

 

「ひしがき、ちょっといじめ過ぎ」

 

食事の準備をするひしがきの後ろでわかさぎ姫の側で彼女を慰めている2人の少女がひしがきに声をかける。2人、と言う表現はいささか間違っているかもしれない。

 

一方は長いストレートの黒髪。頭には獣の耳が生えており、手には長く鋭く赤い爪を伸ばしている。 赤・白・黒からなる三色のドレスを身にまとい、ドレスの袖口からは黒い毛がはみ出ている。

 

もう一方は赤いショートヘアー。青いリボンと裏地が青の赤いマントを身に着けており、マントと一体になったマフラーのような部分で口元が隠れている。赤いミニスカートと黒いブーツを履いており、ブーツとリボンには赤い刺繍もしくは紐のようなものがついている。

わかさぎ姫よりはそのシルエットは人間に近いがその正体は正真正銘の妖怪。狼女の今泉影狼とろくろ首の赤蛮奇と言う名の妖怪である。

 

影狼がよしよしとわかさぎ姫を慰め、蛮奇が半眼でこちらを責めるように視線を向けてくる。ひしがきは居心地の悪さを感じつつ、若干やり過ぎたかなと反省する。

 

「すまんすまん、ちょっと反応が面白かったんで悪乗りした。姫、謝るから許してくれ」

 

「ぐすっ、別に怒ってなんていません」

 

そう言ってかわいくそっぽを向くわかさぎ姫にどうしたものかと考える。このおかんむりな人魚をどうやって宥めたものかと視線を影狼と蛮奇に向けるが小さな溜息と苦笑が返って来るだけだ。

 

仕方がないと小さく息を着く。隠れて脅かそうとしたわかさぎ姫に対する小さな仕返しのつもりだったのだがかえって失敗したようだ

 

「ごめん姫。謝るから許してくれ。俺のできる範囲なら、何かして欲しいことがあるならするから、な?」

 

そう言ってわかさぎ姫と目線を合わせて両手を合わせる。わかさぎ姫はこちらに顔を向けてくれたが、まだちょっと私怒ってますと言いたげに頬が膨らんでいる。

 

「ほら、ひしがきも謝ってるんだから許してあげたら」

 

「妖怪なのに人間のひしがきに脅かされてるわかさぎ姫も悪い」

 

「う~、……わかりました」

 

わかさぎ姫を慰めていた2人がこちらに付いてくれたことでわかさぎ姫はようやく機嫌を直してくれた。

 

「その代り、ちゃんとお願い聞いてくださいね?」

 

「分かってるよ。それじゃあ朝飯にしよう」

 

ひょいっとわかさぎ姫を抱えて食卓へと運ぶ。影狼と蛮奇もそれぞれ自分の席に移動する。

 

「それじゃあ、いただきまーす。」

 

影狼が元気よく手を合わせる。

 

「ん、いただきます」

 

蛮奇が目を閉じて手を合わせる。

 

「いただきます」

 

わかさぎ姫が品よく手を合わせる。

 

「はい、召し上がれ」

 

それを見て、ひしがきも手を合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつて博麗の代理と呼ばれた少年は、全てを失った。

 

家族や帰る場所、自分の拠り所となるものすべてを失って、それでも博麗の代理として生きていた。

 

 

 

そうして今、彼は笑っている。そこには、彼が長い間求めていた安らぎがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギリッ

 

 

どこか遠い場所で何かが軋む音がした。

 

 

 

 







ようやくヒロインたちが出せました。

あんまり草の根ネットワークがヒロインの作品を見ないんで彼女たちをヒロインに抜擢しました。ちなみに蛮奇も草の根の一員という設定です。

たぶんこの配役は予想外だったのではないでしょうか?さて、心身ともにズタボロだったひしがきはいかにしてこの7年を過ごし彼女たちと出会ったのか?

今から書くのが楽しみです。


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