幻想郷に中途半端に転生したんだが   作:3流ヒーロー

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遅くなりました。皆様新年をいかがお過ごしでしょうか。

自分は雪が積もっているせいで通勤に苦労し雪かきに苦労しとなかなか休めない日が続いています。太平洋側に引っ越したい…。


ちなみに今回の異変で九十九姉妹と堀川雷鼓は出てきません。理由は自分のキャパ不足です。これ以上キャラを絡めて話を進める自信がないのですいませんがご了承ください。








キレさせたらダメな人っているよね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不吉な嵐に覆われた天上に聳える城の下で、少女たちが交錯する。

 

それを嗤って見下す妖怪と、震えて見上げる人間がいる。

 

遠くから見守る者、我関せずにいる者、無事を祈る者、備える者、自ら動き出す者、目覚める者。

 

それぞれの想いが渦巻く幻想郷の異変。

 

人間と妖怪。違う存在であり、この狭い世界で等しく時を刻む彼らは、この異変で何を見るのか。

 

 

 

 

 

 

「何の妖怪かと思ったら狼女だったのね」

 

霊夢と影狼の戦いは、霊夢の勝利で終わった。影狼は霊夢相手に善戦したと言えるだろう。狂暴化の影響もあってか実力以上を影狼は発揮し霊夢に食いつこうとした。

 

しかし、その牙は霊夢には届かない。霊夢は弾幕を危なげなくあっさりと躱し影浪を下した。明らかに全力を出していないにもかかわらず霊夢は影浪に勝利を治めたのだ。

 

これが、現博麗の巫女。そのセンス、その実力はなるほど今や圧倒的な信頼を寄せられるにふさわしいものだ。

 

「あーあ、負けちゃった」

 

影浪は残念そうに声を漏らす。しかしその顔はどこかスッキリしていた。

 

こうまで圧倒的にやられるとむしろ気持ちいい。また、ようやく妖怪退治の専門家に相手にされたのだ。嬉しい気持ちと相まって負けたことが残念ではあったが悔しさは感じなかった。

 

「最近普段大人しい筈の妖怪が暴れているみたいだけど、何故なの?」

 

「さあ?偶然じゃないかしら?」

 

影浪は偽ることなく霊夢に本心を告げる。

 

「最低でも私は自分の意思よ?……たぶん」

 

「………」

 

影狼は嘘を言っているようには見えない。霊夢は今だ自分の勘が嫌な物を感じていることが気がかりだった。

 

できる事なら何かこの異変を解決するための糸口が欲しい。だがどうやら影浪にそれは期待できそうにない。どうしたものか。

 

「それにしても、ひしがき以外にもこんなに強い人間がいたのね」

 

「……なんですって?」

 

影浪の口から出てきた名前に霊夢は嫌な予感を一旦しまう。

 

「あんた、ひしがきの知り合いなの?」

 

「え?ええ、そうだけど…」

 

「どういう知り合い?」

 

「どういうって……友達、になりたいみたいな?」

 

「………」

 

影浪の答えに霊夢は僅かに考え込む。ひしがきに、近寄ろうとする妖怪がいる。妖怪に対して警戒心の強いひしがきに友達になろうとする妖怪の知り合いがいる事には驚いたが、それ自体は特に問題ではない。

 

博麗神社にも妖怪は大勢やって来る。人里にも妖怪はいる。ひしがきに妖怪の親しい知り合いがいたとしても不思議はない。

 

「…ねぇ」

 

「え?なに?」

 

「今私の連れが湖と人里にいるわ。里で暴れている妖怪って、あんたと同じひしがきの知り合い?」

 

「…そうだけど。それがどうしたの?」

 

霊夢の質問に、影浪が頭を傾げる。質問の意図が全く掴めない。どうしてひしがきと知り合いと言う事にそうまで食いつくのか。

 

「そういうあなたはひしがきとどういう関係なの?」

 

「ひしがきは私の前任者よ」

 

「……………え?」

 

「先代の博麗……と言っても代理だけどね。ひしがきはそれをやっていたのよ。知らなかったの?」

 

「……ひしがきが、博麗の…?」

 

影狼は驚愕に目を見開く。先代の博麗、博麗の代理は影浪も噂では知っている。その悪名もまた、彼女は知っていた。

 

「…まずいわね」

 

そう呟くと霊夢は、驚いている影浪に背を向けて、急いでもと来た道を戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なによあんた。強いじゃないの」

 

「…当然」

 

頭にできた大きなたんこぶを涙目で抑える蛮奇に、いろはは若干自慢げに胸を張る。豊かな胸が強調されて揺れる。

 

 

 

「…………………………………………チッ」

 

その光景を、主から様子を見て来るように言われたメイドが遠くで見て舌打ちをしていた。いろはの友人であるそのメイドの目はまるで不倶戴天の敵を見つめるようであったとかなかったとか。

 

 

 

「私を見ても怖がらないなんて……」

 

「…ん、暗い所だと、ちょっと怖いかも」

 

悔しげに俯いて手を握り締める蛮奇に、いろはは自分なりのフォローを入れる。どうやら蛮奇は影浪と違いいろはとの弾幕ごっこの結果は後味の苦いものになってしまったようだ。

 

「………やっぱりここは定石通り夜の柳の下で驚かせた方がよかったかしら?」

 

どちらかと言えば蛮奇は弾幕ごっこよりもいろはが驚かなかったことに不満があるらしい。

 

「…もう、里の近くで暴れちゃだめ」

 

「く、悔しいけどここは大人しく退くか。……驚かすのもだめ?」

 

そう聞いた瞬間、浮いている蛮奇の首と体の隙間にいろはの刀が奔った。

 

「…ほどほどにしないと、お仕置き」

 

そう言っていろはは刀の切先を蛮奇の顔に突きつける。顔を青くした蛮奇は慌てて後ずさる。

 

「さ、最近の人間はバンカラなのねー!」

 

そして一目散に逃げた。

 

「…ちょっと、待って」

 

しかし回り込まれた。

 

「ぎゃーー!」

 

「…聞きたいことがある」

 

「な、なによ」

 

「…最近、妖怪が暴れたり道具が勝手に動いてる。…原因、知ってる?」

 

「え、さあ?私は何も知らないわよ?」

 

「…どうして暴れてたの?」

 

「どうしてって言われても、困るんだけど。私は一応妖怪だし、暴れても不思議じゃないでしょ?」

 

「………」

 

いろはの目に、蛮奇は嘘を言っているように見えなかった。それが、いろはには腑に落ちなかった

 

これは明らかに異変だ。妖怪が一斉に暴れだし道具が勝手に動き回るなどそれ以外には考えられない。だが、当の暴れている妖怪に聞いてみると暴れたのは自分の意志だという。

 

「…ありがと。もういい」

 

とりあえず霊夢と魔理沙の所へ行き何か収穫がないか聞いてみよう。そう思いいろはは蛮奇に背を向けて走り出す。

 

 

「うう、頭痛い。またひしがきに頼んで永遠亭まで案内してもらおうかしら」

 

 

が、蛮奇が漏らした言葉に、いろはの体がピクリと反応した。

 

「…………今」

 

「え……………っ!?」

 

いろはは足を止め、蛮奇に背を向けたまま話しかける。いろはに顔を向けた蛮奇は、いろはから先ほどまでと明らかに違う、無機質で冷たい気配に固まった。

 

「…ひしがき、って言った?」

 

いろはが蛮奇に顔を向ける。基本的に、いろははいつも感情を表情にあまり出さない。無表情、と言うわけではないが感情豊かな方ではない。

 

だが今のいろはは、隠しようもなく怒気に満ちた顔をしていた。見た目は能面の様に無表情。しかし、目を合わせたら一瞬で切り殺されそうな明らかな怒りが冷たい瞳の中で燃え上がっている。

 

「ひぃ……!」

 

蛮奇が悲鳴を漏らす。その場にへたり込んでしまった蛮奇はそのまま後ろに後ずさる。

 

「…お前、あいつの何?」

 

いろははそんな蛮奇に向かってゆっくりと問いかけながら近寄って来る。腰が抜けてしまったのか、立つことのできない蛮奇はガチガチと歯を鳴らし少しでも遠くに逃げようと足をばたつかせている。

 

「…こたえろ」

 

そう言って、いろはは再び刀の鯉口を切った。

 

「ストップ」

 

それを、後ろから誰かが刀の柄頭を抑えて静止の声をかけた。

 

「…咲夜」

 

いろはが振り向いてその名を呼ぶ。

 

「いろは、それ以上はやり過ぎよ」

 

十六夜咲夜。紅魔館にて吸血鬼、レミリア・スカーレットに仕えるメイド長がいつの間にかいろはの後ろに立っていた。

 

「…邪魔しないで」

 

「いろは、あなたの目的は異変の解決ではなくてそこの妖怪を斬る事なのかしら?」

 

「………」

 

「別にあなたの個人的な事情に首をつっこむ訳ではないけれど、この幻想郷で血生臭い事を起こすことはあなたの本意ではないでしょ。一度頭を冷やしなさい」

 

「……………」

 

いろははしばらく無言でいた後、刀から手を離した。

 

「…咲夜」

 

「何かしら」

 

「…ごめんなさい」

 

「気にしないでいいわよ。私もお嬢様の御命令でここにいるんだもの」

 

「…うん。ありがとう」

 

「いいって言ってるのに……」

 

いろはの感謝に咲夜は苦笑する。そして、腰を抜かした蛮奇に歩み寄る。

 

「あなたも、ついてなかったわね」

 

「………え…あ」

 

呆然とする蛮奇に向かって咲夜は手を差し伸べる。差し出された手を思わず握った蛮奇は、されるがまま立ち上がる。

 

「もう大丈夫だから、早く行きなさい」

 

「……………」

 

チラチラといろはに警戒の目を向けていた蛮奇はゆっくり距離をとった後、振り向くことなく一目散に走り出した。

 

しばらくその姿を見送った後、咲夜はいろはに語り掛ける。

 

「いろはらしくないわね。あんなに殺気を剥き出しにするなんて」

 

「……………」

 

「はぁ…。わかってると思うけど、弾幕ごっこが今の幻想郷のルールである以上あなたもそのルールに従わなくてはだめよ」

 

そう、弾幕ごっことは人間と妖怪が住むこの幻想郷の平和を守るための決闘方法である。そのおかげで今の幻想郷では血生臭い事件や異変が激減し、人間と妖怪が歩み寄るきっかけにもなった。

 

だが、そのルールを人間の方から破ったとしたら、妖怪たちからもルールを無視する輩が出てくるかもしれない。そうなってしまえば弾幕ごっこは名ばかりのルールとなり再び幻想郷は嘗ての幻想郷へと戻ってしまうかもしれないのだ。

 

「…ごめんなさい」

 

いろはもそのことは十分承知している。何しろ霊夢と共に弾幕ごっこを用いて今まで異変解決をしてきたのだ。だからこそ自分がしてしまいそうになったことを重く受け止めていた。

 

「……いろは」

 

「…?」

 

「里の方は私が見張っておくわ。だからいろはは霊夢達と一緒にこの異変を解決してきなさい」

 

「…でも」

 

咲夜もまたレミリアから言われた事があるはずである。それを無視させてまで咲夜に迷惑をかけさせることにいろはは戸惑った。

 

「いいから、ここは私に任せて。ちゃんとこの異変、解決してくるのよ」

 

里を心配したままではいろはも異変解決に専念できない。いつまでも失敗に落ち込んでいないで、気を持ち直しなさい。咲夜のその気遣いがいろはにもしっかりと感じられた。

 

「…うん。…咲夜、ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

いろはは頷いて咲夜に礼を言う。咲夜もその礼を受け取った。

 

「…あら?」

 

咲夜がこちらに向かって飛んでくる霊夢を見つけた。霊夢はいろはたちの所にまでやってくると着地する。

 

「咲夜、あんたも来てたの」

 

「ええ、お嬢様に暴れている妖怪の様子を見て来るように言われてね。…まぁ、ちょっと色々あってね。今回はいろはの代わりに里を見張ってるわ」

 

「…ふ~ん。そう」

 

チラリと霊夢はいろはを見た後に小さく息を吐いた。

 

「それで?こっちは収穫はなかったけどそっちは?」

 

「…こっちも、ない」

 

「そう、じゃああとは魔理沙だけね。まだ湖にいるかしら?」

 

「ああ、魔理沙ならさっき会ったわよ。何か怪しそうな物が湖の向こうの空にあるから行ってみるって言ってたわ」

 

「……まったく、また一人で勝手に行動して」

 

霊夢は呆れたように頭を片手で抑える。

 

「…霊夢」

 

「分かってるわよ。それじゃあ咲夜、里は任せたわよ」

 

「…この異変が終わったら、遊びに行く」

 

「ええ、気を付けてね」

 

そうして霊夢といろはは魔理沙を追って湖の方へ飛んでいった。それを見送った咲夜は、先のいろはを思い出す。

 

(霊夢の目…きっと霊夢もいろはを心配して戻って来たのね)

 

と言う事は、霊夢の方でもきっとひしがきに関する何かがあったという事だろう。だから霊夢はここに来たとき、いろはの様子を盗み見たのだ。

 

(ひしがき、か……)

 

咲夜はひしがきについて詳しくは知らない。そもそもちゃんとした面識さえない。以前に湖で遠目からその姿を見たことがあるくらいだ。

 

あとはこの幻想郷に来たばかりの頃、主人である吸血鬼の少女が博麗の力を計ろうと近くにいたひしがきの下を訪れたことしか関係性はない。その後帰ってきた主人が少なからず落胆した顔で帰ってきたことから満足のいく結果は得られなかったと察したことがあった。

 

「…そろそろ行こうかしら」

 

ともあれ里の安全を友人から頼まれてしまったのだ。今はそれに専念しよう。

 

主人の命を果たせなくなってしまったが、そこは理由を説明すれば見栄っ張りで優しい主人なら許してくれるだろう。

 

咲夜はそう思い里に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わかさぎ姫を倒した魔理沙は、偶然空に怪しい嵐を見つけたのでその中に入って行った。

 

妖気が渦巻く嵐の中で、魔理沙はここが異変の原因であると確信していた。

 

「へっへっへー、今回は私が一番に異変を解決できそうだな」

 

魔理沙は嵐なのかを得意げな顔で飛んでいく。今頃は霊夢やいろはもこの嵐に気付いているかもしれないが、向かった場所の距離を考えれば自分が一番この場所を気づくことができるし近い。

 

今一番に異変解決に近いのは確実に魔理沙だった。

 

「へへへっ」

 

魔理沙は上機嫌に飛んで行く。そして嵐の先、逆さに立つ輝針城にたどり着く。

 

「うおっ!なんだこりゃあ!?」

 

目の前に現れた城に魔理沙は驚く。空飛ぶ船や地底の地獄など色々見てきたが空に城が立っているのはさすがに予想はしていなかったようだ。

 

「…城、かぁ。一体何だこりゃ?」

 

しげしげと城を眺めていた魔理沙だが

 

「ま、入ってみればわかるか」

 

霊夢達を待つでもなく当然の如く一人行動を起こす。

 

「それに城っていうなら何か珍しいお宝でもありそうだしな」

 

にししっと悪戯小僧の様に笑いながら、城の中へと魔理沙は入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゅ~~~」

 

霧の湖。つい先ほどまで魔理沙とわかさぎ姫が弾幕ごっこを繰り広げていたその湖面に、一匹の妖怪がプカプカ浮かんでいた。

 

と言うか魔理沙にボロ負けしたわかさぎ姫が目を回していた。

 

「……何やってんだ、お前?」

 

「…ひしがきさん?」

 

わかさぎ姫の前にそこにひしがきが結界を展開して立っていた。

 

「あの、ついさっき弾幕ごっこで負けてしまって……」

 

「精根尽き果てたって感じだな」

 

「あはは、ちょっと疲れちゃいました」

 

力なく笑うわかさぎ姫は脱力しきっていた。もとより彼女は妖怪の中では非力な方だ。その上本来は虫も殺せないような大人しい性格の持ち主。弾幕ごっことはいえ慣れない戦闘を終えて精神的にも疲労が濃いように見えた。また所々黒ずんだ後を見るに魔理沙は遠慮なくわかさぎ姫を負かしたらしい。

 

「……………」

 

「?ひしがきさん?」

 

自分を無言で見つめるひしがきにわかさぎ姫は頭を傾げる。

 

「………はぁ」

 

ひしがきは小さく溜息を吐いた後、小さな袋を取り出しわかさぎ姫に投げた。

 

「え、あの、これは…?」

 

「霊草から作った丸薬だ。妖怪でも食えば多少なりとも妖力が戻るだろう。それ食って体を休めてろ」

 

それだけ言うとひしがきは大きく跳躍した。空を飛ぶことのできないひしがきは結界を足場に湖の上を駆けていく。

 

後ろからわかさぎ姫が何か言っているような気がしたが、ひしがきは今それどころではなかった。確かめなければならなかった。この異変に、本来の異変とは違う何かが関わっているかどうか。

 

ひしがきの見上げる先に不気味な嵐が渦巻いている。できる事なら異変の真っただ中に行くことは避けたい。

 

そこには自分が会いたくない人がいるから。

 

しかし、もしひしがきの予想した通りだとしたら、この異変はただの異変ではなくなってしまう。だとしたら行かなくてはならない。

 

そこには自分が傷ついてほしくない人がいるから。

 

願わくば、この異変が無事に終わりますように。遠くにある小さな墓石に、ひしがきは祈りながら走っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 








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