───年─月──日
入院生活から二週間近くが経過し
ようやく外出が許可されるようになった。
…と言っても当然のごとく千束とたきなが同伴だが。
私に構っている暇があったら二人の時間を過ごしてほしいものである。
始めに二人に連れてこられたのは喫茶リコリコだった。
今の私の姿を常連の方々に見せたら何を言われるか分かったものではないと
二人にはしっかりと言ったのだが、無事スルーされ強制連行と相成った。
…案の定、私が来た途端店は大騒ぎになってしまった。
そのうえ山岸先生の所に引き続き、大泣き&抱きしめられる始末。
常連の方々はともかく、今日初めて来たお客さんは意味が分からないだろう。
本当に申し訳ない限りである。
───年─月──日
今日、楠木司令から呼び出しがあった。
そういえばすっかり忘れていたが、私はまだ一応リコリスという扱いなのだったか。
私の救出作戦はリコリスの正式な作戦ではなかったという話だし、
そこまでして救出した私も、もはやリコリスとしては戦えない完全なお荷物なので
処分が下されるのだろうと思い意気揚々と馳せ参じのだが、司令から言われたのは一言
「お前が生きていてよかった」
だ。ええ…。
私はもう戦えないよーとか、この服着ていい立場ではないんじゃないー? とか、
諸々言うだけ言ってみたのだが、やはり処分等は一切なしである。
ついでにフキ達作戦に参加したリコリスへの処罰も私が引き受けると言ったが、
こちらについても「そもそもそんな作戦はなかった」の一点張りだ。
処分がないと分かった時点で興味を失いほとんど話を聞いていなかったのだが、
同伴者の千束とたきなが何やら喜んでいた場面があったので、
結局その後もそういう話は出なかったのだろう。残念な限りだ。
帰り際、訓練を見てほしいというリコリスの子達に群がられてしまったので、
アドバイスできそうな所はしてきたが…正直なところ実践して見せてあげられないので
効果はいまひとつな気がしなくもない。
訓練を一緒に見ていたたきなからは「やはり百合さんが適任だと思います」と
よく分からないことを言われたが、あれは何だったのだろうか。
───年─月──日
久しぶりにフキと話した。
乙女サクラが嫌がるフキを喫茶リコリコに連れて来たのだ。
開口一番謝られた時は何事かと思ったが、
どうやらフキは、自分のせいで私がこんな状態になったと思っているようだ。
加えて私を置いて撤退したことも気に病む要因になってしまっているらしい。
リコリスは責任感のある子達が多いが、フキはその中でも特にそれが強い子だ。
だからこそ自分のせいで、と思ってしまったのだろう。
だが現場指揮官としてのフキの判断は何も間違ってはいなかったし、
私がフキを庇ったのだって結局のところ私の都合だ。
フキは何も悪くない。というかぶっちゃけ10:0で私が悪い。
…といったことを伝えたところ、大泣きされてしまったのだが…。
ミカの力も借りて何とか泣き止んでもらったが、
次は次で「一生私が百合さんを守ります」なんて言い始めて困ったものだった。
フキは少し真面目すぎる。
そこが彼女の良い点でもあるのだろうが、相棒のサクラみたく
もう少しテキトーさというか、緩さを身に付けてほしいものだ。
───年─月──日
ミズキとクルミが人工心臓のことを調べていた。
これは確か千束が喫茶リコリコを閉店することを決めた場面だったはずだ。
私が取っ捕まったことでその必要がなくなったのか、
千束の人工心臓への破壊工作は行われていないので、千束の寿命は2ヶ月にはなっていない。
話しかけたところミズキに「これは…エロい…男…あの…ちゅー…」と
誤魔化されてしまったが…なるほど、もうそれくらいの時期というわけだ。
えっっっっ??? てことはちさたきデート回見れないの??????
しおりまで作ってデートに誘うたきなも、それを凄く喜ぶ千束も、
雪降る場所で別の道を行くことで千束を救うことを誓うたきなも見れないの??????
喫茶リコリコが閉店しないのは嬉しいが、それ以上に対価が大きすぎる。
この日はショックで何も手に付かなかったし上の空だった。
見たかった…ちさたき冬デート……。
───年─月──日
冬デートこそ見逃したが、
よくよく考えてみればデート自体は私がセッティングすれば見れるのではないだろうか。
そう思い立ってからの私の行動は早かった。
たきなに意見を聞きながらデートのしおりを作って
二人にデートの提案をしたのだが…なぜか三人で行くことになってしまった。
これは完全に私が一番嫌いな百合の間に挟まるやつである。
どう責任取ればいいんだ…死ねば、死ねばいいのか…???
けどこれすごいよ、たきななんてさ
まるでこれが普通だと言わんばかりに千束にあーんしているのだ。
千束も千束で嫌がるどころか、それを普通に受け入れている。
私が見ているのに気づくと二人して顔を真っ赤にして誤魔化すのだが、それもまた愛おしい。
私にはあーんはしないでほしいが。
ついでに日付は間違いなく違うはずだが、
最後には雪降る幻想的なちさたきは見ることができたのでよしとしよう。
───年─月──日
今日も今日とて喫茶リコリコに連行されている。
私は一応病人だった気がするのだが、こんな毎日のように
病室から連れ出されていて大丈夫なのだろうか??
ちなみに山岸先生は既に諦めたような表情をしている。止めろよ。
余談だが、最近クルミが少しだけ私に心を開いてくれるようになった。
前は頭を撫でようものなら一瞬で距離を取られていたものだが、
今では撫でても逃げないどころか、
撫でだすと私が撫でやすいようにと寄ってきてくれるのだ。
ちさたきがあり、撫でさせてくれるクルミがいる。
あとは吉さんとついでに真島がどう動くか次第で、
私の残り時間をどう使うかが決まることになる。
原作との乖離が激しくなった今、どう転ぶかはもはや分からないが、
千束の寿命問題だけは確実に解決しておきたいところだ。
あの狂人のことだし遠からず何か仕掛けてくることだろうと思う。
今はちさたきを眺めながら待つとしよう。
───年─月──日
突然だが、
「貴方の残り寿命はあと半日です。具体的には12時間かそこらで死にます」
と言われたらどうするだろうか。
……なぜこんなことを書いているかって? 決まっている。
私の人工心臓、充電ができなくなっちゃいました。
そして充電できなくなるのに合わせて、吉さんから先生…ミカ経由で千束へ
延空木で待っていると連絡があったので、
故障とかではなく、おそらくそういう仕込みが予めされていたのだろう。
ついでに真島も銃をばら撒いて無事暴れ出したらしく、
楠木司令からも喫茶リコリコへ連絡が来ている。
しかしさすがは吉さん、元より逃げられてもいいように手を打っていたというわけだ。
なるほどイカレている。
……………いやどうするんだこれ。本当にやってくれたなあの狂人!!!
不味い。これはマジで不味い。
私が死ぬのは別にいいが、このまま行くと千束はまず間違いなく吉さんを殺してしまうだろう。
千束が愛の深い子であることは育ての『親』であり『姉』でもある私が一番よく知っている。
止めようにも、千束とたきな、それに先生はもう既に延空木へ向かってしまった後だ。
私もついて行ければワンチャン展開を変えられたかもしれないが、
「待ってて、絶対に助けるから」と言われて有無を言わさずお留守番である。
つまりはもう日記なんて書いてる場合ではないのだが、
日記を書くくらいしかやることがないのだ。
もうこのまま待つしかないのか。確かにちさたきは成った。だが、千束の夢を守るのも、それと同じくらい大切なもののはずではなかったのか。
いや待て。まだ…まだ、策はある。
◆
重苦しい雰囲気が支配する喫茶リコリコの中。手帳を閉じると、私は意を決して声を上げる。
「ミズキ、クルミ。聞いてくれ。私は、私は…千束に誰も殺させたくない。これは私から、喫茶リコリコへの依頼だ!」
ちくしょおおぉおぉ!!! 待ってろよ、吉松シンジ!!!! お前の思いどおりにはさせん!!!!!
私の戦いは、これからだ!!!! クソが!!!!!!!