あまりにカズマ達にぴったりの楽曲だった為、エンドレスで聞き続けています。
ともあれ、カズアイルートを漸く始められました。
長さは中編で、極力今年中には完結させますので、暫くの間よろしくお願いします。
実家はお世辞にも都会とは呼べないような郊外にあった。
田んぼや畑はそこかしこにあるし、誰が登るんだよってぐらいの名前も知らない山も両の手では足りないぐらいある。
お陰様でガキの頃は、近所の奴らとカエルを捕まえたりカブトムシを探したり、そんな昭和生まれみたいな遊びばっかやっていた気がする。
その反動か、中学に上がって自室にネット環境が整ったと同時に購入したオンラインゲームの世界があまりに魅力的で。
早い話、滅茶苦茶ドはまりした。
休みの日は宿題なんかは二の次で狩りに出ていたし、学校でも友達とゲームの攻略法や新作について延々と語っていた。
転機が訪れたのは中学三年の夏。
知らない所で決着がついていた事を知って以来、誰にも辿り着けないとされる高みを目指さんと努力を始めた。
連日連夜寝る間も惜しんで研鑽を詰み、何度も挫折をしながらも踏ん張って。
一ヶ月経った頃には、ギルドの幹部を張れるぐらいにまで昇りつめていた。
周りの連中からも頼りにされ充足感で満ち溢れ、それから更にゲームにのめり込んだ。
あれは丁度、季節限定イベントにかかりきりになっていた頃だったか。
連日の徹夜作業で流石に脳の処理能力が限界に達し、一旦休憩を挟もうと部屋を出た。
時刻は深夜。他の家族に気付かれない様足音を忍ばせながら、静かに扉を開けた。
途端、生暖かい空気が顔を撫でてくる。
とは言っても不快さは全く感じない。
先程まで受けていた押しつけがましい冷たさではなく、かと言って日中に襲い掛かってくる気力をそぎ落とすような熱風でもなく。
ちょっと温かめの、だけど十分に涼が取れる、そんな空気だった。
なんとはなしに空を仰いだ。
目に映るのはありきたりな日本の夜空。
田舎とは言っても街灯もそれなりにあるので、満天の星空には到底及ばない。
多くもなく、だけど決して少なすぎもしない。
そんな黒塗りの布の上に銀色のビーズを一振りしたような、誰だって一度は見たことがありそうな夜空だ。
なのにどうしてだろう。
代わり映えのないその銀幕から一向に目が離せなかった。
気が付けば近くの丘へと足が向いていた。
固い光が消え去った真っ暗闇。
土の擦れる音と少し上がった呼気、竹林が揺れる音や様々な虫の声だけが立体音響のように耳に届く。
頂上付近まで歩いた所で、空のぽっかり開いた場所に出た。
しばらく来ていなかったはずなのだが、昔と景色がちっとも変っていない。
開けた草地の中心にゴロッと寝そべり改めて空を見上げる。
目の前には先程までとは比べ物にならない、数多の星々が瞬いていた。
自分はここに居るのだと言わんばかりに力強く、だけど互いに干渉せずに引き立て合う静謐さも伴っていて。
久しく忘れていた光景に、唯々魅入ってしまった。
何を思うでもなくぼんやりと見続け、ふと星々の中でひと際明るい星が目についた。
河のほとりに浮かぶ真っ白い星。
天の中でも一番遠い場所で燦然と輝くその星は、他にはない崇高さや気品を持ち合わせており。
大らかな心持で地上のすべてを眺めている、まるで女神ように思えた。
我ながらメルヘンチックな事を考えるものだ。
きっと今日が七月七日だからだろう。
イベントのストーリーが今日の伝説を基に作られていたし、それに引き擦られているに違いない。
あんなものは迷信以外のなにものでもなく、願をかけるだけ時間の無駄だ。
祈る時間があるのなら、その間に手を動かした方が幾分か建設的だろう。
本当に、人はどうしてあんなものに縋りたくなるのやら。
ざわざわと風が木々を揺らしていく。
夜が深まるにつれ、虫達は自分の時間だとばかりに益々張り切り出す。
降り落ちてきそうな星々は揺らぐこともなく光を放ち、こちらの事なんか気にも留めていない。
寝転んだままの姿勢ですっと目を閉じ、胸の前で手を組んだ。
こんな行動に出たのは全てあの星が悪いのだ。
誰にも聞かれないように。それでも遥か彼方の天上にまで届くように。
胸の内でそっと願いを込めた。