光がうるさいほど分散している。
応援と落胆の声が目に見えるほど大きい。
決勝4Q残り三秒、点差は一点
敵が最大限の警戒をこちらにしてくる。
俺はトップからウィング付近に移動しハンドオフボールを貰い、攻め手を決める。
ここで決めれば負け、その事実に手の末端が冷えてくる。だが体はこわばっておらず、リラックスできている。感覚と判断が鋭敏だ。
相手はこちらのゴール付近のシュートを警戒しているのがわかる。
ドリブルにてカットインし、右のエルボー付近にてプルアップのフェイダウェイシュートを放った。
高い打点から放たれた放物線は全員の視線を集めながら籠の中に収まっていった。
1点差、ブザービートで勝利をもぎ取った。
体育館の清掃が終わり、ここからは自由時間だ。たが、赤司がこっちに寄って来た。
「先輩、こちらに来てください」
「いやいや、もう全体練終わったんだろ、だから今個人練してるのに。それに来週から全中予選が始まるだろ。だから集中させてくれよ。」
「ちょっとの時間です、付き合ってください。」
「えー、じゃあちょっとだけだよ」
少し不機嫌になりながら赤司についていく。Bチームのコートで練習していたから、Aコートまでは距離がある。ワックスがけしたフローリングに電球が照り返しが俺に鈍く跳ね返ってくる。そんなことに気をとめながら赤司についていくと場所は体育館の端の、校長が喋るところについた。そこには新入部員の黄瀬と青峰が寄りかかりながら喋っていた。
「黄瀬、この人はこの人はレギュラーの白石さんだ、ポジションはsf/sg、場合によってはpgができる。ポジションの兼ね合い的にお前のライバルとなる人だ。」
黄瀬か。あまり好きじゃない人だ。才能にものを言わせてAチームにいったやつだ。これまでキツい練習してきた同級生の顔が浮かばれない。部活とはそういうものだと言われれば是だが、納得はできない。それと、ライバルとなる人という言葉が気になる。バスケットを始めたての初心者とライバルとはこれまでの練習の時間、才能そしてこれまでスタメンに立ってきた俺の矜持が許されない。
赤司は何を考えて俺をここに呼んだのだろうか。本当に挨拶だけか?よくわからない。
「白石さんは今から黄瀬と1on1をしてもらいたいのですが、良いですか」
1on1か、まあいいかやっておこう。断ると赤司に詰め寄られる気がして面倒だ。
「いいよー。」
「9点先取でドリブル無制限としましょう。」
「了解、20分後にAコートに集合しよう。」
「わかりました、それじゃあ20分後よろしくお願いします。」
1on1をするのは久しぶりだ。ハンドリングの練習して時間を待とうかな。身体的要素、運動神経、運動能力、経験、色々理由はあるけどどう考えても俺が勝つだろうし。でも赤司が1on1してほしいってことは実力差そんなにないのかな。だが、勝つのは俺だ。
赤司っちー、何であいつとしなきゃいけないんですかー
そんな声が聞こえてきた。そんな嘲笑が混じった一言が俺の内に秘めている闘志を燃やす。1on1、正直そんなにやる気ではなかったけどやってやろうじゃねえか。
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ウォームアップをしながら時計で時間を確認する。もう時間だ。
「どっちが最初にする」
「そっちが最初でいいですよ」
「そう・・・、まあその舐めた感じ俺はいいと思うけどね」
黄瀬は白石と距離を取ってドライブを警戒している。白石のスリーを捨てたディフェンス。もし打ってきても、自分なら反応できるという確信が見て取れる。
そしたらいきなり白石は3pが打った。黄瀬は反応することができない、それくらいクイックリリースだった。放たれた低い弾道のボールはバックボードには当たらずに綺麗に吸い込まれた。
「どうだ、少しはやる気が起きたか。そんなに距離をとって、お前くらいのディフェンスだったらどれだけバスケは楽なんだろうな」
黄瀬は何も言い返せなかった。次に黄瀬は距離を取り、スリー、ドライブどちらも反応できる態勢を取った。
白石はジャブステップのあと、スリーポイントを打った。黄瀬は反応したが、シュートリリースの速さについて行けず、白石の二本目のシュートも吸い込まれた。
「だったら拍子抜けだな、天才少年君。次のスリーポイント決められたら俺の勝ちだぞ」
黄瀬はその言葉で絶望と憤怒が大きくなった。なんでこんな奴に今さっきあったやつに言われなきゃいけないのか。今からどうすれば今目の前にいる敵に勝てるのか。そんな言葉がらせん状に頭を流れている。だが答えは出ない。ただ、自分の全力を出すしかないという結論が出た。
次に白石はシュートのフェイント、そしてジャブステップを流れるように行う。そのとき、シュートのときに反応していた、さらに重心が浮いているためスリーを警戒していると判断。
その後、右にドライブした後、黄瀬が対応しようと過剰に反応したため、左に切り替えした後、もう一度右に切り返しステップバックをスリーポイントを打つ体制まで持ってきた。
その際に黄瀬はその身体能力を生かして白石の目の前にまでチェックをしようとしたが、右に重心が乗っていたためジャンプが出来ず、地面に這いつくばる形になった。その後、白石は冷静に決め勝負を決定づけた。
9-0 白石の勝利である。
その後、白石は今までの雰囲気が変わった。なんというか雰囲気が柔らかくなったように感じた。
「いやーすごいセンスあるね、黄瀬君!このまま続けていけばすごい選手になると思うよ!もう青峰なんて目じゃないね頑張ってね!」
「いやー、なんか・・ありがとうございます。」
「黄瀬君、バスケ選手で一番怖いのは怪我だから、怪我のケアだけはしといてね、それじゃあまたね!」
そう言ってその人は元気そうに去っていった。
その後、黄瀬は動揺しながら青峰に耳打ちをした。
「なんか良い人だったっすよねあの人。On Off がキッチリしているんすかね」
「あの人は、勝負事に関してだけ性格が悪いからな。この前白石さんと昼休みに大富豪をしていたらイカサマしてきたんだよなー。シャッフルのとき自分にいい配役が来るようにしてた。」
「なんでそんなことわかったっんすか。」
「そりゃあ、俺目と反射神経がいいからさ、それくらいわかるよ。」
とドヤ顔しながら言った。
黄瀬は青峰の凄さを再確認したところで、ふと疑問に思ったことを口にした。
「そういえば、青峰っちは白石さんと1on1したことあるんですか?」
そう言うと、青峰は下をうつ向いた。
「実は俺、白石さんにまだ勝てたことが無いんだよな、俺ほど速くはないから止めやすいと思ってたけど、なんつーかキレが他の人とは段違いなんだよ。それとあの人、ディフェンスメチャクチャ上手いんだよ。」
そう言った後、悔しさの中にどこか嬉しそうな表情が浮かんだ。
「(この人こんな表情できるんだ...)青峰っちも負けちゃったんですね。そんなに実力があるなんて知らなかったっす。」
黄瀬は色々なことに愕然としたが、表情には出さないように努めた。
「だから、今日のことはそんなに落ち込むなよ。俺も次は勝てる、そう思いながら挑み続けるよ。」
青峰はそう言って笑った。
そんな青峰の姿を見たくはなかった。誰でも楽勝に勝てる、大きく輝く一等星。尊大な王様であり、挑戦者を受け付ける偉人であってほしかった。だが、何と言えばいいのかわからない。言葉が喉に引っかかる。
結局、黄瀬はただうつ向いて、静寂の時間が流れていた。
時計は午後九時を回ろうとしていた。