桃井の話をみたいと感想をいただいたので、投稿です
夜の九時半のとき、桃井は青峰と塾から家まで帰る途中だった。
これは、親から強制に入らされた青峰が塾をサボらないように道草をくわないようにお眼付役として一緒に帰るためだ。
「もう!大ちゃんは塾の授業のときは寝ないでって言ってるでしょ!何で寝ちゃうのよ!」
「そりゃあお前、つまんないからに決まってるからじゃん」
「聞く前に寝るからつまんないかわからないんでしょ!おもしろいし役に立つから聞きなよ!」
桃井の話を流すために適当に相づちをする。
「ははは、まあそういうこともあるよな。でも俺は全中があるんだよ勉強している暇はないのに。」
「でも今は勉強のときなの!「お!バスケットボールの音が聞こえてくんじゃん。俺も入れてもらおう」ちょっと待ってよ!」
青峰に置いていかれた桃井がついていく。道には長い雑草が生えており、舗装されたアスファルトはボコボコだ。青峰の背中はどんどんと遠くなってくる。草を分けていくと昨日降ったであろう水がだんだん増えており、水溜まりが増えてくる。こんなところにバスケコートがあるのだろうか、そんなことを思いながら進んでいく。桃井の体感では三分ほど道なき道を進むと急に草が開けた。
そこには立派なバスケットコートがあり、そこには二人の大男がいた。青峰と白石である。白石は上半身裸でバスケットボールをゴールに入れようとしており、横にある運動服は水入りバケツに入れた雑巾のように濡れていた。今日は雨が降っていなかったはずだ。
一方の青峰は白石と対して尻餅をついているように見えた。いわゆるアンクルブレイクというやつだ。そう思っている間に白石がシュートを決め勝負を決した
二人で1 on 1をしている光景を何度も見ているので、また今日も白石さんと1 on 1をして、今日も負けたのだろう。そんなことを思った。
「くそ!何でまた負けるんだよ」
「そりゃあさ、俺一年長く生きてるからだよ。後、やっぱセンスかな(笑)」
ヘラヘラしながらそう言うと、青峰は真剣な顔をしながら
「いや、本当に何をしたらあんたに勝てるんだよ。ほかのどんなことよりも俺は勝ちたい。」
そういうと白石は据わった目をし、青峰を見ていた。
「そんなに俺に近づきたいなら俺についてきなよ。」
「マジっすか!俺ついていきます。さつき悪いが俺ちょっと行ってくるわ。」
「私もちょっとついていく。私も興味があるし。」
そういうと白石は服を着て白石と青峰、桃井は歩き出した。その時は会話は無かった。何か話そうと桃井はしようとしたが、雰囲気が許してくれなかった。
五分ほど歩き、ついた場所は海であった。
「もう一回言うぞ、お前は本当に俺に勝ちたいのか」
「ああ、俺は本当に勝ちたい。何よりも勝ちたい。」
「じゃあ着いてこい。」
そう言うと白石は海に入っていった。
どんどん進み青峰の腰辺りまで進んだ。服はもうびしょびしょだ。
この人は狂っている。俺は勝つ方法を知りたかった。練習方法を知りたかったのに何で海に入っているんだ。
そう思い、立ち止まった。
そのとき、白石は言った。
「お前は勝ちたいんじゃないのか」
「ああ、俺は勝ちたい、だけど・・・。」
「本当に勝ちたいのか」
「勝ちたい!」
「ならば進め」
そう言いながら白石は進んでいく。
桃井は海岸沿いに座っていた。なぜかこのまま青峰が遠くに行ってしまいそうだった。
「大ちゃん、戻ってきなよ!この人はやばいよ。」
そう言ってきた。
青峰が止まりそうになった。
「どうした勝ちたくないのか」
そう言うと白石は進んでいった。
青峰は戸惑いながらも進む。
青峰の肩辺りまで水面が来たら、いきなり白石は青峰の後頭部を掴み、海に顔面を付けた。
やばい、俺は死ぬかもしれない。海水を飲んだ。からい、苦しい、苦しい。意識が曖昧になり、もうやばいと思う。もがいても駄目だ。息がしたい、息がしたい。
その時白石は顔を上にあげた。
「今、何がしたかったか言え!」
「い・・・、息がしたかった」
そう言うと、白石は言った。
「お前が今息がしたい、そう思うくらい強く勝利を望め!そうしたときにやっと土俵台に勝てるんだ。!」
「お前が誰かと遊びに行ってるとき、お菓子を食べているとき、寝ているとき、俺は全ての時間をバスケに費やしている。人生を費やして努力をしているんだ。だから今のままだとお前とはライバルだとは思ったこともないし、これからもないだろう。」
「誰かに褒められなければできない、そういう人生でも良いが俺には絶対に勝てない。」
そう言い白石は立ち去った。
呆然としていると、桃井が駆け寄ってきた。
「大丈夫?何か痛いところはない。あの人、大ちゃんを殺そうとしてきたんだよ?あんな人の言うことは聞かなくていいよ」
「ああ・・、大丈夫だ、俺は何も聞いてないし、何も心配ないぜ。大丈夫だ」
青峰の目は揺れて動いているように見えた。
海に映る月は燦然と輝いていた。
この話は
Eric Thomas
という米国のHipHopPreacherの有名な一節をオマージュしたものです。
現実では行わないでください。
普通に犯罪です。