しかし、ルルーシュは再び目覚めてしまう。魔法が存在する世界へと。
この短編は以前お世話になっていた投稿小説サイト『ゼルガーの小部屋』さんで執筆した短編のリメイクとなります。
元を書いた時期はR2の放送が終わってから、時間を空けずに書いたので皇道や復活がまだ形も無い頃に考えた物です。ですので皇道や復活の設定は丸ごと無視した内容となっています。
「俺は……世界を壊し……世界を……つく……る……」
そう言って一人の青年は愛する妹の腕の中で息絶えた。
彼が目指したのは妹が安全で幸せに暮らせる世界。
しかし世界は彼を否定し、彼は抗いを決意する。
彼は仮面を被り正体を偽りながら紛争を始める。
ゼロと言う弱きものの味方。
黒の騎士団と言う正義の味方。
彼は全てを偽り続けた。
世界に満ちる憎しみの連鎖を断ち切る為に自分の死ですら本心を偽り世界を欺いた。
(これで……良い……後はスザクやナナリーが……世界を導いてくれる……)
そして彼は漸く、様々な苦しみから開放された。
彼は全てを偽って生きていた。
気を許せば死。
正体がバレれば外交の道具として使われる。
日本人を信用させる為にゼロの正体も極秘にし続けてきた。
彼はもう嘘をつかなくて良い。
彼はもう疑わなくて良い。
彼はもう……
彼が目を閉じ永遠の眠りに就いた。
筈だった。
◆◇◆◇
「……う……あ?」
ルルーシュが見たのは見覚えのない天井。ルルーシュは体を動かそうとしたが動かなかった。深い泥の中にある様に体の動きが鈍い。
ルルーシュは動かない体の代わりに思考を走らせる
此処は日本か?ゼロレクイエムは成功したのか?そもそも自分は死んだはずでは?
それ以外にも様々な事を考えるが情報が足りない。ルルーシュがそう考えていた時だった。ガチャリと扉が開き一人の女性が現れる。
「あら、目が覚めた?」
「貴女は?……ぐっ!?」
現れた女性に反応し、起き上がろうとしたルルーシュだが胸に痛みが走り苦しむルルーシュ。
「駄目よ、無茶をしちゃ!」
女性が駆け寄り、ルルーシュを支えた。
「ぐ……う……」
「無理をしてはダメよ。危ない状態だったけど治癒魔法で直したんだから」
女性に支えられながらルルーシュは疑問を持った。
「治癒……魔法?」
それはルルーシュが聞いた覚えの無い単語『魔法』その事を疑問に思ったルルーシュだが女性は更に言葉を重ねる。
「何があったかは知らないけど、ひどい状態だったのよ?まるで剣で胸を突き刺したかの様な傷だったわ」
「そう……ですか」
ルルーシュは一度、言葉を区切り思考を走らせる。
まず、此処は日本ではない可能性が高い。
この女性は自分(ルルーシュ)を見てもその事に対して何も言ってこないからだ。
ゼロレクイエムが成功したのであればルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは悪虐皇帝として名を馳せている筈。
仮に世界情勢に疎かったとしてもルルーシュの顔を知らない訳がない。
その事からルルーシュが導き出した答えは。
「此処は……何処なんですか?少し記憶が曖昧になっていて……」
「あらあら、そうなの?此処は第一管理世界ミッドチルダよ。因みに、私の家よ」
「そうですか(やはり此処は俺が知らない土地か………いや、そもそも土地では無さそうだな)」
ルルーシュは出した結論が正しいと判断した。
ルルーシュが出した結論。
それは、この世界は自分が居た世界とは別の世界。所謂、平行世界と結論つけた。
(まだ、他の可能性が14パターンは有るが先程のやり取りでは、これが一番可能性が高いな……さて、もう少し情報が欲しいな……)
ルルーシュが女性から更に情報を聞こうとした時に勢い良く扉が開いた。
「よぉ!目が覚めたって!?」
一人の少女が部屋に入って来た。
「アルフ?駄目よ、怪我人が居るんだから」
「あ、そっか、ゴメンゴメン」
女性が少女を窘める。窘められたアルフと呼ばれた少女は明るい表情だった。それ自体は普通の光景。
しかしルルーシュは唖然としていた
(耳……獣耳が付いている!?いや、それだけじゃない!尻尾まで!!)
ルルーシュは心中で叫ぶ。そして唖然としていたルルーシュにアルフが話し掛ける。
「なんだい?アタシの顔をジッと見て?」
アルフはルルーシュのベッドの上に乗っかっる。
「あ、いや……その耳や尻尾は?」
ルルーシュは思っていた事を口に出した。
「耳や尻尾?ああ、アタシ使い魔だから」
アルフは尻尾を揺らしながら何気もなく言った。
「つ、使い魔?」
先程の『魔法』同様にあまり馴染みの無い言葉『使い魔』。ルルーシュはポカンとした表情をするしかなかった
「う~ん……やっぱりアナタは次元漂流者だったのね」
「次元漂流者?」
女性から更に聞き覚えの無い言葉が出た
「アナタみたいに別の世界から迷い込んだ人をそう呼ぶのよ」
女性からは簡単に説明が入った。
「別の世界……それに『魔法』や『使い魔』……」
ルルーシュは更に考え込む。
「あ、そう言えばアナタの名前を聞いてなかったわね」
「あ……ルルーシュ・ヴィ……いや、俺はルルーシュ・ランペルージです」
「アタシはアルフだ!」
「私はリンディ……リンディ・ハラウオンよ。ヨロシクね、ルルーシュ君」
リンディと名乗った女性はスッとルルーシュに手を差し伸べた。
(此処は日本でもブリタニアでも無い……ならばルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの名はあちらに置いて行く)
ルルーシュは差し出された手を取りながら思考を走らせていた。
死んだはずのルルーシュは別の世界。
魔法が蔓延るミッドチルダで目覚めた。
この世界でルルーシュが為すべき事。
この世界に何故ルルーシュが跳ばされたか。
それら全ては物語の序章でしかない。
最近、スランプ続きだったのでリハビリがてら短編に走りました。
実を言うと、この短編を書いた当時はシリーズ化して続きを書いたり、『雁夜おじさんが〇〇と召喚しました』的な流れで、様々な世界に転移させる事を考えたりもしていました例としては恋姫、FGO、ネギま等ですね。