【本編完結】お菓子作りが得意なトレーナーと、無慈悲するマヤノトップガン 作:出遅れ系トレーナー
「暑い!!!」
「暑いですねぇ」
「なんで夏はこうも暑いんだろう。誰も得しないじゃん」
「チーム部屋にエアコンつけるの普通に忘れてましたからね。予算がちょっと足りなかったんですよ」
春3冠のシーズンが終わり、季節は夏。気温も34℃まで上がってしまい、エアコンの設置されていないチーム部屋は普通に地獄だった。え?宝塚記念はどうなったかだって?マヤノとトウカイテイオーとグラスワンダーの三つ巴の戦いだったけど、マヤノが大逃げして終わったよ。トウカイテイオーが『ボクガマケルナンテー!』と叫んでいたのが非常に印象的だった。あとグラスワンダーは最終直線でトウカイテイオーに向かって薙刀振り回してたけど、あれはどこから取り出したんだろう。
「金にモノを言わせて施工業者を呼んだから、明日からは涼しくなるはず。暑いし今日はもう解散するか」
「マヤはアイス食べながら扇風機の前を占拠してるから割と平気だよ!」
「トレーナーさんお手製アイスでも食べなければ、この暑さは許されないですからね。あと、少しは扇風機の前代わってください」
「え〜?や~だ☆」
「しょんなっ!?」
「いじわるしないで。ほら、私の扇風機貸してあげるから」
そして私は余計に暑くなる。トレセン学園はウマ娘優先。耐えるのだ、頑張れ私…!
「やっぱりむ~り~。しんどすぎる~。海にでも行けばよかったかな」
「海に行ったところで灼熱の炎天下。熱風が吹くだけで絶対に涼しくないですよ」
「ですよね~」
冬が寒いのは着ればいいけど、夏が暑いのは脱いでも涼しくならんし、手に縄が掛けられてしまう。しかもお菓子が腐りやすい。1年の中で最低最悪の季節だ。滅んでどうぞ!
「あの~みなさん。えっと…夏合宿とかしないんですか?」
そんな中、フラワーは夏合宿の提案をしてきた。チームスピカやリギルに所属するウマ娘たちは、夏合宿で追い込んで秋のシーズンに備えるのだそうだ。うちは合宿の届けは出していないが。
「ん~…。フラワーは海行きたいの?」
「絶対に行きたいというわけではないですけど、どこのチームも海で強化合宿してますし。私たちだけやらないのはどうなのかなって」
「フラワーちゃんの場合わざわざ海に行かなくとも、マヤと組んで並走するほうが実力伸びるから別にいいんじゃない?」
「それはまあ確かに…(ステイヤーのはずのマヤノさんが短距離で私に競ってくるのは未だに理解できないですけど)」
「しかも海に行ったところでトレーナーちゃんにはメリット特にないもんね」
「それな!」
夏合宿に行ったところでキッチンも冷蔵庫も使えない。そうすると私の出番がなくなってしまう。やはり夏は悪い文明。…文明か?
「というか学園のプール行けばいいじゃんね。どこのチームも出かけてるから貸切にできるはずだわ」
「え。トレーナーさんも入るんですか?」
「そんなわけないよ。サイドで涼みに行くだけに決まってるじゃん。水泳なんてのーせんきゅー!」
そんなわけでプールにやってきたのだ。
「あ゛~…涼しい…」
たづなさんに連絡すると、プールの許可が下りたので全員でプールへ。当然のように私は備品のイスで涼んでるだけだが。
「よーし、トレーニング頑張ります!」
「私は割と暑さでバテてますので、ほどほどです」
フラワーとデジタルは学校指定のスク水でトレーニング。しかしマヤノはそれではなく、フリルのついたヒラヒラした水着に浮き輪…って。
「なあマヤノ。プールにはトレーニングしに来たんじゃないの?」
「何言ってるのトレーナーちゃん。誰か居るならともかく、貸切なら遊ぶしか選択肢ないじゃん」
「ええ…?」
遊ぶ気満々のドヤ顔マヤノ。そして、えっへん!と胸をそらしてこう仰った。
「いい?トレーナーちゃん。バレなきゃ犯罪じゃないんだよ⭐︎」
「それ絶対バレるやつ」
「そういうことです」
「げえっ、たづなさん!?」
案の定、たづなさんが現れてマヤノは連れて行かれた。戻ってきたときにはちゃんと学校指定のスク水だったので、一応トレーニングする気はあったらしい。それじゃ、トレーニングがんばってね。
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「いやあ、やっぱりエアコンがあると涼しくていいですねえ」
「そうですね。外に出るの嫌になっちゃいます」
翌日、エアコンが無事チーム部屋に取り付けられ、私たちは地獄から解放された。
「なあマヤノ」
「なあに?トレーナーちゃん」
「くっつかれてると暑いんだけど」
しかし、昨日プールで遊べなくてやる気が下がりきったマヤノは、私に正面から抱きついてぶーたれていた。暑い。
「ぶーぶー。今マヤはトレーナーちゃん分が足りないの。だから補充してるの。暑いのは我慢して?」
「アッハイ」
「…今日のマヤノさん、ちょっとこわいですね」
「マヤノさんにも色々あるんですよ。レース以外で八方睨みするのは正直勘弁してほしいですけども」
目からハイライトが消えててこわい。頭を撫でてやるとふにゃんと笑顔になったので、これはもう甘やかし続けるしかないな。