【本編完結】お菓子作りが得意なトレーナーと、無慈悲するマヤノトップガン   作:出遅れ系トレーナー

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ご褒美を所望するマヤノトップガン

『マヤノトップガン!1等星の輝きを見せ、クラシックへと繋がる道へ第1歩を踏みだした!』

『勝ったのはマヤノトップガン!皐月を制し、3冠の1角を手に入れました!』

『マヤノトップガン!ダービーを制し2冠達成!そして秋の京都へ伝説は引き継がれていく!』

『マヤノトップガン!見事3冠達成!今ここに、最強のウマ娘が誕生しました!』

 

 

まず言わせてもらう。なんだこれは。何が起きているんだ。

マヤノは私が特に何かを指示するでもなく自分でトレーニングをして、レースも自分で出走届を出していた(私はハンコを押すだけだった)。私が何をしたかと言われれば、レースが近づく度に彼女が甘えながらねだってきたデザートを自作し、(彼女が『お願いトレーナーちゃん、あ~んして食べさせて☆』とねだるので、言う通りにあ~んして)食べさせていただけだ。そしたらホープフルSとクラシック3冠を無敗で勝利していた。コネも何もないズブの新人がまさかの3冠ウマ娘のトレーナーだ。まるで意味が分からない。が、なってしまった以上そうなのだろう。

 

 

「ねぇねぇトレーナーちゃん。マヤ、3冠ウマ娘になったんだよ。すっごく頑張ったと思わない?ご褒美があってもいいんじゃないかな~って思うんだけど、トレーナーちゃんはどう思う?(チラッチラッ)」

「え?う~んそりゃそうだよねぇ…」

 

 

私に正面から抱き着いて頭をこすりつけている無敗の3冠ウマ娘。私の担当ウマ娘はなんてかわいいのだ。そしてなんでこんなにも強いんだ。というか、こんなに強いなら私なんて必要ないのではないだろうか?

 

 

「あ~!今トレーナーちゃん、『マヤノには私なんて必要ないんじゃないか?』…とか思ってたでしょ!」

「え。なんで?」

「えっへん!トレーナーちゃんが考えそうなことなんて、マヤにはお見通しなのだ!でもね、マヤはトレーナーちゃんがいないと元気もやる気も出ないから~、居てもらわないと困るの。なんでかっていうと~…きゃっ☆」

「ぐふっ!と、とりあえずご褒美のことを考えようか」

 

 

このままだと萌え死んでしまうので要望を尋ねる。マヤノは、これは食べたし~あれも食べさせてもらったから~…う~んう~んと悩んでいる。そんなに食べさせたことない気がするんだが(出走したレースの直前だから、4回だけだろう)。ただまあ、いつものことでもある。決まるまで頭をなでながら気長に待つことにした。

 

 

「…よ~し。決まったよトレーナーちゃん。なんと今回は~~~~?りんごとぶどうのタルト!とびきり大きいのをホールで!!」

「なるほど」

 

 

10分ほど悩み続けたマヤノが出してきたのは、りんごとぶどうのタルトだった。ちょうど季節のものだから近所のスーパーで買えるだろう。ウマ娘サイズで作るのは多少骨が折れるが、かわいいかわいいマヤノのためだ。腕を振るうしかないな!

 

 

「じゃあ材料を買いに行かないとね」

「うんうん」

「…えっと、降りてくれないと出かけられないんだけど」

「…抱っこしたままってのは?」

「そんな力はないよ!?」

「な~んだ、ざんね~ん」

 

 

 

─────────

 

 

 

そんなわけで、マヤノと手をつなぎながら近所のスーパーにやってきた。マヤノは私と違って有名なので、髪をシニヨンにした上で大きな赤いリボンで隠している。途中サンバイザーをつけたウマ娘とすれ違ったが、持っていたレジ袋の中身が半額シールまみれでギョッとしたのは内緒だ。

 

 

「さーて、お目当てのりんごとぶd『トレーナーちゃん!すごくおいしそうな桃があったよ、桃っ!』あーはいはい桃も追加したいのね。いいよ、それも買おう」

「やったー!」

 

 

ニッコニコで手に取った桃をカートに入れるマヤノ。なんというか、迷いがなかった。後で聞いたら『あれが1番おいしいってマヤわかっちゃったんだもん!』だそうで。

 

 

「ただ流石に3つの果物を同時に配置は味が混ざって難しい。エリアを分けて3種のタルトにしようと思うんだけど、それでいい?」

「うん!すっごくおいしいのを期待してるね、トレーナーちゃん!」

 

 

りんごとぶどう、それに桃。その他タルトを作るのに必要な材料をカートに入れ、レジに向かっている最中だった。小学生っぽい小さなウマ娘がお菓子コーナーで財布と相談しているのが目についた。

 

 

「あう…このままだとちょっと足りない。プリファイお弁当に使いすぎちゃったのかな…」

 

 

どうやら欲しかったものが買えないらしく、それで悩んでいたようだ。私が目を取られて立ち止まってしまったため、マヤノが服の裾を引っ張ってきた。

 

 

「どしたのトレーナーちゃん」

「いや、あの子なんだけど。こんなところにひとりでいるから目に付いたんだ。多分小学生だと思うんだけど、周りに親御さんがいないんだよね」

「どれどれ~?って、フラワーちゃんだ。やっほーフラワーちゃん」

 

 

マヤノが声をかけると、"フラワーちゃん"はこちらに振り向いた。

 

 

「あ、マヤノさん」

「フラワーちゃんも買い物?」

「はい、そうなんです。残念ながらお小遣いが足りなくて目的のものは買えそうにないんですけどね」

「そっかー。フラワーちゃんまだデビュー前だから、お小遣い少ないって言ってたもんね」

「…ふたりは知り合いなの?」

「同学年だよ」

「ですです」

 

 

おいおいマジか。全然同じ年齢には見えないけど…。

 

 

「フラワーちゃんは飛び級だからね。マヤよりも年下なんだ。でも成績はすごく良いんだよ?」

「…答えてくれるのは助かるけど、勝手に心の中を読まないでくれない?」

「むり!マヤわかっちゃったんだもん!というかトレーナーちゃんがわかりやすすぎなんだよ」

「ぐぬぬ」

「ふふっ…おふたりが楽しそうでこっちも楽しくなっちゃいました。デートの邪魔をしたら悪いので、今日はお先に失礼しますね」

 

 

手にしていたお菓子を元の棚に戻し、"フラワーちゃん"は帰っていった。

 

 

「デートだって!マヤたち、ほかの人から見ても恋人同士ってことだね☆」

「そうらしいね。でも担当ウマ娘に手を出したとか言われたらトレセン学園をクビにされるから、あまり大きな声では言いふらさないで欲しいな」

「わ、わかってるよ~。マヤ、トレーナーちゃんに都合の悪いことはしないもん。ただちょっと嬉しくなっちゃっただけで…トレーナーちゃんのばか」

 

 

マヤノの笑顔が曇ってしまった。なんてことだ。全力でおいしいタルトを作って機嫌を直してもらわないと…!

 

 

 

 

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