【本編完結】お菓子作りが得意なトレーナーと、無慈悲するマヤノトップガン 作:出遅れ系トレーナー
推し活→推し事
今回はあえてこの字を使っています。
「よーし完成だ!」
「おおーっ!すごいよトレーナーちゃん!このお菓子、すごくキラキラしてる!」
「自信作だからね。これを食べればジャパンカップは勝ったも同然!当日も期待しててね?」
「やったー!」
「…トレーナーさんがパティシエさんとはいえ…なんでお菓子が文字通り光ってるんでしょうか?」
「割とシュールな光景ですよね、あの2人全然気にしてないですが。そして食べると普通においしいのがこれまた謎です」
今回のスイーツは季節の洋梨を使ったタルト。数日後に控えたジャパンカップでの勝負スイーツの試作と、今日の分のおやつを兼ねている。やる気アップでトレーニング効率もアップ!だそうで。いつも通り私自身はトレーニングにはノータッチだけど。トレーナーはウマ娘の体調とやる気を管理する推し事です。
「ただ最近はトレーニングばかりしてて休息が無かったので、先にアレを飲まなきゃなんだよね。ということで…じゃん!こちらがそのブツになります!」
マヤノが取り出したのは、瓶詰めされた毒々しい緑色の液だった。
「うわ…何そのいかにも栄養あるけどクッソまずい的な何かは」
「これは見た目通り特濃青汁だよ。70コインで買えるやつ」
「70コイン…?」
「でね?これを飲むと元気が出るには出るんだけど、本当においしくないの。ほんと~~~においしくないの」
「なぜ2回言ったし」
マヤノが顔をしかめておいしくないって言うんだから、相当おいしくないんだろうな。そしてマヤノがそれを取り出してから、フラワーとデジタルがソワソワし始めた。慌てて自分の荷物をまとめ始めているが、はて…?
「す、すみません。花壇のお花に水をあげるのを忘れていたのでちょっと見てきマヤノさんどうして腕を掴んでいるんですか…?」
「で、デジたんも大事な用事を思い出したので今日はこれにてしつれちょっとマヤノさんその手を離してもらえませんか…?」
「これはトレーニングでケガしないために必要なの。あとは…わかるよね?」
「「「ぴぃッ!?」」」
マヤノの目からハイライトがッ!?まだ担当がマヤノ1人だった時に、たまに死んだ魚のような目をしてた日が何回かあったけど…これのせいか。お前今まで何を見てたんだよって話だけど。
「とりあえず言いだしっぺの法則でマヤから行くね。マヤ、テイク☆オーフ!ゴクゴク…………う゛っ!!!」
「はわわ…」
「ちょっとマヤノさん!?それは女の子が出しちゃいけない声ですよ!でも気持ちは痛すぎるほどわかりますのでこれにてしつれ…や、やっぱり逃してはもらえないんですね」
「ダメですよデジタルさん。マヤノさんが頑張ったんですから、私たちも覚悟を決めましょう…!」
その後2人が全く同じことを繰り返し、口直しのタルトで復活していた。食べた瞬間から、なんだか髪が逆立って目つきが悪くなった挙句、紫色のオーラを放っていた気がしたが…きっと気のせいだろう。
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『海外のウマ娘の優駿が集うジャパンカップ。日本勢は対抗出来るのか!…と言いたいところでしたが、残念ながら諸事情により出走回避が相次いでしまったので、今年のジャパンカップは日本勢のみとなりました!コホン、気を取り直しまして、本日の天気は晴れ、バ場は良バ場。絶好のレース日和となりましたここ東京レース場であります。それでは出走するウマ娘を見ていきましょう』
「珍しいですよね。海外の方がおられないのは」
「ザックリ調べてきたんだけど、季節外れの大雪で中継するチーナの空港の滑走路が埋もれて機能していないらしいよ。それで来られなくなったんだとか」
「なるほど…。あれ?そういえば実況の人が変わってますね。何故か解説の人も居なくて、実況席には実況の方1人だけです。今回はものすごい早口さんです」
「言われてみればそうだね。何かあったのかな」
「ああ!前の実況と解説の方は、秋の天皇賞でのマヤノさんに対する発言が問題になって降ろされたそうですよ。ウマ娘ちゃんに対するリスペクトがあまりにも欠け過ぎてましたし。許されませんよああいうのは!」
確かにまるでマヤノが負けて喜んでるような実況だったな。不愉快極まりなかった。皆も同じだったと知って安心したよ。
「そういえば今日のジャパンカップって秋の天皇賞のメンバーに加えてトウカイテイオーが出走するらしいね。宝塚記念は大逃げで押し切ったけど、今回はどうするんだろ。何か聞いてる?」
「あたしの方は特に何も聞いておりませんね」
「私も何も。ただ、ここ最近の並走では、マヤノさんは私の後ろにピッタリって感じでした」
「誰かをマークでもするのかなあ」
マヤノがマークをするといえばナイスネイチャだが、今日もそんな感じになるのだろうか…。
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「まあそうですよね」
「うん」
相も変わらず、マヤノはアタシの真後ろから前方にプレッシャーを投げつけまくっていた。今日はスぺちゃんやマックイーンがいるんで、先行策を取るだろうから少しは楽だと思ってたのに。アタシに何か恨みでもあるんだろうか。いや…マヤノのことだから特に何も考えず、単純にプレッシャーを投げるための楔が欲しかったんだろう。そしてアタシが選ばれてしまったと。まあこのネイチャさんにはそういうのはほとんど効かないんだけどね。単純に周りをウロウロされると気が散るから他所でやってくれって思うけど。
「ネイチャさん的には、あまりネイチャさんを舐めてると痛い目を見るよ?と言っておこうかね」
「何度でも言うけど、マヤにとって1番怖いのはネイチャちゃんなの。マックイーンちゃんやスぺちゃんも速いけど、ただそれだけだから」
ぐぬぬ。やっぱり遠回しにどっか行ってくれって言ってもダメか。まあマヤノにマークされている間は何故かアタシの方に目が向くことが無いんで、その分自由に走れる。だから、なんだかんだで掲示板の上の方に行くんだよなあ。…あ。8番の子が掛かってテイオーに向かって突撃し始めた。掛からせて妨害させるとかいう、あの会長さんと同じことできるんだから、そりゃ強いわな。そして3コーナーを回って最終コーナー。そろそろ行くかとスパートをかけ始めたタイミングでマヤノに声をかけられた。
「今日のマヤはいつもとは一味違うよ。スーパーなマヤを見せちゃうからね…?」
「ほほ~…それはどうも律義に……んなっ!?」
な、何だこのプレッシャー!?今までに感じたことはない圧を感じて周囲を確認すると、アタシの横を通り過ぎるマヤノが。そして今までのマヤノの領域は雲一つない青空だったが、今日のそれは雷降り注ぐ雨空だった。しかもマヤノの身体からは紫のオーラが出ている。まるで今までと別人なんじゃないかと思わせるほどのプレッシャーを放ちながら疾走するマヤノ。これは…何だ?
『さあここでマヤノトップガンが伸びてきたぞ!その後ろをナイスネイチャがスリップストリームで追走!最終コーナーを回ってさあいよいよ直線だ!先頭はメジロマックイーン!スペシャルウィークは伸びが苦しい!メジロマックイーンが懸命に逃げているが、それを上回る速度でマヤノトップガンが迫ってくる!迎えるは高低差200mの坂!……坂を登るッ!残り300!先輩ウマ娘としての意地を見せるのか!グランドスラムに王手をかけるのか!マヤノトップガン抜け出した!しかしメジロマックイーンも差し返す!さらにその横からナイスネイチャが迫る!これは大接戦!!!大☆接☆戦ドゴーン!!!』
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「マヤノかな?」
「そうでしょうね」
観客の大歓声に迎えられたゴール前。マヤノがメジロマックイーンを差し切った。そしてナイスネイチャもメジロマックイーンを差しているように思える。彼女が2着かなこれは。
「というか今日の実況の方すごいですね。実況がほとんど途切れませんよ。前任と比べて優秀すぎませんか?」
「確かにすごいね。……高低差200mの坂だとか大接戦ドゴーンだとか言ってたような気もするけど。爆発するのかな」
「ちなみに距離400mで高低差200mだと勾配50%ですね。実際の府中の坂は距離300mほどなので、高低差200mだと勾配66%。そんな急坂はなかなか登れないですよ」
「ウマ娘ちゃんグッズが坂の上にあったら?」
「緩坂すぎません?」
しばらくして結果が電光掲示板に出た。マヤノ-ナイスネイチャ-メジロマックイーンでクビ差、ハナ差。これでマヤノは秋3冠、そして中長距離G1の年間グランドスラムの両方に王手をかけたことになる。
「よく考えたら今日の実況さん、秋の天皇賞をサブで実況してた方ですね。坂を登るッ!ってすごい声量でしたし、間違いないですよ」
「あぁ…そういやメイン実況に入り込んでたなあ」
「レース前にも言いましたが、今後のメイン実況はあの方になるそうなので、よく聞くことになると思いますよ」
スーパーハイテンションマヤノ。双竜打ちでビシバシひっぱたくの楽しかったです(ウマ娘関係ない)
アオシマバクシンオーは名言も迷言も好き。ずっと言っていませんでしたが、ネイチャさんが強キャラなのは私の趣味です。