【本編完結】お菓子作りが得意なトレーナーと、無慈悲するマヤノトップガン 作:出遅れ系トレーナー
「ねえねえトレーナーちゃん!見てよこれ!すごくない!?」
「どれどれ…?えっ、嘘ぉ…?」
「えっと…デマ情報でしょうか?」
「そう思うでしょ~?マヤもそう思ってちゃんと調べてきたんだけど、事実みたいなの」
2月初旬、世間ではもうバレンタインムード1色である。そして去年に続いて今年もチョコに悪戦苦闘している私であった。フラワーに手伝ってもらっているにも関わらず、現状上手くいきそうにない…どれだけチョコ嫌いなんだよって突っ込まれそうだ。さてさて、そんなところにマヤノが持ってきた学内新聞に書かれていたのは、『メイクデビュー勝利以降、出走レース全敗中のハルウララ、川崎記念1着の快挙!』の文字である。
「えっ、本当にこれどういうことなんだろう?ハルウララってあの元気ハツラツだけど、やけに足が遅くてレースに全然勝てない子だったよね。メイクデビューだけ勝てて、それ以降ボロボロの」
「うん。そのウララちゃんだよ。でもここ最近ライスさんと一緒にトレーニングしてるみたいで…。すごく頑張ったみたいなの」
「そうなのか。…でも川崎記念って中距離だったよな?あのスタミナのない子が走れる距離だったか…?」
「どうだろ。でも勝っちゃったんだからそれでいいんじゃない?」
「まあそれもそうだな~」
「うんうん!」
「(あれは努力でなんとななる範囲だったんでしょうか…。しかもライスさんってガチガチのステイヤーのはず。それを一緒にトレーニング…?)」
いやあすごいな。あの子は生涯負け続けるとばかり思ってたけど。まあ個人的には努力は報われるべきだと思うし、そうであって欲しいよ。
「で?今年もまたトレーナーちゃんは、チョコ憎しの気持ちを持ちながらもチョコ使ってるんだ」
「一応バレンタインだからねぇ…」
「そういえばトレーナーさん、何作るか決めてから作ろうとしてるんですか?今の段階では、私には何も考えずにチョコを溶かしてるだけにしか思えないんですけど」
「ああ、今年はガトーショコラを作るんだよ。去年は表面にチョコクリームを塗りたくった中身は普通のホールケーキだったけど、今年は直接生地に練りこんじゃおうかなと」
今年はふわふわ、しっとり、そして特製のつやつや生地の3種類で勝負だ。どれかしらが彼女らの好みに当たるだろう戦法。当日残った分と試作品は食堂ポイーしちゃう予定。数が少ないから問題も起きないだろ多分。
「お疲れ様で~す。おや、皆さん既におそろいで…。ってトレーナーさん、今年はガトーショコラですか。去年はチョコ系のホールケーキでしたけど」
「む…よくわかったね。その通りだよ」
「ここに来るまでのバレンタインには、私の方からウマ娘ちゃんにチョコをお贈りさせていただいてましたので。残念ながら私はチョコを練りこむ感じのお菓子に関しては上手くいかなかったんですけどね。どうしてもムラが出ちゃうというか」
「作ってる最中に興奮しすぎちゃった…とか?」
「あはは、バレました?」
バレるも何も普段から性癖が全力全開じゃないか…。というかマヤノがレースに出ないなら必死になってカロリーオフ仕様にする必要もないのでは?フラワーやデジタルが食べ過ぎるってことはないだろうから…。クックック、全力で甘くしちゃうぞ。
「…なんかトレーナーちゃんがものすご~く悪い顔になってる」
「天才から罠に掛けられて大逆転されそうな顔してますよね。これは罠だッ!みたいな」
「まあ実際には掛けるほうだけどね☆」
「悪意がない分厄介ですよあれは…」
「……ハッ!もしかしなくとも私、今回の悪の片棒を担がされてしまったのでは!?」
「えっと…ご愁傷様です」
「が~ん…」
「だいじょ~ぶだよフラワーちゃん。マヤがいいことを教えてあげるね。…バレなきゃ犯罪じゃないんだよ☆」
「それバレるやつですよマヤノさん…」
3人に何か言われているが、気にせずに行くぞ!
──────────
「私思ったんですの。別に食べてしまっても構わないのだろう?と。そもそも太ってしまっても、全力でダイエットを頑張ればよいのだと何故今まで気付かなかったのでしょう」
「そんなの知らないよ。でも確かにまだ2月頭だからなあ。大阪杯は3月の頭だし、デブになってもダイエット間に合うか。ボクは何が起こっても知らないフリするけどね、にしし~」
毎度のように山積みにされたガトーショコラ。3種に分けてあるそれは、『ふんわり柔らか食感』、『しっとり滑らか食感』、『特製つやつや食感』と書かれた札の下に設置されていた。毎度恒例のスイーツ☆トラップを見るなり開き直って戦闘態勢に入るメジロマックイーン、それを見て呆れを通り越して既に感心する域に入っているトウカイテイオーである。メジロマックイーン、学ばないウマ娘である…。なお今回のスペシャルウィークは、何かを察して食堂のある棟に入る直前で逃げだし、スイーツの魔の手から逃れることに成功した。
「パクパク。このガトーショコラ、なかなかイケますわね。なんだかいつもより甘みが強い気がしますけど」
「へぇ~。マヤノのトレーナーが作ったのに甘いんだ、珍しい。いつも糖分控えめでボクからすると物足りないのにな~。気になるからボクもちょっとだけ味見しよ」
「…あげませんわよ?」
「いやいや取らないって、スぺちゃんじゃないんだからまったく…。それじゃあどれにしよっかな~…って。ふんわりとしっとりはわかるけどさ。何だろ、このつやつや食感って」
メジロマックイーンがパクパクする横で、トウカイテイオーは不思議に思ったつやつやを手に取ってしまった。その悪魔のスイーツを。
「あ~ん。むぐむぐ……っ!?!?!?」
「ど、どうしましたのテイオーさん。尻尾がピーン!と逆立っておりますけど…」
「こ、これは……」
「…これは?」
「はちみーだああああああ!!!!!!!!」
「え゛っ」
メジロマックイーンはトウカイテイオーがとんでもないはちみー狂いというのを知っている。それこそ正気を失ってスイーツパクパクイーンになってしまった自分よりも酷いレベルの。そして、予め知らされていて、トレーナーの管理が行き届いていた過去のはちみークッキーと違い、今回は突発的なもの。まったく覚悟が出来ていない。そうなれば正気がホウカイテイオーになってしまうのも当然だった。
「はちみー!はちみーを食べるのだ~~~!!!」
「こ、これはまずいですわね…」
正気を失ってケーキに突撃するホウカイテイオーを見て、逆に冷静になるメジロマックイーン。しかし時既に時間切れ。ホウカイテイオーと化したトウカイテイオーに勝てるはずもなく、あえなく撃沈したのだった。
──────────
「ふんふんふ~ん♪今日は久しぶりにトレーナーちゃんの全力のケーキが食べられたし、幸せな気持ちで寝られるよ~☆」
お風呂に入ってさっぱりしたマヤノ。やることはすべて終わって、残るは髪を乾かして寝るだけである。そんなマヤノが気分よく自室の扉を開けると、そこにはデーンと丸い箱が鎮座していた。
「なぁにこれぇ。テイオーちゃんのかなあ。荷物はちゃんと仕舞っておくように言ってるのに~」
「ま、マヤノ~」
「ひぇっ!?誰も居ないはずなのにテイオーちゃんの声が!?もしかしてお化け?」
「違うってば~」
「んん~???」
まさかと思って置いてあった箱のフタを開けると中には丸々と太ったウマ娘が。そしてその顔は見知ったものだった。
「…テイオーちゃん、何やってるの?マックイーンちゃんの役目じゃないのこういうのは」
「ボクだってそう思うよ!でもはちみーの罠を仕掛けられてるなんて聞いてないよー!」
「はちみー?何それ、マヤ知らないんだけど」
「でも食堂のケーキが…」
「……あ」
そういえばショコラの1つが無駄に甘くて、それだけおいしくなかったのを思い出したのだ。なるほど、はちみーを入れたからあれだけつやつやに光ってたんだなーと思うマヤノ。何度味見してもはちみーは人間には甘すぎて味がわからないそうで、ほぼ全て失敗作扱いで食堂にポイーされてしまっていた。そこにこのテイオーである。
「まさかテイオーちゃん…」
「…うん」
「えぇ~~~っ!?まさかアレ全部食べちゃったの!?あの量のケーキを!?」
「気づいたら何も残ってなかったんだよ~~~!帰ってくるにもボクだけだと立てないからって箱に押し込まれて転がされるしさあ?」
「だから丸い箱なんだね…」
「ボクガフトルナンテー!」
あーあ。これは大阪杯無理そうだね。トレーナーちゃんが全力で作ったやつだもん。マヤは知~らないっと。
トレーナーちゃんが盛ったもの
マヤノ、フラワー、デジタル→やる気↑↑↑
マックイーン→やる気↑↑体力↓↓↓
テイオー→腹の肉↑↑↑