【本編完結】お菓子作りが得意なトレーナーと、無慈悲するマヤノトップガン   作:出遅れ系トレーナー

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日常回


通販の利用に気を付けなかったトレーナー

「こんにちは~。宅配便なの~」

「は~い」

 

 

桜花賞が無事終わり、初夏に差し掛かった5月。そう、プラムが旬でおいしい時期である。沼川で安く取り寄せが可能だったので、そこそこの量を注文してしまったよ、はっはっは!ケーキにするか、シロップ煮にするか、はたまた煮詰めてジャムにしてしまうか。うーん、いいプラムだ!どれにするか迷うぜ!的なやつ。今日の配達員はアイネスフウジンのようだ。

 

 

「こちらにサインをお願いするの!」

「はいはいっと……よし、お願いします」

「ふむふむ。おっけーなの。それじゃあ運び入れちゃうの!……よいしょっと!」

「…えっ、ちょ、あれ?あれええっ!?」

「注文通りお届けしたの!それでは、またよろしくなの!」

 

 

アイネスフウジンは配達物を置くなり、逃げウマらしい綺麗なスタートダッシュを決めて次の現場に向かってしまった。おかしいな、注文したのはプラム50個だったはず。なんで発泡スチロール箱で20箱なんだ…?

 

 

「やっほ~トレーナーちゃ~…ん?あれ~?トレーナーちゃん、どしたのこの大荷物。沼川で頼んだんだろうけど、いったい何を買ったの?」

 

 

積まれた発泡スチロール箱の前で佇んでいると、マヤノがやってきた。まだ午前なのに何故?と思ったけど、今日は休日だったか。というか、そうじゃなきゃアイネスフウジンがアルバイトしてるわけないもんな。

 

 

「いらっしゃいマヤノ。実はプラムを50個買ったんだよ。でもおかしいなあ。どう見ても50個って量じゃないし」

「ん~?…あっ、トレーナーちゃん!この領収書、50個じゃなくて500個になってるよ!」

「え?うそ~ん…。ああ、ほんとだ。500になってる…」

 

 

マヤノに言われて受け取った領収書を見ると、確かに500で発注されていた。これは…やらかしたな。小麦粉だけは在庫があるからまとめてタルトにして、余った分は寄付するかなあ。敷き詰めれば何とか腐る前に全て調理しきれるはず…。元々作ろうと思ってたプラムケーキは、ホットケーキの元の粉末が全然足りんし。なんで小麦粉だけたくさん在庫があるかって?商売道具ですよ?

 

 

「やらかしちゃったものは仕方ない。急いで調理を始めよう」

「マヤも何か手伝おっか?」

「うん、お願い。私が皮向いて半分に切るから、真ん中の種を取ってくれると助かる」

「アイコピー!」

 

 

それから2時間後。なんとか全てのプラムを使い切ることができたのだった。

 

 

「完成だ…!ありがとうマヤノ!」

「どういたしまして~☆久しぶりにトレーナーちゃんのお菓子作りのお手伝いしたけど、トレーナーちゃん速すぎてついていくの大変だったよ~」

「果物は鮮度が大事だからね」

 

 

完成したタルトは250個。1個に付き2個のプラムを載せたわけだ。このうち100個分だけ冷蔵庫に入れて、残りは日が傾く前に寄付しに行くぞ。

 

 

 

──────────

 

 

 

「で……。ここで何やってるんです?実は年齢誤魔化してたとか…?」

「ウチが知りたいし、園児でもないわ!」

「タマモさん、まさかそういう趣味が…?」

「アホかっ!んなわけないやろ!気づいたらこの服着せられてここにおったんや!」

 

 

マヤノと共にいつもの幼稚園に寄付しに来たのだが、出迎えてくれたのは幼児服を着せられたタマモクロスだった。なぁにこれぇ。

 

 

「まあいいや。タルトを寄付しに来たんだけど、食堂の鍵の場所って知ってます?」

「鍵?生憎やけど、ウチにはわからんな。そもそもウチはここに来たの初めて…のはず…?」

「そうか…」

「まさか冷蔵品をほったらかしにできないしね~。どうしよっか」

 

 

休日だけあって、普段は居る幼児たちも先生たちも誰も登園していない。休日では基本的に、食堂の鍵は常駐の警備員が管理している。普段から交流があるだけあって、園の入り口の鍵だけは預かってるんで、ここに入るのは可能なんだけどね。でも今日は何故か誰も居ないみたいだし、出直すしかないのかなあ。

 

 

「しかしなんでウチはここにおるんや…?記憶が曖昧で…」

「夢遊病ですか?」

「いやいやそんな…でもまさか本当に…?」

 

 

知らない間に幼児服を着て幼稚園にいる。まさかと夢遊病を疑ってタマモクロスが頭を抱えていると、部屋の扉がスゥーと開いた。現れたのは、幼稚園でそこそこ見かけるウマ娘だ。

 

 

「あらあらタマちゃん、ここに居たんですね。勝手に脱走はいけませんよ~」

「げえっ!クリーク!?てかなんやその恰好!?」

「悪い子にはおしおきをしないといけませんね~」

「やめーやクリーク!ウチは園児じゃなちょ、うわっ…んなーーーっ!?」

 

 

こうして、タマモクロスは保母服を着たスーパークリークに捕獲されて退場していったのだった。本当にナニコレ。

 

 

「えっと…どうすればいいんだ?」

「さあ?」

「一旦出直『言い忘れるところでした~』ん?」

「マヤちゃんのトレーナーさん。いつもお菓子の差し入れありがとうございます~。冷蔵庫の2段目が空いていますので、差し入れはそこに入れておいてくださいね~。食堂の鍵は職員室の私の机の上にありますので~」

 

 

諦めて帰ろうとしたところに退場したはずのスーパークリークが顔だけ出して、鍵の場所を教えてそのまま戻っていった。よかった、これで食堂に入れる。職員室の中に入り鍵を探すと、言われた通り鍵は机の上に置いてあった。え、ここスーパークリークの机なのか…?とにかく、鍵を開けて入った食堂の冷蔵庫は確かに2段目が空いていたので、無事そこにしまうことができたのだった。

 

 

「任務かんりょ~だね☆」

「お疲れ様。帰ったらタルトが待ってるよ」

「そうだった!トレーナーちゃん!急いで帰ろ!」

「そうだね…ってマヤノさん!?私は荷物じゃな…お姫様でもないからっ!?」

 

 

帰るときに俵担ぎからのお姫様抱っこコンボを食らってしまった。パワーありすぎだよ…。タマモクロスとスーパークリークが多少おかしなことになってること以外は普段通りだったな。今日もいい1日だった。

 

 

「あ、トレーナーちゃんはマヤがタルト食べてる間に反省文だからね」

「えっ…?」

「だって通販を利用するときは、ちゃ~んと数確認するように~って言ってあったのに。発注ミスするってことはそれをしなかったんでしょ?だから…、は・ん・せ・い!」

「はい……」

 

 

救いは無かった!!!

 

 

 

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