【本編完結】お菓子作りが得意なトレーナーと、無慈悲するマヤノトップガン 作:出遅れ系トレーナー
「いくよ~☆え~い!」
「わわっ!…ていっ!」
「むふふ~やりますなあ!とりゃあ!」
「ええと…私はいったい何を見せられているんだ?」
今年はフラワーの希望で夏合宿をすることになった。なったのだが…合宿予定の海辺に着いた途端に上着を脱ぎ捨てた(脱ぎ散らかさないでちゃんと畳もうよ…)3人は、ボールを持って砂浜に突撃してしまった。服の下に既に水着を着ていたらしく、準備万端の状態だったらしい。君たち確信犯じゃないか!?
「ねえねえ3人とも。この夏は海でトレーニングする予定じゃなかったの?そういう話だったから、たづなさんに話を通して外泊届けも出して、私も付き添いでここに来てるんだけど」
「え?もちろんトレーニングもやるよ?でも今日はもう本格的なトレーニングするのは時間的に無理でしょ?だから、全力で遊んじゃおうかなって」
「今日と帰る日だけですからね、時間的に遊べそうなのって。だから少しだけなので許してほしいなって。ダメ…ですか?」
「ダメ~?」
マヤノとフラワーの必殺コンボの上目遣いニレンダァ!
「…ダメじゃないけどさあ」
私は速攻で陥落した。いやぁ、無理でしょ。かわいいは正義だもの…。
「ふっふっふ、聡明なデジたんにはわかりましたよ!」
「え。何が?」
「トレーナーさんにはあたしたちの水着姿が刺激的すぎちゃったんですね?だから海で遊ばないように意地悪を言っているんです!いやぁ、美しいって罪ですなあ」
「刺激的…?」
デジタルがドヤ顔で胸を張ってきた。しかしマヤノたちを見ても、ストーンストーンストーン…。待ってマヤノさんフラワーさん2人とも目のハイライト消えてるし胸当たってるからというか前も言ったけど腕はそっちに曲がらなあああ!!!???
「んもーっ!トレーナーちゃんなんて知らないっ!」
「私ももう知らないですっ!」
「……」
「つんつん。大丈夫ですか~、トレーナーさん?」
「……大丈夫じゃないです」
倒れ伏した私を置いて、マヤノとフラワーは行ってしまった。そんな私をデジタルがどこから拾ってきたのか木の枝で突っついてくる。ニヤニヤしているのが見なくともわかるぞ、ちくせぅ。
「ふふふ。あたしも残念枠にされてしまいましたが、見てる分には非常に面白かったのでOKとします」
「こっちは全然面白くないよ…」
「そうですか。まあいいですけどね。で……どっちが好みだったんです?」
「…マヤノはああ見えて柔らかくて、後ろから抱きしめてると幸せな気分になれるんだよね。フラワーは甘えたくなるバブみがあって…。甲乙つけがたいのが正直な感想。そもそもマヤノは普段から甘えてくるから抱きしめて頭なでるのは普通だし、フラワーも最近はデレ期なのか甘えてくることが多くてね…嬉しい限りだよ」
「ほほう!……だそうですよ?マヤノさん、フラワーさん」
「「……」」
「え゛」
ガバッと顔を起こすと、そこにはいつの間に戻ってきたのか顔を真っ赤にした2人が。いやぁ今日の水着可愛いですね。とてもよく似合ってだから反対の腕もそっちには曲がらないんだってばあああああ!!!???
『トレーナーちゃんはパティシエからスケベ大魔王に進化した!』
「トレーナーさんも懲りませんねぇ」
「口は禍の元、か…ガクリ」
──────────
「今日は遠泳をします!延々と…な~んちゃって☆」
「えっと…。マヤノさん、どこか調子でも悪いんですか?もしかして変なもの食べちゃったとか?私お薬持ってきてるので、あとでお渡ししますね?」
「ええ〜っ!?ちょっと言ってみただけなのに真剣に心配されてる~っ!?」
「あたし的にはちょっと面白かったですよ?」
「ノーコメントで」
翌朝、学園指定の水着に着替えた3人は、準備運動をしてからトレーニングを開始した。私はパラソルの下で監督という名の見物だ。一応何かあったときにすぐ動けるようにはしてるけどね。なお、トレーニング開始前に、本日も絶好調のマヤノさんから素敵なダジャレが飛び出した。そのおかげでデジタルの調子がちょっと上がったようだ。他にもどこかで2人ほど?調子が上がったり下がったりしているようだが、きっと気のせいだろう。
「見よ!この華麗なるデジたんのバタフライのフォームを!」
「え?背泳ぎで追い抜いて前から煽ればいいの?」
「本格化がかなり先に来てるマヤノさんと比べるとか無慈悲すぎません!?」
「じゃあクロールかな?」
「あれぇっ!?さっきより酷くなってますよねっ!?」
遠泳に飽きたのか、浅瀬でかっこいい口上を決めていたデジタルがマヤノに全力で煽られている。楽しそうで何よりだ。デジタルは泳ぎが得意って本人が言ってたけど、本格化までにマヤノと3年も差があると流石に厳しいか。
「…じゃあ私と競争しますか?」
「フラワーさんですか。いいでしょう。私の素晴らしすぎる泳ぎを見せつけて差し上げます!」
「ま、負けませんよ?」
「では勝ったほうが負けたほうのおやつ1個分の権利を得るということで」
「…えぇっ!?」
流石にこのままではかわいそうと思ったのか、じゃあ私がとフラワーが手を上げた。だがフラワーとなら勝てると踏んだデジタルは今日の3時のおやつを1個分賭けて競争することにしたらしい。フラワーは了承してないけども。競争の方はマヤノがどこからか取り出したフラッグをスタートの合図にするようだな。
「それじゃあいっくよ~。よ~いドン!」
「やああああ!!!」
「ふおおおお!!!」
果たしてその結果は…!
「くすん…負けちゃいました…!」
「ふっふっふ~!ウマ娘ちゃんのスク水姿から萌えパワーを継続的に補充しているあたしに隙はないのです!最も、体操服でも私服でも勝負服でもOKですけどね!」
デジタルの圧勝だった。全力のドヤ顔である。正直言ってここまで差が出るとは思ってなかったけど。でもよく考えれば短距離マイルを得意とするフラワーと、マイル中距離を得意とするデジタルが遠泳で勝負したら、フラワーに勝ち目はなかったね…。その後満足したのか、デジタルは追加で遠泳しに海に突撃してしまい、負けたフラワーは私に抱き着いたまま泣き出してしまった。おやつ1個分は大きかったか。フラワーの頭をなでで落ち着かせること10分、ようやく元気を取り戻したフラワーは、遠泳トレーニングを再開した。え、マヤノ?マヤノなら休憩とか言って横でのんびりアイス食べてるよ。でも君確か2人が競泳中も休憩してなかった?
「ようやくフラワーは落ち着いてくれたか、よかったよかった…。しかし今回のデジタルはやる気満々ですごいな」
「デジタルちゃん、本格化が来るのが遅いことをすごく気にしてたからなあ」
「そうなの?」
「うん。流石に3年も違うとシニア級レースでマヤたちと真剣勝負できる期間も長くないからね。実際にマヤもシニア級を続けずにドリームリーグに進むよう、URAからそこそこ言われてるし。まあ半年毎に強制で3連戦させられるから、やよいちゃんを通して拒否してるんだけどね☆」
「圧倒的王者の貫禄…!」
「えっへん!も~っと褒めてもいいんだよ☆」
「圧倒的子供の発想…」
「ぶーぶー!」
あーもうほっぺた膨らませてポカポカ叩くのはやめなさい。そういうところが子供っぽいって言われちゃう原因なんじゃないの?そんなこんなでマヤノは比較的のんびりしていたが、フラワーとデジタルは夕方のちょっと寒くなってくる時間まで、遠泳で持久力を鍛えたのだった。
「トレーナーさん。私のお友達が訪ねてきたんですけども、お部屋に入れてあげても大丈夫でしょうか」
「ん?こんなところにフラワーの知り合い?まあいいけど」
「ありがとうございますっ。私、スカイさんを呼んできますねっ!」
ホテルに戻り、夕飯のデザートを作っているときに、フラワーが知り合いの子が訪ねてきたので部屋に入れていいかと聞いてきた。OKを出すと、釣りざおを背負って、やけに大きなクーラーボックスを手に持ったウマ娘、セイウンスカイが現れた。皐月賞と菊花賞を勝っていて、日本ダービーは惜しくもスペシャルウィークにハナ差で差し切られてしまった準3冠ウマ娘である。ここ最近は話を聞かなかったが、どうやらケガの療養をしていたらしい。
「やぁやぁフラワーのトレーナーさん。調子はどうですかな?」
「ぼちぼちかな。そちらはそこそこ大荷物だけども」
「見た目が大きいだけで、素材は軽いんですよ。セイちゃんは非力なので~」
学園で見かけた時同様、飄々とした態度は変わらずか。備え付けのソファによいしょー!と言いながら座った彼女は、持っていたクーラーボックスを開いて私に差し出してきた。
「…それで?この刺身は何かな」
「ふっふっふ~。これはセイちゃんが釣り上げた大物なのですよ~。差し入れに持ってきました」
セイウンスカイがクーラーボックスに入れて持ってきたのは、どう見ても本マグロを丸々1匹捌いた量の刺身盛り合わせだった。
「へぇ~。すごいですねスカイさん」
「そうでしょうそうでしょう?いやぁ、イカダで釣るのは大変だったんですから~」
「え!?イカダで釣ったの?市場で買ったとか、中型の漁船借りたとかじゃなくて?」
「私にそんなお金があるわけないじゃないですか、皐月や菊花の賞金は学園に預けたままですし。私が持ってるのは高校生のお小遣い程度ですよ。それに船舶免許も持ってませんしね」
「でもイカダ…?ええ…?」
だいぶおかしなこと言ってるけど、風景を塗り替える領域を展開するウマ娘たちだ。不思議なことが起きてもおかしくはないのかもしれない。その後しばらくしてホテルから提供された料理と、人数が増えたからと私が追加で作ったつまみ、そして持ち込まれた刺身を美味しくいただき、食後のデザートの登場だ。
「本日のスイーツはスイカのアイスケーキでございます」
「「おいしそう☆(ですね!)」」
「ほほう、夏合宿中のデザートにはあまり期待してなかったんですけど、やりますねえ」
「凝ったものを作るのは趣味だからなあ」
渡したアイスケーキは、すぐにマヤノとフラワーによってパクパクされ始めた。美味しく出来ているようで安心。デジタルの方はのんびりと味わっているが、セイウンスカイはひと口食べて固まってしまったが、まさか口に合わなかったか?
「どうしたんだセイウンスカイ。もしかして口に合わなかった?」
「ああ、いえ。そうじゃないんです。普通以上に美味しいですよ。でもこれは…いやそんなまさか」
「???」
何やら考え込んでしまったが、美味しいなら問題ないか。この後、突然ケガの療養から復帰したセイウンスカイが札幌記念に出走し、盛大に出遅れをかましてからも、驚異的な末脚をくりだして1着をもぎ取ったのは、また別のお話である。
以前の連載部分の誤字報告をいただきました。該当箇所は追記/修正済みです。ありがとうございます。助かります。
その修正箇所なんですが、完全に文が繋がっていませんでした。しかし、特に報告もなかったので、私も含めてですけど、雰囲気で読んでいる可能性がありますね…!
それはそれとして、チャンミの死体蹴りライブでだいぶあったまってしまったので、次回更新は少しかかります。ご了承ください。