【本編完結】お菓子作りが得意なトレーナーと、無慈悲するマヤノトップガン 作:出遅れ系トレーナー
「トレーナーちゃん!マヤもうトレーニング飽きちゃったんだけど!海で一緒に遊んでよ~!」
「ついにか…」
夏合宿を初めて1か月、ついに飽き性のマヤノからギブアップ宣言が出てしまった。フラワーやデジタルには目標があるので、それに対するトレーニングができる。でもマヤノはグランドスラムを達成してしまっているので、今後の目標は特にない。強いて言うなら年末の有馬記念でグランプリ5連覇を狙うぐらいか。だから飽きてしまうのも仕方がないのかもしれない。
「だってもう1か月だよ!?ず~っと似たようなトレーニングばっかり!マヤもいっぱい頑張ったけどさ?トレーナーちゃん、褒めてくれはするけども全然一緒に遊んでくれないし?やる気なくなっちゃうよ~…」
「…フラワーたちが頑張ってる傍で遊ぶのも微妙だと思うんだけど、マヤノはどう思う?」
「ぶーぶー。…それはまあ?確かにそうなんだけどさ~?」
久しぶりにマヤノが私に背中を預けて、私の腕をマヤノのお腹の前に回すようにして組ませてきた。耳も完全に寝てしまっていて…。やれやれ、これはもう我慢の限界ってことか。レースでは鬼のような強さで勝つのに、私生活ではこれなんだから。まったく、仕方がない子だな…。
「わかったよ。今夜はマヤノのためだけにまとまった時間を作る。約束だ。だから、それまでは我慢できる?」
「……んも~。しかたないな~、トレーナーちゃんは。それならマヤ、もうちょっとだけがんばる。やくそく、まもってね☆」
少し機嫌の治ったマヤノは、組ませていた腕をほどいて砂浜を走りだした。さーて…どうやって機嫌を取るかね。
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「それではトレーナーさん、おやすみなさい」
「おやすみですぞ!…ふふ、トレーナーさんは楽しんできてくださいね」
「…ふえ?楽しむ?何をです?」
「いえいえ、何でもないですよフラワーさん。ささ、私たちは明日に備えて寝ましょうか」
「???」
消灯の時間になって寝る挨拶をしたが、マヤノとの約束があるので私たちの夜はまだまだこれからである。フラワーは気づいていないようだが、デジタルには完全にバレてるなこれ。まあ、いかがわしいことをするわけでもないので、堂々と抜け出すけど。
「昼間の騒がしい海もいいけど、夜の海も静かでいいね」
「そうだな」
マヤノの希望で手をつなぎながら、特に何をするわけでもなく砂浜から海を眺める。マヤノは何かを言いたそうにしているが、なかなか言い出せないでいるようだ。まあ時間はたっぷりあるし、マヤノから言いたくなるまで待つか。
そう思ってだいたい5分ほど経っただろうか。マヤノはこてんと私の膝を枕にして砂浜に寝そべった。
「ふぅ…」
「どうかした?」
「べ、別に〜?」
頭をなでてやると、気持ちよさそうに耳を左右に倒している。それからさらに30分ほど経って、ようやくマヤノはぽつぽつと話し始めた。
「ねえトレーナーちゃん。トレーナーちゃんは、マヤが担当ウマ娘でよかった~って、まだ思ってくれてるの?」
「どしたの急に」
「だってマヤ、自分で言うのもアレだけどさ?結構重い女の子でしょ?」
「重いか?ウマ娘全体でもかなり軽いほうだと思うけど。ほら、私でも抱きかかえられるもの」
「マヤの頭の重さでも、体重の話でもないよっ!?も~!トレーナーちゃん、知っててとぼけてるでしょ~!」
そんな暗い顔で話すことじゃないでしょ。ほーら笑顔笑顔。
「むー!ほっぺたを引っ張らないでー!もうっ!いい!?話を戻すよ?マヤ、色々あったせいで、今はもうレースが楽しいって思えないの。昔はレースでキラキラしたい〜って思ってた時もあったんだよ?でもいつからか、レースなんて勝たないと無価値だって感じるようになって…」
「ふーん」
「ああーっ!軽く流したーっ!マヤ、これでもすごく大事な話してるのに!」
「だってマヤノが私にとって1番大切な子の事を貶してるんだもの。そんな悪い子の話は聞いてあげませーん」
「むむー!もっとマヤの話を真剣に聞いてくれても……ん?」
マヤノが何かに気づいたようだけど、もう相手してあげません。今日はこれで店じまいです。
「さーて。夜も更けてきたし、今日はもう寝るとするかね」
「…ふえっ!?あれっ!?トレーナーちゃん!もしかしなくてもマヤ、すごく大事な事を聞き逃しちゃったりしてる!?」
「さあ?」
「あー!誤魔化した〜っ!」
ほっぺたを膨らませながらポカポカ叩いてくるマヤノをスルーしながら、私はホテルへと戻ったのだった。
マヤノはトレーナーちゃんが居なければ我慢できる子ですが、トレーナーちゃんが居ると甘えたくなってしまう子。トレーナーちゃん側も気にせずいつでもウェルカムだから悪いともいう。